貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第58話 衝突する運命


 踏みしめる足は重く、左目も見えない。
 だが、少年ユウは飛び出した。

 俺は、今始めて本気で人を殴る。
 心の中では、殺すつもりで人を殴った。

 受け止めようとした、ナギの腕から先が無くなった。
 その勢いのまま、後ろに吹っ飛んでいく姿が見えた。

 しかし、すぐにナギは立ち上がり、一瞬の内に無くなった腕が元通りになる。
 その異常な姿を見ていると、俺の傷を治せると言っていたのもあながち間違いでは無いかも知れないと思う。

 だけど、能力が回復だけなら俺は、絶対に負けない。
 何かを隠し持っていると注意を払って、戦った方がいいと再認識する。

 すると、空中からナギに向かって魔法が飛んで行く。
 勿論放ったのは、ノア達だ。

 しかし、その魔法もナギに当たる前に霧のように消えていった。
 そして、ナギはノア達の方に手を向け、

 「これは、俺達の最後の戦いだ。君達には、見物人として戦いの結果だけを見てもらう」

 と言った。
 俺は、咄嗟にノア達の方に走って向かったが、その途中で透明な壁にぶつかった。

 「お前、何しやがった?」

 壁の向こうでノア達が何かを叫んでいるように見えるが、何も聞こえない。

 「大丈夫だ。彼女達には、危害を加えない。キサラギ・ユウ。お前との戦いだ、邪魔はさせない」

 これで、嫌でもナギを倒さないとノア達が助けられなくなった。
 俺は、さっきと同じようにナギを殴りにかかる。
 ノア達の魔法が消されたことから、多分ナギには魔法が効かない何かがあるのだろうと思ってのことだ。

 同じようにナギは受け止めようとしている。
 こいつは、馬鹿なのか?と思っていたが......

 さっきとは結果が違っていた。
 本気で殴ったはずなのに、受け止められた。
 すぐに、もう一撃を顔に当てるが、まるで何もなかったような顔をしていた。

 俺は、すぐに距離をとって様子を伺う。

 1つ頭の中で思った事は、俺と同じような能力では無いかということだ。
 しかし、能力が同じなら最初に受け止めた時も無傷で済んだはずだと思い、別の能力だと考える。

 「俺の能力を教えてやろうか?」

 突然、後ろから声が掛かる。
 咄嗟に前に飛び出し、攻撃を回避する。

 振り返ると、さっきまで俺の居た場所が黒く燃えていた。
 何も無いところが燃えているところを見ると、ノアの魔法よりも上の威力を持っている事が分かる。

 あれに当たったら無事では済まないだろう。

 それに、目を離して居たわけでも無かったのに突然後ろから現れたことから、瞬間移動のような能力を持っている事が分かる。

 正直言ってチート過ぎる。
 リュウドウ・ナギは、一体いくつの能力を持っているんだ?

 「1つヒントをやろう。俺の能力は1つだけだ」

 言われた言葉に驚愕を隠せない。
 しかし、この状況で嘘を言っているとも思えない。

 身体強化。瞬間移動。そして、最強クラスの魔法。
 全てが1つの能力だと......
 普通なら有り得ない。だけど、その力の全てが本物だ。

 もし、他にも能力があるとしたら......俺は、こいつに勝てないかもしれない。


 しかし、強すぎる相手の力を前にして少年は、獰猛に笑っていた。

 そんな能力関係無いと言わんばかりに。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品