貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第53話 始まる冒険


 「なぁ、ノア...俺についてきてくれるか?」

 「ふふっ、私は何時でもユウについて行くよ」

 「...ありがとう。俺、やっぱりノアの事が好きだ。出会った時からずっと」

 その問い掛けにノアが答える。
 俺の耳元でこう言った。

 「全部。ユウがやりたいこと、やるべき事が全部終わったら...私の答えを、真実を話すよ。それまでは、ね」

 「ああ、分かったよ。じゃあ早く終わらせないとな」

 「ふふっ、そうだね」

 何でもないこの日常をこの時間を、ノアと一緒に過ごしたい。
 その為にも、ダンジョンをクリアしないとな...

 「ノア、俺頑張るよ。だけど、約束してくれ。絶対に誰も死なせないと」

 「大丈夫。クリアするまでは誰も死なせたりなんかしない。もう、私にとっては、かけがえのない家族みたいなものだから。絶対に失ったりしないよ」

 俺は、小指を出してノアの目の前に突き出す。

 「約束だ」

 それに答えるように、ノアも小指を出す。

 「約束ね」

 結ばれる約束。
 そこに確かな証明は無い。
 だけど、二人の心の中には、確かなものが結ばれていた。

 「アイリス、セツカ。そこに居るんだろ」

 近くの木に隠れていた二人が顔を出す。

 「ユウさん、分かってたんですか?」

 「...多分...最初から」

 「えっ!セツカさん、何で言ってくれなかったんですか」

 「...気付いてると...思った」

 「はうぅ...僕は、まだ未熟ですね」

 そんな会話をしながら歩いてくる。
 意外と仲良いじゃないか。
 少し安心したな...

 「じゃあ、行くか」

 「ん!」

 「はい!」

 「...おー」

 仲間達の反応を耳に、歩き出す。
 お互いに笑い合い、次へと進む。



 セツカの転移魔法により、一瞬でダンジョンに着くことが出来た。
 しかし、そこで見た光景は...異常・・だった。

 「セツカ、これはどういう事だ」

 「...違う...これは...違う」

 俺達の目の前に現れたのは、赤い鱗、黄金の瞳、巨大な身体。
 この世界で"最強"の種族、ドラゴン。
 それと、周りに転がる冒険者の亡骸。

 真っ黒に焦げた、その姿は、このドラゴンがどれ程の強さを持っているのかを現しているようだった。

 そして今、ドラゴンは、大きく息を吸い込んでいる。

 「ノア!!」

 「ん!!」

 アイリスとセツカは、ノアに任せた。
 ノアならしっかりと守ってくれるだろう。

 そして俺は、力を解放する。
 力が溢れ、目が赤く染まる。

 今、ドラゴンの息は吐き出された。
 目の前を赤一色に染めあげるそのブレス。

 俺は、目の前の空気を殴った。
 爆発音と共に爆風が吹き荒れる。
 それは、ドラゴンのブレスを何とか押し出して消した。

 「ふぅ、危ない。ノア、そっちは大丈夫か?」

 後ろに突然出来た、氷の壁の向こうに問い掛ける。

 「何とか、大丈夫。ユウの力の被害を抑えるのも大変なんだからね」

 どうやら、無事みたいだ。
 それと、今は目の前の敵だ!!

 「おい、ドラゴン。覚悟しとけよ」

 拳を握りしめて、ドラゴンに突き出す。
 次は、俺の番だと。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 「試練を超えて見せろ、力を証明しろ、そうじゃないと面白くないからな」

 ユウ達の様子が写っている画面を見て、その誰かは言う。

 「待っているぞ、キサラギ・ユウ。早く俺のところまで来い。そして、決着をつけよう。この世界の最後を賭けて...」

 誰かは笑う。

 紅く光り輝くダンジョンコアの部屋で......

 

「貴方に贈る世界の最後に」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く