双子転生 -転生したら兄妹に分裂してた。天才双子の異世界ライフ-
第40話 4人組、瞬殺
フェルグランド家の宮殿屋上。
私は4人組の怪しい連中と対峙していた。
「貴様がサリア・フェルグランド……! 我らを欺いたのは褒めてやるが、単身向こう見ずにやってくるとはな」
リーダー格と思しき目付きの鋭い男が語り掛ける。こういう言い回しを何度聞いたことか。
「わざわざフルネームで呼ぶ人って大抵ただのカッコつけなんだよね。そもそも私のフルネームもっと長いし」
「フン……それは失敬したな。ではこちらも名乗ろうか。俺はトーン・ブックス。誇り高き王国騎士団、その裏の長」
「ロイヤルガード……メイリアちゃんの言ってた王国騎士団か」
「おおっ、メっイリアちゃんを知っているのでっすか!」
長身の男トーンの後ろでぴょんと飛び跳ねたのは小柄な女性。しかしその全身には警戒の色が強い。
「私はバーント・パン! メっイリアちゃんも王国騎士団に入れてあげたかったんでっすけどね」
「やめとけよあんなの、足引っ張るだけだって」
バーントに目を向けのそりと身を起こす太った男。鈍重そうだが意外と瞳は鋭い。
「俺はタフ・グローブ。てっきりメイリアはスパイしてるのかと思ってたんだがなぁ……」
「あの娘にそれを求めるのは酷というものでしょう」
そして最後、嫌らしい笑みを顔に張り付けつつも、抑えきれないほどの憎悪で私を見る不気味な男。
「改めて自己紹介をば……ゴーディー様の執事、かつ、パイロヴァニア王国騎士団のナイヴズ・トイリアルです」
パイロヴァニア王国騎士団4人組。なるほど曲者揃いのようだ。
そして気になるのは彼らの背後にある4体の巨大な鎧――鎧というよりは中に入り込んで動かす、私たちの世界でいうパワードスーツのようなものだ。ヒトミちゃんの話によると連中はこれを使ってミリアを襲ったらしい。私にはその形状に見覚えがあった。
「そこにあるの、ゴーディーが使ってた兵器の小型版だね。繋がりが見えてきたよ」
鎧に似たその兵器は悪徳貴族ゴーディーも使っていた兵器、魔力防ぐ性質を持つ鉱石ファンサライトで出来ている。
そしてもうひとつ頭に浮かぶのは竜獄の谷を襲撃した謎の集団……その集団は私たち双子を『利用する』と語り、谷からファンサライトを集めていた。
「ゴーディーは金を集めてたけど、その使い道は具体的には言わなかった。ゴーディーはパイロヴァニアと裏で繋がっていたんだね」
「さてどうですやら……フフフ。あなたがそれを知る必要はない」
ナイブズは怪しげに笑う。だが私を前に、憎悪を抑えきれなかったらしかった。
突如、ナイブズは目を見開く頬を裂くように顔を歪めた。
「これからくたばるてめェに教えるワケねェーだろゴミクソがァ! こちとらてめェの顔見てからブチ殺したくてウズウズしてんだアバズレどクズ! この俺様を見下しくさりやがってノミ!」
本性を現したようだ。冷静な執事の顔はどこへやら、多少は持ち合わせていた底知れぬ不気味さも消え去り、私を口汚く罵る様はただのチンピラ並だった。
「それがあんたの本性? 薄っぺらい男だね」
「そォーだよドグサレカボチャ! 俺様は演技が得意でねェ、ゴーディーの屋敷で執事に化けてたんだよォ! こっちが俺様の素だ! もっともあの成金クソヤローはてめェらに負けちまって計画がパアになったがなァ」
「負けたのはあんたもでしょ。少し哀れなくらい小物なんだねあんた」
「うるせェ! 見てろ、俺様たちにはこいつがあるんだ! ミリア・スノーディンすらも敵わなかったこの魔導アーマーで、てめェをひき肉ミンチの焦げカスにしてやるぜ!」
ナイブズは背後の兵器へと跳躍する、他の4人もその兵器を装着しようとしているようだった。ミリアですら洗脳されてしまった兵器、ともすれば私も危ない。
なら使わせなければいいのだ。
「もう遅いよ」
私はくいっと手を動かす。その瞬間。
4つの鎧の後ろから、4人の『私』が現れた。
「なッ、なんだこ……うげえっ!?」
「ぐっ!?」
「きゃっあー!?」
「のわあっ!?」
鎧を纏おうと身を開いていた4人は成すすべなく、『私』たちから蹴りを一発ずつ腹に受けた。セイルほどでないとはいえ神に強化された身体能力、本気で蹴ればキックボクサー並の威力はある。ついでに魔力で補助したそれを受けた4人はあえなく倒れ伏した。
「戦隊ものの変身中とかロボット搭乗バンクとか、その隙に攻撃すればいいのに……って一度は思うよね」
「ぐほぉッ……バ、バカな、分身体だと!? いったいいつの間に、そんな素振りは……」
「最初からだよ。言ったでしょ? あっちにダミーを置いているって。ダミー分身が1個だけと言った覚えはないよ」
「く……そ……」
ナイブズはそのままあえなく気絶した。王国騎士団と言ってもあっけないもので、他の3人も戦闘不能らしい。やれやれと思いつつ私は全ての分身を消滅させた。
「こんな組織にメイリアちゃんを入れたくないなあ。はあ」
とりあえず4人を拘束して、私は鎧の兵器を調べることにする。ここにミリアちゃんを狂わせた原因はあるはずだ。
精神に干渉する『兵器』、パイロヴァニアが語る『計画』。私にはうっすらとその全貌が見え始めていた。
だが――後にして思えば、私はあまりにも迂闊だった。
私は4人組の怪しい連中と対峙していた。
「貴様がサリア・フェルグランド……! 我らを欺いたのは褒めてやるが、単身向こう見ずにやってくるとはな」
リーダー格と思しき目付きの鋭い男が語り掛ける。こういう言い回しを何度聞いたことか。
「わざわざフルネームで呼ぶ人って大抵ただのカッコつけなんだよね。そもそも私のフルネームもっと長いし」
「フン……それは失敬したな。ではこちらも名乗ろうか。俺はトーン・ブックス。誇り高き王国騎士団、その裏の長」
「ロイヤルガード……メイリアちゃんの言ってた王国騎士団か」
「おおっ、メっイリアちゃんを知っているのでっすか!」
長身の男トーンの後ろでぴょんと飛び跳ねたのは小柄な女性。しかしその全身には警戒の色が強い。
「私はバーント・パン! メっイリアちゃんも王国騎士団に入れてあげたかったんでっすけどね」
「やめとけよあんなの、足引っ張るだけだって」
バーントに目を向けのそりと身を起こす太った男。鈍重そうだが意外と瞳は鋭い。
「俺はタフ・グローブ。てっきりメイリアはスパイしてるのかと思ってたんだがなぁ……」
「あの娘にそれを求めるのは酷というものでしょう」
そして最後、嫌らしい笑みを顔に張り付けつつも、抑えきれないほどの憎悪で私を見る不気味な男。
「改めて自己紹介をば……ゴーディー様の執事、かつ、パイロヴァニア王国騎士団のナイヴズ・トイリアルです」
パイロヴァニア王国騎士団4人組。なるほど曲者揃いのようだ。
そして気になるのは彼らの背後にある4体の巨大な鎧――鎧というよりは中に入り込んで動かす、私たちの世界でいうパワードスーツのようなものだ。ヒトミちゃんの話によると連中はこれを使ってミリアを襲ったらしい。私にはその形状に見覚えがあった。
「そこにあるの、ゴーディーが使ってた兵器の小型版だね。繋がりが見えてきたよ」
鎧に似たその兵器は悪徳貴族ゴーディーも使っていた兵器、魔力防ぐ性質を持つ鉱石ファンサライトで出来ている。
そしてもうひとつ頭に浮かぶのは竜獄の谷を襲撃した謎の集団……その集団は私たち双子を『利用する』と語り、谷からファンサライトを集めていた。
「ゴーディーは金を集めてたけど、その使い道は具体的には言わなかった。ゴーディーはパイロヴァニアと裏で繋がっていたんだね」
「さてどうですやら……フフフ。あなたがそれを知る必要はない」
ナイブズは怪しげに笑う。だが私を前に、憎悪を抑えきれなかったらしかった。
突如、ナイブズは目を見開く頬を裂くように顔を歪めた。
「これからくたばるてめェに教えるワケねェーだろゴミクソがァ! こちとらてめェの顔見てからブチ殺したくてウズウズしてんだアバズレどクズ! この俺様を見下しくさりやがってノミ!」
本性を現したようだ。冷静な執事の顔はどこへやら、多少は持ち合わせていた底知れぬ不気味さも消え去り、私を口汚く罵る様はただのチンピラ並だった。
「それがあんたの本性? 薄っぺらい男だね」
「そォーだよドグサレカボチャ! 俺様は演技が得意でねェ、ゴーディーの屋敷で執事に化けてたんだよォ! こっちが俺様の素だ! もっともあの成金クソヤローはてめェらに負けちまって計画がパアになったがなァ」
「負けたのはあんたもでしょ。少し哀れなくらい小物なんだねあんた」
「うるせェ! 見てろ、俺様たちにはこいつがあるんだ! ミリア・スノーディンすらも敵わなかったこの魔導アーマーで、てめェをひき肉ミンチの焦げカスにしてやるぜ!」
ナイブズは背後の兵器へと跳躍する、他の4人もその兵器を装着しようとしているようだった。ミリアですら洗脳されてしまった兵器、ともすれば私も危ない。
なら使わせなければいいのだ。
「もう遅いよ」
私はくいっと手を動かす。その瞬間。
4つの鎧の後ろから、4人の『私』が現れた。
「なッ、なんだこ……うげえっ!?」
「ぐっ!?」
「きゃっあー!?」
「のわあっ!?」
鎧を纏おうと身を開いていた4人は成すすべなく、『私』たちから蹴りを一発ずつ腹に受けた。セイルほどでないとはいえ神に強化された身体能力、本気で蹴ればキックボクサー並の威力はある。ついでに魔力で補助したそれを受けた4人はあえなく倒れ伏した。
「戦隊ものの変身中とかロボット搭乗バンクとか、その隙に攻撃すればいいのに……って一度は思うよね」
「ぐほぉッ……バ、バカな、分身体だと!? いったいいつの間に、そんな素振りは……」
「最初からだよ。言ったでしょ? あっちにダミーを置いているって。ダミー分身が1個だけと言った覚えはないよ」
「く……そ……」
ナイブズはそのままあえなく気絶した。王国騎士団と言ってもあっけないもので、他の3人も戦闘不能らしい。やれやれと思いつつ私は全ての分身を消滅させた。
「こんな組織にメイリアちゃんを入れたくないなあ。はあ」
とりあえず4人を拘束して、私は鎧の兵器を調べることにする。ここにミリアちゃんを狂わせた原因はあるはずだ。
精神に干渉する『兵器』、パイロヴァニアが語る『計画』。私にはうっすらとその全貌が見え始めていた。
だが――後にして思えば、私はあまりにも迂闊だった。
コメント