えっ!?俺運命変えちゃった?~十三番目の円卓の騎士~

ノベルバユーザー150902

砦での生活が始まりました

 午前中は戦術についてなどの座学、午後になると剣術や魔術を用いた実践形式のトレーニングに励みガハラ砦での生活も一週間が経とうとしていた。

 そして今日は普段と違い朝からナガル教官の指示のもと森林地帯へと足を踏み入れた。
 
「今現在この国にとっての脅威となりえる存在は二つありますがシルバ殿下は分かりますよね?」
「はい、それは西方にある魔獣戦線と北方に位置するエルテーミス帝国ですね」
「正解です魔獣戦線とは西方地方のその先暗黒領域から襲来する魔族どもの国内進行を防ぐための要となる戦線のことです。そのおかげで過去に問題視されていた魔族による被害の報告は減りはしたものの、未だに国内に魔獣がいるというのが実態です。それは何故なのか実際現場にいて『魔獣殺し』の異名を持つカイル研修生にお話をして頂きましょうか」
「ナガル教官の話される通り、私たち魔獣戦線にいた騎士どもは魔獣進行を防ぎ西方地方の民の平和を担う一翼には為れたと自負しています。ですがどうしても魔瘴気クォーツが風に乗って国内に流れ込んでくるのを防ぐことは叶いませんでした」
魔瘴気クォーツは暗黒領域に蔓延する物質でその物質が生物に蓄積されることで生物は魔族へと変化されます。なお魔族は魔物・魔獣・魔人の三パターンに分類され、そのどのタイプもが並みの生物とは一線をかくす強さを要しています。そして今私たちがいる森林では魔物の目撃情報が相次いで報告されています。よって本日は研修の一環として討伐の任務について貰います」



 生い茂る草を掻き分けながら俺達十人は最深部へと足を進めた。
 班毎に担当地域が振り分けられる中、班にカイルさんが同行し剣術・魔術学院の成績上位者で構成されていたため最深部の地域が任された。万が一を考えての配慮からレイナ教官もついてきている。

「おかしい…ここまで来て魔物が一匹も見当たらない。レイナ本当に魔物はいるのか?」
「えぇそう聞いているわ」
「それにおかしいのはもう一つある、動物の姿が全くない」

 『魔獣殺し』の異名を持つカイルさんがこの森の異様な景色に疑問を持ち始めていた。

「皆警戒を強めろ」

 その時だった木々を薙ぎ倒しながら禍禍しい魔力をその身に宿した巨大な狼の姿が目の前に顕れた。唯一狼と違う点は青白い単体の目をしていたことだけであった。

「確認するけど、カイルさんあれが魔物ですか?」
「違うよミハール君、あれは魔獣だ。レイナ、君は彼らを連れ急いで立ち去りこのことをナガル教官に伝えてくれ」
「貴方はどうするつもりなの?相手は魔獣よ」
「安心しろ、『魔獣殺し』の名は伊達じゃないから一人でも平気さ」
「バカ言ってるんじゃないの!一人なんて無茶よ。聞いてメルトさん私もここに残るから貴女達だけで行きなさい」



 レイナ教官の指示通りに動き魔獣と遭遇した場所から数キロ離れた所まで逃げてきていた。

「ねぇ本当にこれであっていたのメルト?」
「シャーリンそんなの私にもわからないわよ」

 ここまで逃げてくるまで冷静に振る舞っているように見えたメルトですら体が小刻みに震えており、恐怖しているのが顕著に出ていた。そしてその恐怖は誰もが感じ取っていたのは確かだ、例外を除いての話だが…。
 残った二人の様子が気になった俺は魔力の波動を読み取ることにした。この魔力の波動を読み取る行為は騎士になる上で必須な力で相手の力量を測る時に使う物だがこの力を応用すれば魔力探査の役割を果たす、そして魔力探査の範囲は使用する使い手によって大きく左右される。
 魔力探査の反応では二人とも無事であった。

「二人ならきっと大丈夫それよりも俺達は急いで応援を呼びに行こう」

 今のこの状態では戻ったとしてもメルト達が足手まといなのは確実だしメルト達を置いて一人、カイルさんの援護に向かうのは危険だ。よってまずはナガル教官と合流するのが最善の一手だろう

「分かった」
 
 メルトを安心させたのも束の間、魔力探査に驚くべきものを捉えた。

「嘘だろ、もう一匹いるのか」
「ジー君戻ってきなさい、自殺行為よ」

 俺の魔力探査に先程相対した魔獣と同様の魔力を持つのが映し出されたのと同時にメルトの制止を振り切り今来た道を一人戻り始めた。

「もっと速く…速く…」

 身体強化の魔術を両足の裏に行使し常人の三倍の速度で駆けた。



 巨大狼の毛皮は想像以上に分厚くカイルが今所持している剣では切り傷を与えても余り効果がなくそれはレイナの槍も同様であり、逆に巨大狼の速度が凄まじく防戦を強いられていた。

「雷装は何秒持つ?」
「もって十五秒かしら。でも今発動してもあの魔獣の速度だと致命傷を与えれるかどうか…」
「それだけ使えたら充分だ」

 カイルは一人前に飛び出すと巨大狼に突っ込んでいき、獲物が飛び込んできたと思った巨大狼は一直線に向かってきた。
 カイルは剣を巨大狼との直線上に真っ直ぐ構え巨大狼が向かってくるのをじっと待った。そして巨大狼が一噛みできそうな距離まできた刹那紙一重でかわし一撃を巨大狼の右前足に突き刺した。

「今だレイナやれ!」
「言われなくてもやってやるわ」

 天高くより槍を手に体を黄色く発光させたレイナが急降下してきて彼女の槍が巨大狼の頭を貫通しそこから血が吹き出し巨大狼は地に伏せた。
 発光するレイナの体も次第に輝きを失っていった。

「俺から言ってなんだけど、雷装の反動はあるか?確か雷装って体内に電流を流し細胞を活性化させることで能力値の底上げを図る技だったよな」
「大丈夫自分の限界値ぐらい把握しているから」

 輝きが完全に消えた当初は苦しそうに息を吐いていたがすぐさま呼吸を整え持ち直した。
 
「ならメルト君達と合流しに行こうか」
「それもそうね」

 愛用の槍を巨大狼から抜き取り槍の中央部から上を右に回転させると槍のサイズが元のサイズの二分の一と短くなりその槍を背中の収納ケースへと納めた。

「あらっ噂してたらあれってジークじゃないの」

 遠目からでも分かるジークの慌ただしい走りにただ迎えに来たのではないとカイルは違和感を感じとったがそれが意味することが何か全然分からないでいた。

「カイルさん後ろ!」

 はっきり声が聞こえる位置まで接近してようやくその違和感の正体を魔力探査を行うことで掴んだ。
 死んだはずの巨大狼の隣に何かいる!
 ジークの伝えたいものを理解したが時すでに遅くもう一匹いた魔獣が背後から襲いかかろうとしていて回避行動をとるのは不可能に近かった。

「カイルさん伏せてください」

 どうせ助からないのならジークの言葉に全てを賭けて見ることにした。

「フレア・バン」

 詠唱すると野球ボールサイズの火の玉が俺の手から放たれ巨大狼に向けて飛んでいき命中した瞬間巨大狼は爆散した。



 事態を聞きつけたナガル教官や一緒に同行してきていた剣術騎士第五師団の面々が到着したのはその十分後であった。

「すみませんレイナさん森の雰囲気がおかしく貴女達のもとへすぐ急行したかったのですが魔物の大軍とかち合ってしまい身動きが取れませんでした」
「研修生達は?」
「多少の動揺は見られますが問題ないはないです。ただし少し休息が必要かと思われますがどうですか?」
「私も賛成です」






 














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