双子転生 -転生したら兄妹に分裂してた。天才双子の異世界ライフ-
第68話 光
眼前の王が魔力を伴い剣を振り上げる。またもに当たれば骨も残らない威力の攻撃だ。しかし私たちは怯えず、ただ手を握り合う。
『【クロノスクロス】!』
攻撃に合わせ融合魔導を繰り出す。この特殊な魔法は時空を捻じ曲げる、発狂し判断力を失った相手にはよく効く。
私たちはその場から姿を消し、逆に地下室全体には無数の私たちが出現した。突如として増殖した相手に王が動揺を見せ、さらに無数の双子はそれぞれがまったく異なる動きを見せながら攻撃を始めた。当然王は反撃を始める。だが相手は過去の姿を投影しただけの幻、翻弄されるのみだ。
本物の私たちは唯一安全圏である天井に立って王を眺めつつ、作戦を立てていた。
「セイル、わかる? 近づいてきてるの」
「ああ、俺にも感じる。あの2人の力があれば王を救えるだろう」
「でもそれまでにもっと弱らせないといけないね」
「ああ、強化された王は肉体面・魔力面は凄まじいものがある。だが……」
私たちは互いに視線を合わせる。私たちにはそれで充分、全て通じ合える。
勝利への道筋は立った。あとは手を取り合い、進むのみ。
「行こうっ!」
「うん!」
私たちは手を握り合い【クロノスクロス】を解除する。幻影が消え、暴れていた王が見失った敵を探し始める。やがて、上から落下する私たちをその目にとらえた。
「グルォォォォォーーーーーーッ!」
王が咆哮し、私たちめがけ魔力の球を打ち放った。巨大な球は莫大な魔力を乱雑に打ち出しただけのもの、しかし魔水晶により増幅された魔力は絶対量が圧倒的で、球体が持つエネルギーに触れれば即死だろう。
だが魂のない力をどれだけ束ねたところで、それは脆い。
私たちは落下しつつ体勢を整える。私が体を小さくして魔力で覆いつつ少し前に出て、足の裏をセイルと合わせる。セイルは膝を曲げ、私を打ち出す構えを作り出す。そして思い切り、砲弾となった私を打ち出した。
『【ジェミナイズ・カノン】!』
私の体は王の攻撃を突き破り、その胴を深々とめり込んだ。
「ガハッ……」
さしもの王も血を吐いて動きを止める。特殊な形だがこれも融合魔導、無尽蔵な魔力がさらに増幅され、超人的な身体能力をさらに強化し、通常の数十倍のパワーを込めて打ち出された攻撃の威力は絶大だ。物理攻撃の側面も持つ分、単なる魔力攻撃よりも確固たる衝撃を加えられる。
だが王はなおも戦い続けるべく魔力を高めようとする。その魔力の気配を感じた刹那、私はすかさず王の肉体の一部を掴み叫んだ。
「【チェンジ】!」
対象の位置を入れ替える魔法、だが今回は私とセイルの入れ替えじゃない。
入れ替わったのは王とセイル。王はいきなり宙に放り出され体勢を崩し、私とセイルは即座に手を握り合った融合魔導の体勢に入った。
『【ジェミナイズ・サーガ】!』
私たちの体から一筋の魔力が迸り、王の体を貫いた。これは体ではなく心を……魔力を直接傷つける魔法。
「グ、ゴ、ガ……」
王の体が痙攣し、反撃どころか受け身すらとらずに落下、鋼鉄の床に衝突した。この魔法による精神力への消耗は先ほどの【ジェミナイズ・カノン】による物理ダメージと同レベル。常人ならばくらえば1か月は一切の魔法が使えなくなってもおかしくない威力だ。
さしもの王も倒れ伏したまま動きが止まる。もとより王の本心ではこの戦いへの迷いがあった、彼の真の精神はもう戦いをやめようとしているのだ。だがそれを許さない悪魔が、その背へと魔の言葉を投げかける。
『ななななな、なにをしてるんですか~!! あなたが負けるのは私の技術の敗北も同然なんですよ? あなたの魔力は数値にして3000、双子の合計の1000をゆうに上回っているんです! 仕方ありません、リミッター解除です~!』
ゲルスの声が響いた直後、王に異変が起こった。その全身がガクガクと激しく震え、巨大で邪悪なエネルギーが全身から立ち上る。
『これやるとまた徹夜で作り直さなきゃいけないんですけどしょうがないです! これで王の魔力は5000超! この出力を出す兵器は初めてですしついでにデータもとっちゃいます! 王の体はこれで使い捨てになっちゃいますが、まあ今回はプロトタイプなので、その内ミリア・スノーディン辺りで試すとしましょう!』
もはや怒ることさえ哀れに思えるゲルスの言葉。それに操られるように、王の体が立ち上がった。その左目は真っ黒に染まり、もはや剣を握ることすらできていない。迸る魔力の莫大なエネルギーにより発生する熱が突風を生み私たちへ吹き付ける。感じ取るだけで失神しそうなほどの魔力が肌に突き刺さる。
『もう計画も中止です中止! 双子を殺さないと私が危ないですからね! さあ王、さっさとやっちゃってください! 私の未来のために~!』
ゲルスの命令に応じ、王が私たちを睨み付ける。殺意と狂暴さをむき出しにした瞳……だがその両目からは、止めどなく涙があふれていた。
私たちは黙ってうなずく。もう、この戦いを終わらせる。
「ガルアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
王が一際強く咆哮し、その魔力を解き放った。絶望的な魔力を抱く光線。それはまさしく王とゲルスの全てを賭した一撃。破滅の光が、私たち双子を滅ぼさんとしている。
私たちはただ手を握り合う。静かに手を敵へとかざし、魔力を高める。恐怖はなかった。
そして一瞬も違うことなく、双子は最後の魔法を打ちはなった。
「【ライト・パニッシャー】ッ!!」
双つの光が打ち出され、混ざり合う。迷いなき使命を込めた一撃は、魂なき狂気の闇を打ち滅ぼす。
魔力同士が衝突する。しかしすぐに一方が砕け、消し飛ぶ――王の放った魔力が。
光は地下室を輝きで満たし、やがて全てを呑み込んだ。
『【クロノスクロス】!』
攻撃に合わせ融合魔導を繰り出す。この特殊な魔法は時空を捻じ曲げる、発狂し判断力を失った相手にはよく効く。
私たちはその場から姿を消し、逆に地下室全体には無数の私たちが出現した。突如として増殖した相手に王が動揺を見せ、さらに無数の双子はそれぞれがまったく異なる動きを見せながら攻撃を始めた。当然王は反撃を始める。だが相手は過去の姿を投影しただけの幻、翻弄されるのみだ。
本物の私たちは唯一安全圏である天井に立って王を眺めつつ、作戦を立てていた。
「セイル、わかる? 近づいてきてるの」
「ああ、俺にも感じる。あの2人の力があれば王を救えるだろう」
「でもそれまでにもっと弱らせないといけないね」
「ああ、強化された王は肉体面・魔力面は凄まじいものがある。だが……」
私たちは互いに視線を合わせる。私たちにはそれで充分、全て通じ合える。
勝利への道筋は立った。あとは手を取り合い、進むのみ。
「行こうっ!」
「うん!」
私たちは手を握り合い【クロノスクロス】を解除する。幻影が消え、暴れていた王が見失った敵を探し始める。やがて、上から落下する私たちをその目にとらえた。
「グルォォォォォーーーーーーッ!」
王が咆哮し、私たちめがけ魔力の球を打ち放った。巨大な球は莫大な魔力を乱雑に打ち出しただけのもの、しかし魔水晶により増幅された魔力は絶対量が圧倒的で、球体が持つエネルギーに触れれば即死だろう。
だが魂のない力をどれだけ束ねたところで、それは脆い。
私たちは落下しつつ体勢を整える。私が体を小さくして魔力で覆いつつ少し前に出て、足の裏をセイルと合わせる。セイルは膝を曲げ、私を打ち出す構えを作り出す。そして思い切り、砲弾となった私を打ち出した。
『【ジェミナイズ・カノン】!』
私の体は王の攻撃を突き破り、その胴を深々とめり込んだ。
「ガハッ……」
さしもの王も血を吐いて動きを止める。特殊な形だがこれも融合魔導、無尽蔵な魔力がさらに増幅され、超人的な身体能力をさらに強化し、通常の数十倍のパワーを込めて打ち出された攻撃の威力は絶大だ。物理攻撃の側面も持つ分、単なる魔力攻撃よりも確固たる衝撃を加えられる。
だが王はなおも戦い続けるべく魔力を高めようとする。その魔力の気配を感じた刹那、私はすかさず王の肉体の一部を掴み叫んだ。
「【チェンジ】!」
対象の位置を入れ替える魔法、だが今回は私とセイルの入れ替えじゃない。
入れ替わったのは王とセイル。王はいきなり宙に放り出され体勢を崩し、私とセイルは即座に手を握り合った融合魔導の体勢に入った。
『【ジェミナイズ・サーガ】!』
私たちの体から一筋の魔力が迸り、王の体を貫いた。これは体ではなく心を……魔力を直接傷つける魔法。
「グ、ゴ、ガ……」
王の体が痙攣し、反撃どころか受け身すらとらずに落下、鋼鉄の床に衝突した。この魔法による精神力への消耗は先ほどの【ジェミナイズ・カノン】による物理ダメージと同レベル。常人ならばくらえば1か月は一切の魔法が使えなくなってもおかしくない威力だ。
さしもの王も倒れ伏したまま動きが止まる。もとより王の本心ではこの戦いへの迷いがあった、彼の真の精神はもう戦いをやめようとしているのだ。だがそれを許さない悪魔が、その背へと魔の言葉を投げかける。
『ななななな、なにをしてるんですか~!! あなたが負けるのは私の技術の敗北も同然なんですよ? あなたの魔力は数値にして3000、双子の合計の1000をゆうに上回っているんです! 仕方ありません、リミッター解除です~!』
ゲルスの声が響いた直後、王に異変が起こった。その全身がガクガクと激しく震え、巨大で邪悪なエネルギーが全身から立ち上る。
『これやるとまた徹夜で作り直さなきゃいけないんですけどしょうがないです! これで王の魔力は5000超! この出力を出す兵器は初めてですしついでにデータもとっちゃいます! 王の体はこれで使い捨てになっちゃいますが、まあ今回はプロトタイプなので、その内ミリア・スノーディン辺りで試すとしましょう!』
もはや怒ることさえ哀れに思えるゲルスの言葉。それに操られるように、王の体が立ち上がった。その左目は真っ黒に染まり、もはや剣を握ることすらできていない。迸る魔力の莫大なエネルギーにより発生する熱が突風を生み私たちへ吹き付ける。感じ取るだけで失神しそうなほどの魔力が肌に突き刺さる。
『もう計画も中止です中止! 双子を殺さないと私が危ないですからね! さあ王、さっさとやっちゃってください! 私の未来のために~!』
ゲルスの命令に応じ、王が私たちを睨み付ける。殺意と狂暴さをむき出しにした瞳……だがその両目からは、止めどなく涙があふれていた。
私たちは黙ってうなずく。もう、この戦いを終わらせる。
「ガルアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
王が一際強く咆哮し、その魔力を解き放った。絶望的な魔力を抱く光線。それはまさしく王とゲルスの全てを賭した一撃。破滅の光が、私たち双子を滅ぼさんとしている。
私たちはただ手を握り合う。静かに手を敵へとかざし、魔力を高める。恐怖はなかった。
そして一瞬も違うことなく、双子は最後の魔法を打ちはなった。
「【ライト・パニッシャー】ッ!!」
双つの光が打ち出され、混ざり合う。迷いなき使命を込めた一撃は、魂なき狂気の闇を打ち滅ぼす。
魔力同士が衝突する。しかしすぐに一方が砕け、消し飛ぶ――王の放った魔力が。
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