迷宮壊しは、全ての始まり
第16話 成長の迷宮5
十分に休息をとり終え、心身共に回復させた後、俺達は次の下層へと動き出した。
◆◆
第七層に来たわけだが、下層へ降りる途中で話した内容によると、ここでは先のゴブに加え弓を扱うものが増えるようだ。
要は遠距離対策をしろということらしい。
「俺とコアで右方をやります、少し多めの左方は任せました」
「了解だ」
俺の提案を了承すると、カレンはメンバーに指示を出した。
そうやって敵を堅実に倒していく一連の動きには、思わず賞賛の声が出てしまう程だ。
彼女らのパーティの名は『完全封鎖』というらしい。確かに討ち漏らしなく確実に勝利を収める様はその何、相応しいと言えよう。
俺とコアは、次々とゴブリンを倒していく彼らを背後に右方を見やった。
はてさて、此方には後方に弓ゴブどもが多数構えている。どうしたものか……
そんな風に考えていると、コアから声がかかった。
「弓のゴブリンたちは私が相手していい?」
「何か策はあるのか?」
「試したいことがあるの」
コアはそう言って、口角を上げて笑う。
ハハッ、今ゾクッて来たよ……いい表情だぁ!
それにしても意外でもなく普通に俺と同種だよなコアって……
今彼女から漏れ出ている雰囲気は正しく
──戦闘狂
これなら任せられると思い、俺は頷いた。
「ありがとう、アディー君。じゃあ行ってくるわっ!!」
そのコアの言葉で俺らの戦闘も開始した。
「火の精よ、我に纏い、汝を示せ『火属演舞』! 我から放たれよ火の精達、弓のゴブリンの前に壁を作りなさいっ!! 名は[フレアウォール]!」
俺は、呆気に取られた。コアの少しの言葉で、さっき見たカレンの中級火属性魔法の規模と同等の大きさの火の壁を展開させたからだ。
──俺は思う、やはりコアの魔力量と多分、質のレベルは異常だと
「アディー君、前方は任せたわ!」
その声で我に返ると、俺は駆け出した。
「ハハッ、あんなの見せられたら、俺も負けてられないなッ」
ヤバいわコレ、今メッチャ気持ちが昂っとる!
試しということで俺も考えていた事を実践してみることにした。
「『風属性付与』」
まず速さを加える。
敵は、質こそ空絶輪のミスリルには劣るはずだが、盾を持っている。それだけに縦を壊してそのまま倒す威力はなくなるだろう。そこでだッ!
俺は一つの応用を加えることにした。
「『火属性付与』!」
そう、二重付与である。
速度に、火力をプラスさせたことで、全てを破壊する。
俺はコアの火の壁の前方にいる盾持ち剣士ゴブに向かって体を一回転させ遠心力を使って思いっきり投げた。それを繰り返すこと5回程。
全ての首を落とすことに成功した。
その後、コアは俺が捌けたのを確認したのか止めていた身体を動かしだした。
「さぁ、フィニッシュよ! 火の波に飲まれなさいっ[フレアウェーブ]!!」
・・・
うん、取り敢えず、結果は言うまでもなく圧勝であった。
てか最後のコアさんのアレ、マジで怖い……
おれ、町の近くに海があったんだけど、そこの波は穏やかだった。けど、コアさんの奴は恐ろし過ぎる!
なんと、火の壁をそのまま濁流のように勢い良く、弓ゴブたちの方に流したのだ。
無論あえなく奴らは火の波に飲まれ、崩れ落ちていった。
ヤバい、俺がくらった訳じゃないのに、正直俺の腎臓の辺りがキュンキュンしてるよ……
「アディー君! どうだった!?」
コアが笑顔で走り寄ってきた。俺に対して、たまに口調が変わるのもまた良し!! 可愛いわぁ〜(照)
この時既に、俺のお漏らし衝動は収まっていた。
──これさっき遠まわしに言った意味無くないッ?
──
時間は少々戻りパーティ『完全封鎖』へと移る。
「ダン、盾で押し込め、よしっ! スレイ、足を狙え! ミアリー、ダンに支援を!」
私はそう言いながら、私以外の三人に寄るゴブリン立ちを相手取る。
「我告げる、地に問いかけよう」
私は目を閉じて詠唱を紡ぐ。
「内に秘めるは万象か」
私は聴覚を意識的にオフにする。
「願うは円陣、地の怒りをもってして」
最後の詠唱文
「炎の災禍を大地に顕せ」
その名も
「『マグマス・クライス』!!」
私がそれを唱えると同時に、三人を囲んでいたゴブリン共の足元から質量のある炎が上へと突き上がる。
──一匹残らず倒せたな。
「流石だよ、カレン!」
「ナイスだ、リーダー」
「カレン最高ぅ!」
仲間が感謝の意を告げてくる。
「後は任せたぞ!」
「「「了解!!」」」
三人の声で一息つき、最初に右方に行った二人を見やる。
あちらには、厄介な弓ゴブリンと盾持ちゴブリンがいるが、君たちはどう出る。
アデージュとコアが微笑みあって敵を見据える同時に、コアの方が短い詠唱をした。
魔法かと思い、私は見ていると驚きの余り、目を見開いてしまった。
──彼女は、あれだけの詠唱で私の中級魔法と同規模の魔法が出せるのかっ!
彼女は私の魔法と、同じくらいの高さ、幅で火の壁を作り出したのだ。
あの魔法が特殊なのか? それとも元の魔力量、質が要因なのか?
私が、そんなことを考えていると、今度は彼の声が耳に届く。
──今度は無詠唱魔法かっ!!
アデージュが唱えると同時に、彼の手に持つ異型の武器が緑の光を放つ。あれは、珍しい付与系統の魔法なのか!
そしてまた、彼は魔法を発動させる。
どうやら、先の無詠唱魔法の重ね掛けらしい。
彼の武器の放つ光に、赤色が加わった。
そして彼が武器を投じると、ゴブリンの持つ盾を砕きそのまま首を落としていく。それを五回連続でだ。
なんだあの武器は、もしかして滅多に地上に出回ることのないミスリルとやらで作られているのではないのか? かの材質は、魔力の伝導率が高いと聞く。ならば、あの武器にあそこまで魔法を付与できるのも納得だ。何故あの武器が手元に戻ってくるのかは、原理がさっぱりわからないが……
後は、あの投擲の技量だ。何故、毎度毎度盾に隠された奴らの首元に向かって武器を投げられる。それを何事もなく平然と行う動作が恐ろしい。
彼の戦いが終わると、再び彼女の方に視線を戻す。
どうやら、火の壁を消すらしい。素晴らしい壁だった。
次はどんな魔法を見せてくれるのだろう。
そう少し、期待した目を向けていると、またも目を見開いてしまった。
私は何度、驚けば気が済むのだろうか、私がおかしいのではない! 彼らがおかしすぎるのだ!!
彼女は、火の壁を消すことなく、そのまま多くの弓ゴブリンのいる方へと流したのだ。
そこで私は思い出した。津波という自然現象の状態に非常に酷似しているのでは、と。
津波というのは、海などで見られる波が異常に高くなって押し寄せるといった現象だ。
私は実際に見たことはないが、その恐ろしさについては知っている。
彼女が起こしているのは、まさしく火で構成された津波であると。
アレがこちらへ向かって来たらと思うと恐ろしい。見ているだけなのに、思わず身震いしてしまう。
火の波が去ったあと残るものは、弓のゴブリンのであろう魔石だけだった。
あの子達は、イレギュラーだ。私はそう確信する。彼らはこの先、何かとんでもない事を起こしていくだろう。
少なくとも何らかの形で歴史に名を刻む。
それは確定事項だと感じた。
私は固まっていた身体から意識的に力を抜くと、メンバーの方を見た。
皆も、とっくに倒し終えていて彼らの戦闘を見ていたのであろう。
すごい、あんぐり顔をしている。間違いなく私もあの顔をしていた。
私はメンバーの方に歩み寄った。
「あれはもう、イレギュラーだ。気にするな」
嘘だ、私は半端なく気にしている。
「俺を気にするなって無理でしょ……」
「無理だな」
「てか、カレンの表情と言ってることが矛盾してるよぉ」
どうやらバレていたみたいだ。
そんな風に、私達が苦笑いを浮かべながら話していると、アデージュとコアがニコニコ笑い合いながら此方に向かって歩いていた。
「パーティ戦って楽だなぁ、コア」
「本当にそうね、アディー君」
彼らの会話に、私達は驚き足れた表情を作りながら、衝動的に口を揃えて言い放った。
「「「「どこが、パーティ戦だぁっ!!」」」」
盛大な私たちのツッコミに返ってきたのは、彼らの「へっ?」といったアホ丸出しのポカン顔だけだった。
◆◆
第七層に来たわけだが、下層へ降りる途中で話した内容によると、ここでは先のゴブに加え弓を扱うものが増えるようだ。
要は遠距離対策をしろということらしい。
「俺とコアで右方をやります、少し多めの左方は任せました」
「了解だ」
俺の提案を了承すると、カレンはメンバーに指示を出した。
そうやって敵を堅実に倒していく一連の動きには、思わず賞賛の声が出てしまう程だ。
彼女らのパーティの名は『完全封鎖』というらしい。確かに討ち漏らしなく確実に勝利を収める様はその何、相応しいと言えよう。
俺とコアは、次々とゴブリンを倒していく彼らを背後に右方を見やった。
はてさて、此方には後方に弓ゴブどもが多数構えている。どうしたものか……
そんな風に考えていると、コアから声がかかった。
「弓のゴブリンたちは私が相手していい?」
「何か策はあるのか?」
「試したいことがあるの」
コアはそう言って、口角を上げて笑う。
ハハッ、今ゾクッて来たよ……いい表情だぁ!
それにしても意外でもなく普通に俺と同種だよなコアって……
今彼女から漏れ出ている雰囲気は正しく
──戦闘狂
これなら任せられると思い、俺は頷いた。
「ありがとう、アディー君。じゃあ行ってくるわっ!!」
そのコアの言葉で俺らの戦闘も開始した。
「火の精よ、我に纏い、汝を示せ『火属演舞』! 我から放たれよ火の精達、弓のゴブリンの前に壁を作りなさいっ!! 名は[フレアウォール]!」
俺は、呆気に取られた。コアの少しの言葉で、さっき見たカレンの中級火属性魔法の規模と同等の大きさの火の壁を展開させたからだ。
──俺は思う、やはりコアの魔力量と多分、質のレベルは異常だと
「アディー君、前方は任せたわ!」
その声で我に返ると、俺は駆け出した。
「ハハッ、あんなの見せられたら、俺も負けてられないなッ」
ヤバいわコレ、今メッチャ気持ちが昂っとる!
試しということで俺も考えていた事を実践してみることにした。
「『風属性付与』」
まず速さを加える。
敵は、質こそ空絶輪のミスリルには劣るはずだが、盾を持っている。それだけに縦を壊してそのまま倒す威力はなくなるだろう。そこでだッ!
俺は一つの応用を加えることにした。
「『火属性付与』!」
そう、二重付与である。
速度に、火力をプラスさせたことで、全てを破壊する。
俺はコアの火の壁の前方にいる盾持ち剣士ゴブに向かって体を一回転させ遠心力を使って思いっきり投げた。それを繰り返すこと5回程。
全ての首を落とすことに成功した。
その後、コアは俺が捌けたのを確認したのか止めていた身体を動かしだした。
「さぁ、フィニッシュよ! 火の波に飲まれなさいっ[フレアウェーブ]!!」
・・・
うん、取り敢えず、結果は言うまでもなく圧勝であった。
てか最後のコアさんのアレ、マジで怖い……
おれ、町の近くに海があったんだけど、そこの波は穏やかだった。けど、コアさんの奴は恐ろし過ぎる!
なんと、火の壁をそのまま濁流のように勢い良く、弓ゴブたちの方に流したのだ。
無論あえなく奴らは火の波に飲まれ、崩れ落ちていった。
ヤバい、俺がくらった訳じゃないのに、正直俺の腎臓の辺りがキュンキュンしてるよ……
「アディー君! どうだった!?」
コアが笑顔で走り寄ってきた。俺に対して、たまに口調が変わるのもまた良し!! 可愛いわぁ〜(照)
この時既に、俺のお漏らし衝動は収まっていた。
──これさっき遠まわしに言った意味無くないッ?
──
時間は少々戻りパーティ『完全封鎖』へと移る。
「ダン、盾で押し込め、よしっ! スレイ、足を狙え! ミアリー、ダンに支援を!」
私はそう言いながら、私以外の三人に寄るゴブリン立ちを相手取る。
「我告げる、地に問いかけよう」
私は目を閉じて詠唱を紡ぐ。
「内に秘めるは万象か」
私は聴覚を意識的にオフにする。
「願うは円陣、地の怒りをもってして」
最後の詠唱文
「炎の災禍を大地に顕せ」
その名も
「『マグマス・クライス』!!」
私がそれを唱えると同時に、三人を囲んでいたゴブリン共の足元から質量のある炎が上へと突き上がる。
──一匹残らず倒せたな。
「流石だよ、カレン!」
「ナイスだ、リーダー」
「カレン最高ぅ!」
仲間が感謝の意を告げてくる。
「後は任せたぞ!」
「「「了解!!」」」
三人の声で一息つき、最初に右方に行った二人を見やる。
あちらには、厄介な弓ゴブリンと盾持ちゴブリンがいるが、君たちはどう出る。
アデージュとコアが微笑みあって敵を見据える同時に、コアの方が短い詠唱をした。
魔法かと思い、私は見ていると驚きの余り、目を見開いてしまった。
──彼女は、あれだけの詠唱で私の中級魔法と同規模の魔法が出せるのかっ!
彼女は私の魔法と、同じくらいの高さ、幅で火の壁を作り出したのだ。
あの魔法が特殊なのか? それとも元の魔力量、質が要因なのか?
私が、そんなことを考えていると、今度は彼の声が耳に届く。
──今度は無詠唱魔法かっ!!
アデージュが唱えると同時に、彼の手に持つ異型の武器が緑の光を放つ。あれは、珍しい付与系統の魔法なのか!
そしてまた、彼は魔法を発動させる。
どうやら、先の無詠唱魔法の重ね掛けらしい。
彼の武器の放つ光に、赤色が加わった。
そして彼が武器を投じると、ゴブリンの持つ盾を砕きそのまま首を落としていく。それを五回連続でだ。
なんだあの武器は、もしかして滅多に地上に出回ることのないミスリルとやらで作られているのではないのか? かの材質は、魔力の伝導率が高いと聞く。ならば、あの武器にあそこまで魔法を付与できるのも納得だ。何故あの武器が手元に戻ってくるのかは、原理がさっぱりわからないが……
後は、あの投擲の技量だ。何故、毎度毎度盾に隠された奴らの首元に向かって武器を投げられる。それを何事もなく平然と行う動作が恐ろしい。
彼の戦いが終わると、再び彼女の方に視線を戻す。
どうやら、火の壁を消すらしい。素晴らしい壁だった。
次はどんな魔法を見せてくれるのだろう。
そう少し、期待した目を向けていると、またも目を見開いてしまった。
私は何度、驚けば気が済むのだろうか、私がおかしいのではない! 彼らがおかしすぎるのだ!!
彼女は、火の壁を消すことなく、そのまま多くの弓ゴブリンのいる方へと流したのだ。
そこで私は思い出した。津波という自然現象の状態に非常に酷似しているのでは、と。
津波というのは、海などで見られる波が異常に高くなって押し寄せるといった現象だ。
私は実際に見たことはないが、その恐ろしさについては知っている。
彼女が起こしているのは、まさしく火で構成された津波であると。
アレがこちらへ向かって来たらと思うと恐ろしい。見ているだけなのに、思わず身震いしてしまう。
火の波が去ったあと残るものは、弓のゴブリンのであろう魔石だけだった。
あの子達は、イレギュラーだ。私はそう確信する。彼らはこの先、何かとんでもない事を起こしていくだろう。
少なくとも何らかの形で歴史に名を刻む。
それは確定事項だと感じた。
私は固まっていた身体から意識的に力を抜くと、メンバーの方を見た。
皆も、とっくに倒し終えていて彼らの戦闘を見ていたのであろう。
すごい、あんぐり顔をしている。間違いなく私もあの顔をしていた。
私はメンバーの方に歩み寄った。
「あれはもう、イレギュラーだ。気にするな」
嘘だ、私は半端なく気にしている。
「俺を気にするなって無理でしょ……」
「無理だな」
「てか、カレンの表情と言ってることが矛盾してるよぉ」
どうやらバレていたみたいだ。
そんな風に、私達が苦笑いを浮かべながら話していると、アデージュとコアがニコニコ笑い合いながら此方に向かって歩いていた。
「パーティ戦って楽だなぁ、コア」
「本当にそうね、アディー君」
彼らの会話に、私達は驚き足れた表情を作りながら、衝動的に口を揃えて言い放った。
「「「「どこが、パーティ戦だぁっ!!」」」」
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