貴方に贈る世界の最後に

ノベルバユーザー175298

第6話 前へ...

 取り敢えず、これからのことを考えなければならない。
 まずはこの森から出る方法。
 それと食べ物などかな。

 「ノア、この森から出るにはどうすればいいんだ?」

 「...もうこの森から出れるよ」

 「...ノア、日本語でおk」

 俺は人生で初めてこの言葉を使った。

 「...?、ユウ、何言ってるの?」

 話を聞いたところ、あのゴーレムが封印を解くための鍵だったようで、俺が倒してしまったから、もう出れるらしい。

 ...ちょっと待てよ。ノアは、あのゴーレムを俺に倒させるつもりだったのか?どう見ても普通の人間の俺に?

 「なぁ、最初に会ったときに、俺の力を知らなかったのにあのゴーレムを倒すような約束をしたのか?」

 「だ、だって...寂しかったんだもん。話相手が欲しかったんだもん。ゴーレムのことを言えばずっとここに居てくれると思ったんだもん」

 頬をぷっくりと膨らませながら言っている。
 ...可愛い。だが、普通の人間にゴーレムの相手をさせるとか、俺じゃなきゃ死んでたな。

 まぁそれは、置いといて。食べ物のある場所を探さないとな

 「ここら辺に、食べ物のある場所とかある?」

 「ここには、無いと思う。私には、食べ物は必要ないからよく分からないけど。でも、この森から出れば村があると思う」

 100年前のことだから村があるかわからないが、今は、行くしかないな。



 森を出るために歩いているとき。また、スライムが現れたりした。
 ちょうどいいので魔法の練習台になってもらったりしていながら森を歩いていた。
 魔法を教えてもらいながら練習していたのだがやっぱり難しい。どうやって外に力を出すのかが分からない。

 体の中にある力を外に出すと言われてもよく分からない。
 体に無い間接を動かすような感覚だ。

 しばらく、やっていると何となく手のひらに力が集まって行くのを感じた。
 魔力は少し温かく、重く感じる。

 そして、1日たってようやく一番簡単な『ライト』と言う、光を出すだけの魔法を覚えた。

 ほんの少しだけの小さな光でも、嬉しさが溢れだして来た。
 誰もが憧れる魔法を使う事が出来たのだ。
 これほど興奮することも無いだろう。


 まぁ1日歩いているが水は心配していない。ノアが水を創ることが出来るからだが、食料はどうにもならない。

 一日三食の食事を取っていた人がなにも食べていないのだから結構キツイ。

 「ユウ、大丈夫?」

 「ああ、まだ大丈夫だ」

 そう言っているが結構ヤバイ。


 それからまた、1日たった。
 俺は、その場に倒れてしまう。

 「はぁ、はぁ」

 体が熱い。ボーっとする。それに、歯が疼く。

 「ユウ...ユウ...」

 必死に呼ぶ声が聞こえる。


 ふと、思う。目の前にいるこの子の血は美味しそうだな...と。白い肌、綺麗な首筋.....ドクドクと心臓の鼓動が早くなる。

 血、血が欲しい、俺の乾いた喉を潤す血が。満たされたいという感情が頭の中を支配する。目が熱くなってくる。息が荒くなる。

 「はぁ...はぁ...」

 「ユ...ユウ、大丈..」

 俺は目の前に写っている、その子を押し倒してその綺麗な首筋に噛みつこうと...

 「ぐっ...」

 ポタ...ポタ...
 その前に自分の唇を噛んで何とか自分を押さえつける。

 「ごめん...ノア、気にしないでくれ」

 「ユウ...いいよ。私もその気持ちよく分かるから」

 ノアは、着ている服に手を掛けて、自分の首筋を出す。

 「...ノア」

 ゴクリ...と唾を飲む。そして、ノアに噛みつく。

 「っ...んっ...あっ...ユウ」

 ノアは、俺の服をぎゅっと握ってくる。足をピクピクと動かす。

 血というのを飲んだことがあるけど鉄の味しか感じなかった記憶がある。だけど今は違う、今までで、こんなに美味しくて、濃いものを飲んだことがない。いくらでも飲める気がする。
 体の中に染み渡る。疲れがすぅーっと消えていくのが分かる。

 「んっ...ユウ...もう...」

 そんな声が聞こえる。自分の下には、頬を上気させて目がトロトロしている美少女が目に入る。

 「はぁ...はぁ...ユウ」

 我にかえってすぐに、ノアから離れる。

 「ごめん、ノア」

 「いいの、ユウを吸血鬼にしちゃったのは私だから、その責任は取るつもり...それで、元気になったね、ふふっ」

 乱れた服を直す仕草も艶っぽい。
 見た目以上に綺麗に見える。

 「ああ、ありがとう」

 心配してくれたのだろうか。そうだったら嬉しいけどな

 「そういえば、ノアは、こういう風にならないのか?」

 そう問い掛けると、ノアは、足をモジモジしながらこう答えた。

 「そ、それは、こっそりと...ね」

 「え、俺が知らない間に何をしてるんだ?」

 「それは....ひ・み・つ」

 ノアは、人差し指を唇の前に出してそんな事を言った。
 これは、聞かない方が身のためだよな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 そんなことがあってから、暫くすると。平原が見えた。
 そこには、道もしっかりとあったのでこの近くに村や街があるのは確かだろう。
 後は、その道に沿って進むだけだ。


 ...これも、異世界の定番イベントだろうか?


 俺の目の前には、盗賊に襲われている馬車がある。だいたい20人ぐらいだろうか。
 これは、助けるべきだろうか?まぁ俺の答えはもう、出ているのだが...

 俺は、馬車まで近づく。そして

 「すいませーん、助けは必要ですか?」

 と言った。
 必要ないのに助けられても迷惑なだけだろう。もちろん、困っているなら助けるつもりだ。

 「だ、誰か分かりませんが、助けて下さい」

 馬車の中から、どこかのお姫さまのようなドレスを着た女の子が出て来て頼んできた。

 「分かりました」

 そう言って俺は、盗賊たちの前に行く。

 「なんだお前は」

 盗賊のリーダーのようなやつが言う。

 「ああ、俺か?俺は普通の人間だ」

 「「「「「...ぎゃはははははは」」」」」

 盗賊達が笑う。
 俺の後ろにいるノアも笑っていたのを俺は見逃さなかった。
 後でお仕置きだ。

 「おい、お前。俺たちが【幻影の月】だと知っているのか?」

 「知らないな」

 「本当に馬鹿みたいだな。俺たちのランクは最低でもBなんだよ」

 ランクB?...ああ、そう言えばノアが説明してたな。ランクはギルドに登録している者の称号みたいなものでE~SSSまであるみたいだ。そう考えると結構高いのかな?

 「どうだ、怖じ気づいたか?お前みたいな奴は精々ランクEだろうからな」

 ぎゃははははと、後ろの盗賊が笑う。
 俺の後ろからかなりの殺気が出てるので俺がやらないと、ノアが殺ってしまうだろう。

 仕方ないか。俺は、少し力を解放する。


 そして俺は、地面を殴った。




 ...手加減はしたんだが、地割れが発生したり。クレーターが出来たりした。


 「こうなりたくなければ、大人しくしろ」


 と少し脅してみたとたん。

 「ひ、ひぃぃぃぃぃ化け物だ」

 と言って腰を抜かしている。

 「お前。ランクAか?面白い」

 だが、盗賊の親分だけは俺と戦うようだ。
 盗賊達の中では一番しっかりとした防具を身に付けている。

 かなりまずいことになったな、俺は人に力を使えない。
 正確に言うと力を使っている状態で触れない。

 どうするかな....そうだ、魔法を使おう。
 取り敢えず、『ライト』以外にも魔法は覚えていた。現在の魔法系のステータスはSSぐらいだろうから充分いけると思う。


 ...試してみるか。


 『フレア』

 炎系の最下級魔法、普通の時は、マッチの火ぐらいしか出なかったけど...今は、どこかの闇の帝王が使うような、馬鹿でかい火の玉が出てきた。

 「...は!?」

 盗賊は驚いているようだが、俺も驚いている。

 「こ、降参だ。俺はまだ死にたくない」

 魔法を見たとたんに、降参した。

 どうやら、上手く納まったようだ。
 俺は、盗賊達を捕らえて縛っておく。一通り作業が終わったところで

 「あ、あの助けて頂き感謝します。私は、ミア・フォーサイスと申します。それで、助けて頂いたのに申し訳無いのですが街まで護衛してくれませんか?もちろん、依頼料は払います」


 と金髪で白い肌、綺麗なドレスを着ている。いかにも王女様みたいな見た目。


 すると、チョンチョンと俺の服を引っ張っているノアがいた。

 「ユウ、どうするの?」

 耳元に小声で話掛けてくる。

 「街までは行くつもりだったし、それでお金が貰えるならいいんじゃないかな」

 「ん、分かった。ユウがそう言うなら私も行く」

 取り敢えず、これからの方針は決まったかな。

 「その依頼、受ける事にします。ちょうど、街にも行きたかったですし」

 「ありがとうございます。街には夕方には着くと思いますのでそれまで、よろしくお願いします」

 いかにも偉そうな人の子供は威張っているイメージがあったけど全員がそういう訳では無いらしい。

 少し安心かな。これから行く街も平和だといいんだけど...




 

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