双子転生 -転生したら兄妹に分裂してた。天才双子の異世界ライフ-
第30話 スノーディン姉妹の平和な昼食
双子たちがパイロヴァニアに行っていた頃、一方の魔法都市アスパムでは。
「……むぅ……」
魔法学校の食堂にて、ミリア・スノーディンは明らかに不機嫌な様子だった。好物のオムライス、そして姉のヒトミを前にしているのに心ここにあらずといった具合にぶすくれて虚空を見つめている。
「ミリアちゃん、そんなにセイルさんたちに置いてかれたのがさみしいんですか?」
「へっ!?」
姉ヒトミに指摘され、ミリアはこの上なくわかりやすく動揺した。ヒトミの方は慣れっこで自分のパスタを食べている。
「さ、さみしいなんて……そ、それじゃ私がずーっとあいつにくっついていたいみたいじゃない!」
「違うんですか?」
「そ、それはその、できるなら……じゃなくて! だーれがあんな奴と! 面倒なのがいなくて晴れ晴れしてるわよ」
「私に対してそんな強がり言わなくてもいいのに。ミリアちゃんがセイルさんを好きなこと、私はわかってますよ」
「すっ……!? ヒ、ヒトミ、あ、あんたそんなこと、こんな人前で!」
顔を真っ赤にして慌てまくる妹をヒトミは温かい目で見ていた。昔から外で暴れてばかりで、恋愛事に免疫がないのは相変わらずのようだ。だがかといってミリアは色恋沙汰に興味がないわけではなく、むしろ人一倍そういったことに興味を持っているということも、姉はよく知っていた。
「今回は仕方ないですよ、なんだか大変みたいでしたし、パイロヴァニアへ行くのもお2人だけでいきなり決めたみたいですから」
「で、でも、あの姉妹は連れてったじゃない! 私らは置いてったってのに……」
「メイリアちゃんたちはパイロヴァニアの出身ですから。私たちがついていっても怪しまれるだけですよ」
「それはそうだけどぉ……そうだヒトミ、あんたこそどうなのよ?」
反撃してやるぞとばかりにミリアはにやりと笑った。フォークで人を指すのは行儀が悪いのでやめてほしい。
「え? 私ですか?」
「そうよ、あんたこそどうなの、セイルのことを、す、す、す……」
「もちろん、好きですよ!」
「ふえっ」
ヒトミは思わず中腰になって食いついた。逆にミリアは気圧されて可愛い声が出る。セイル、というよりはあの双子の話になると、ヒトミはテンションが上がってしまうのだ。
「セイルさんもサリアさんも、大好きです! あれほどの魔法が使えて、あんなに優しくって強くって……小さい時に見てから憧れなんです! 私もあのお2人みたいになれたらな、って!」
「ああ、好きってそういう……もぉ……」
ミリアは勝手に早とちりした己を恥じて消え入るような声でもじもじとした。双子に匹敵する才能を持つくせに、こういうとこはかわいい妹である。
だが正直ヒトミは複雑だった。ヒトミは双子を尊敬しているし人間として好きだが、実のところセイルには……ミリアと同様の感情を抱いている。だがミリアのことを思うとそれを正直に出すのは少し気が引けるのだ。元より天才同士、セイルには自分なんかよりミリアの方がずっとお似合いだし……もっともそんな思考は妹の前ではおくびにも出さなかった。
「っていうか、無責任なのよあいつ! そう、無責任! あいつは私が暴走しないように見張る義務があるの! それを放棄して勝手に出かけたから私は怒ってるのよ!」
ミリアはまたぷりぷりと怒り出す。その言葉はセイルと一緒にいるための方便であることは明らかで、素直になれないかわいい妹をヒトミはほっこりと見つめる。
小さい頃ならともかく、成長したミリアが魔力を暴走させる心配はまずない。以前はトラウマから自己不信に陥っていたようだがセイルによってそれが解消されて以降は、ミリアの魔力は安定そのものだ。かつてそれで死にかけたヒトミが安心して隣にいられるのだから間違いない。もっともその安心は、魔力の克服にセイルが関わってるからこそでもあったのだが――
「ミリアちゃんも、セイルさんのこと大好きなんですね」
「だっ……!? ちちちちち違うっての! もうヒトミ!」
顔を真っ赤にして慌てふためくミリアの反応を楽しむヒトミだった。
スノーディン姉妹はその時知らなかった。知る由もなかった。
最悪の訪問者が、彼女らのもとへやってきていたことに。
双子と関わったことが必ずしも、幸福を呼ぶとは限らないということに――
「……むぅ……」
魔法学校の食堂にて、ミリア・スノーディンは明らかに不機嫌な様子だった。好物のオムライス、そして姉のヒトミを前にしているのに心ここにあらずといった具合にぶすくれて虚空を見つめている。
「ミリアちゃん、そんなにセイルさんたちに置いてかれたのがさみしいんですか?」
「へっ!?」
姉ヒトミに指摘され、ミリアはこの上なくわかりやすく動揺した。ヒトミの方は慣れっこで自分のパスタを食べている。
「さ、さみしいなんて……そ、それじゃ私がずーっとあいつにくっついていたいみたいじゃない!」
「違うんですか?」
「そ、それはその、できるなら……じゃなくて! だーれがあんな奴と! 面倒なのがいなくて晴れ晴れしてるわよ」
「私に対してそんな強がり言わなくてもいいのに。ミリアちゃんがセイルさんを好きなこと、私はわかってますよ」
「すっ……!? ヒ、ヒトミ、あ、あんたそんなこと、こんな人前で!」
顔を真っ赤にして慌てまくる妹をヒトミは温かい目で見ていた。昔から外で暴れてばかりで、恋愛事に免疫がないのは相変わらずのようだ。だがかといってミリアは色恋沙汰に興味がないわけではなく、むしろ人一倍そういったことに興味を持っているということも、姉はよく知っていた。
「今回は仕方ないですよ、なんだか大変みたいでしたし、パイロヴァニアへ行くのもお2人だけでいきなり決めたみたいですから」
「で、でも、あの姉妹は連れてったじゃない! 私らは置いてったってのに……」
「メイリアちゃんたちはパイロヴァニアの出身ですから。私たちがついていっても怪しまれるだけですよ」
「それはそうだけどぉ……そうだヒトミ、あんたこそどうなのよ?」
反撃してやるぞとばかりにミリアはにやりと笑った。フォークで人を指すのは行儀が悪いのでやめてほしい。
「え? 私ですか?」
「そうよ、あんたこそどうなの、セイルのことを、す、す、す……」
「もちろん、好きですよ!」
「ふえっ」
ヒトミは思わず中腰になって食いついた。逆にミリアは気圧されて可愛い声が出る。セイル、というよりはあの双子の話になると、ヒトミはテンションが上がってしまうのだ。
「セイルさんもサリアさんも、大好きです! あれほどの魔法が使えて、あんなに優しくって強くって……小さい時に見てから憧れなんです! 私もあのお2人みたいになれたらな、って!」
「ああ、好きってそういう……もぉ……」
ミリアは勝手に早とちりした己を恥じて消え入るような声でもじもじとした。双子に匹敵する才能を持つくせに、こういうとこはかわいい妹である。
だが正直ヒトミは複雑だった。ヒトミは双子を尊敬しているし人間として好きだが、実のところセイルには……ミリアと同様の感情を抱いている。だがミリアのことを思うとそれを正直に出すのは少し気が引けるのだ。元より天才同士、セイルには自分なんかよりミリアの方がずっとお似合いだし……もっともそんな思考は妹の前ではおくびにも出さなかった。
「っていうか、無責任なのよあいつ! そう、無責任! あいつは私が暴走しないように見張る義務があるの! それを放棄して勝手に出かけたから私は怒ってるのよ!」
ミリアはまたぷりぷりと怒り出す。その言葉はセイルと一緒にいるための方便であることは明らかで、素直になれないかわいい妹をヒトミはほっこりと見つめる。
小さい頃ならともかく、成長したミリアが魔力を暴走させる心配はまずない。以前はトラウマから自己不信に陥っていたようだがセイルによってそれが解消されて以降は、ミリアの魔力は安定そのものだ。かつてそれで死にかけたヒトミが安心して隣にいられるのだから間違いない。もっともその安心は、魔力の克服にセイルが関わってるからこそでもあったのだが――
「ミリアちゃんも、セイルさんのこと大好きなんですね」
「だっ……!? ちちちちち違うっての! もうヒトミ!」
顔を真っ赤にして慌てふためくミリアの反応を楽しむヒトミだった。
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