貴方に贈る世界の最後に
第38話 異常との遭遇
かなり進んで来たが景色は変わらないままだ。
現在、俺達は10階層にある豪華な装飾のしてある大きな扉の前まで来ていた。
勿論、その扉も凍っている。
ここは、ボス部屋かな?
このダンジョンでは、10階層上がっていくごとに、このような部屋があるらしい。
部屋の中には強い魔物が発生していて、一度入ると出られないと言うよく分からない仕組みになっているらしい。
今、扉の前にいるのだが、どうにも様子がおかしい。
閉まっていて開かない筈の扉が少し開いているのだ。
そして、その隙間から中を覗くと...
全身真っ白な鎧を着た人形の何かと、3メートルぐらいはあるゴブリンが戦っていた。
いや、一方的に虐殺していた。
ゴブリンが身長と同じぐらいの大きな剣を降り下ろす。
だが、突然地面から生えてきた氷の柱に止められる。
そして、そのまま剣を伝って氷が浸食していく。
危険を察知したゴブリンは、剣を手離し距離を取る。
ゴブリンが居なくなった場所には、剣の刺さった氷の彫刻が出来ていた。
一方的にやられて怒ったゴブリンが真っ白な鎧に飛び掛かっていく。
だが、ゴブリンがその鎧に触れるまでもなく氷付けになる。
もう、動けないゴブリンに対してその鎧は、空中から大きな氷の槍を出して突き刺す。
3メートルの氷の彫刻が赤く染まっていく。
そして、ゴブリンは力尽きた。
あの鎧がこのダンジョンの異変の犯人だろう。
あれほどの力を持っているのになぜこんなことを?
考えても分からない。
とりあえず、あの鎧を止めないとな。
凍り付いた扉を軽く蹴る。
すると、蹴った大きな扉はブレーキを失った自転車のように吹っ飛んでいく。
そして、白い鎧に.....
当たる前に空中で凍り付いて止まった。
これで決まれば楽だったんだけどな、そうさせてはもらえないらしい。
この鎧は、本当に強いかもしれない。
油断したらこちらが殺られそうだ。
「アイリス、ここで...」
「僕も、戦います。ユウさん、僕だって戦えるんですよ。これでも魔王の娘ですから!!」
頼もしい限りだな。
じゃあ......
「行くぞ、アイリス」
「はい!!」
元気のよい返事と共に俺は飛び出した。
それと同時に、鎧に向かって雷が落ちた。
対応できなかったその鎧は、雷が直撃する。
これは、アイリスの魔法。
魔王の娘だけあってかなりの威力の魔法が打たれる。
威力だけで言えば、ノアよりも少し弱いぐらい。
それでも、雷の魔法は攻撃速度が早い。
痺れている鎧に向かって拳を振るう。
全てを砕く一撃が、その鎧に届く。
当たった一撃は、相手の鎧を粉々に砕き、数十メートル先の壁に埋め込ませた。
まずい...
すぐに、後ろを向くと、アイリスの後ろに真っ白な鎧が立っていた。
俺が殴ったあの鎧は、氷で作られた、ただの囮だった。
殴った感覚が無かった。
一瞬だけ200%の力を使ってアイリスと鎧の間まで向かう。
地面を思いっきり蹴ってもダンジョンの地面は壊れなかった。
どうやら、絶対に壊れないようになっているらしい。
その事に感謝しつつ、アイリスに降り注ぐ氷の槍を砕いていく。
何十本もの槍を全て砕き今度こそ、その鎧に拳を打ち込む。
目の前に突然出てきた氷の壁を貫いてその拳が鎧に届く。
確かな感覚と共に拳を振り抜く。
そして、現わになった鎧の中身は...
魔物などでは無く、そこに居たのは人間だった。
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