貴方に贈る世界の最後に
第25話 いつかきっと...
さて、ノアも起きたことだし出発するか。
目的がある訳じゃないが、ずっとギルドにいるわけにもいかない。
「ノア、これから大変な事があるかもしれない。それでもついてきてくれるか?」
「勿論。私は、ずっとユウの側に居るよ!」
俺には目的が無い。
でも、アイリスには目的がある。
アイリス自身は自分で解決すると言っていたが、一人ではどうにもできないだろう。
なら、少し手伝うぐらいは許して貰うかな。
アイリスを呼んで今後の方針を決める。
王都に着く前に倒した魔物の事がある。
あれの事でアイリスは悩んでいたとノアに聞いた。
どうやらこの世界で魔族、知性のある魔物は魔王によって管理されていて、人間に害を与えないようにしているらしい。
だから、あの魔物が人を襲ったのは何らかの原因がある。
そう思って魔王城に行くことに...なった。
アイリスが自分から話してくれた事なのだが、どうやらアイリスは魔王の娘らしい。
かなり驚いた。
魔王と言えば、ゲームの最後に出てくるラスボスみたいな役割。
と言うか、この世界に魔王がいると言うことに驚いた。
本当にゲームの中の世界みたいじゃないか。
それと、アイリスはこんなことも話していた。
「僕が、魔王城を出たのは...ユウさん、貴方みたいな人を探すためでした」
「俺みたいな?」
「はい。魔族でも、関係なく平等に接してくれる貴方みたいな存在が僕には必要だったんです」
「だった...か」
「今では、ユウさんなら少しは大丈夫ですが、他の人間に触れられるのが怖いんです。そんな僕には、ユウさん貴方だけが希望なんです。人間と魔族の架け橋になれる存在なんです」
「俺は、どんな事情があってもアイリスは助けるつもりだ。俺が必要なら協力する。俺は、もう仲間だと思ってるからな」
「ありがとう...ございます。ユウさん、貴方ならいつかきっと...この世界を変えてくれると信じています」
「おう、それじゃあ改めてよろしく。アイリス」
俺は、手を差し出す。
握手。信頼の証だ。
アイリスは、少し震えた手で俺の手を握った。
強く握り締めるその手には、何かの力がこもっているように思えた。
「これで、夢の始まり。第一歩です」
本当に嬉しそうに笑うその顔は、みた目通り子供っぽく見えた。
周りの誰もが笑っていられる世界。
俺も自分の夢に向かって一歩踏み出す。
誰も悲しまない世界。
そんな夢を見て...
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
少年少女は、歩き始める。
それぞれの夢に向かって一歩を踏みしめる。
だけどそれは.......もう、二度と戻れない現実を見る事になる。
まだ気付かない少年少女は、歩き続ける。
先など全く無い、闇の中を...
必死になっても取り替えられない真実を、まだ知らない......
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