王子さまの婚約者は○○○です!?
第27話
「1つ尋ねたいことがあるのですが、いいですかねぇ」
どこか緊張感のない涼やかな声で日比谷海徳補佐官は言った。頬に人差し指を当て、上目遣いをするように首を傾げてまさきを見る。いや、その視線はまさきを通り越して、伏御えまきへと向かっていた。その目線に気付いた伏御えまきは日比谷海徳補佐官に一礼する。
「はい、なんなりと」
「あなた、武器種族ではありませんよね?」
「はい」
「治小様、見えてますか?」
「…まさきの、孫の手の上にいる小さな白虎のような方でしたら、見えております」
「ですよねぇ」
さっきまさきが胸ポケットから治小を取り出したとき、ぎょっとしていたのに気づいていた日比谷海徳補佐官は大きく頷く。
治小は武器種族にしか見えない。それが基本であるにもかかわらず、伏御えまきには見えているという。いままで武器種族以外のものが治小を見た例はなく、日比谷海徳補佐官は説明のつかない現状にうーんと唸った。
そこで、まさきがおそるおそるといわんばかりに手を挙げる。
「はい? まさきくん、なにか?」
「多分なんですけど、おれのせいかと」
「…どういう意味でしょう?」
「うちの陛下が言ってたんですけど、武器種族っていうのは霊力を形に変換できる体質を持つ人たちのことで、その人たちは元々持っている霊力が高いからそういうことができるらしいんです。で、影族は武器種族よりさらに霊力が高い、つまり」
「牛車の中で言っていたように伏御まさきの、コップからあふれ出た霊力で治小様自体が力を蓄えているから、霊力の低い人間でも見えるってことか?」
「牛車の中での会話を詳しく教えてください?」
まさきの言葉を引き継いでしゃべった弓削朔月に、にっこりと日比谷海徳補佐官が言う。
牛車の中での会話を話している弓削朔月に、時々補足をいれる美羽琴乃。武村アルカードはそれを興味深そうに聞いており、日比谷海徳補佐官は顎に手を当ててふむふむと頷いていた。
牛車の中での出来事と言えば…と押し倒されてしまったまさきと押し倒してしまったことを思いだした王子さまはかあああと顔を赤く染める。なぜか視線も合わせられずに頬をうっすらと赤らめた2人に、事情を知っているというか見て知っている弓削朔月、美羽琴乃、日比谷海徳補佐官は苦笑いをした。起こったことを知らない者たちはただ不思議そうにしていたが。
「あの2人はどうしたのだ、日比谷補佐官」
「ええと、牛車の中でちょっとした出来事がありまして」
「そのちょっとした出来事を聞いているのだが」
「王子様の足に治小様が噛みつき、その時にちょうど牛車が停まりまして。伏御まさきの上に王子様が倒れ込んでしまったのです」
疑問に思った王さまが同じく気になった王妃さまに着物の袖を引かれて尋ねる。
言葉を濁そうとした日比谷海徳補佐官にさらに追及すると、弓削朔月が言葉を足す形で詳細を言う。まさきの上に倒れ込んだという言葉は確かだが、2人の反応からしてというか王子さまがまさきに倒れ込んだのを想像した者たちは、「ああ、何かそれ以外にもあったんだな」と察した。
「治小様に噛まれたとはどういうことかな? 朔月君」
「噛んだっていうか甘噛みっていうか…とりあえず噛んだ後は満足そうでしたよアル先輩」
「そういえばお前なんでさゆの足噛んだの? もうやっちゃダメだからな?」
「みぎゃぎゃ、みぎゃ!」
「僕、まさき、指に抱きつく?」
「おおおお王子様。もしかしてなのですが」
武村アルカードの質問に、弓削朔月が答える。愛称で呼ぶあたり仲がいいことをうかがわせた。実際小さい頃から共に王子さまの護衛役兼お世話係として成長してきた弓削朔月と美羽琴乃、武村アルカード。美羽琴乃は女の子ということである程度の線引きはあるが、男同士で意外と趣味も合う弓削朔月と武村アルカードは3歳という歳の差こそあれど兄弟のように育ってきた。
今さらながらなぜ王子さまの足を噛んだのかと聞くまさきに、自分は無罪だというように治小がみぎゃみぎゃと鳴く。いや、やったのはお前だろとまさきは内心ツッコミを入れた。
自分の言葉がまさきたちに伝わらないことを知っている治小は、再びジェスチャーで示す。
びしびしとまさきと王子さまを雲の浮かぶ前足で示し、最後に自分を支えているまさきの手にじゃれつくように抱きつく。抱きつくと言ってもぺろぺろとなめたり顔を近づけたりと甘えているようにも見えたが。そっと手を挙げた美羽琴乃を皆が見る。びくっと身体を震わせた後、美羽琴乃は小さい声で呟いた。
「お王子様と、伏御まさき様のいちゃいちゃが見たかった、とか…」
「…いや、それはさすがに」
「みぎゃ!」
「え、あってんの?」
「みぎゃー」
うんうんと頷く治小に思わず頬が引きつるまさき。あれか、治小が見たかったからまさきはあんな羞恥にさらされたのかと思うと頬も引きつるというものだろう。誰かに押し倒されるなんて初めての出来事で、それもあんな白百合のように綺麗な人にされるなんて恥ずかしかったのに。大体そんな知識どこで覚えてきたんだよ。言いたいことは尽きない。
とりあえず、王子さまが治小の不興をかったとかそう言うことではなくてほっとする面々。次に浮かんでくる疑問があった。
「君、伏御まさき君。君の王様はなぜそんなに武器種族や影族について詳しいんだい?」
「あー…陛下は『智慧の実』を食べたからですね。それであらゆる世界の森羅万象のことが理解できるんです。まあといっても、更新を毎回しなくちゃいけないらしいんですけど」
天上に唯1つだけ実るとされる『智慧の実』それを食べたものは森羅万象すべての物事を理解できるとされる伝説の食べ物である。
更新といってもその世界の数が膨大なため1回更新しようとすると半日は動けなくなるということは黙っておいた。自分の仕える主の弱点を好き好んでしゃべりたいものはいない。
どこか緊張感のない涼やかな声で日比谷海徳補佐官は言った。頬に人差し指を当て、上目遣いをするように首を傾げてまさきを見る。いや、その視線はまさきを通り越して、伏御えまきへと向かっていた。その目線に気付いた伏御えまきは日比谷海徳補佐官に一礼する。
「はい、なんなりと」
「あなた、武器種族ではありませんよね?」
「はい」
「治小様、見えてますか?」
「…まさきの、孫の手の上にいる小さな白虎のような方でしたら、見えております」
「ですよねぇ」
さっきまさきが胸ポケットから治小を取り出したとき、ぎょっとしていたのに気づいていた日比谷海徳補佐官は大きく頷く。
治小は武器種族にしか見えない。それが基本であるにもかかわらず、伏御えまきには見えているという。いままで武器種族以外のものが治小を見た例はなく、日比谷海徳補佐官は説明のつかない現状にうーんと唸った。
そこで、まさきがおそるおそるといわんばかりに手を挙げる。
「はい? まさきくん、なにか?」
「多分なんですけど、おれのせいかと」
「…どういう意味でしょう?」
「うちの陛下が言ってたんですけど、武器種族っていうのは霊力を形に変換できる体質を持つ人たちのことで、その人たちは元々持っている霊力が高いからそういうことができるらしいんです。で、影族は武器種族よりさらに霊力が高い、つまり」
「牛車の中で言っていたように伏御まさきの、コップからあふれ出た霊力で治小様自体が力を蓄えているから、霊力の低い人間でも見えるってことか?」
「牛車の中での会話を詳しく教えてください?」
まさきの言葉を引き継いでしゃべった弓削朔月に、にっこりと日比谷海徳補佐官が言う。
牛車の中での会話を話している弓削朔月に、時々補足をいれる美羽琴乃。武村アルカードはそれを興味深そうに聞いており、日比谷海徳補佐官は顎に手を当ててふむふむと頷いていた。
牛車の中での出来事と言えば…と押し倒されてしまったまさきと押し倒してしまったことを思いだした王子さまはかあああと顔を赤く染める。なぜか視線も合わせられずに頬をうっすらと赤らめた2人に、事情を知っているというか見て知っている弓削朔月、美羽琴乃、日比谷海徳補佐官は苦笑いをした。起こったことを知らない者たちはただ不思議そうにしていたが。
「あの2人はどうしたのだ、日比谷補佐官」
「ええと、牛車の中でちょっとした出来事がありまして」
「そのちょっとした出来事を聞いているのだが」
「王子様の足に治小様が噛みつき、その時にちょうど牛車が停まりまして。伏御まさきの上に王子様が倒れ込んでしまったのです」
疑問に思った王さまが同じく気になった王妃さまに着物の袖を引かれて尋ねる。
言葉を濁そうとした日比谷海徳補佐官にさらに追及すると、弓削朔月が言葉を足す形で詳細を言う。まさきの上に倒れ込んだという言葉は確かだが、2人の反応からしてというか王子さまがまさきに倒れ込んだのを想像した者たちは、「ああ、何かそれ以外にもあったんだな」と察した。
「治小様に噛まれたとはどういうことかな? 朔月君」
「噛んだっていうか甘噛みっていうか…とりあえず噛んだ後は満足そうでしたよアル先輩」
「そういえばお前なんでさゆの足噛んだの? もうやっちゃダメだからな?」
「みぎゃぎゃ、みぎゃ!」
「僕、まさき、指に抱きつく?」
「おおおお王子様。もしかしてなのですが」
武村アルカードの質問に、弓削朔月が答える。愛称で呼ぶあたり仲がいいことをうかがわせた。実際小さい頃から共に王子さまの護衛役兼お世話係として成長してきた弓削朔月と美羽琴乃、武村アルカード。美羽琴乃は女の子ということである程度の線引きはあるが、男同士で意外と趣味も合う弓削朔月と武村アルカードは3歳という歳の差こそあれど兄弟のように育ってきた。
今さらながらなぜ王子さまの足を噛んだのかと聞くまさきに、自分は無罪だというように治小がみぎゃみぎゃと鳴く。いや、やったのはお前だろとまさきは内心ツッコミを入れた。
自分の言葉がまさきたちに伝わらないことを知っている治小は、再びジェスチャーで示す。
びしびしとまさきと王子さまを雲の浮かぶ前足で示し、最後に自分を支えているまさきの手にじゃれつくように抱きつく。抱きつくと言ってもぺろぺろとなめたり顔を近づけたりと甘えているようにも見えたが。そっと手を挙げた美羽琴乃を皆が見る。びくっと身体を震わせた後、美羽琴乃は小さい声で呟いた。
「お王子様と、伏御まさき様のいちゃいちゃが見たかった、とか…」
「…いや、それはさすがに」
「みぎゃ!」
「え、あってんの?」
「みぎゃー」
うんうんと頷く治小に思わず頬が引きつるまさき。あれか、治小が見たかったからまさきはあんな羞恥にさらされたのかと思うと頬も引きつるというものだろう。誰かに押し倒されるなんて初めての出来事で、それもあんな白百合のように綺麗な人にされるなんて恥ずかしかったのに。大体そんな知識どこで覚えてきたんだよ。言いたいことは尽きない。
とりあえず、王子さまが治小の不興をかったとかそう言うことではなくてほっとする面々。次に浮かんでくる疑問があった。
「君、伏御まさき君。君の王様はなぜそんなに武器種族や影族について詳しいんだい?」
「あー…陛下は『智慧の実』を食べたからですね。それであらゆる世界の森羅万象のことが理解できるんです。まあといっても、更新を毎回しなくちゃいけないらしいんですけど」
天上に唯1つだけ実るとされる『智慧の実』それを食べたものは森羅万象すべての物事を理解できるとされる伝説の食べ物である。
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