貴方に贈る世界の最後に
第28話 旅の途中
今、俺達は魔王城に向かっている。
この旅での俺の目的を整理しておこう。
まず、最優先は二人の命を守ること。
魔王城に、向かうなら色々なモンスター達が居るだろう。
それに、その中に強いモンスターがいるかもしれないし、俺の攻撃が通じない相手も居るだろう。
打撃が通じない相手や、幽霊みたいなモンスターが居るかもしれないしな。
俺はまだ、力を解放した時の魔法の加減が出来ていない。
周りに何もなくて広いところならいいが、それ以外の場所では魔法は使えない。
その時は、ノアに任せるとしよう。
そして、二つ目。
力の使い方を覚えること。
やはり、魔法の特訓が最優先になるだろう。
幸い近くにはノアと言う、魔法の先生が居るわけだし...後で頼んでみるかな。
力を上手く使いこなしたら、ダンジョンに行こうと思っている。
俺の力がどれ程の者なのかというのも気になるところだが、本当の目的はダンジョンをクリアすることだ。
そして、最後の1つ。
魔王と無事に出会うこと。
この三つのをやっていくとしよう。
.....と、俺的には結構覚悟を決めて来たんだが...今まで、出会ったモンスター達は、どこにでもいるスライムやゴブリン、などといった弱いモンスターばかりしか出てこなかった。
まぁ、危険が無いことは良いことなのだが...少し暇だ。
そんな、時間でも、三人いれば色々と話が続くのだが...
大体の話の話題は、俺の元いた世界の事だった。
「ねぇ、ユウ。元の世界って、どんなところだったの?やっぱり、危険な所だった?」
と、ノアが質問してくる。
それに続いてアイリスも、
「僕も気になります。ユウさんは、何でこの世界に来たんですか?」
こんな事を聞いてきた。
元の世界か...
「平和な世界だったよ。魔物も居なかったしな」
「え?何でそんな平和な世界から、こんな世界に?平和なら何も問題が無いんじゃ...」
「アイリスちゃん。たぶん...平和だったからだと思う」
「?どういうことですか?」
ノアは、何となく分かってるみたいだが、アイリスは分かっていないようだ。
「じゃあ、アイリスちゃん。例えばこの世界が、争いもなく、魔物もいない世界だとする。そんな、世界では戦う力は必要ない。でも、ユウみたいな凄い強い力を持った人がいたら...どう思う」
「...すごく、生きずらいと思います」
「まぁ、そういうことだ。だから...」
「えっと、ユウさん。1つ質問があります」
急に、アイリスが近づいてきた。
「ユウさんは、元の世界からその力を持っていたんですか?」
「ああ、そうだよ」
「いえ、てっきり『転生者』の力だと思っていたので...」
「アイリスちゃん、それはユウと、あいつらが一緒ってことかな?」
珍しく、ノアが怒っている。
「え、すみません。ユウさん、そういうわけじゃ」
「良いよ、分かってるから。ノアもそれくらいで」
「分かった」
と、そんな会話をしつつも緑が広がっていた平原を抜け、少し荒れている大地がある場所についた。
しばらく進んで行くと大きな渓谷があると、アイリスがいっていたんだが、そこは、どうやら...
魔物の巣窟だった。
これは、少し前に俺がやらかしたことだが、
渓谷に着き、どうやって渡ろうかと、考えていた時。ふと、その渓谷を除くと、かなり深かったようで真っ暗だったのでどれ程深いんだろうと思って、小さい『フレア』を作って渓谷に飛ばしたら...
ガサガサガサ
と、そんな音がした。
『フレア』の明かりを頼りに、その音がしたところを見ると...
壁いちめんに、虫達がくっついていた。
そう、この渓谷は虫型のモンスターが大量に住み着いていたのだ。
『フレア』に反応した虫達がこちらに向かってくる。
黒の波が壁を這い上がってくる。
ぞくっと鳥肌がたった。
これは、今まで生きてきた中で一番の恐怖体験かも知れない。
「ノア!!空に逃げるぞ!!」
魔法を使って空に飛ぶ。
逃げられたか...と、そう思っていたとき。
「うわっ、マジかよ」
これは、トラウマになりそうだ。
黒い虫達は、空に飛んできた。
ブーン、ブーン
と、嫌な音がこちらまで近づいてくる。
「ユウ!!あれを倒して。加減はいらないから!!」
「分かった」
そして、俺は力を解放する。
全身から力が溢れだし、目が赤く変わる。
今回は、全力。100%で虫達を跡形もなく消してやる。
魔法を唱える。
使う魔法は、ノアに教えてもらった範囲魔法。
それを俺が使えばかなりの力になるはず。
『インフェルノ』
発動した瞬間。辺り一面が火の海に変わる。
勿論、虫達は跡形もなく消え。
後に残ったのは、焼けた大地だった。
「ユウ、虫型の魔物は多くの種族が嫌っている。だから、これぐらいは許される」
森の中で発動していたら、もっと被害が大きかっただろう。
これは、本当に魔法の制御が必要だな。
だけと、やったことに後悔はしていない。
なんとか、助かったようだ。
これからは、無闇に魔法を使うのをやめようと、決意した。
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