迷宮壊しは、全ての始まり
第14話 街最強パーティと対談する
──頭を下げるパーティ規模の四人が俺の前にいる。
それを見る攻略者たちの目と口は大きく開けられていた。最早、カオスだッ!!
何故こうなったか時を少し遡ることにしよう……
◆◆
「ふ、ふ、ふざんけんじゃねぇぇぇぇぇッ」
俺は、生まれて初めて怒鳴るという行為をした。
「何勝手に人の獲物を横取りにしてんだよッ!!」
「そ、それは危ないと思ったからでだなぁ」
「それなら、断りもなく横取りしてもいいってかァ? だったら何だッ、衰弱し切ったリーダーを見なかったのかァ? アァンッ!?」
俺の言葉に巨漢は狼狽えた。
傍から見るとすごい絵面である。
身長こそは近いものの、細身のやつが極太に不良丸出しの批判を浴びせているのだ。
周りに人がいれば、ギャラリーとして集まっている所である。
俺は今にも殴りかかりそうだったが、それにコアが気づいたのか止めに来た。
「それ以上はやめなさい、アディー君!!」
「止めるんじゃねェ!  このままじゃ腹の虫が収まらねェッ」
コアに抑えられてなお、歩みを進めようとする俺に彼女は奇行を犯した。
チュッ!!
「──んっはぁっ……ちょっ! コア、何してるんだ!?」
何と、舌を突っ込んだキスをしてきたのだ。
「だって、アディー君!! 今私のこと全く見えてなかったでしょ……」
上目遣いで顔を赤く染め、コアはゴニョゴニョとそう呟く。
──かっかっ、かわいすぎるぅぅぅっ!! ブハッ(鼻血)
俺は何かを忘れ、コアに抱き着きデレデレしていると後ろから声を掛けられた。
「お、おいっ、俺は許されたのか?」
その声に俺は今の状況を思い出す。
ンッンッ
俺は息を整える。
「はぁぁぁ、そんな訳ないだろ。コアのお陰で落ち着けたが、それとこれとでは話は別だろうよ。俺ははっきりいって攻略者でもビギナーだ。だが今回に関してはあんたの完全な不注意だろ。まず何で状況を俯瞰しない? 見た感じあんた程の実力者なら把握くらい出来ただろ。それをいきなり断りもなく敵を横取りする。これのどこに許す可能性を見いだせるんだ?」
俺の説明に、間違いがないのをしっかりと理解出来ているのか、土下座をしてきた。
────っていきなり土下座かよ!!
「本当に申し訳なかった!!」
そう謝罪をする巨漢にあたふたしている所に、下層から登ってきた彼のパーティと遭遇した。
◆◆
そういう訳で、俺達は地上に戻ったあと、事の経緯を話したことで彼のパーティ全員からの謝罪を受けているのだ。
「君は、7年も攻略者やっててそんな常識も守れないのかっ! ほんとに私のパーティメンバーが申し訳なかった」
「俺からも謝る、本当に済まなかった」
「本当にごめんね〜」
パーティリーダーなのだろう、綺麗で長い赤髪を持つ硬派な美女が頭を下げると、金髪のイケメンの剣士、紫髪の妖艶の美女がそれに続いて頭を下げてきたのだ。
以前、茶髪の巨漢は地につきそうなほどに直立状態で頭を下げ続けているが……
──なんて言うか……堪らないのぉ〜!
俺が謎の優越感に浸っていると、コアが耳を引っ張ってきた。痛いっ。
「ほーら、真面目な謝罪中にふざけないっ」
諭された俺は、一回大きな深呼吸をするとひとつ尋ねることにした。あと、謝ってきたことだし一応先輩らしいから敬語を使うことにした。
「今回の敵は、経験値が大きかったと思う。それに見合う対価を用意できるか?」
俺がそう聞くと、リーダーさんが口を開いた。
「私達はこれでも此処フェアレストの地では、そこそこ名が通っていると自負できる程度の実力は持っているつもりだ。ある程度の要望なら答えることが出来るだろう」
なるほど、要望の提示形式か……これは、おっさんの提案を実行に移すチャンスかもしれないな。
「ところで、パーティのランクは如何程で?」
「この地では他にはいないだろう3だ!」
はい、決定!!
「では、しばらくパーティを組んでもらうことで、今回の件は不問にすることにしようと思う。それで良いか?」
「構わないというか、 むしろ全然OKだ! 本当にそんな事で良いのか? 」
そんな事ではない、今後のことを考えると万々歳である。
「ああ、それでお願いする。構わないよな、コア?」
「私はアディー君について行くだけよ」
「では、そういう事で。もう顔は上げてもらって良い。周りの目が痛い……」
俺の声に、パーティ一同皆、同時に顔を上げる。
「本当に申し訳なかった。貴方のご好意に感謝する」
主犯の彼の言葉に、もう気にしてない、と俺は軽く手を振る。
「では、明日から俺達が成長の迷宮を制覇するまでの間、宜しく頼む」
俺が頭を下げると、コアも倣って頭を下げる。
「そんな事しないでくれ! こちらこそ今回の寛大な処置に感謝する。しばらくだがこちらこそ宜しく頼むよ」
赤髪の彼女がそう言うと、パーティの一同が最後にもう一度、頭を下げてくる。
「最後に名前を伺っても?」
そう言って俺とコアは名乗った後、彼女達の名前も知ることが出来た。
その後、俺とコアも会釈程度に頭を下げると、話し合っていたギルドを出て『雷鳥の休み処』に帰ることにした。
◆◆
彼らがギルドを出るのを見届けた後、私達は再び席についた。
「ダン、反省はしたか」
「ああ、今回は本当に迂闊な真似をしてしまった。深く反省している」
赤髪の美女リーダー、カレンが重戦士もとい巨漢の持ち主であるダンに確認をとった。
「それにしても彼、少しの会わない間に強くなってたね。ステリアに差を感じなかったよ」
「それに、隣の女の子も肩を並べる位の実力はありそうだったわねぇ」
剣士イケメンことスレイの言葉に、妖艶の美女ミアリーも、コアの事も踏まえて同調する。
「勿論それは私にも分かった。それをこいつは……はぁぁ、何で見た瞬間に同レベルだと感じられなかったんだか」
「うっ、面目もへったくれも無い」
カレンはダンの今の雰囲気に呆れを抱いた。
「まあまあ、カレン。その程度にしておきなよ。ダンはメンタルが弱いんだから。それによく考えてみれば、今回は利害の一致という形で収まるかもしれないんだからさ」
「確かに、もしかしたらそうなるかもしれないわねぇ」
スレイとミアリーの言う利害の一致についてを、カレンが口にする。
「迷宮都市への進出か」
迷宮都市。そこにあるは、規制レベルの幅も大きい大迷宮だ。
当然、それを攻略するには実力以外にも数が必要となってくる。
そうなると、今回の『成長の迷宮』制覇の途中に、アデージュとコアの実力を知るには良い機会なのだ。
もしかしたら、我々と同じレベルで共に大迷宮に挑めるかもしれない。
そんな思考が彼女らの頭の中を巡っていた。
「今後の彼ら次第で俺達の迷宮都市進出もかかっているのか」
「言っちゃ悪いとは思うけど、ダンのお陰で俺達は希望を見つけることが出来たわけだね」
ダンのつぶやきに、スレイはそう笑いながら返す。
「ハハハっ、ダンお手柄だねぇ!!」
ミアリーの言葉に一同が笑みを浮かべた。いや、ダンに関しては引き攣った笑いを浮かべていたが……
「ステリア的には、私達と同レベル……つまりは彼らはソウルステージ3相当の力はあるってことだ。となるとやはり、成長速度が速いな。なるほど、それを踏まえて彼は私達に同行という提示をしたのかもしれないな」
「つまりは、成長速度を誤魔化すために、強いパーティに同行することで早熟したとギルドに説明づける為なんだろうね」
カレンとスレイの考えは的確に、アデージュと衛兵のおっさん、ローランドの思惑を射ていた。
「だとしたら、戦い方はまだ未熟かもしれないわねぇ」
「うむ、では、その時はしっかりと助言をしていくとする」
ミアリーの考えも又、アデージュの思惑の一つであった。
同行することで、実力者パーティの戦術を盗もうとアデージュは考えていたのだ。
「まあ、とにかくだ。ダンもとい私達は彼らに迷惑をかけた。その事を忘れずに、だがしっかりと切り替えて、明日以降は全身全霊の姿勢で彼らをサポートしていくことにする。皆、それでいいな?」
カレンの言葉に、ほか三人も頷く。
それを然と見たカレンは大きく頷くと、今日はお開きだ、宿に戻るぞ、と全員に声をかける。
そうして彼らもまたギルドを出て、この街で懇意にしている宿屋へと歩いていくのであった。
それを見る攻略者たちの目と口は大きく開けられていた。最早、カオスだッ!!
何故こうなったか時を少し遡ることにしよう……
◆◆
「ふ、ふ、ふざんけんじゃねぇぇぇぇぇッ」
俺は、生まれて初めて怒鳴るという行為をした。
「何勝手に人の獲物を横取りにしてんだよッ!!」
「そ、それは危ないと思ったからでだなぁ」
「それなら、断りもなく横取りしてもいいってかァ? だったら何だッ、衰弱し切ったリーダーを見なかったのかァ? アァンッ!?」
俺の言葉に巨漢は狼狽えた。
傍から見るとすごい絵面である。
身長こそは近いものの、細身のやつが極太に不良丸出しの批判を浴びせているのだ。
周りに人がいれば、ギャラリーとして集まっている所である。
俺は今にも殴りかかりそうだったが、それにコアが気づいたのか止めに来た。
「それ以上はやめなさい、アディー君!!」
「止めるんじゃねェ!  このままじゃ腹の虫が収まらねェッ」
コアに抑えられてなお、歩みを進めようとする俺に彼女は奇行を犯した。
チュッ!!
「──んっはぁっ……ちょっ! コア、何してるんだ!?」
何と、舌を突っ込んだキスをしてきたのだ。
「だって、アディー君!! 今私のこと全く見えてなかったでしょ……」
上目遣いで顔を赤く染め、コアはゴニョゴニョとそう呟く。
──かっかっ、かわいすぎるぅぅぅっ!! ブハッ(鼻血)
俺は何かを忘れ、コアに抱き着きデレデレしていると後ろから声を掛けられた。
「お、おいっ、俺は許されたのか?」
その声に俺は今の状況を思い出す。
ンッンッ
俺は息を整える。
「はぁぁぁ、そんな訳ないだろ。コアのお陰で落ち着けたが、それとこれとでは話は別だろうよ。俺ははっきりいって攻略者でもビギナーだ。だが今回に関してはあんたの完全な不注意だろ。まず何で状況を俯瞰しない? 見た感じあんた程の実力者なら把握くらい出来ただろ。それをいきなり断りもなく敵を横取りする。これのどこに許す可能性を見いだせるんだ?」
俺の説明に、間違いがないのをしっかりと理解出来ているのか、土下座をしてきた。
────っていきなり土下座かよ!!
「本当に申し訳なかった!!」
そう謝罪をする巨漢にあたふたしている所に、下層から登ってきた彼のパーティと遭遇した。
◆◆
そういう訳で、俺達は地上に戻ったあと、事の経緯を話したことで彼のパーティ全員からの謝罪を受けているのだ。
「君は、7年も攻略者やっててそんな常識も守れないのかっ! ほんとに私のパーティメンバーが申し訳なかった」
「俺からも謝る、本当に済まなかった」
「本当にごめんね〜」
パーティリーダーなのだろう、綺麗で長い赤髪を持つ硬派な美女が頭を下げると、金髪のイケメンの剣士、紫髪の妖艶の美女がそれに続いて頭を下げてきたのだ。
以前、茶髪の巨漢は地につきそうなほどに直立状態で頭を下げ続けているが……
──なんて言うか……堪らないのぉ〜!
俺が謎の優越感に浸っていると、コアが耳を引っ張ってきた。痛いっ。
「ほーら、真面目な謝罪中にふざけないっ」
諭された俺は、一回大きな深呼吸をするとひとつ尋ねることにした。あと、謝ってきたことだし一応先輩らしいから敬語を使うことにした。
「今回の敵は、経験値が大きかったと思う。それに見合う対価を用意できるか?」
俺がそう聞くと、リーダーさんが口を開いた。
「私達はこれでも此処フェアレストの地では、そこそこ名が通っていると自負できる程度の実力は持っているつもりだ。ある程度の要望なら答えることが出来るだろう」
なるほど、要望の提示形式か……これは、おっさんの提案を実行に移すチャンスかもしれないな。
「ところで、パーティのランクは如何程で?」
「この地では他にはいないだろう3だ!」
はい、決定!!
「では、しばらくパーティを組んでもらうことで、今回の件は不問にすることにしようと思う。それで良いか?」
「構わないというか、 むしろ全然OKだ! 本当にそんな事で良いのか? 」
そんな事ではない、今後のことを考えると万々歳である。
「ああ、それでお願いする。構わないよな、コア?」
「私はアディー君について行くだけよ」
「では、そういう事で。もう顔は上げてもらって良い。周りの目が痛い……」
俺の声に、パーティ一同皆、同時に顔を上げる。
「本当に申し訳なかった。貴方のご好意に感謝する」
主犯の彼の言葉に、もう気にしてない、と俺は軽く手を振る。
「では、明日から俺達が成長の迷宮を制覇するまでの間、宜しく頼む」
俺が頭を下げると、コアも倣って頭を下げる。
「そんな事しないでくれ! こちらこそ今回の寛大な処置に感謝する。しばらくだがこちらこそ宜しく頼むよ」
赤髪の彼女がそう言うと、パーティの一同が最後にもう一度、頭を下げてくる。
「最後に名前を伺っても?」
そう言って俺とコアは名乗った後、彼女達の名前も知ることが出来た。
その後、俺とコアも会釈程度に頭を下げると、話し合っていたギルドを出て『雷鳥の休み処』に帰ることにした。
◆◆
彼らがギルドを出るのを見届けた後、私達は再び席についた。
「ダン、反省はしたか」
「ああ、今回は本当に迂闊な真似をしてしまった。深く反省している」
赤髪の美女リーダー、カレンが重戦士もとい巨漢の持ち主であるダンに確認をとった。
「それにしても彼、少しの会わない間に強くなってたね。ステリアに差を感じなかったよ」
「それに、隣の女の子も肩を並べる位の実力はありそうだったわねぇ」
剣士イケメンことスレイの言葉に、妖艶の美女ミアリーも、コアの事も踏まえて同調する。
「勿論それは私にも分かった。それをこいつは……はぁぁ、何で見た瞬間に同レベルだと感じられなかったんだか」
「うっ、面目もへったくれも無い」
カレンはダンの今の雰囲気に呆れを抱いた。
「まあまあ、カレン。その程度にしておきなよ。ダンはメンタルが弱いんだから。それによく考えてみれば、今回は利害の一致という形で収まるかもしれないんだからさ」
「確かに、もしかしたらそうなるかもしれないわねぇ」
スレイとミアリーの言う利害の一致についてを、カレンが口にする。
「迷宮都市への進出か」
迷宮都市。そこにあるは、規制レベルの幅も大きい大迷宮だ。
当然、それを攻略するには実力以外にも数が必要となってくる。
そうなると、今回の『成長の迷宮』制覇の途中に、アデージュとコアの実力を知るには良い機会なのだ。
もしかしたら、我々と同じレベルで共に大迷宮に挑めるかもしれない。
そんな思考が彼女らの頭の中を巡っていた。
「今後の彼ら次第で俺達の迷宮都市進出もかかっているのか」
「言っちゃ悪いとは思うけど、ダンのお陰で俺達は希望を見つけることが出来たわけだね」
ダンのつぶやきに、スレイはそう笑いながら返す。
「ハハハっ、ダンお手柄だねぇ!!」
ミアリーの言葉に一同が笑みを浮かべた。いや、ダンに関しては引き攣った笑いを浮かべていたが……
「ステリア的には、私達と同レベル……つまりは彼らはソウルステージ3相当の力はあるってことだ。となるとやはり、成長速度が速いな。なるほど、それを踏まえて彼は私達に同行という提示をしたのかもしれないな」
「つまりは、成長速度を誤魔化すために、強いパーティに同行することで早熟したとギルドに説明づける為なんだろうね」
カレンとスレイの考えは的確に、アデージュと衛兵のおっさん、ローランドの思惑を射ていた。
「だとしたら、戦い方はまだ未熟かもしれないわねぇ」
「うむ、では、その時はしっかりと助言をしていくとする」
ミアリーの考えも又、アデージュの思惑の一つであった。
同行することで、実力者パーティの戦術を盗もうとアデージュは考えていたのだ。
「まあ、とにかくだ。ダンもとい私達は彼らに迷惑をかけた。その事を忘れずに、だがしっかりと切り替えて、明日以降は全身全霊の姿勢で彼らをサポートしていくことにする。皆、それでいいな?」
カレンの言葉に、ほか三人も頷く。
それを然と見たカレンは大きく頷くと、今日はお開きだ、宿に戻るぞ、と全員に声をかける。
そうして彼らもまたギルドを出て、この街で懇意にしている宿屋へと歩いていくのであった。
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