時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

堂々!桶狭間の合戦!!

雨降り行く中、崖を勢いよく下っていく者達が居た。
先手大将、柴田勝家。武に秀でて、数々の戦で功績を残して織田家を支えていく。
次に続くは前田犬千代こと利家。織田家では右に出るものが居ない程に強くなり、織田から豊臣へと渡り生き、初代加賀藩の藩主としても有名になる。織田家では槍の名手となった。
そして織田信長。一つ、織田家を守る為・・・。ただ目の前にいる敵に喰らい付こうとしていた。
後の天下人となる彼女。この時は知る由もないことであった。
勝家は勢いよく駆け降りると、すぐ様敵に槍で斬り掛かり、一直線に進んでいく。
敵は恐れをなしたか「敵襲!!」と言う声が響いたのも数十秒後だった。
酔い更けている兵士に戦える気力は無い。勝家が道を切り開くように進み、敵に恐怖心を与えると、その後ろに続く利家が敵を殲滅していく。
一見、意気の合ったコンビネーションに見える。しかし、やっていることは人殺し。
今川兵達は成す術も無く、無造作に倒れていくに他ならなかった。
取りこぼした敵を、さらに長秀率いる足軽兵達が斬りに斬り掛かり、役割分担の出来ている形であった。
まさに最高の奇襲、最強の電光石火で、手の付けようがない。
しかし、それも時の運。藪から棒なのだが、敵も敵で攻撃を仕掛け始めた。
倒しても倒しても、一向に減らないエンドレス状態に突入。
信長達は約6000の兵に囲まれながらも、勇猛果敢に戦っていた。
馬に乗りながら、槍を振り回す勝家。体中が裂け飛び、兵士達は次々に倒れていった。

「いざ、尋常に!尋常に勝負!!!!」

勝家は大声で叫びながら、信長を護衛しながら敵を殲滅していく。
鬼柴田。戦場の中で鬼の様に暴れ、鬼の様に勇猛であることから付けられた異名。
彼女と馬の周りには死体が転がり落ち、地獄の世界が広がっていた。

・・・この状態で、俺と新助と一益とその他数名の兵士達はこの包囲網から外れて、義元の本座へ向かっていた。

「まさか山より敵襲とは・・・。迂闊でしたね。全軍!刀を持って応戦しなさい!!」

義元は大声で兵士達に指示を出した。しかし、その殆どに酔いが回っている為、蜂の巣にされ、殺されていく。

「義元様!兵士達は酒の酔いによって殆どが身動きを取れておりませぬ!!」

一人の兵士が急いで走って義元の下へ駆けつけ、呼吸を荒くさせながら伝令をする。

「くっ・・・。何とおろかな・・・。まさか領民達の罠にはまっているとは思いませなんだ・・・。かくなる上は、私が刀を取って戦うまでですね・・・。」

「し、しかし・・・!」

義元の言葉に、兵士が焦って止めようとする。

「大丈夫です。雪斎様の援軍も直ぐに到達します。今は耐え抜くが如し・・・。さぁ!」

義元はそう話すと、覚悟を決めて柱に斜め掛けてあった刀を掴むと、腰に掛ける。
「今川左文字」そう刻まれている彼女の刀に荷を負わせた執念を彼女はつかみ取る為、ただ一人、戦場へと歩き向かって行った。
その姿は「一輪の花の如く、咲く前の花の美しさ。」と、一人の男が唄った。

「ひっひっひ・・・。やはり良い女でしたな。」

遠くよりその姿を見ている男。彼はその場より振り返り立ち去ると、傘を差した。

ーさて、裕太はと言うと・・・?

「まさか、兄やん・・・。義元を横取るとか考えてないんよね?」

突然一益が訳の分からない事を口走った。

「はぁ?何言ってんだよ。」

「だって、今川義元は東国一の美女だし、男は皆美女を欲するって言うんやで。だから、兄さんもてっきりそうなのかと・・・。」

次第に一益の声は小さくなっていったが、要するに、義元を狙いにいっているのかが知りたかったんだな。本体からも離れてここまで来たら、流石に疑うと思うけど・・・。
ただし、目的は全く違う。

「俺はな、義龍の時にこう思ったんだ。やっぱり、人を殺めることは辛いことだって。ここまで来るのに、平然と何人も斬っている男が、人の事言えないと思うんだけど。・・・やっぱり殺すのはダメなんだ。むぅ・・・なんて言えば伝わるかなぁ・・・。」

話を続けようが分からなくなって、頭をかく。
沈黙が続いたが、一益はニコッと微笑んで次の様に話してくれた。

「兄さんの気持ちは良く分かるに。私だって最初はそうだったんやで。人を殺したくない気持ち・・・。それはいつの時代も大事な気持ちのはずに。・・・でも、それは今回までや。世は乱世。そんな戯言、戯言じゃなくても通用しないに!だから、それは今回まで。軍師たるものの、その志では出来る事も出来なくなってしまうからやで。だから・・・に?」

これも彼女なりの忠告なのか・・・。乱世が、人殺しか・・・。
なら・・・。血を染めるのは俺だけで・・・。信長は清潔で綺麗に生きて欲しい。そんな気持ちが湧く。
一益の言葉で、気持ちが固まった。全ては信長の為か・・・。
よし、ここで勝って恩賞を貰うんだ!絶対に出世して、頑張るぞ!

「よし・・・。やってやるか・・・!!」

俺はそう言うと、両手で顔を叩く。決心を固めたので、その意思表示の為、気持ちを入れ替える。

「やっと立ち直ったか。」

新助は親指を立てると、此方に向けてグッジョブしてきた。
意味分かってんのかなぁ?グッジョブ。

「さて、兄さんが復活したところで・・・。義元探しでもいき・・・。」

その時だった。

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