貴方に贈る世界の最後に
第7話 新しい世界で
しばらくすると、大きな壁に囲まれている街が見えた。
「結構、大きい街なんだな」
「100年でこんなに変わるんだ」
ボソッと、ノアは誰かに聞かれたらヤバイ発言をしてるけど誰も居なくて良かった。
今、俺達は馬車の後ろに付いて、護衛の依頼をこなしている最中だ。もうそろそろ終わりだが。
壁の近くまで行くと、検問みたいなのが行われていて、すぐには街に入れそうに無いかも知れない。
かなりの長い列が出来ていて、そう簡単には街に入れないだろう。
そんな事を考えていると馬車は、別の大きい扉のあるところへ向かう。
「そこから、入ることができるのか?」
「はい。貴族などはこちらの扉から入ることができるようになっています」
とミア・フォーサイスが説明してくれる。
この子は、盗賊に襲われている時に助けを求めた人物だ。
外で歩くには綺麗すぎるドレスを着ていて、とても普通の人には見えない。
この街には、身分によって違う扉があるのか...なんかそっちの道に俺達が行っていいのだろうか。
検問所に着くと、扉の近くにいる兵士が話しかけてくる。
「身分証を提出してく...し、失礼しました。ミア・フォーサイス様ですね。話は領主様から聞いております。どうぞお入り下さい」
「ありがとう」
優雅にそうやって笑う、ミアの動きは慣れているものだったのだろう。
兵士達が扉を押していく。
ギイィーーと大きな扉が開く。
そこには、新しい世界が広がっていた。
綺麗に並んだ家。大通りに出ている屋台。賑やかな街。様々な人種。中には人ではない種族もいる。
夢に見た異世界の町並み。一度は憧れてしまう景色。柄にもなく興奮してしまう。
「これは...すごいな」
「...ユウ...」
消え入りそうな声で俺を呼んだ。
 俺の服をちょんちょんと引っ張っている。
ノアは、震えていた。多くの人がいるところが、昔いた村と重なって見えてしまっているのだろうか。
「ノア、大丈夫だ。昔とは違う。それに、俺は言ったことは守り抜くから」
俺は、ノアの頭を優しく撫でる。安心させるように。
「うん」
「そうだな、手でも繋ごうか?」
冗談のつもりだったのだが...パーっと顔を明るくしてこちらを見ているので....仕方ない。
「じゃあ、行こうか」
「うん♪」
ノアの小さい手をとって街に一歩踏み入れる。新しい世界への一歩を踏み出す。
賑やかな道を抜け、少し大きな建物が並んでいる所に来た。
ここの、一角には貴族達が住んでいるのだろうか?
噴水なども置いてあって、静かで癒されるような場所だった。
そんな場所をぬけてしばらくすると...目の前には大きい屋敷があった。
馬車が止まったのは領主の屋敷の前だった。
「今回、助けて頂いた御礼をしたいのです。どうぞ、入ってください」
ミアが勧めてくれる。
「えっと、ノアどうする?」
「私は、ユウに着いていく。それに助けたのはユウだから、これはユウが決めること」
そう言われてしまったが、正直行きたくない。目立つことはしたくないんだけど、断り辛いな。
...よし
「分かりました。行くことにします」
そういう訳で屋敷の中に入ることにした。何か悪いことした訳では無いんだし変なことにはならないだろう...たぶん。
広くて綺麗に整備が行き届いている庭を抜けていく。
大きな屋敷の中に入ってみると
「ミア、大丈夫だったんだな。心配したんだぞ、馬車が襲われたと聞いて...あれ?ミア、小さくなったか?」
いきなり、おじさんが飛びかかって来たのだ。
それも、ノアのところに。
「お父様、ふざけてるんですか?」
おっと、横からすごい殺気が...それでも、顔は笑っているので怖い。本当に怖い。
「お父様、早く離さないと...」
ミアは、笑顔のまま魔法を唱え始めている。人を簡単に殺せるぐらいの力を込めている。
「わ、分かった。だから、本気で魔法を打たないで」
何だろう、この空気。
「うっ...ユウ...私...汚されちゃったよ。だから私を抱き締めて」
泣きながらノアは、変なことを言っている。
おじさんの抱擁でノアが壊れてしまった。
「ノア、大丈夫だ。落ち着け」
それから色々あったが、どうにか落ち着いた。
 
「それでお父様、こちらが助けて頂いた、ユウさんとノアさんです」
「あぁ、分かっている。娘を助けて頂き感謝する。ユウさん、ノアさん。...それと、先程は申し訳無かった」
素直に謝るあたりはしっかりとしている。あれも娘が助かった喜びで間違えてしまっただけだろう...たぶん。
「自己紹介がまだだったな。この街の領主をやっている。ローガン・フォーサイスだ。ローガンでいいぞ。それと、敬語もいらん」
こんな軽い感じの人が領主でいいのだろうか?街がちょっと心配になってきたぞ。
「私は、ミア・フォーサイスと申します。知っているとは思いますが。わ、私も、気軽にミアって呼んでくださいね」
まぁこういう人達と関わりを持つのは良いことだろう。この世界の事が分からない今、大切な存在だ。
「俺は、ユウって言います。ローガンさん、ミアさんよろしくお願いします」
「...ノアです。ミアさんよろしくお願いします。」
さっきのことを根に持っているのだろうか?ノアは、ローガンさんを見てぷっくりと頬を膨らませている。
怒っている用だが、美少女がやると相手を喜ばせるだけだろう。
「それで、娘を助けてくれたお礼がしたいのだが...何が欲しい?」
「お礼なら要りません。助けを求めた人を助けただけですから」
「...ユウさん...分かった。ならば困ったときに助けになろう。何も無しに帰すのは、こちらが困ってしまうからな」
「はい、ありがとうございます」
お礼を言って屋敷から出ていこうとしたら
「いつでも来て下さい。ユウさん、待ってます」
と、そんな言葉で見送られてしまった。
また、行かないといけないな。
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