双子転生 -転生したら兄妹に分裂してた。天才双子の異世界ライフ-
第65話 双子の絆
王が剣を振り上げる。それと同時に、王の周囲にある鎧の兵器が一斉に動き始めた。多くは大砲で、一部は拳で、私たちを狙っている。
「セイル!」
「ああ!」
私はセイルと一声かける、それで十分。互いに手を握り、魔力を互いの体で共振し循環、増幅させる。
『融合魔導、【エクスバーン】!』
ためらわず、切り札たる融合魔導を打ち放った。凄まじい威力の魔力爆発が地下空間を呑み込み、木があれば瞬きの間に炭と化し、水があれば一滴の間に空と化す爆炎に包み込んだ。
爆炎が晴れた時、王は変わらずそこにいた。振り上げた剣を自らの正中線上で盾のように構えなおし、装飾の一部は焼け焦げているが目立ったダメージはない。だがその周囲の魔導鎧は無惨、大半が手足がもげ装甲が剥げ、そしてひとつ残らず崩れるか止まるかなどして戦闘不能となった。
「ちっ、デカブツ連中はこれで一撃だったのに」
「あの王様、今まで見てきたどんな相手よりも強い……」
感心する暇もない。攻撃をしのぎ切った王が攻勢に出た。
「オオゥッ!」
獅子の口から獅子そのものの咆哮が漏れる。狩りをするように身を屈め、その強靭な脚で地を蹴る。
速い。圧倒的だ。力強さと柔軟性を併せ持つ一跳び、風よりも早く迫ってくる。巨剣を軽々と掲げ、狙うは私とセイルの分断。
『【アビスカーテン】!』
私たちは融合魔導を連続発動した。使うのは様子見のための防御、私たちの前面を巨大な壁が覆う。火山の噴火だろうと耐え切る絶対の防壁だ。
王の剣が防壁に打ち下ろされる。衝撃が防壁を貫いて伝わり、鋼鉄製の床にヒビが入った。
「このパワー、この魔力!」
「これは……魔晶兵?」
一撃の力が強すぎる。ライオンの獣人であることや剣にかけられた魔法を考慮しても異常だ。本来なら融合魔導で作った防壁が揺らぐことすらありえない。
『その通りです~!』
突然、地下空間に声が響く。よく見ると奥へ続く扉の上に魔水晶がとりつけられている。それがスピーカーのようにして奥の部屋から音声を繋げているのだろう。ゲルスの声を。
『この戦いに備えてレグルオ王には試作品の数倍の魔水晶を埋め込みました! さらにひとつひとつにとある技術を使って魔力を凝縮! ざっと成人男性500人分くらいの出力ですかね~、王の元々の資質もあって、私の最高傑作になってくれました~!』
自らの『作品』を誇るゲルスの耳障りな声。王をまるで物扱いした上に自身は高みの見物らしい。
『まあ少し出力が強すぎてぇ、一度起動させると発狂気味になっちゃうんですけどね~……制御できる兵器じゃないと意味ないですしぃ……』
身勝手にのたまうゲルスへの苛立ちは尽きないが、今はそれどころではなさそうだ。
王の剣を防ぐ防壁が崩れ始めている。見れば、王の左目は明らかに理性を失い、血走って見開き獰猛な野獣そのものと化している。ライオンそのものな容貌、口元に光る牙もあり、壁の奥で間近に見える顔に恐怖すら覚える。『もう話すことはできない』、王はこの決戦の前にそう言っていた。
全てを捨てて戦っている。唯一、王としての責務を残して。
「ガアーーッ!」
やがて王の剣が防壁を切り裂き、私とセイルの繋いだ手目掛け振り下ろされた。
「くっ」
「ちぃっ」
やむを得ず繋いだ手を離して左右バラバラに飛び退く。王の剣は空振りするものの、床に当たっただけで衝撃波が発生し私たちを襲う。
私とセイルはアイコンタクトを取り合い、次の手を打った。
「【オメガ・グラヴ】!」
セイルが魔法を放つ。重力魔法が王を捉え、数百倍の重圧がその身を押し潰す。
「【ドルマナー・エクスパンダ】!」
動きが止まった王に対し私が打つのは魔力吸収魔法、王の中に宿る邪悪な魔力を奪い取る!
だが、その時。
「【アルテルフ】ッ!」
突如、王が叫んだ。魔法の詠唱だった。
王の全身から発生した強烈な衝撃波が私たちの魔力を消し飛ばす。私たちは余波だけで吹き飛びそうになりなんとか耐える。一瞬だが、強力な魔法だった。
しかし王の力の代償は理性の喪失、少なくともさっき見た限りは到底魔法なんか使える状況ではないはず……衝撃波に耐え顔を上げてみると、王は苦悶に近い表情を浮かべていた。
「保た……なくては……完全な発狂は……かえって弱くなる……最低限の理性……かつ魔晶の力……使い得る、最大の力を……!」
王はその精神力だけで発狂を封じているらしかった。莫大な魔力を得つつ、魔法の行使や戦略の思考を失わず、もっとも強い状態に自らを追い込んでいる。全ては私たちを倒すため……国を救うために。
「【アルギエバ】ッ!」
王が再び魔法を使う。2つの魔力の球体が私たちそれぞれに放たれた。出現と同時にその球に恐るべきエネルギーを感じとる、触れれば塵も残らず消し飛ぶ!
「サリア!」
「ええ!」
ちょうど王を挟んで直線状の私たち、同時に手を突き出し魔法を放った。
『【アポロ・ウィンドウ】!』
私たちの体の前面から一直線に魔力が迸り、魔力球も王も無視して私たち同時を繋いだ。これは魔力の道、今この通路で私たちと敵の攻撃、王が繋がっている。
最初の攻撃のように王は私たちを分断することで融合魔導を使わせない作戦のようだが……生憎、私たちの絆は常人の比ではない。
『融合魔導、【ドミネイターズ】!』
特殊な手段を使えば、離れていても融合魔導は使える!
支配の魔法により操られた2つの魔力球は、一瞬にして動きを真逆に変え本来の主たる王へ迫った。
王は剣を床に突き刺し両手を開けた。その手にどす黒い魔力が宿る。
「ガアアアーーーッ!」
王は両の拳で魔力球を易々と殴り消した。だがここまでは想定通り、この【アポロ・ウィンドウ】の本領はここからだ。
「いくぞサリア、ジェミナイズ・α!」
「いくよセイル、ジェミナイズ・β!」
私たちは左腕を掲げ、それぞれ性質の違う魔力をその腕から相手目掛けて打ち放った。この魔力は磁力のように引き合う性質を持つ。
放たれた魔力は王の位置でちょうど衝突する。
「グッ!?」
引き合う性質を持つ魔力の衝突に巻き込まれた王は体の自由を奪われた。この王ならばそれも一瞬、しかしその一瞬で十分。
私とセイルは放出する魔力の量を倍増させるのと同時に、一直線に駆け出した。
『融合魔導ッ!』
引き合う魔力が速度を一瞬にして加速。その速度は弾丸をゆうに越える。動きを止めた王へ、挟むように双子が迫る。
魔力で強化された腕を王の首目掛けラリアットをかける。対面するセイルがまったく同じムーブをしている。莫大な魔力を生む融合魔導に、超人の肉体をも合わせた……合体技!
「【ジェミナイズ・ボンバー】ッ!!」
凄まじい音と共に、私たち双子の腕が王の首を挟み激突した。
「ガハッ……」
王が血を吐いた。苦し気に天を仰ぐ。だが。
「【アギエルバ】ァッ!」
直後、魔法を撃ち放った。私たちは至近距離からその攻撃をまともに喰らい、大爆発が巻き起こった。
光が晴れた時、私たちはバラバラな位置に着地していた。私もセイルも咄嗟に防御の魔法を使いなんとか無事だが、【アポロ・ウィンドウ】は消え位置取りも崩壊している。
そして王はというと、首筋にくっきりと腕の跡を残しながらも、床に刺した剣を抜き次の攻撃に移ろうとしていた。
「なんて強さだ……体も、心も!」
「でもまだまだ……! 私たちだって、負けはしない!」
決意のもと、決戦は続く。
「セイル!」
「ああ!」
私はセイルと一声かける、それで十分。互いに手を握り、魔力を互いの体で共振し循環、増幅させる。
『融合魔導、【エクスバーン】!』
ためらわず、切り札たる融合魔導を打ち放った。凄まじい威力の魔力爆発が地下空間を呑み込み、木があれば瞬きの間に炭と化し、水があれば一滴の間に空と化す爆炎に包み込んだ。
爆炎が晴れた時、王は変わらずそこにいた。振り上げた剣を自らの正中線上で盾のように構えなおし、装飾の一部は焼け焦げているが目立ったダメージはない。だがその周囲の魔導鎧は無惨、大半が手足がもげ装甲が剥げ、そしてひとつ残らず崩れるか止まるかなどして戦闘不能となった。
「ちっ、デカブツ連中はこれで一撃だったのに」
「あの王様、今まで見てきたどんな相手よりも強い……」
感心する暇もない。攻撃をしのぎ切った王が攻勢に出た。
「オオゥッ!」
獅子の口から獅子そのものの咆哮が漏れる。狩りをするように身を屈め、その強靭な脚で地を蹴る。
速い。圧倒的だ。力強さと柔軟性を併せ持つ一跳び、風よりも早く迫ってくる。巨剣を軽々と掲げ、狙うは私とセイルの分断。
『【アビスカーテン】!』
私たちは融合魔導を連続発動した。使うのは様子見のための防御、私たちの前面を巨大な壁が覆う。火山の噴火だろうと耐え切る絶対の防壁だ。
王の剣が防壁に打ち下ろされる。衝撃が防壁を貫いて伝わり、鋼鉄製の床にヒビが入った。
「このパワー、この魔力!」
「これは……魔晶兵?」
一撃の力が強すぎる。ライオンの獣人であることや剣にかけられた魔法を考慮しても異常だ。本来なら融合魔導で作った防壁が揺らぐことすらありえない。
『その通りです~!』
突然、地下空間に声が響く。よく見ると奥へ続く扉の上に魔水晶がとりつけられている。それがスピーカーのようにして奥の部屋から音声を繋げているのだろう。ゲルスの声を。
『この戦いに備えてレグルオ王には試作品の数倍の魔水晶を埋め込みました! さらにひとつひとつにとある技術を使って魔力を凝縮! ざっと成人男性500人分くらいの出力ですかね~、王の元々の資質もあって、私の最高傑作になってくれました~!』
自らの『作品』を誇るゲルスの耳障りな声。王をまるで物扱いした上に自身は高みの見物らしい。
『まあ少し出力が強すぎてぇ、一度起動させると発狂気味になっちゃうんですけどね~……制御できる兵器じゃないと意味ないですしぃ……』
身勝手にのたまうゲルスへの苛立ちは尽きないが、今はそれどころではなさそうだ。
王の剣を防ぐ防壁が崩れ始めている。見れば、王の左目は明らかに理性を失い、血走って見開き獰猛な野獣そのものと化している。ライオンそのものな容貌、口元に光る牙もあり、壁の奥で間近に見える顔に恐怖すら覚える。『もう話すことはできない』、王はこの決戦の前にそう言っていた。
全てを捨てて戦っている。唯一、王としての責務を残して。
「ガアーーッ!」
やがて王の剣が防壁を切り裂き、私とセイルの繋いだ手目掛け振り下ろされた。
「くっ」
「ちぃっ」
やむを得ず繋いだ手を離して左右バラバラに飛び退く。王の剣は空振りするものの、床に当たっただけで衝撃波が発生し私たちを襲う。
私とセイルはアイコンタクトを取り合い、次の手を打った。
「【オメガ・グラヴ】!」
セイルが魔法を放つ。重力魔法が王を捉え、数百倍の重圧がその身を押し潰す。
「【ドルマナー・エクスパンダ】!」
動きが止まった王に対し私が打つのは魔力吸収魔法、王の中に宿る邪悪な魔力を奪い取る!
だが、その時。
「【アルテルフ】ッ!」
突如、王が叫んだ。魔法の詠唱だった。
王の全身から発生した強烈な衝撃波が私たちの魔力を消し飛ばす。私たちは余波だけで吹き飛びそうになりなんとか耐える。一瞬だが、強力な魔法だった。
しかし王の力の代償は理性の喪失、少なくともさっき見た限りは到底魔法なんか使える状況ではないはず……衝撃波に耐え顔を上げてみると、王は苦悶に近い表情を浮かべていた。
「保た……なくては……完全な発狂は……かえって弱くなる……最低限の理性……かつ魔晶の力……使い得る、最大の力を……!」
王はその精神力だけで発狂を封じているらしかった。莫大な魔力を得つつ、魔法の行使や戦略の思考を失わず、もっとも強い状態に自らを追い込んでいる。全ては私たちを倒すため……国を救うために。
「【アルギエバ】ッ!」
王が再び魔法を使う。2つの魔力の球体が私たちそれぞれに放たれた。出現と同時にその球に恐るべきエネルギーを感じとる、触れれば塵も残らず消し飛ぶ!
「サリア!」
「ええ!」
ちょうど王を挟んで直線状の私たち、同時に手を突き出し魔法を放った。
『【アポロ・ウィンドウ】!』
私たちの体の前面から一直線に魔力が迸り、魔力球も王も無視して私たち同時を繋いだ。これは魔力の道、今この通路で私たちと敵の攻撃、王が繋がっている。
最初の攻撃のように王は私たちを分断することで融合魔導を使わせない作戦のようだが……生憎、私たちの絆は常人の比ではない。
『融合魔導、【ドミネイターズ】!』
特殊な手段を使えば、離れていても融合魔導は使える!
支配の魔法により操られた2つの魔力球は、一瞬にして動きを真逆に変え本来の主たる王へ迫った。
王は剣を床に突き刺し両手を開けた。その手にどす黒い魔力が宿る。
「ガアアアーーーッ!」
王は両の拳で魔力球を易々と殴り消した。だがここまでは想定通り、この【アポロ・ウィンドウ】の本領はここからだ。
「いくぞサリア、ジェミナイズ・α!」
「いくよセイル、ジェミナイズ・β!」
私たちは左腕を掲げ、それぞれ性質の違う魔力をその腕から相手目掛けて打ち放った。この魔力は磁力のように引き合う性質を持つ。
放たれた魔力は王の位置でちょうど衝突する。
「グッ!?」
引き合う性質を持つ魔力の衝突に巻き込まれた王は体の自由を奪われた。この王ならばそれも一瞬、しかしその一瞬で十分。
私とセイルは放出する魔力の量を倍増させるのと同時に、一直線に駆け出した。
『融合魔導ッ!』
引き合う魔力が速度を一瞬にして加速。その速度は弾丸をゆうに越える。動きを止めた王へ、挟むように双子が迫る。
魔力で強化された腕を王の首目掛けラリアットをかける。対面するセイルがまったく同じムーブをしている。莫大な魔力を生む融合魔導に、超人の肉体をも合わせた……合体技!
「【ジェミナイズ・ボンバー】ッ!!」
凄まじい音と共に、私たち双子の腕が王の首を挟み激突した。
「ガハッ……」
王が血を吐いた。苦し気に天を仰ぐ。だが。
「【アギエルバ】ァッ!」
直後、魔法を撃ち放った。私たちは至近距離からその攻撃をまともに喰らい、大爆発が巻き起こった。
光が晴れた時、私たちはバラバラな位置に着地していた。私もセイルも咄嗟に防御の魔法を使いなんとか無事だが、【アポロ・ウィンドウ】は消え位置取りも崩壊している。
そして王はというと、首筋にくっきりと腕の跡を残しながらも、床に刺した剣を抜き次の攻撃に移ろうとしていた。
「なんて強さだ……体も、心も!」
「でもまだまだ……! 私たちだって、負けはしない!」
決意のもと、決戦は続く。
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