時代を越えてあの人に。~軍師は後に七人のチート家臣を仲間にします~

芒菫

始まりの声。


ー敵は桶狭間にあり。

藤吉郎こと後の豊臣秀吉。信長の死後、天下を手中に治めようと奮闘した結果、歴史上天下統一を初めて成し得た人物として、後世へ名を残した。
彼女はこの時よりも前から、織田家に仕えて何かと重要な役に就かされていたのだろう。
出世出世出世。この言葉の如く、秀吉は誰よりも出世して天下人となるのもこの世界でだってそう遠くないのだろうか。
本能寺の変は起こるのだろうか。そう言えば、肝心の明智光秀が登場していないな。
そんなことを考えながらも、俺達は雨道を一直線に突っ走っていた。

「敵は桶狭間に居る。これは間違いない。」

時が進むごとに強くなる雨に打たれる本殿。その中で行われた軍議。
真正面に居る信長に向かって、そう言い放った。

「桶狭間に。桶狭間に義元の本陣がある。これは間違いなんだ。藤吉郎、そうなんだろう?」

俺は藤吉郎にそう投げかけた。

「はいっ!間違いありません。近くの村の百姓たちに酒や料理などを持って行かせ、きっと義元の本陣は宴で盛り上がっている頃だと思いますよ~。」

機を緩ませないように淡々という藤吉郎の話し方はどうしてここまで人の心を操るのだろうか。
藤吉郎が話すと、納得出来るというのが本音だった。

「となれば、これより桶狭間に直行し、義元を討つことが出来るな。猿よ、大儀であった。」

「勿体無きお言葉にございます!」

信長が、藤吉郎を褒め称える。
藤吉郎は、信長の方に体を向けて頭を下げながらそう話した。
藤吉郎の手柄を上手く話しだすことが出来た。さて、桶狭間に居ることが分かったとなれば、ここからが本題である。

「さて・・・。それじゃあ本題。ここからどのようにして調理するか。」

俺が次の話に持っていくと、長秀が扇子で仰ぎながらツッコミを入れる。

「ふふ。調理をするって・・・。面白い事を言うのね。」

「実際、調理ってのはその時点で調味料だったり具材だったりを仕込んで料理にするだろう?それと同じ意味だ。どのように調理するか。どのようにして攻めるか策を立てるって話だな。」

俺が使った調理と言う意味に対して、今度は勝家が不機嫌そうに話す。

「ならば、初めから攻めると言う言葉を使えばよかったではないか。それと、調味料とはどういう意味なのだ?」

それについて、溜め息をつきたかった所であったが、致し方が無く答えるしかない。

「いいじゃない。面白い言葉をもっと沢山活用していくことに意味があると、俺は思うね。調味料と言うのは香辛料とある意味同じだぞ。いや、同じって捉えてくれた方が分かりやすいな。」

長秀と勝家の話を聞き終え、答え終えた後、本題に入った。

「わしはこのまま一直線で義元の所へ向かいたい。そしてあやつの首を跳ね飛ばし、天下を奪い取ってやりたいがのう。」

なんか地味にめっちゃ怖い事言ってるんですけどこの人!首を跳ね飛ばす・・・って本当に戦国時代だよね。怖すぎる・・・うん、やっぱり怖い。

「ま、まぁそうだな。信長がそうしたいならそれで構わない。この状況下で特攻・・・。まさに電光石火か。しかし、そう簡単に行かせてくれないのも今川のはずだ。となれば、ここは二手に分かれようと思う。わざと大軍を鳴海城に送らせるんだ。そのふりをして、信長本体を電光石火で義元本陣に向かわせる。向こうも酔い崩れてるはずだ。そして信長が義元の首を跳ね飛ばしてしまえば・・・はい、おしまい。」

何言ってるんだろう俺。絶対俺も怖い事言ってるよね?あれ?そうだよね?
意見がまとまったようだった。この後、これに意見を求めたが、誰も異議することも無く、全会一致(?)で可決された。この案で決行となる。

「本当にこれで文句ないな?」

俺はもう一度だけ全員に聞く。

「・・・。」

「後はわしがやるだけじゃ。構わぬ。」

「戦・・・。天下分け目の大戦よ!」

「これで今川を滅ぼせると言うなら・・・。裕太の策に任せよう。」

「流石軍師さん。面白い策を思い付くのね。」

「そうだな・・・後はやるだけだぜ。」

「となれば、私が先陣を務めます。この浅野長吉、織田家を導かせて頂く。」

「戦えるのなら・・・いいでごじゃる。」

「さて、一暴れと行きましょうか!」

一益様は寝ております。最初より一益、信長、佐々、勝家、長秀、森、浅野、利家、藤吉郎と文句なしの誠意を示してくれた。

「さて・・・。これよりは前代未聞の大戦。織田家繁栄の為、宿敵今川を滅ぼす為、各々一丸となって道を切り開く様、抜かりなく。」

全員が立ち上がり「おー!」と言った。織田家の道は固まった。桶狭間の戦いが起こる。
信長はそのまま外へ出ていくと全員に外へ出るよう声を掛けた。
一体何をする気なんだよ・・・。

数分経つ。大雨に当てられる中、一人の女はこう言い放った。

「否。」

信長が喋りだすと、全員が静まり返る。まさに泣く子も黙る信長様だ。

「わしを勝たせるが良い、神。お主はわしだけを見ていろ。わしだけの武運だけを祈れ。その分だけわしはお主に面白いものを見せてやる。わしは必ず天下を取る。この先続く者達の為、ここまで支えてくれた家臣達の為、汗水垂らし戦場を駆け回る兵士達の為。わしは負けられないのじゃ・・・。」

彼女は大きく深呼吸すると今度は大声で言葉を放った。

「わしを勝たせよ!!!!!」

その場に居た全員が「えい!えい!おー!」と何度も何度も鬨の声を作る。それはこの嵐にも負けないくらいに大きなものであった。天にまで響く。これが信長の目指す天下なのだろうか。
彼女はそのまま振り向くと、道の真ん中を通って鳥居の下を降りていく。
神聖な場所の道って・・・真ん中は神様の道なんだけど信長様は分かってないのかね?それとも・・・。
彼女はこの状況を楽しんでいた。決して辛いなど思っていなかった。
だから走る。俺は今この状況下を辛い思いで走っている。
信長が楽しいと思う分だけ、家臣達には努力がある。それだけ辛いことがある。

-でも、それがやめられないんだ。彼女を笑顔にさせる為なら。

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