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十七話~恋人程心の中を見られたくない物はない~

「おーい「ドンドン」ライム―、襲われてないよねぇ?」

 ボクの今日の朝は、カシモトが乱暴にドアをたたく音から始まった。今はどうやら相当な朝らしく、空がまだ微妙にオレンジ色に染まっていた。全く、シンノスケに襲われていないかくらいで朝から騒がないでもらいたいねぇ!

「う~ん、まだ寝てるの? ふふ、心配しに来たという名目で合法的にライムの寝顔がみられる、入るよー!」

 ボクが寝ていると思い込み、ドアの前でいきなり不穏なことを言いだした。それだと、余りシンノスケ達とやってる事は変わらないんじゃないのかな?

「うみゅ、おきてるよぉ。カシモトは何しに――」
「ら、ライム!? シンノスケに抱き着かれてるけど大丈夫なの!?」
「んぅ? だいじょーぶだよ? シンノスケは多分寝ぼけてるだけだから、最近こういうことが多いけど」

 ボクがカシモトにいつもの事だ、と、伝えると、急に眼の色を変えてシンノスケをひっぺ返した。速さは、紙が吹き飛ぶくらいの風圧が出るくらいには早かった。

「ん、ライムかぁ? なんでこんな風にひっぺ返したん――」
「シンノスケぇ? なんで私のライムにうらや、淫らなことをしてるの!? それとも何? 昨日と同じことをしてもらいたかったからの犯行なのかな?」

 カシモトが殺気を込めてシンノスケを睨んでいた。多分、昨日襲われたばかりだから、ボクの事を心配してくれているんだろうけど、シンノスケはそこまで馬鹿じゃないと思うんだよ、だからこれは事故なんだよ。

「ちょ、待て! カシモト、これは誤解なんだ! 寝ぼけているだけで、って、マジなんだって! ライムも言ってくれよ」
「ふんっ、私のライムがそんな事を言う訳ないで――」
「そうだよ! カシモト! シンノスケは寝ぼけてるだけなんだって! それなのに理不尽に責めるのは良くないと思うよ! そ、それに、シンノスケの巨乳が当たるのは癪だけど、その、居心地は良いし。寝やすいし。だから、許してあげてよ!」

 ふぅ、これくらい言っておけばボクの安眠装置シンノスケはとられなくて済むでしょ? 最終手段だけど、「むぅ! カシモトの判らず屋! もうカシモトなんて大っ嫌い!」って、言っておけば多分大丈夫でしょ? カシモトって結構チョロイから。

「おっま、馬鹿! それじゃあ逆効果だろ! てか言っとくけど! ここ俺のベットだからな? 戦犯はライムのほうだぞ? ライムが俺のベットに飛び込んで来たんだから?」
「あれ? そうだった――ぴぃ!」

 シンノスケが衝撃の事実を言うと、カシモトはボクに向かって、フェルさんの目線よりは幾らか下がった目線でボクを睨んできた。どうやら、シンノスケよりもボクの方に怒っているらしく、さっきのシンノスケを睨んでいた時よりも殺気を込めてにらんできた。……ぼ、ボクは怖いのが苦手だからねッ!

「あれれ~? どうしてかなぁ~? ライムには~、私という恋人がいるのに~、なんで浮気をしてるのかなぁ~? 一回シンノスケと一緒にお説教をしないとダメなのかなぁ?」
「な、なんで俺まで? ……いや、なんでもないです、はい、カシモトさんの思うままにやっちゃってください」
「ちょ、ちょっと意見を言うんですけど、そもそも、ボクとカシモトって恋人にはなってないと思うんですよ? あ、まあボクの記憶違いなのかもしれないんですけど、それはちょっとおかしいかなぁって、はい。あの、こちらを睨まないでください。ボクはただ意見、ぴゃ!」

 きゅ、急に触れてこないでよ! 驚くよ! あと滅茶苦茶怖いよ! なんで!? ボクは正しい事しか言ってないのに!? ボクはどうすればよかったんだ!? 「まさか~、ボクがカシモト以外を好きになるとでも?」とかって言っておいたほうがよかったのかな?

「なにを馬鹿なことを言ってるのかなぁ~? 私が言ったら、ライムは恋人なんだよ? やっぱり一回お説教しないとダメだね?」

 それはこっちの台詞だよ! どこのガキ大将なんだよ!? ボクにはボクの考えがあるんだよ! カシモトに制限されなくちゃいけないってことはないんだよ! ま、まあ怖いからカシモトには言えないんだけどね。

「よし、じゃあ一つライムは今日中、一人称を私にしてね、そっちの方が可愛いと思うし」
「へっ?」

 カシモトの口から出てきた言葉は予想していなかった言葉だった。
 ボクはカシモトが滅茶苦茶威圧してきたから、てっきり「恋人である私以外が分かんなくなるくらいに滅茶苦茶にしてあげるからね♪」とかって言ってくると思ってたけど、一人称を私にするって、簡単じゃないの?

「じゃあ二つ目、自分が一番可愛く思える事をしてね。口調とか、服装を可愛らしくしたりね」
「え? そもそもボクは「私って言ってね♪」わ、私はそんなに可愛くないと思うんだけど?」
「そうそう、心の中の一人称も私にしてね。嘘を吐いたら私の魔眼、嘘つきの眼ライアーアイで分かるからね?」

 わ、私って言うの滅茶苦茶恥ずかしいんだけど! 大丈夫かな? ボ……私は絶対無理だと思うんだけど! それに! お説教だからって私だけって言うのは卑怯だと思うんだよ! そこに生け贄第二号シンノスケだっているんだから。

「じゃあ三つ目、ライムはいつもズボンをはいているから、今日中はスカートを履いていてね、そもそも、女の子になったんだからスカートは普通だからね? 今の内に馴らしておいた方が良いよ」

 な、何でカシモトは私が恥ずかしいことをどんどんとやらせようとしてくるの!? 一人称私でスカートを履くって、私に対しての羞恥プレイなのかなぁ!

「ライムはそんくらいだね。
 シンノスケは……私の僕の様に働いてね。    一週間」
「おい、ちょっと待って! 何故俺だけ一週間なんだ! だったらライムも一週間で良いだろ! 幾らなんでも不公平すぎるぞ」

 ちょ、ちょっと、シンノスケ? 馬鹿なことは言わないで貰えるかなぁ? そんなこと言ったらカシモトがどんな行動をするのか位予想がつくでしょ! 私も、この一人称を一週間ってなるでしょうが! 一週間も私って言ってたら、口調がそのうち私に変わっちゃうよ!

「じゃあ、シンノスケは今日一日、一人称がわたくしの高慢なお嬢様的な感じでやっといて」
「ま、待って! お願い、お願いだからぁ、昨日みたいに滅茶苦茶にされても良いから、それだけは止めてぇ、は、恥ずかしいんだよ」

 え、え、……誰? シンノスケの皮を被った別人さんですか? シンノスケはこんな風に、弱音は吐かないし、「お願いだからぁ」っていう風な媚を売るような言い方はしないから。
 ん? お前は媚を売りまくってるなぁ?
 そんなのは親友である二人にしかやらないよ! だって、そうでもしておかないと悪戯されるんだもん! まあ、この世界になって、私とシンノスケが悪戯される側だけどね。しかもイケメンだから、私の心はキュンキュンしちゃうし。って、違う違う、カシモトの性格に惚れるとかなら有りうるけど、見た目に惚れるって、私はゲイとかだったのかな?

「じゃあ、一日、私にライムを貸してくれないかな?」
「うんうん! それで良いよ! じゃあ、ライムは頑張ってね」
「え、待って! 私の意見は!」
「じゃあ、行こうか」

 そう言い、カシモトは私を引っ張って部屋から出ていった。
 これが滅茶苦茶な一日の始まりだった。
 そ、それよりも、心臓の鼓動がヤバイ程、早いんだけど? やっぱり私はカシモトの事が好きなのかな? ま、まあ、カシモトの子供なら生んであげても良いかなーって思ってる位だからまだ大丈夫でしょ。
 まあ、その時はその時だね。私はカシモト愛する人の笑顔に赤面しないように頑張らないとね。
 

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