迷宮壊しは、全ての始まり

篝火@カワウソ好き

第19話 成長の迷宮7part2

──


「貫けぇぇッ!!」


そんなカレンの叫びが後方から聞こえる。


視線だけを動かすと、カレンがどうやら多くのゴブリンを一発で屠っていた。後は、雑魚処理みたいだ。


「流石、街最強パーティだな」


「こっちも終わらせるよアディー君」


俺達の目の前にいるのは5体の精鋭ゴブリンと固定砲台のゴブマジリーダーだった。


「中級魔法の規模は理解してる。コアは固定砲台の魔法の対処に徹してくれ」


「了解したわ!」


コアは口角を上げての返事をしてきた。


もうこれ、戦闘狂以外の何物でもないな。


というかコアさん笑みを浮かべすぎじゃね?


でも、こうして精鋭ゴブリンを相手できるのにワクワクしている俺が言えたもんでもないけどな……


「さぁ、リーダーがでっかい土魔法を放ってきたぞ。まあコアなら大丈夫だよな、そっちは任せた!」


「もちろん! 風の精よ、我に纏い、汝を示せ『風属演舞ブロウダンス』からの[千の風斬サウザンキル]!!」


コアが魔法を放つと同時に、ゴブリンの魔法がそれにぶつかる。土、いや岩のような魔法はコアの風の舞によって砂煙へと化していた。
凄いわ、コアの魔法。てか貴女、名前つけるの好きだね……


とはいえ、見事に対処したコアを見届けると、俺は今より全意識を精鋭ゴブリン共に向けた。


お互いに睨み合っていると、やがてゴブリン5体が一斉に動き出す。


だが俺は、その動きに目を見開いた。


何だ? この奇妙な動きは?


縦横無尽に動く精鋭ゴブリン共。


しかしだ、俺にとってその動きは効果的過ぎた。


何故なら、空絶輪最大の利点である投擲という方法が封じられたからだ。


俺の武器は、相手が大きければ大きい程に輝きを増す。


だが、相手は精鋭といえど大きさは普通のゴブリンと変わらぬ人間よりも小さい魔物なのだ。


自動的に近距離戦を余儀なくされた。


そして更に厄介な点が精鋭ゴブリン5体のうち2体目にはあった。


動きながらに魔法を放ってくるのだ。


見た目は迷宮生まれ故か違いは見られないので、不用意に近づくことすら出来ない。


こうなると本当に魔法の透過システムが厄介だな。


ランダムな動きを見せるから、何処から魔法が飛んでくるか分かったもんじゃない。


空絶輪は、現状使いづらいな。


となると、残された方法はただ一つ。


──『完全解析アナさん』に頼るか……


「『完全解析アナリシス』[探知]オぺレート」


ランダムに見えて、意外と動く範囲は決まっているのでは? という理由からの[探知]を発動。


案の定、正解だ。ランダムに見えて正方形と対角線を描くように、5体が隙間なく動いている。それも一度のブレもなく。


よくもまあ、巧妙な動きをしやがる。


だが、しかし次の一手が戦況を大きく分ける。


「『完全解析アナリシス』範囲:半径10メル地表[解析]オぺレート」


すると同時に脳内に伝わる情報。この情報の使い方は初めて使った時に、よく理解した。
此処は、多くの人が訪れる迷宮。
壊しはしない、ちょっとヒビを入れるだけだ。


「『完全解析アナリシス』[分解]オぺレート」


そう唱えると、一瞬で対角線含めた正方形の形に地割れという技法を用いて作品を描く。その作品の飾りとなるのは、5体のゴブリンである。


その一定の巧妙な動きが仇となる。速さもとても素晴らしかった。だが、速さは時に油断を生む。


俺は地割れに嵌ったゴブリンに近づくと、首に刃を当て作品に静寂というテイストを加えた。


やがて割れ目からあがる暗い光が作品の完成を告げる。


俺はそれを見て思う。


俺のスキルは迷宮内で使うべきではないと。


本来ならば倒してなんぼだろ、という声が聞こえてきそうだが俺は全くそうは思わない。


だって


──つまらないんだもんっ!!(戦闘狂発言)


それにしても迷宮の回復は早い。もう地割れが修復されていく。


俺はそれを最後に見やると、体の向きを反転させた。


──近距離武器、練習しようかな


せっかくの面白そうな戦闘を不意にした俺は肩を落としながらコアの方へと向かった。


──


「──ハッ!……ふぅ、アディー君?」


「あっちは終わらせた」


「その割には不完全燃焼だね?」


「アレ使ったからな」


「アレ?」


「ユニークスキル」


コアはそれを聞くと、あぁ〜、となんとも言えない表情になった。


「なる程ね、そりゃ燃焼し切れてない訳だ、よっと!」


俺と会話をしながら魔法の相殺をこなすコア。


間違いなく異常である。


「てことで、こっちで燃焼させて頂く。こっちは、さっきとは対照的に動かない相手だからな」


俺は興奮で血が滾る。


んっ?血が滾っちゃったよ!?
俺の戦闘狂具合、絶賛加速上昇中ですわ!!


「良いわ、割と対処に手一杯だからね」


「ん、? そうには見えないが」


「向こうの魔法、結構散らばってくるから神経使うの」


なる程、では参りますか!


そう思う前には、既に一歩目が出てた。


うわ、どんだけ戦いたかったんだよ俺……


自分の行動に苦笑いを浮かべつつ、俺はコアにしか気が言ってないリーダー野郎の近くへ駆けていく。


近くで見ると、大きく見えた。


成人男性の二倍はあるであろう体格。見た感じ、筋肉の厚みも凄そうだ。マジシャンのクセに……


俺はリーダーの後ろにジャンプして首裏を狙う。


そこで俺は鳥肌が立つ。


ジャンプした目の前には奴の、極太の腕が目の前に迫っていたのだ。


俺は慌てて右手に持つ空絶輪を逆さ握りにし、俺の腕の骨に直接影響が起きないように防ぐ。


だが、奴の腕の力は見た目通り重量を帯びていて、俺は身体を吹っ飛ばされた。


15メル程飛ばされた俺は、何とか足で地面を抉りつつも着地したが、腕はやつの打撃の反動で痺れていた。


「こいつ強いわ。途中まで目を合わそうとしなかったから完璧に油断させられた。ハハッ、面白いッ!!」


「アディー君、ゴブリン大丈夫なのー?」


遠くからコアの声が聞こえる。俺はその声に大丈夫だと手を挙げて答えた。


再び、奴を見つめる。


これがゴブリンリーダー(マジシャン)の外装か……筋肉の密度がほかと比べ物にならねぇ。


第5層の時は途中でダンの野郎に邪魔されたから体感できなかったし。チッ、消えろ。


でもこれは一人じゃ厳しいな。


「コア、一緒にアイツを殺るぞ」


「ふふっ、待ってたわ!」


俺は作戦を練る。


外装が硬いのは想定済み。
一発では首を切り落とせないのも確かだ。


となると、交互に囮になるしかないか。


コアにそれを伝える。


「まずは、俺が囮になる。思いっきり顔にぶち込んでやれ!」


「了解!」


俺は再び奴の前へと走り寄る。そして、戦闘をするかしないかの微妙な間合いを取ることにした。
いや違うな、相手の認識を俺だけに向けるための間合いを取ることにした。


コアへの攻撃の合図は、俺が攻撃を仕掛けた時。


そう完璧に攻撃対象を俺だけにさせた時だ。


さぁ始めようか俺は先程の精鋭ゴブリンのように攻撃の引き合いに出させる間合いでランダムに走り回る。


奴は視線で俺を追っている。


よしこの調子だ。後は腕さえ動いてくれれば。


そうすること、30セカ。


ついにやつの腕が動き出した。
その瞬間に俺は奴の背後に回る。


そうすると遂にはコアの存在を忘れて顔をこちらに向けようとしてきた。


俺がジャンプをする。


「さぁコア、横顔にぶち込んでやれ」


俺はそう呟く。少しコアの魔法がずれれば俺にも被害が出る。


だが俺はコアを信頼しているからな。
俺は完全にやつの背後に消える前に笑みをコアに見せるように浮かべた。


さぁ、後は信じるだけだ。


──


アディー君は飛ぶ前に今微笑みを見せてくれた。


愛する人に信頼されるのは最高だわっ!!


「さっきのアディーの分を返してあげるわ!」


「土の精よ、我に纏い、汝を示せ『土属演舞ソイルダンス』!! その醜い面を汚しなさいっ[粘土爆弾ソイルボム]!!」


──


コアの作った技の名前が聞こえた。


醜い顔を汚しなさいって、ププッ言い過ぎや!


俺は微塵もコアが外すことを想像していない。


それはもうすぐ分かる。


3セカ後、リーダーが完璧に横へ向くと同時にコアの土魔法がその顔面に直撃した。


ほら、言った通りになった。


俺はジャンプが怯んだ奴の首筋の高さに到達した。


ここからは速さで決まる。


「『風属性付与ブロウエンハ』」


手に持つ空絶輪の風の力を利用して身体の回転を開始する。刃は奴の首に向ける。


一回転目は、表皮を削る。二回転目は筋肉の表面を断つ。三回転目は、筋肉の中程まで断つ。四回転目には、筋肉を完璧に断ち切った。


そして、上がりかかった腕は俺に届く前に、奴の首元、その剥き出しの骨へと刃が当たる。


「ウオォォぉぉぉッ!!」


俺は五回転目を、吼えながら骨を断つ感触を感じつつも身体を回し切った。


そして、地にふわりと着地すると、背後から奴の膝をつく音が聞こえた。


重量の伴った胴体が地に倒れると、体が爆散するかのように大きなくらい光によってゴブリンリーダーの体が消えていった。


俺が、充実した戦いの余韻に浸っているとコアが飛びかかってきた。


「アディー君お疲れ様!!」


急なことで驚いたが、抱きついてきたコアの頭を撫でて俺も褒めることにする。


「コアも、最高の顔面射撃だったぞ!!」


「当然よっ!」


まぁ、結局はどんな戦いの後でも、イチャつく事に変わりはない。


そして今回も、『完全封鎖シャットアウト』のメンバーが呆れのこもった苦笑いを向けて歩いてくるのにも変化はない。


そんなこんなで俺達は、この場における戦闘は終わりを迎えるのであった。


──第9層、踏破

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