貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第24話 目覚め


 あれから、一日が経過した。
 まだ、ベットから動かないノアを看病する。

 目だけが世話しなく動いている様子を見ると、元気なんだろうか。

 ギルドマスターは匿ってくれているが、このまま起きない可能性もあるのだ。
 ずっと、ここにいるわけにもいかないだろう。

 お金だって必要になってくる。
 ギルドで冒険者として働かないとな...

 そんな事を考えながら部屋を出ようとすると、

 「ユ...ウ」

 と、聞こえた。
 ここの部屋の時間が止まったような気がした。

 一日喋って無いからか、少しガラガラとした声だったが、間違いない。
 いつも側で聞いていたあの声だ。

 俺は振り向いて、ノアを確認しようとすると

 「あれ?居ない...」

 ベットから姿を消していた。
 どこに行ったんだ...ノア。

 すると、

 背中に誰かの暖かさを感じる。

 「ユウさん、しっかりしてください。何で誰も《・・》居ないベッドに居るんですか?」

 「え?」

 「もう、ノアさんは......居ませんよ」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 目が覚める。

 嫌な夢を見た。
 ノアが居なくなった世界の夢。

 どうやら俺は、ノアの看病している途中で眠ってしまったようだ。
 ノアが寝ているベッドを確認する。
 そこには、座っているノアが見えたので、ひとまず安心する。


 ......座っている?あれ?ノアは、寝たきりだったはず...


 「おはよう、ユウ」

 目の前の少女は、動いている...
 確かに口が動いて喋っている。いつもの笑顔が見える。

 「ノア...良かった。本当に良かった」

 感動のあまり、ノアに抱きついてしまう。
 もう、動かないかもしれないと思っていたノアが動いている。
 優しく抱き返してくれる、暖かい手がある。

 「ごめんね、ユウ。心配かけちゃったね」

 「もう大丈夫なのか?」

 「一日分寝てたから、元気一杯だよ。有り余ってるぐらい」

 「そうか、良かった」

 「うん、でもユウには言いたいことがあるの」

 「え?」

 「私、頑張ったのに誉めてくれなかった。それと、もっと私達の事を考えてくれるとうれしいかな。仲間なんだから、頼ってくれないと困ったちゃうよ。ユウは、もう一人じゃないんだから」

 「ごめん」

 「ふふっ。よろしい。それと、もう1つお願いがあるんだけど...いいかな?」

 「あぁ」

 「血を吸わせて」

 ......え?
 何言ってんだ?

 「今まで、ノアが血を吸ってるところなんて見たことないんだけど...」

 「えっと、それは前にも言ったけど、こっそりと吸ってたんだけど、今回は、一日ずっと寝たきりだったから、ちょっと我慢出来なくて...」

 多分、俺が寝ている時にでも吸っていたんだろうか?
 傷口が残ってないから分からない事だが...
 もしかして、いつも吸われていたんだろうか?

 そう考えると、ちょっと寒気がする。


 まぁ、今回は俺のせいでこんな事になったんだし、それぐらいはいいかな。

 「分かった、いいぞ」

 と、言った瞬間に首に噛みついてきた。
 腕に...チクッと痛みが走る。
 ザラザラした舌で傷口を刺激して血を出させている。

 頬を赤くして夢中で吸っている彼女を見ると、俺の血はそんなにおいしんだろうか?と思う。

 自分の血なんて吸ったこと無いし、吸おうとも思わないからいいんだけれど。

 しばらくして、ノアが吸うのを止める。

 「ふぅ、ごちそうさま」

 そう言って、自分の唇をペロッと舐める仕草は、少し子供っぽく見えた。



 どうやら、元気になったみたいだ。
 元から元気はあったが...

 さて、

 「ノア...」

 「ん?」

 「俺は、これからもノアを守り続ける。互いに助け合う関係を続けていきたい。だから、もう一度俺のパートナーになってくれないか?」

 「はい。これからもよろしくね、ユウ」

 「よろしく、ノア」

 俺達は、もう一度ノアの手をとって、小指を繋ぐ。

 今度は、離れないように強く。
 それに答えるように、ノアも強く握り返してくれた。


 今日、また1つ大切な約束が出来た。

 大切な人と結んだこの手で戦う。
 誰か大切な人の為に...


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