迷宮壊しは、全ての始まり

篝火@カワウソ好き

第24話 成長の迷宮〈修復〉1

迷宮に入った俺は、共に付いてきた後ろにいる仲間の方を向いた。


「今から俺がすることに驚くなよ」


俺はそう告げると入り口入ってすぐの壁に手を当てる。


「〈完全解析アナリシス〉[干渉]オペレート」


目を瞑り、自身のユニークスキルを発動させ脳内に入口付近の構造を展開させていく。


「ちょっと入口付近から離れてろ。〈完全解析アナリシス〉[分解]オペレート」


危険だと彼女らにその場から離れるよう指示をし、[分解]を行使すると、間もなく迷宮が震え始める。


そして瞬く間に、入口付近で崩落を重ねた瓦礫が積み上がり外界との繋がりを塞いだ。


俺は一息を入れ、カレン達の方を見た。


そのカレン達【完全封鎖シャットアウト】のメンバーはというと、塞がった入口を見て開いた口が塞がらなくなっていた。


「なっ、なにが起きたんだ……?」


もちろん、彼女らはは戸惑っていた。


だが説明している暇もおしい俺は言いたいことだけ告げた。


「ここから先は俺とコアの二人だけで行く。入口は塞いだが数多くのゴブリン押し寄せてくるだろう。それを頼む!!」


言いたいこと言って、俺はコアと共に先へと走ることにした。未だに、唖然とした顔を浮かべる彼女らを置いて……


──


「アディー君、取り敢えず置くまで進む間に遭遇したゴブリンは倒していくんだよね?」


「もちろんだ。言うだけ言って置いてきたからな。流石に数は減らしていかないと……けど、まぁ正面にいた敵だけだがな」


今は次の階層、その次の階層へと下層へ続く階段に向かって一直線に走っている。


奥に向かうその直線上には、ゴブリン達がこちらへと向かってくる姿がある。


それも1体2体の話ではない。


遭遇するもの全てだ。


──違和感


そう、違和感を感じずにはいられない。


いくら迷宮の縛りが外されたからといって迷宮ない全ての魔物が外に出ようとするものなのか?


いや、それは無いだろう。であれば、元の迷宮の時からそのような行動をとっているはずだろう。


だったら何故?


もしかしたら──「アディー君っ! 前っ!!」


コアの声に思考を現実に戻し、正面に意識をおいた。


距離は5メル思いの外、思考に囚われていたようだ。


「ッシッ!!」


横に空絶輪を振る。


呆気なく倒れていったゴブリンを見て俺は目を見開いた。


「何で、死んだ魔物が消滅しない……?」


思えばそうだ。地に出た後も、ゴブリン達は姿かたちを残したまま死んでいった。


となると考えられるのは、体を持った生命体が生まれ、それによって食に渇望でもしたのか? がちに向かった理由としては妥当だ。


少なくとも安定状態の迷宮では、ゴブリンは喰らうなど微塵も考えないで目に入った敵をただ殺そうと殺気立っていただけだった。


そう考えると、不可解な点が多く見つかる。


俺は、再び思考の渦に飲み込まれる。


「アディー君、今は目の前にある迷宮の事考えていく。それだけだよ」


しかしコアの声に、再度現実に戻された。


「そうだな。まずは原因を取っぱらって安全を確保しないとな」


コアに為すべきことを示唆され、現状を見つめ直した後、俺達は再び奥地へと足を進めた。


◆◆


少し時間は遡り、アデージュとコアに残された直後の入口の様子である。


「ははは……夢でも見ているのかな」


スレイは虚ろな目で、微かな笑いと共にそう呟く。


「いや、自身の顔を殴ってみたが痛みがあるようだ」


ダンは現実であることを証言する。


「頼むって言われて、崩れたこれを見せられて、さり気なく退路を断たれてるっていうねぇ……」


ミアリーは、現実は見ているもののその現実に嘆きを通り越して呆れをこぼす。


「ハァッ……皆、アデージュがとんでもない事をやるのは事前に言われていたはずだ。……それよりもだ。これからゴブリンが押し寄せてくると言っていただろう。アイツの事だ。数は減らしてくれているだろうさ。だからアイツらを抜けてきたゴブリン共を倒さなければならない」


カレンがパーティメンバーに訴える。


「そうだね」
「その通りだ」
「リーダぁ〜、指示を!」


「スレイ数をこなせ! ダン敵を押し返せ! ミアリー補助は任せる!」


そして、彼女の耳に多くの足音が聞こえてきた。


「戦闘準備! 任されたものはやり遂げなければな!」


カレンの声に首を横に振り方を竦めながらも、表情に笑みが戻る。


「フェアレスト最強パーティ【完全封鎖シャットアウト】の名にかけて、1匹たりとも敵を通すなっ!!」


「当然!!」
「無論!!」
「了解!!」


全員が足音の聞こえる方角に目を向ける。


武器は手に取った。


ここに一つの防衛戦が始まろうとしている。


◆◆


場所は現在のアデージュ達に戻る。


現在、第4層の地を踏んでいる。


目の前にはゴブリンリーダーが3体。


一度倒してインターバルがあるはずのリーダー級が多数、迷宮内に生み出されて外へ外へと向かっている。


「コア、出し惜しみするべきじゃないよな?」


「そうしてくれると、助かるわ……」


俺はコアの返答を聞いてため息を吐きつつも、リーダー共を見据えた。


「〈完全解析アナリシス〉[干渉][探知]オペレート」


右手を地につけ、スキルを使う。


目を閉じて、頭に入ってくる情報は、干渉による地の構造、探知による敵の場所。


リーダー共に変則的な動きは見られない。


速さは1セカで8メル。


[分解]による発動と実行にタイムラグはどんな距離であろうと1セカである。


ならば、奴らの前8メルに発動すればいい。


「コア、落としたら頼むぞ」


「了解!」


「〈完全解析アナリシス〉[分解]オペレート」


俺が唱えると、一メル後に奴らの踏んでいた地が崩れ落ちる。


その落とし穴にまんまと引っかかった3体のリーダー。


「地の精よ──」


あっ、これグロいやつや……


俺は地という語句がコアの口から出た時点でどうなるかが把握出来てしまった。


「──汝を示せ《土属演舞ソイルダンス》[圧縮した土の槌アースプレス]!!」


ヤツらの頭上にコアの放った土の渦が圧縮をはじめ、相当な強度を誇る塊が形成されていく。


やがて3体を優に覆い尽くす塊が完成すると、コアは一言。


「落ちなさい!」


その際の描写は割愛しよう。


取り敢えずうちの嫁さんが容赦なくむごかった。


それだけだッ!…………それだけです。


──


それにしても、数が多過ぎる。


ゴブリン達が生み出されるのが通常の五倍、いやそれ以上に多いのだ。


ここまで来ると、作為的な何かを疑ってしまう。


それよりも結構後ろにゴブリン共を逃がしちまってるな……


「これ、カレンさんたち大丈夫なの?」


「俺も丁度考えてた。けどやっぱ早く奥まで倒すのが最善手だな」


結局、原因を探すにしろ、現在より下層のゴブリン達が上層に上がってきている以上、その奥に原因があることは明確な事実なのだ。


ならばこのまま下層へと突っ切るしかない。


「下に降りるぞ」


俺のその声にコアは頷き、共に第6層の階段を降りる。


階段を降り切ると、異なる雰囲気が体を襲う。


その時、すぐに危険を察知した。


「コア、横に飛べ!」


俺の声にコアが咄嗟に反応する。


ドカァァン!!


コアの元いた位置は大きな火の球体が直撃し、けたましい焼き跡を残していた。


この大きさ、この規模間違いない。


──リーダー級のゴブリンマジシャン


「嘘だろッ!?」


「固定砲台のはずじゃ!?」


俺達の疑問も虚しく、そこに存在していたのは重たそうな足を動かした巨体のゴブマジそのものだった。


第9層で、苦戦を強いられただけにこれは厄介だ。


なんせ、近付くとゴブマジのくせに太い腕で俺たちを潰そうとしてくる敵だ。


それが動けるとなっただけで、ヤツの、攻撃の幅が相当広がるはずだ。


「グギャャャッ!!」


そんな敵が今目の前で咆哮を上げる。


俺と、コアの額からは冷たい汗が一筋流れた。

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