貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第33話 二人の物語


 どれだけ願っても叶わない願いがある。

 そんな事、言われなくても分かっていた。
 前の世界が特別だっただけ。

 何でも叶うなんて馬鹿げていた。
 だけど、そんな願いを叶えて貰って今私はここにいる。

 大切な人にもう一度会いたかったからこの世界に転生した。
 大切な人とまた笑い合いたかったからこの世界に来た。



 じゃあ、目的を失った私はどうすればいいの......


 どこに行ったって私は一人。
 ユウが居ないと、私......


 「生きられない」


 何も言わない大切な人を胸に抱き締め、空を見上げる。

 私の心とは裏腹に、どこまでも綺麗な青空が広がっていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 俺、キサラギ・ユウは、死後の世界? に来ていた。
 『悪魔』によって殺されてから意識がなくなった。

 もう、目覚めないと思っていたのだが...
 俺は俺としてここにいる。
 意識がある。

 そして、今俺が居る所は、少し知っている気がする。

 なぜなら、前の世界で二回体験したことだからだ。
 変な神様が居る部屋に連れて来られるということは、これで三回目だ。

 勿論、目の前に居るのは、ロリ神ではなく。
 いかにも神様って感じの髭を生やした、お爺ちゃんだった。

 『誰が、ジジイじゃと?』

 おっと、このお爺ちゃんも心が読めるようだ。


 ......なら、俺が言いたいことも分かるよな。


 『無理じゃ、お前を生き返らすことは出来ない』

 じゃあ、どうすれば俺をあの世界に戻してくれるんだ?
 俺は何でもするぞ。


 『ホッホッホ、いい心掛けじゃ。まぁ、お前を生き返らすことは出来ないが、同じ体に転生させることなら出来るぞ。まぁ、お前の体が無事だったらじゃがな』

 なんだ、それなら大丈夫じゃないか。

 『ほぅ、その自信はなんじゃ?』

 俺の口角は自然とつり上がる。

 「ノアが居るから」

 何も疑う必要はない。ノアなら、俺が帰って来るって信じてる気がするんだよ。
 俺はただ、その期待に答えるだけだ。

 「さぁ、俺は今から何をすればいい」


 必ず、ノアの元に戻る。
 そして、告白の答えを聞くんだ。

 『面白いのう。じゃがな、そう簡単に願いを叶えられると思うなよ』

 「ああ、どうなものでも越えてやるよ」

 ノアの為なら俺は何だって出来る。

 お爺ちゃんの顔が神様としての顔に変わる。
 そして......

 『キサラギ・ユウ。私がお前に出す試練は...』

 とても神様とは、思えない笑みを浮かべてこう言った。

 『我が作った、《ランキング》というシステムで一位を獲得して見せろ』


 ......は?

 《ランキング》を作っただと...



 少年が一歩、世界の真実に近づいた瞬間だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「ねぇ、ユウ。私は待ってるからね」

 いつまでも、何年たっても。
 また、目を覚ます事を信じて待ってるから。


 その時に、側に私が居なくても泣かないでね。


 私は、覚悟を決めた。
 ユウのやろうとしていた事を私が引き継ぐ。
 ユウが目を覚ますその時まで。

 私がこの世界を変える。


 「アイリスちゃん、ユウをお願い。絶対に傷付けないでね。その時は、アイリスちゃんでも殺したちゃうかも知れないから。お願い」

 「ノアさん、ユウさんは死んだんですよ。何で...」

 「私は、ユウを信じてるから。絶対にユウは目を覚ますってね」

 そう、アイリスちゃんに言い残して...
 私は、走り出す。


 クリアすれば、願いが叶うと言われている『願望の塔』へ。

 ダンジョンの100階を目指す。



 少年と少女は、動き出す。
 お互いを信じ合って。


 新しい道へと走り出す。


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