貴方に贈る世界の最後に
第45話 魔境へ
鬱蒼とした森の中を進んでいく。
薄暗い森の中には、さまざまな声が聞こえてくる。
そして、目の前にもその声の主が居た。
「グギャャャ」
醜悪な笑みを浮かべて笑っている、ゴブリンだ。
ゴブリンと言っても、普通のゴブリンのような小さな体格ではなく......ゴツゴツと、筋肉が隆起している。
身長も2メートル以上あり、同じゴブリンだとは思えないものだった。
しかも、そのゴブリンは、周りを見た限り30体以上は居る。
俺達を囲む形で、陣形をとっている。
「ねぇ、ユウ」
「なんだ、ノア」
「ゴブリン達が嫌らしい目で見てくるんだけど......消し飛ばしていい?」
「あ、ああ」
「『フレア・ストーム』」
そう、ノアが魔法を唱えた瞬間。
俺達の周り以外に炎の竜巻が発生する。
その炎に触れた瞬間にゴブリン達は、消えていく。
それほどの高い威力でノアの魔法が放たれていた。
炎を森の中で使ったにも関わらず、周りには火が広がっていない。
どれ程の高温で焼かれればそうなるんだろうか?
俺達の足の周りだけが綺麗に残っている。
周りを見渡すと、黒く焦げて炭化した木々があった。
「ん、これで綺麗になったね」
「ノアさん、怖いです。今後、怒らせないようにしよう...」
「...うん」
と、二人はそんな事を言っている。
ノアが本気を出して魔法を使うことは少ないだろう。
本気で使わないと倒せない、それほどここの魔物達は強いのか?
それなら、これから先の道は大変になるだろう。
「ノア、無理はするなよ」
「ふふっ...ユウには、分かっちゃったか...ありがとう」
この森でのゴブリンは、多分一番弱い魔物だろう。
入り口の近くにいたのが何よりの証拠だ。
なら、奥に進んでいけばもっと強い魔物が居るんじゃないか?
三人には、負担が大きいだろう、俺が頑張らないとな。
名前に魔境と入ってるだけあって、ここの相手は手強いようだ。
気を張っていかないと、俺達かやられる。
そう、感じた。
しばらく、進んでいくとまた、目の前に敵が現れる。
今度姿を現したのは、大きな狼。
「なんで、こんなところに...」
アイリスは、驚いていた。
その言葉は、大きな狼の魔物に対してではなく、まるで知っている魔物が居るような感じだった。
「あなたは、お父様の所にいたんじゃないの?ねぇ、お父様は、どうしたの?」
そして、狼から低い声が聞こえてくる。
「魔王様は、今は大事な仕事をしている最中です。アイリス様、ここで引き返してくれませんか?」
「僕は、お父様に会いに来ただけなんだ、通してくれないかなフェンリル」
「アイリス様の頼みでも、お通しする事は出来ません」
「どうして!?」
「魔王様からの命令です。キサラギ・ユウをこの城にに入らせてはいけないと」
「ユウさんを......どうしてなの、お父様...」
どうやら、俺は魔王と会ってはいけないらしい。
どうして?そんな事を考えても理由は分からない。
でも、これだけは確信をもって言える。
魔王は、何かを隠している。
魔王城には、俺が出会ってはいけない、誰か《・・》が居る。
「なぁ、そこの狼」
「なんだ、人間」
「俺は、どうしてもここを通りたいんだ。退いてくれないか?」
今、出会ってはいけない誰かが居る。
ならば、俺はそいつに会わなければいけない、そう思うのだ。
何か嫌な予感がするからだ。
「そんな頼み、聞くわけないだろう」
「じゃあ、力ぞくでも通る。と、言ったら?」
「ユウさん、駄目です!」
その狼は、笑う。
裂けた口を大きく開き鋭く尖った歯を見せる。
「やれるなら、やってみろ!!人間!!」
そして、俺とフェンリルの戦いが始まった。
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