貴方に贈る世界の最後に
第50話 あの時あの場所
魔王城から去り、『魔境の森』まで帰って来た。
「セツカ、転移魔法でダンジョンまで連れていってくれ」
「...分かった」
足元に現れる魔法陣を見て、ふと、思う事がある。
そう言えば、全てはこれから始まったな......いきなり神に転移させられて、世界が変えられて......逢坂は、今何してるんだろうか?怪我はしてないだろうか?
「...ユウ...これ、違う!!」
突然、セツカが慌てた様子でそう言う。
「...違う誰かが使った魔法」
その言葉を聞いてハッとする。
ノア達だけでも......
「逃げろ!!」
何とか、ノアとアイリスとセツカを魔法陣の外に押し出す。
俺は...間に合わない。
あの時と同じように光り輝く魔法陣が、俺を包み込んだ。
「ユウ!!ダメっ!!」
慌てて飛び込んでくるノアを見たのが最後だった。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「久し振りなのだ、キサラギ・ユウ」
目の前に現れたのは、元の世界の神様だったはずのロリ神だった。
「何でお前がここに居る?」
「それは、言えないのだ。こちらにも事情というものがあるからな」
「じゃあ、何でまたここに読んだんだ!ロリ神」
周りを見ると、最初の時のように豪華な椅子がポツンと置かれているだけの空間。
まるで、ここに閉じ込められているような......
「一つ、質問なのだ。お前の願いで来たこの世界は、楽しいか?」
「...... 少しは、感謝してるよ。確かに俺に合っている世界だと思う。だけど、誰かが苦しむ世界は嫌なんだ」
「それで、お前はダンジョンに何を求めるのだ?」
「それは、クリアしてから仲間達全員で決める事にするよ」
「そうか...お前も変わったのだな。良かったのだ」
そう言ってロリ神は、笑う。
誰かの幸せを嬉しく思って笑っているその姿は、本物の神様に見えるものがあった。
「そうなのだ~。神様なのだ。やっと分かってくれたのだ~」
はしゃいでいる様子は、子供なんだけどな。
それより、呼ばれた理由を聞いてない気がする。
「そうだったのだ。重大な事を忘れていたのだ。キサラギ・ユウ神からの神託なのだ」
神託?予言みたいなものなのか?
「ダンジョンに挑んではいけない。お前にとって大切な誰かを失う事になるから。そして何より、自分の命を落とすことになるから......だそうなのだ」
...大切な誰かを失う。そして、命を落とす。
ダンジョンとは、それほど危険なものなのか?
それと...
「何で、このタイミングで言ってきたんだ?ロリ神、お前は何を知ってるんだ?」
「わたしは、キサラギ・ユウの全てを知ってるのだ。今も過去も未来も全て知ってるのだ」
何言ってるんだ?こいつは。
「今は、分からないと思うのだ。この言葉が理解出来るようになる時は、多分全てが終わってるのだ」
「答えろ!!お前は、一体、誰なんだ?...」
「わたしは、キサラギ・ユウ、お前だけの為に作られた神なのだ。だから、お前の事も知っているのだ。お前の悲しい過去も、これから始まる過酷な運命も全部知ってるのだ。お前が幸せならわたしも幸せだ。お前が辛いなら、わたしも辛い。そして、お前が死んだら...わたしも死ぬのだ」
ロリ神の口から答えられた、その言葉に驚く事しか出来なかった。
「...実は、この事はお前に言ってはいけないと、言われているんだったのだ」
そして突然、ロリ神は胸の前に手を当て、苦しそうにし出した。
「だから......ダンジョンに行くのは、やめるのだ。わたしは、お前に......死んで欲しくないのだ」
ロリ神は、その場に倒れる。
俺は、地面に着く前にロリ神を抱える。
「なんで、こんなことを言った!!お前、こうなることが分かってて俺にこんなことを言ったんだろ!!」
そして、ロリ神は辛そうに、笑いながらこう言った。
「...これで、お前が死なない未来になる可能性が...1%でもあがるなら...わたしは、嬉しいのだ」
「どうして、俺の為にここまでする!?」
「...ユウ。最後に会えて良かったのだ。...これでわたしも悔いが残らない...最後にあの時みたいに...呼んでくれないか?」
足の方がもう消えかかっている。
そして、ロリ神は、ステータスを出して俺に見せる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前 : トウサカ・サヤ
性別 : 女
種族 : 神
レベル : ???
体力 : ???
魔力 : ???
物理攻撃力 : ???
魔法攻撃力 : ???
物理防御力 : ???
魔法防御力 : ???
素早さ : ???
運 : ???
~スキル~
偽装
~固有能力~
???
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「......サヤ」
それは、無意識に出た言葉だった。
「...やっと...見つけてくれたね...ありがとう...ユウ」
嬉しそうに微笑むその顔には、涙が流れていた。
そして、そのまま消えていく。
「待ってくれ!!」
抱えていた感覚がなくなっていく。
光の粒子になって消えていく大切なものを捕まえようとしても、この手は、何も掴むことが出来なかった。
そしてロリ神、逢坂沙弥は消えいった。
椅子だけが強く強調されている何もない部屋には、ただポツンと泣いている少年が居るだけだった。
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