双子転生 -転生したら兄妹に分裂してた。天才双子の異世界ライフ-
第7話 白い少女、託宣
宮殿の自室にて、私は朝の陽ざしを受け目覚めた。
最上級のベッドから身を起こし、枕元の魔法製時計で時刻を確かめる。いつも通りの午前7時、清々しい朝だった。
今日は魔法学校のある日、準備をしなくてはならない。まずは顔を洗い、服を着替え、それから――考えながらベッドから降りた時。
「うーん、いい座り心地だのう」
1人の幼女が、俺の部屋のソファで勝手にくつろいでいた。純白のワンピースを身に着けて、髪の色も瞳まで真っ白の人間離れした彼女はもちろん人間ではない。私は呆れ顔で言った。
「神様。また無断で部屋に入ってきたの?」
幼女は悪戯っぽく笑った。そう、この子は私を転生させた神だ。こうして私たちの前に現れるのは初めてではない。
「神は受け入れるものだよ。どうだ、異世界ライフは」
「おかげさまで満喫しているよ、その折はどうも……でも女の体にはまだちょっと慣れないかな」
「なんだ15年も生きておいて、容姿も優れたものにしてやったというに? 不満があるのか~?」
神はわかっていて私を煽る。好き放題望みを言った私への嫌がらせとして2つに分けた上に片方を女にしたくせに。
「神様もまたその子供の姿なんだね」
「知っておるだろう、お主がいた世界で神のイメージが老爺であるように、こちらでは白髪の少女がステロタイプであると。無論、老いた姿よりは子供の方が私も好きだがな」
ピョンと椅子から降りて神は笑った。つくづく人間臭い神だ。
「それで? 神様がわざわざ来たってことは何か用事があるんでしょ?」
「うむ。まずは先日のルインズの一件、ご苦労だったな。お主らがその力を善行に使ってくれていて安心しておる」
「それを監視するのもあなたの目的だもんね。でもそれはもう終わったはずじゃ?」
「それがな、そうでもないのだ。奴は金を欲していただろう、それにはもうひとつ目的があったようなのだ」
「目的……?」
「詳細については私からは語らない、神の干渉はあくまでも最終手段。たとえ魔法都市アスパムの住民が全滅しようと、世界そのものが危ぶまれない限りは動けん……神にも理があるのだ。それはよいな」
「うん、わかってる。その代わりに私たちがいるんだよね」
神は直接世界に介入することはない。ただ人に力を与えて代行させることはある。私たちに常軌を逸した力を与えて転生させたのは、実はその仕事も兼ねてのことだったらしいのだ。
「これからお主たちの周辺には今まで以上に変化が訪れるだろう。多くの者がお主たちと出会い、友になる。あるいは敵ともなるであろう。良くも悪くも変化は多い、心しておくことだ」
「出会い……か。わかった、ありがとう」
神の忠告を心に受け止める。たしかにヒトミとあともう1人と出会ったり、少なからず私たちの生活は変化してきている。15歳のこの年、私たちの運命が動き出すということだ。
とその時、部屋のドアがノックされた。
「サリアちゃんー? 誰か部屋にいるのー?」
メイドの声だ。
「では私はそろそろ退散するとしよう。お主の兄にもよろしくな」
「もちろん。ねえ、なんで私の方が妹だったの? どうせ転生するならあっちがよかったなー」
「お主らは同一人物、逆もくそもあるまいよ。ではさらばだ!」
神はなぜか窓を開け、そこから飛び出していった。外にいる人の悲鳴が聞こえた気がしたが、まあこの世界であの容姿なら神と錯覚(本物だが)されるだろうし大丈夫だろう。
それと同時にドアが開かれて、メイドのアイリン・グリーンさんが入ってきた。
「あれ、サリアちゃん1人? 話し声がした気がしたけど」
「ちょっと神様にお祈りをね。グリーンさんはどうしたの?」
「朝ごはんが冷めちゃうから呼びに来たの! 今日は私がメインで作ったのよ~? お姉さんの手料理、ぜひ味わってね!」
「うん、もちろん」
ゴーディーの屋敷に勤めていたこのグリーンさん、ゴーディーが失脚した後、なんと私たちの宮殿で働くことになったのだ。涙目になりながら、必死に「職を失ってこのままじゃ生きていけない、ごねにごねてやっとここで雇えてもらえたから他じゃ無理。お願いだから雇ってくれ」と懇願するものだからさすがに断れない。失職の原因は私たちと言えなくもないし。
使用人と雇い主の関係になった後でも態度は変わらなかったが、彼女らしさということで特に咎めておらず、宮殿が一段階明るくなったようで楽しい。少々ミスが多いのは難点だけれども。
「じゃあ着替えしたら来てね! ばいちゃ」
グリーンさんは陽気に手を振りながら去っていった。
「まだ若いのにやっぱおばさんっぽいんだよなあ、あの人……」
彼女に聞こえないようごちた後、私は改めて朝の準備を始めた。あの人も神様の言ってた「出会い」のひとつなのだろうか、いやないか、と思いながら。
そしてすぐに、私たちのもとへ新たな出会いが訪れることとなる。
最上級のベッドから身を起こし、枕元の魔法製時計で時刻を確かめる。いつも通りの午前7時、清々しい朝だった。
今日は魔法学校のある日、準備をしなくてはならない。まずは顔を洗い、服を着替え、それから――考えながらベッドから降りた時。
「うーん、いい座り心地だのう」
1人の幼女が、俺の部屋のソファで勝手にくつろいでいた。純白のワンピースを身に着けて、髪の色も瞳まで真っ白の人間離れした彼女はもちろん人間ではない。私は呆れ顔で言った。
「神様。また無断で部屋に入ってきたの?」
幼女は悪戯っぽく笑った。そう、この子は私を転生させた神だ。こうして私たちの前に現れるのは初めてではない。
「神は受け入れるものだよ。どうだ、異世界ライフは」
「おかげさまで満喫しているよ、その折はどうも……でも女の体にはまだちょっと慣れないかな」
「なんだ15年も生きておいて、容姿も優れたものにしてやったというに? 不満があるのか~?」
神はわかっていて私を煽る。好き放題望みを言った私への嫌がらせとして2つに分けた上に片方を女にしたくせに。
「神様もまたその子供の姿なんだね」
「知っておるだろう、お主がいた世界で神のイメージが老爺であるように、こちらでは白髪の少女がステロタイプであると。無論、老いた姿よりは子供の方が私も好きだがな」
ピョンと椅子から降りて神は笑った。つくづく人間臭い神だ。
「それで? 神様がわざわざ来たってことは何か用事があるんでしょ?」
「うむ。まずは先日のルインズの一件、ご苦労だったな。お主らがその力を善行に使ってくれていて安心しておる」
「それを監視するのもあなたの目的だもんね。でもそれはもう終わったはずじゃ?」
「それがな、そうでもないのだ。奴は金を欲していただろう、それにはもうひとつ目的があったようなのだ」
「目的……?」
「詳細については私からは語らない、神の干渉はあくまでも最終手段。たとえ魔法都市アスパムの住民が全滅しようと、世界そのものが危ぶまれない限りは動けん……神にも理があるのだ。それはよいな」
「うん、わかってる。その代わりに私たちがいるんだよね」
神は直接世界に介入することはない。ただ人に力を与えて代行させることはある。私たちに常軌を逸した力を与えて転生させたのは、実はその仕事も兼ねてのことだったらしいのだ。
「これからお主たちの周辺には今まで以上に変化が訪れるだろう。多くの者がお主たちと出会い、友になる。あるいは敵ともなるであろう。良くも悪くも変化は多い、心しておくことだ」
「出会い……か。わかった、ありがとう」
神の忠告を心に受け止める。たしかにヒトミとあともう1人と出会ったり、少なからず私たちの生活は変化してきている。15歳のこの年、私たちの運命が動き出すということだ。
とその時、部屋のドアがノックされた。
「サリアちゃんー? 誰か部屋にいるのー?」
メイドの声だ。
「では私はそろそろ退散するとしよう。お主の兄にもよろしくな」
「もちろん。ねえ、なんで私の方が妹だったの? どうせ転生するならあっちがよかったなー」
「お主らは同一人物、逆もくそもあるまいよ。ではさらばだ!」
神はなぜか窓を開け、そこから飛び出していった。外にいる人の悲鳴が聞こえた気がしたが、まあこの世界であの容姿なら神と錯覚(本物だが)されるだろうし大丈夫だろう。
それと同時にドアが開かれて、メイドのアイリン・グリーンさんが入ってきた。
「あれ、サリアちゃん1人? 話し声がした気がしたけど」
「ちょっと神様にお祈りをね。グリーンさんはどうしたの?」
「朝ごはんが冷めちゃうから呼びに来たの! 今日は私がメインで作ったのよ~? お姉さんの手料理、ぜひ味わってね!」
「うん、もちろん」
ゴーディーの屋敷に勤めていたこのグリーンさん、ゴーディーが失脚した後、なんと私たちの宮殿で働くことになったのだ。涙目になりながら、必死に「職を失ってこのままじゃ生きていけない、ごねにごねてやっとここで雇えてもらえたから他じゃ無理。お願いだから雇ってくれ」と懇願するものだからさすがに断れない。失職の原因は私たちと言えなくもないし。
使用人と雇い主の関係になった後でも態度は変わらなかったが、彼女らしさということで特に咎めておらず、宮殿が一段階明るくなったようで楽しい。少々ミスが多いのは難点だけれども。
「じゃあ着替えしたら来てね! ばいちゃ」
グリーンさんは陽気に手を振りながら去っていった。
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