双子転生 -転生したら兄妹に分裂してた。天才双子の異世界ライフ-
第69話 決着
光が晴れた時、王は仰向けに倒れていた。あの一撃で原型を保っているだけでも恐ろしい強さだが、さすがにもう立ち上がることはできず意識もない。
すぐさま俺は駆け出して、王に魔法をかけた。
「【リッド】!」
魔力に蓋をする魔法で、王の体内の魔水晶を封じ込める。場所がわからないので全体を覆うしかないが、そのせいで強度はやや弱めだ。だがこれで十分魔水晶の暴走は抑えられ……そして何より、ゲルスからの干渉を防ぐことができる。
『ま、まままままさか、私の技術の粋が注ぎ込まれた王が負けるなんて~! あ、あわわわ、魔水晶も応答が……!』
案の定何か企んでいたらしくゲルスの慌てる声が聞こえてくる。その気になればゲルスは王体内の魔水晶を自爆させ王を巻き添えに俺らを消しに来るだろう、それはさせない。
そして王も死なせない。そのために必要な人間は今やって来た。
地下道からどたどたと足音が響き、彼らは現れた。
「セイル、サリアーっ! 無事かー!?」
飛び込んできたのはメイリアだった、さらに後ろからカイン、ヒトミ、ポップと続く。近づいてくる魔力は感じ取っていた、皆はまだ地下から離れていなかったのだ。
「先程の凄まじい魔力の爆発は……そうか、レグルオ王すら下したのだな」
カインが素早く状況を察知する。魔晶兵である彼は魔力を感じ取る力も随一だ、遠くからでも戦いの模様は大方把握していたに違いない。あまりにも戦闘が激しく、心配になり駆け付けたといったところだろう。そしてそれが正解だった。
「いや、まだ終わってない。やらなければならないことがあるんだ」
「皆、協力して。皆の力が必要なんだよ」
「なんだと? 戦いはもう終わったのだろう、今さら何を……」
俺はカインに目配せした後、あおむけに倒れる王を指差した。
「カイン、王の体には魔水晶が埋め込まれている。その場所がわかるか?」
「む……ああ、わかるとも」
カインが王に手を向け、その身からわずかな魔力を放つ。振動と共振を特徴に持つ魔晶兵の魔水晶を利用し、その位置を探っているのだ。
「……両手足に2つずつ。末端部分のみで定着度も低い、拙速な改造だったのだろう」
「オーケー、予想通り。それじゃあ次はメイリアちゃん!」
「お、私か! なんでも言え!」
「王の手足を切断するんだ、なるべく素早く、かつ確実にな。剣は俺らの魔法で強化する」
「わかった!」
唐突かつ厄介な注文だがメイリアはあっさりと応じ、剣を抜きつつ駆け出した。その瞳に鋭い光が宿り、手にした剣が風を裂く。彼女は剣術だけは俺らすら圧倒的に凌ぐ腕前、その努力の賜物だ。
「ハッ!」
魔法により強化された剣を振るう。倒れた相手の部位を正確に斬る神業だが、メイリアは見事やってのけた。王の四肢が切断されるが、一瞬の内に見事に斬られたため血がどっと溢れることはない。
「今だヒトミ、王の体の切断面を氷で覆え!」
「は、はいっ!」
ヒトミが杖を振り氷の魔法を使った。威力はないが正確無比な彼女の魔法は見る間に王の四肢の痕を凍てつかせ、それ以上の流血を止める。応急処置として完璧だ。
「さあ次は俺だ……【マーナムズ】!」
俺は切断された王の手足に向けて魔法を使った。これは魔力を固め、無数の腕のようにする特殊な攻撃魔法。俺の両手から放たれた魔力の腕は王の手足それぞれの切断面にもぐりこむ。
「よし、これだッ!」
すぐに魔力の腕を引き抜くと、腕はそれぞれ2つずつの球体を握っていた。これが魔水晶、王に力を与えていた、ゲルスの悪の象徴だ。ほとんど力を使い果たしているが、俺はためらわず握りつぶした。
「最後は私だね、王の両手足、元通りに復元するよ。【ヒール・オール】!」
サリアが切断された両手足を元のように付けた後、治癒魔法を放つ。すると切り口が綺麗だったのもあり、手足は光に包まれると共に元通りぴたりとくっついた。もっともいかにサリアといえどすぐに完治はできないので繋がるには少し時間がかかるだろうし、止血用の氷はそのまま。だがこれでもう王が死ぬことも、ゲルスにより利用されることもなくなった。
「グ……ウム……」
その時、治癒魔法の余波を受けてか王が目を開いた。右の瞳を隠していた眼帯が取れて、左の青とは異なるも、美しく澄んだところだけは同じ緑色の瞳が、俺らの姿を映しこんでいた。
「私は……生きて、いるのですか……?」
俺らに挑んだ時から死を覚悟していたのだろう。だが王は、レグルオはこうして生きている。
「ああ、魔水晶も体内から取り出した。まだ身動きはできないだろうが、命の危険はないだろう」
「私たちもあなたを殺す気はないしね」
俺とサリアが告げると、レグルオは絶句し、その後に両の瞳から涙をあふれさせた。
「おお、おお……この私を、生かすというのですか。あなたたちを洗脳し手駒にせんとしたパイロヴァニアの王を、あるいは命をも奪おうとした私を……」
俺とサリアは黙って頷いた。このレグルオが悪人だとはどうしても思えなかった。その葛藤も苦悩も伝わった、敵ではあったが命を奪わなくてはならないとは少しも思わない。あるいはただ利用されていただけだ、より大きな邪悪に。
王としての重責に苛まれ、自らの血族の誇りすら殺していた男。今、封じていた右の目からも涙を流し、救われたのだった。
「ああ……この恩をどうすればよいか……私には、わかりませぬ……」
「なあに、あんたには後で用がある。大人しく待ってろ、間違っても自害なんかするなよ」
「うん、それよりも私たちは会いに行かなくちゃならないからね」
俺らは王から目線を外し、部屋の奥へと向ける。そこにあるのは頑丈な鋼鉄の扉……まるで奥にいる主の臆病さ、狡猾さを示すような固く閉ざされた扉。
「行こう」
「ああ」
サリアと俺は静かにその扉へと向かっていった。
すぐさま俺は駆け出して、王に魔法をかけた。
「【リッド】!」
魔力に蓋をする魔法で、王の体内の魔水晶を封じ込める。場所がわからないので全体を覆うしかないが、そのせいで強度はやや弱めだ。だがこれで十分魔水晶の暴走は抑えられ……そして何より、ゲルスからの干渉を防ぐことができる。
『ま、まままままさか、私の技術の粋が注ぎ込まれた王が負けるなんて~! あ、あわわわ、魔水晶も応答が……!』
案の定何か企んでいたらしくゲルスの慌てる声が聞こえてくる。その気になればゲルスは王体内の魔水晶を自爆させ王を巻き添えに俺らを消しに来るだろう、それはさせない。
そして王も死なせない。そのために必要な人間は今やって来た。
地下道からどたどたと足音が響き、彼らは現れた。
「セイル、サリアーっ! 無事かー!?」
飛び込んできたのはメイリアだった、さらに後ろからカイン、ヒトミ、ポップと続く。近づいてくる魔力は感じ取っていた、皆はまだ地下から離れていなかったのだ。
「先程の凄まじい魔力の爆発は……そうか、レグルオ王すら下したのだな」
カインが素早く状況を察知する。魔晶兵である彼は魔力を感じ取る力も随一だ、遠くからでも戦いの模様は大方把握していたに違いない。あまりにも戦闘が激しく、心配になり駆け付けたといったところだろう。そしてそれが正解だった。
「いや、まだ終わってない。やらなければならないことがあるんだ」
「皆、協力して。皆の力が必要なんだよ」
「なんだと? 戦いはもう終わったのだろう、今さら何を……」
俺はカインに目配せした後、あおむけに倒れる王を指差した。
「カイン、王の体には魔水晶が埋め込まれている。その場所がわかるか?」
「む……ああ、わかるとも」
カインが王に手を向け、その身からわずかな魔力を放つ。振動と共振を特徴に持つ魔晶兵の魔水晶を利用し、その位置を探っているのだ。
「……両手足に2つずつ。末端部分のみで定着度も低い、拙速な改造だったのだろう」
「オーケー、予想通り。それじゃあ次はメイリアちゃん!」
「お、私か! なんでも言え!」
「王の手足を切断するんだ、なるべく素早く、かつ確実にな。剣は俺らの魔法で強化する」
「わかった!」
唐突かつ厄介な注文だがメイリアはあっさりと応じ、剣を抜きつつ駆け出した。その瞳に鋭い光が宿り、手にした剣が風を裂く。彼女は剣術だけは俺らすら圧倒的に凌ぐ腕前、その努力の賜物だ。
「ハッ!」
魔法により強化された剣を振るう。倒れた相手の部位を正確に斬る神業だが、メイリアは見事やってのけた。王の四肢が切断されるが、一瞬の内に見事に斬られたため血がどっと溢れることはない。
「今だヒトミ、王の体の切断面を氷で覆え!」
「は、はいっ!」
ヒトミが杖を振り氷の魔法を使った。威力はないが正確無比な彼女の魔法は見る間に王の四肢の痕を凍てつかせ、それ以上の流血を止める。応急処置として完璧だ。
「さあ次は俺だ……【マーナムズ】!」
俺は切断された王の手足に向けて魔法を使った。これは魔力を固め、無数の腕のようにする特殊な攻撃魔法。俺の両手から放たれた魔力の腕は王の手足それぞれの切断面にもぐりこむ。
「よし、これだッ!」
すぐに魔力の腕を引き抜くと、腕はそれぞれ2つずつの球体を握っていた。これが魔水晶、王に力を与えていた、ゲルスの悪の象徴だ。ほとんど力を使い果たしているが、俺はためらわず握りつぶした。
「最後は私だね、王の両手足、元通りに復元するよ。【ヒール・オール】!」
サリアが切断された両手足を元のように付けた後、治癒魔法を放つ。すると切り口が綺麗だったのもあり、手足は光に包まれると共に元通りぴたりとくっついた。もっともいかにサリアといえどすぐに完治はできないので繋がるには少し時間がかかるだろうし、止血用の氷はそのまま。だがこれでもう王が死ぬことも、ゲルスにより利用されることもなくなった。
「グ……ウム……」
その時、治癒魔法の余波を受けてか王が目を開いた。右の瞳を隠していた眼帯が取れて、左の青とは異なるも、美しく澄んだところだけは同じ緑色の瞳が、俺らの姿を映しこんでいた。
「私は……生きて、いるのですか……?」
俺らに挑んだ時から死を覚悟していたのだろう。だが王は、レグルオはこうして生きている。
「ああ、魔水晶も体内から取り出した。まだ身動きはできないだろうが、命の危険はないだろう」
「私たちもあなたを殺す気はないしね」
俺とサリアが告げると、レグルオは絶句し、その後に両の瞳から涙をあふれさせた。
「おお、おお……この私を、生かすというのですか。あなたたちを洗脳し手駒にせんとしたパイロヴァニアの王を、あるいは命をも奪おうとした私を……」
俺とサリアは黙って頷いた。このレグルオが悪人だとはどうしても思えなかった。その葛藤も苦悩も伝わった、敵ではあったが命を奪わなくてはならないとは少しも思わない。あるいはただ利用されていただけだ、より大きな邪悪に。
王としての重責に苛まれ、自らの血族の誇りすら殺していた男。今、封じていた右の目からも涙を流し、救われたのだった。
「ああ……この恩をどうすればよいか……私には、わかりませぬ……」
「なあに、あんたには後で用がある。大人しく待ってろ、間違っても自害なんかするなよ」
「うん、それよりも私たちは会いに行かなくちゃならないからね」
俺らは王から目線を外し、部屋の奥へと向ける。そこにあるのは頑丈な鋼鉄の扉……まるで奥にいる主の臆病さ、狡猾さを示すような固く閉ざされた扉。
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