クラス転移はts付きで

lime

三十五話~カシモト程ヤバイ物はない~

「ひゃあ! だ、だれ!? 急に抱き着かないで!」

 ラムと話していても何も起きないので、ボーっとしていると、突然、ボクは誰かに抱きつかれた。

「ふふ、私が最近近くに居なかったからって、油断しすぎだよぉ~? ライムは今かわいい女の子なんだから、もう少し周りを見てないと襲われちゃうから気を付けてね?」

 抱き着いてきた犯人はカシモトだった。

「はあ、なんだ。カシモトかぁ、てっきり誰かに襲われたのかと思っ、ひゃん!」

 ボクが少し警戒を緩めると、カシモトがいきなり耳を甘噛みしてきた。
 勿論、急に耳を甘噛みされたので声をあげた。まあ、ボク自体、耳が極度に弱いっていうのもあるかもしれないけど。

「耳を噛むな!」
「ふふふ、ライムは隙がありすぎるんだよ、それにライムは私の彼女なんだからいつだって襲っていいでしょ?」

 どうやら甘噛みが満足したのか、カシモトは意味不明な持論をボクに語りながら、隣の席に座った。まあ、さっきのラブラブなカップルのような行動をしたら、注目を浴びるわけで、教室に居る全員に、ちらちらと見られていた。

(ね、ねえ、もしかしたらボクのほうが非常識なのかもしれないけれど、彼氏って所構わず彼女を襲ってもいいの?)
(ち、違うんじゃないかな? ぼ、僕も非常識サイドなのかもしれないけど。で、でも、所構わずキスしてることを襲うって考えてら当てはまるんじゃないのかな?)

 そして、ボク達はボク達でカシモトの言った言葉に対しての話し合いをしていた。ただ、流石に意味不明すぎたせいで、何時もは何を言っても馬鹿にしてくるラムが取り乱していた。

「彼氏でも襲っちゃだめだと思うよ? それに、ボクは周りからの視線がすごく恥ずかしいんだけど、あと、嫉妬の目線もあるし」

 勿論、カシモトは体格が細いのに、筋肉がある色白のイケメンと言う様な容姿なのでカシモトを狙っていた人達からは憎しみと嫉妬が入り交じった視線を向けられていた。

「あははー、ノリ悪いなー、まあそれはおいておいて、久し振りだね」

 ボクを散々混乱させ、その挙げ句結局普通なことを言い出した。勿論、ボクと同じ様な事を思っている生徒はしっかりと居たらしく、カシモトを凝視している生徒が二、三人居た。

「ま、まあ、ひさしぶりだけどさ、最初にそれを言ってくれたら嬉しかったんだけどなぁ」
「こう言うコミュニケーションが大事なんじゃん、だから何時まで経ってもコミュ症なんだよ?」

 ボクが用件を最後に言ったことに対して文句を言うと、カシモトはコミュニケーションと言って、ボクが人見知りな事を馬鹿にしてきた。……ボクは人見知りだけどコミュ症ではないからね? ちゃんと会話できるし、そもそも、カシモトのそれはコミュニケーションではなくボクを馬鹿にしているだけだよね?

「て言うかなんでそんなにぐったりとしてるの?」
「ああ、前の授業が科学だったからね、地球での理科と大差なくて余り理解できなかったよ」

 ボクは科学の難しさの異常さに対して、頬を膨らませ、机を蹴って八つ当たりをした。そうしていると、急にカシモトが膨らんだ頬を押し、空気が漏れていった。

「ライムは何故か理科だけ出来なかったもんねー、私が幾ら教えても分かってなかったし、まあ、そう言う所も可愛いんだけどね」

 カシモトはボクの頬をプニプニと押しながら呟いていた。勿論、その呟きはボクにも聞こえていたが、どう反応すれば良いのかが良く分からなかった。ただ、えへへ~、などと言う言葉を発するのは不正解だと思う、嫉妬している人達に何されるか分かんないからね。

「むぅ、それ以外の教科ならカシモトと同等かそれ以上くらいの成績を取ってるのにね」
「んふふ、でも世の中結果がすべてなんだよぉ? 私よりも成績が二位下の人?」

 ボクの頬をプニプニと押しながら、ボクの事を馬鹿にして居たカシモトのされるがままになっていると、イケメンに人がこちらに向かって歩いてきていた。ボク達の事を見ているので、多分ボク達に用があるようだ。

「風紀員だが、貴様らが風紀を乱していると聞き付けやってきたが、貴様らはわざとやっているのか?」

 糞みてぇな位イケメンな人がボク達の前に立つと、いきなり文句を言った。まあ、文句を言うのは良くわかるんだけど……その、出来ればカシモトに言って欲しいなぁ?

「風紀を乱しているのは私が悪いと思うけど、貴方だけには言われたくないなぁ」
「なっ! い、いい加減にしろ! 貴様等にその様なことを言われる筋合いはないわ!」
「そうよ! 貴方達は黙ってルイス様の話を素直に聞いていれば良いのよ!」
「「そうだわ!」」

 どうやら、糞イケメソはルイスと言う名前で、女子生徒達からすごく人気らしい。そのせいで、女子達が騒ぎ立て、カシモトの言う様にボク達よりも風紀を乱していた。

「「じぃ~~っ」」
「……す、すまない、だがあれは対処のしようがない」

 幸いにも、ルイスは正直なやつだったらしく、謝ってきたが、対処のしようがないと言って良いわけを始めた。
 あ? 普通に無理だって?
 いやいや、絶対に対処できるからね? 自分の顔を切り刻んだり、相手を殴ったり、まあ、風紀とかはとんでもなく悪くなるけど、頑張れば対処できるでしょ? 

(……別にそこまでイケメンを憎まなくて良いじゃないか、そもそも、君自体美少年の枠組みに入るからね? 普通に憎まれるサイドの人間だからね?)

 ラムには文句を言われたがこちらが正しいことを言っているので、なにも動じなかった。……そもそも、ボクは一応美少年だったけど、どっちかって言うと美少女だったんだよね。

「ただ、一応風紀委員の仕事として、君たちの名前を聞かせてくれないか?」

 ボクがボクに言い訳していると言う意味不明な状況だったが、それはルイスの言葉によって途切れた。ただ、その言葉だけなら信用できるが、チラチラとボクの事を見ていて、下心があるようにしか聞こえなかった。

「一応聞いておくけどさ、それはれっきとした仕事なんだよね? ボクの方をチラチラと見ているけど、下心とかはないんだよね?」
「…………すまない、彼氏がいる人に対して思ってはいけない感情を抱いてしまった。すまない」
「「「……はぁ!?」」」

 ルイスの放った言葉は、ボクとカシモトを合わせ、教室にいる全員が驚愕していた。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品