貴方に贈る世界の最後に
第44話 動き出す運命
俺はどうやら寝てしまって居たようだ。
そろそろ、起きないとな...
目を覚ますと、目の前にはノアが居た。
そして、後頭部には柔らかい感触。それと何かいい匂いがする。
これは......膝枕!?
「ん、ユウ、動かないで...くすぐったい」
初めての感覚に心臓の鼓動が早くなる。
顔が熱くなっていくのが分かる。
「ふふっ、赤くなってる。可愛い」
そう言ってノアは、微笑む。
唇の間から見える八重歯が可愛い。
無理だ、耐えられない。
俺はすぐに飛び起きる。
ずっとしてもらいたいと思うけど、今は別の事がある。
ノアは、残念そうな顔をしながら立ち上がる。
「ノア、ごめん。それと、ありがとう」
「ん、私も。ごめんね」
そんな言葉を言って、二人で笑いあう。
ノアが居る、それだけで幸せな時間が過ごせる。勿論、ここにいる誰かが欠けたら、こんな風に笑いあえないだろう。
大丈夫、そんな未来は来ないと信じている。
何より、俺がそんな未来を打ち壊す。
全員が揃っているという、今の時間を大切に守らないとな。
それと、今は気になる事がある。
「そういえば、ノア」
「何?」
「俺が最初に見付けた、ノアの形をしたものって何なんだ?」
あの時、実際に俺が目にしたのは、間違いなくノアだったはず。
「あれは、21階層から出てくる魔物で、『変身』って言うスキルを持ってる。その魔物は、戦っている相手と同じ姿になるっていうものなの」
だから、ノアが二人居たのか。
「それと、ユウ。ダンジョンに入るなら、こういう情報もしっかり把握してないと、危険な目に会うよ」
「次からは、気を付ける事にするよ」
「次から?今からダンジョンクリアを目指すんじゃないの?」
「ああ、ダンジョンに挑むのは全てが終わったあとだ」
「うん、分かった」
アイリスの問題がまだ残っているし、その問題はなるべく早く解決しておきたいと思っている。
魔王にも一度会ってみたいしな。
「よし、それじゃ行きますか」
「「「おーーー」」」
「あれ?三人はいつの間に仲良くなったんだ?」
「内緒です」
まぁ、仲良くなるのは良いことだ、セツカも二人と話は出来てるし、心配は無いだろう。
俺達は、ダンジョンを下っていく。
20階層には、地上に転移出来る魔方陣が置いてある。
それに乗って俺達は地上に戻ってくる。
ダンジョンの中には無かった、太陽が眩しく輝いている。
俺がユニークモンスターの件を解決したことで、すぐにダンジョン内に入っていく冒険者達がいる。
なるべく目立たないように、冒険者の群れに隠れながら近くの森まで向かっていく。
町の中で、セツカが見つかったら大変だから、ノアに『偽装』をかけてもらっている。
周りから見れば普通の人に見えるだろう。
そして、俺達は騒がれることなく、目立たない場所までくることができた。
「ふぅ、何とかここまで来たな」
「ユウ、安心するのはまだ早い」
「ああ、そうだな」
まだここは危険だ。
転移魔法があれば楽なるだがな、そんな便利なものも無いだろう。
歩くしかないか。
「...ユウ...ここから歩くの?」
「まぁ、そうするしか無いしな」
「...転移すればいい」
「え?セツカは、転移魔法を使えるのか?」
「...来たことがある場所と...見える場所だけ」
確かに、ダンジョンの中で突然出てくるには、転移魔法が必要か。
見える場所...か。
「アイリス、魔王城ってどこの方角にある?」
「えっと、あっちです」
アイリスはそう言って、指を指す。
「分かった。じゃあセツカ、こっちに来てくれ」
セツカを近くまで呼び、俺はしゃがむ。
「......?」
「おんぶして行く、俺の背中に乗ってくれ」
そう言うと、セツカはうなずいて俺の背中に体重を預ける。
背中に感じる、凶悪な二つの物体があるが...今は耐えないと。
「今からセツカをおんぶして、魔王城まで行ってくる。すぐに戻ってくるから待っててくれ」
「はーい」
「セツカさん、行ってらっしゃい」
「周りには気を付けるんだぞ」
俺は、そう言って足に力を込める。
セツカに負担を与えないような力で地面を蹴って進んでいく。
「...すごい早い」
「大丈夫か?」
「...うん...もっと早くてもいい」
意外と楽しんでるのかな?
今は振り向けないけど、何だか楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
ダンジョンから出てから初めて外に出たんだ、色々と思うこともあるだろう。
「セツカ、今は楽しいか?」
「...うん...凄く楽しい...ダンジョンでは...こんな事無かった」
「そうか、それは良かった」
「...ユウのおかげ...だよ...ありがとう」
「俺は、当然の事をしただけだ」
「...うん」
周りの景色は、すぐに変わっていく、森を抜けて、荒れ地を抜けて......
そして、高い木が多く生えている森についた。
今までとは明らかに雰囲気が違う場所。
ここから先には、行けないかな。
「ここまでにしよう」
「...分かった」
セツカは、すぐに魔法を唱え始める。
俺の耳にはよく分からない言葉が、聞こえてくる。
そして、その呪文が終わると、俺とセツカの足元に大きな魔方陣が出てくる。
そして、一瞬にして景色が変わる。
さっきまで居た、森の中に戻ってきていた。
周りにはノアとアイリスが居て、驚いていた。
「お帰りなさい、ユウ」
「あの短時間で、もう魔王城まで行ったんですか?」
「ただいま。それと、まだ魔王城には着いてないんだ。向かっていった先に大きな森があったから、そこで引き返してきた」
「大きな森......『魔境の森』ですか、あの森は強い魔物が多く居て厄介なんです。僕も家から出たときには、避けて通りました」
「まぁ、とりあえず行ってみるか。セツカ、頼む」
「...うん」
そして、また俺達の足元に大きな魔方陣が出てくる。
景色が変わり、目の前には大きな森が広がっている。
本当に転移魔法は、便利だなと思った。
「おお、ここが...」
「ユウさん、ここを抜ければすぐに魔王城です。でも、その分危険で...」
「それは、アイリスが決めてくれ。俺はこの道でもいいぞ。それに、早く会いたいんだろ」
「はい」
「決まりだな、みんなもいいか?」
「勿論。どれだけ強いのかちょっと腕試しもしたいしね」
「...それで...いい」
「よし、行くか」
俺達は、また新たな冒険をする。
危険な道へと足を踏み入れる。
だけど、少し楽しみだな...どれだけ強いんだろうか?
少しの期待を抱きながらも、進んでいく。
「貴方に贈る世界の最後に」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
1,391
-
1,159
-
-
3万
-
4.9万
-
-
450
-
727
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
14
-
8
-
-
27
-
2
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
398
-
3,087
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
104
-
158
-
-
2,534
-
6,825
-
-
65
-
390
-
-
1,000
-
1,512
-
-
10
-
46
-
-
116
-
17
-
-
3
-
2
-
-
7,474
-
1.5万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
187
-
610
-
-
83
-
250
-
-
10
-
72
-
-
86
-
893
-
-
477
-
3,004
-
-
218
-
165
-
-
4
-
1
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
29
-
52
-
-
18
-
60
-
-
9
-
23
-
-
17
-
14
-
-
7
-
10
-
-
6
-
45
-
-
47
-
515
-
-
4
-
4
-
-
83
-
2,915
-
-
33
-
48
-
-
71
-
63
-
-
6,199
-
2.6万
-
-
2,860
-
4,949
-
-
3,224
-
1.5万
-
-
614
-
1,144
-
-
265
-
1,847
-
-
213
-
937
「ファンタジー」の人気作品
-
-
3万
-
4.9万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
1万
-
2.3万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
9,545
-
1.1万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
9,173
-
2.3万
コメント