貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第56話 鏡の世界


 色々な角度から、魔法が飛んでくる。
 だけど、俺は避ける事しか出来ない。

 「降り注げ『ライトニング』」

 アイリスの魔法は、俺の真上から、光の速さで雷が落ちてくる。
 いくら、俺が速くても光の速さには勝てない。

 「くっ!!」

 雷は、俺に直撃する。
 ダメージは、少ないが当たった電撃により、身体が硬直してしまう。
 それが、見逃されるはずもなく、ノアとセツカの魔法が飛んでくる。

 「...捕らえろ...氷の棺『アイス・メイデン』」

 俺の周りに、棘の付いた壁が現れ、だんだん収縮してくる。
 逃げるには、上しか無い。

 だが、上を見上げると...

 「『蒼炎』」

 青白く光輝く、3メートルぐらいの槍を持ったノアが待ち構えていた。
 一目でその威力は、普通ではないと分かる。
 これは、本気のノアの魔法だ。

 そして、ノアはその槍を投げた。

 迫り来る棘の壁。上からは、全てを焼き付くす炎の槍。
 逃げ場が無い!!

 「さよなら、偽物のユウ.....」

 俺が最後に見たのは、少し辛そうな顔をしたノアだった。
 そして、俺の視界は青白い炎に埋め尽くされた。


 魔法の放たれた後には、もう何も残っていなかった。
 プスプスと煙が上がるだけだ。
 セツカの放った、魔法さえ焼き付くし蒸発した。

 『死んだか......キサラギ・ユウ。お前の分は、俺が変わって生きてやるよ』

 「......ユウ、終わったよ」

 『そうだな』

 「ああ、これで終わりだ!」

 『何!?』

 突然、後ろから現れた俺に驚いているようだか、もう遅い。
 鏡の中の俺を本気で殴る。

 抵抗することもなく、鏡の中の俺は砕けた。
 まるで、鏡が割れた時のように、キラキラと光る粒子になって消えていった。

 「......ノア、どうして分かったんだ?俺が本物・・だって」

 実は、ノアがあの魔法を放った後、逃げ場の無い俺は、どうにかして耐えようとしていたんだが......俺に、魔法が当たる直前に、槍の形が変わって俺に当たらないように広がってセツカの出した棘の壁だけを溶かした。

 だがら俺は、氷を溶かした時に発生した煙に紛れて、アイツに近付くことが出来たのだ。

 「私、言ったよね。惑わされないって、偽物が本物の真似をするなって」

 「ってことは、最初から分かってたってことか?」

 「そう、私がユウを分からないなんてことは無い!」

 と、ノアはドヤ顔でそう言っているが、

 「じゃあ、何で最初に本気で魔法を撃ってきたんだよ」

 と、俺が言ったとたんにノアは、ピタッと固まる。

 「えっと、それは......そう、敵を油断させるため。それに、ここに来る前に、ユウは私の話を聞いてくれなかった。無茶しないでって言ったのに、聞いてくれなかった。だから、ちょっと懲らしめてやろうと...」

 俺も、悪い部分があるようだが、本気で魔法を撃ってくる事は無いだろ、下手をすれば死んでるよ。
 まぁ、でも....

 「ノア...」

 俺は、ノアに近付いていく。

 「な、何?ユウ」

 「...ごめん。それと、ありがとう」

 ノアを抱き締める。
 この温かさを守るためなら俺は、頑張れる。

 「ん、ユウ。それ、ちょっとズルい」

 そう言いながらも、抱き締め返してくれる。
 横目で見るとノアの耳は、少し赤くなっていて、可愛いかった。

 「セツカさん、僕達どうしましょう?」

 「...見守ってる...それが一番」

 「大人ですね。セツカさん」

 「...そう?」

 と、そんな会話も聞こえてくるが......
 ノアを離して、準備をする。
 ノアは、顔が赤いのを俺に隠そうとして俯いているが、そういうところも、俺は好きなんだろう。

 だか、今はダンジョンのクリアだ。
 多分、このダンジョンももうすぐ、終わりだと思うから...

 「セツカ、今、俺達はダンジョンの何階に居る?」

 ダンジョンにいた、セツカなら分かると思っての質問だ。
 セツカは、少しの間を開けて答えた。

 「...ここは...多分99階」

 全員が驚く。
 ここが99階と言うことは、次の階が最後の敵がいる100階。

 「!!セツカ、それは本当か?」

 「...うん」

 その時、ガタガタッと音がなった。
 音がなった方を見ると、新しい扉が出来ていた。

 「あれが、最後の...扉」

 次をクリアすれば、ダンジョンコアにたどり着ける。
 全員の胸には、不安が積もっていた。

 次の敵はどれ程強いか分からない。
 もしかしたら、俺よりも...強いかもしれない。

 消えない不安を背負い、扉の前に着く。

 これで、次を勝てば世界は変わる。
 そう思って、扉を開いた。


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