不老不死な元勇者
第3話
「何の用だ?」
男の言葉に咄嗟に反応できなかった2人だったが少しの間を空けてようやく言葉を返すことができるようになった。
「えっと、こ、こんな森にこんな小屋があったから気になって…」
その言葉に訝しげに顔をしかめた男だったが、しばらくアメリアの顔を眺めると、大きく溜息を吐いて言った。
「ふう、嘘は言っていないようだな。では、質問を変えよう。そもそも何故この森に来た?お前たちはここに来るに相応しいほどの実力はないようだが…」
これには、クロエが答えた。
「そ、それは強くなろうと思って来たんですけど、思ってたよりも魔物たちが強くて、逃げたら…」
「間違えて森の奥に来た、と」
「はい」
クロエが男の考えに同意を示すと、男は再び大きく溜息を吐き、呆れた表情で言った。
「ふう、お前たちがどうしようもない馬鹿だというのはわかった」
その言葉に反応したのは自尊心が高いアメリアだった。
「ちょっと、馬鹿って何よ!」
「その通りだろうが。大方自分の実力を過大評価してこの森に来たら、手も足も出なかったんだろう?」
「うっ…」
全くもってその通りだったのでアメリアは何も言い返すことができなかった。
「やはり図星か…」
「は、ハメたわね⁉︎」
「こんなの誘導尋問でもないだろうが…。やはり馬鹿だな」
呆れたような表情で言葉を返した男に何も言えなくなったアメリアの隣に立っているクロエがずっと疑問に思っていたことを聞いた。
「えっと、あなたのお名前は?」
「そ、そうよ!あなたこそ誰なの⁉︎」
少しでも話題をそらすためにアメリアは疑問に合わせた。まあ、そのことは男には分かったようで再び呆れたような視線をアメリアに向けていたが。
「な、なによ⁉︎」
「いや、なんでもない。それよりも、俺が誰か、か…」
「はい、ずっと気になってたんです!」
クロエはやはり好奇心によって突き動かされているようだ。人一倍臆病そうな彼女が《ダークフォレスト》という危険地域に長い時間いたことによる反動なのかもしれない。
そんなことを考えながら男は自己紹介をすることにした。
「そうだな、俺の名前は…」
ドゴォォォォオン‼︎‼︎‼︎
だが、その言葉は突然鳴り響いた爆音によって遮られた。 その音に危機感を覚えたアメリアは反射的に叫ぶ。
「ちょ、ちょっと!なにが起こったの⁉︎」
クロエは言葉も出ないように固まっている。それも致し方がない。何故ならば、アメリアたちが小屋に入って来たときから開けっ放しだったドアからあるものが見えていたからだ。
まさか、と思いクロエは走り出し、そのものを見て再び固まる。アメリアも慌ててクロエの後を追うが、外に出た途端に腰が抜けたようにその場に座り込む。その表情はまさに断頭台を登る死刑囚のように絶望で彩られていた。
目の前は銀色に染められていた。眼前にある生物の全てが銀。猛禽類を思わせる鋭い眼に核兵器を使おうが傷一つつかないであろう鱗、そして本来の役割以外に武器としても盾としても使うことができそうな鋭い両翼。その全てがアメリアたちに絶望を表していた。
「Sランク《銀龍》…!」
2人が慄く中場に相応しくない落ち着いた声音が不自然なほど静かな森に響いた。
「ふん、銀龍か」
そう言ってなんの警戒もなく銀龍に近づいていく男に向かってアメリアは叫んだ。
「ちょっ、なにして」
その言葉がトリガーとなったのか。銀龍は大きくいきを吸ったかと思いきや、思い切り吐き出した。
轟ッッッ‼︎‼︎‼︎
終わった。
アメリアもクロエも迫り来る絶望にそう思った。思わざるを得なかった。
だが、そんな中男は小さく呟くと同時に右手を振るった。そう、まるで飛んでいる蚊を払うかのように、軽く。
「つまらん」
閃ッッッ‼︎‼︎‼︎
世界が、呑まれた。
男が右腕が振るった先には荒れ果てた土地以外森も銀龍も文字通り何もかもが存在していなかった。
それを見てアメリアとクロエは呆然と立ち尽くすが、男は2人の反応を気にもとめず言い放った。
「俺の名はロード。一応、かつて魔王を殺した元《勇者》だ」
男の言葉に咄嗟に反応できなかった2人だったが少しの間を空けてようやく言葉を返すことができるようになった。
「えっと、こ、こんな森にこんな小屋があったから気になって…」
その言葉に訝しげに顔をしかめた男だったが、しばらくアメリアの顔を眺めると、大きく溜息を吐いて言った。
「ふう、嘘は言っていないようだな。では、質問を変えよう。そもそも何故この森に来た?お前たちはここに来るに相応しいほどの実力はないようだが…」
これには、クロエが答えた。
「そ、それは強くなろうと思って来たんですけど、思ってたよりも魔物たちが強くて、逃げたら…」
「間違えて森の奥に来た、と」
「はい」
クロエが男の考えに同意を示すと、男は再び大きく溜息を吐き、呆れた表情で言った。
「ふう、お前たちがどうしようもない馬鹿だというのはわかった」
その言葉に反応したのは自尊心が高いアメリアだった。
「ちょっと、馬鹿って何よ!」
「その通りだろうが。大方自分の実力を過大評価してこの森に来たら、手も足も出なかったんだろう?」
「うっ…」
全くもってその通りだったのでアメリアは何も言い返すことができなかった。
「やはり図星か…」
「は、ハメたわね⁉︎」
「こんなの誘導尋問でもないだろうが…。やはり馬鹿だな」
呆れたような表情で言葉を返した男に何も言えなくなったアメリアの隣に立っているクロエがずっと疑問に思っていたことを聞いた。
「えっと、あなたのお名前は?」
「そ、そうよ!あなたこそ誰なの⁉︎」
少しでも話題をそらすためにアメリアは疑問に合わせた。まあ、そのことは男には分かったようで再び呆れたような視線をアメリアに向けていたが。
「な、なによ⁉︎」
「いや、なんでもない。それよりも、俺が誰か、か…」
「はい、ずっと気になってたんです!」
クロエはやはり好奇心によって突き動かされているようだ。人一倍臆病そうな彼女が《ダークフォレスト》という危険地域に長い時間いたことによる反動なのかもしれない。
そんなことを考えながら男は自己紹介をすることにした。
「そうだな、俺の名前は…」
ドゴォォォォオン‼︎‼︎‼︎
だが、その言葉は突然鳴り響いた爆音によって遮られた。 その音に危機感を覚えたアメリアは反射的に叫ぶ。
「ちょ、ちょっと!なにが起こったの⁉︎」
クロエは言葉も出ないように固まっている。それも致し方がない。何故ならば、アメリアたちが小屋に入って来たときから開けっ放しだったドアからあるものが見えていたからだ。
まさか、と思いクロエは走り出し、そのものを見て再び固まる。アメリアも慌ててクロエの後を追うが、外に出た途端に腰が抜けたようにその場に座り込む。その表情はまさに断頭台を登る死刑囚のように絶望で彩られていた。
目の前は銀色に染められていた。眼前にある生物の全てが銀。猛禽類を思わせる鋭い眼に核兵器を使おうが傷一つつかないであろう鱗、そして本来の役割以外に武器としても盾としても使うことができそうな鋭い両翼。その全てがアメリアたちに絶望を表していた。
「Sランク《銀龍》…!」
2人が慄く中場に相応しくない落ち着いた声音が不自然なほど静かな森に響いた。
「ふん、銀龍か」
そう言ってなんの警戒もなく銀龍に近づいていく男に向かってアメリアは叫んだ。
「ちょっ、なにして」
その言葉がトリガーとなったのか。銀龍は大きくいきを吸ったかと思いきや、思い切り吐き出した。
轟ッッッ‼︎‼︎‼︎
終わった。
アメリアもクロエも迫り来る絶望にそう思った。思わざるを得なかった。
だが、そんな中男は小さく呟くと同時に右手を振るった。そう、まるで飛んでいる蚊を払うかのように、軽く。
「つまらん」
閃ッッッ‼︎‼︎‼︎
世界が、呑まれた。
男が右腕が振るった先には荒れ果てた土地以外森も銀龍も文字通り何もかもが存在していなかった。
それを見てアメリアとクロエは呆然と立ち尽くすが、男は2人の反応を気にもとめず言い放った。
「俺の名はロード。一応、かつて魔王を殺した元《勇者》だ」
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