迷宮壊しは、全ての始まり

篝火@カワウソ好き

第13話 成長の迷宮3

──


「うむ、随分とあっさり行けたな」


「動きが前回とほとんど一緒。駆け引きをするまでもなかったわね」


先行部隊のゴブリンとの対峙に、苦戦すると思っていた手前、ゴブリン共の動きが


1体以外一斉攻撃からの残った一体の空中攻撃。
そしてその後に棍棒をを投げるといった攻撃。


正直、駆け引きの意味をちゃんと理解した俺達にはお粗末な戦術にしか見えなかった。


地上戦は、俺が近距離担当、飛んでくるゴブリンはコアのムチでの攻撃。


それだけで勝負が着いたのだった。


「やっぱり戦術を把握した俺たちにとっちゃ、油断はあれだが余裕だな」


「これでも私達、ソウルステージ3だしね……さぁ次が重要よ!」


コアは前を見据えると気を引き締める。


俺もそれに習って油断のゆの字を脳内から消し去る事にした。


──


奥の方でどっしりと構えていたゴブリンリーダーもこっち俺達を明確に敵と認識したことで醜い口を大きく広げた。


「グッギャッギャッ!!」


そのリーダーの声で20は居るゴブリン共が一斉に俺たちのほうを向く。


「グゥーギャッギャッ!」
「「ギャギャッ!!」」


リーダーの指示なのか、ゴブリンが前10、後ろ5、最後方に居座るリーダーの護衛5といった感じで陣形を取る。


「ハッ、お山の大将さんは随分と用心深いね〜」


「駄目よ、アディー君。油断しちゃ!」


──おっといけねぇ、気が緩んだわ


「コアはまえの10体を頼む、1発ムチを浴びせてくれ! その間に向こうの中列にくい込むから」


「了解!」


俺とコアは低い態勢を取り駆け抜ける。


「火の精よ、我に纏い、汝を示せ『火属演舞フレアダンス』!」


コアは火炎ムチを横打ちにし、前衛ゴブリンはそれを避けるも隙ができた。


「ナイスだ、コア!」


「倒してきなさいっ!!」


俺は頷くと、真ん中に分かれたゴブリンの隙を素早く抜けた。


前衛部隊を抜けた俺の目の前には、中衛のゴブリン5体。


この5体も前衛2、後衛3に分かれてきた。


だが今回の1対パーティ戦は少し自信がある。


空絶輪の使い方の応用を考えたからだ。
こいつは投げたらブーメランのように戻ってくる。
そこに俺の魔法で『風属性付与ブロウエンハ』を使う。実際に、道中にこれを使った時、チャクラムが俺まで横薙ぎにしそうな勢いで戻ってきた。


てか、普通に死ぬかと思った……


という訳で、初速と比べ衰えが僅かほどしか見られなかったのだ。
そこで、俺は思いついた。


風属性付与ブロウエンハ』の時は、二周目いけるんちゃう? と……


そういうことで物は試しである。


「『風属性付与ブロウエンハ』!!」


発動と同時に、前衛2体に向かって投げる。速過ぎて見えないのか、呆気なく奴らは撃沈。


そして戻ってきた空絶輪を取ると見せ掛けて、しゃがむことで二周目。勢いは通常の速さ並だ。


後方3体は間隔を取って布陣していたため、左回りの二周目を受けたのは俺から見て右から2体だけだった。


残りの1体は異変に気がついたのか、バックステップをとって避けていた。


俺は走りながら、若干威力の衰えた空絶輪に指を通すと、持ち手を握り残りのやつに駆け寄る。


「『火属性付与フレアエンハ』!!」


振り下ろしてくる棍棒を避け、手に持った空絶輪で、最後の1体の首元を刈り取る。


「改善の余地は有りだな」


俺は、消えゆくゴブリン達の暗い光を見ながら、完璧とは行かないものの満足のいく結果にそう呟いた。


俺は後ろからコアが戦っている音が聞こえてくるが、前を見据えることにした。


──


アディー君がゴブリンの間を抜けていくのを見届けると、私は目の前にいるゴブリン達に目を向けた。


「向こうはアディー君一人で大丈夫だろうし」


そうつぶやく間に、ゴブリン達は纏まって向かってきた。


「どうやら、リーダーさんの指揮下から離れたみたいね。統率が全然なってないじゃない」


3体が先行して棍棒を下ろしてくるのが予測できたので、私はその前に詠唱を始めた。


「風の精よ、我に纏い、汝を示せ『風属演舞ブロウダンス』」


体に纏った風を鞭のようにうねらせ前方3体に向かって打ち放つ。
一度の攻撃で、纏めて倒されたことに後方の7体のゴブリン達は驚いたのか足を止めた。


「温いわね……いいわ、纏めてかかってきなさい。相手してあげる」


そう言って笑みを浮かべると、纏う風を一層強くさせた。


──


「さぁ、目の前まで来てやったぜリーダーさんよ」


「グギィギィッ」


想定外だったのか、リーダーが唸っているのがわかる。


「お前の臣下共々相手してやる、かかってきな」


俺が挑発したのがわかったのか、リーダーは歯を見せて食いしばっている。


「グギャァ、ギィギィギィ!!」


やつの命令らしき声で、戦闘の開始となった。


左右2体ずつのゴブリン、正面リーダー、その後にもう一体のゴブリンか……


恐らくは、左右のゴブリン共で手数を使って、正面リーダーが火力重視にぶっ叩く。それをなんとか避けた俺をリーダー背後のゴブリン仕留めるといったとこか。


そんなことを考えていると脳内にこんなことが表示される。


──────────


[最適解]:左布陣のゴブリンを空絶輪で切り、即座に背後に投擲。その後の曲がり方を考えてリーダーの後ろに行くように空絶輪の軌道を乗せる。その間にやつの背後に回り込み、剥ぎ取り用ナイフを背後のゴブリンに投擲。その後戻ってきた空絶輪を空中で取り、その流れで首を掻っ切る。


──────────


どうやら〈完全解析アナさん〉がやけを起こしたようです。
まさか、戦おうと思ってた矢先、[最適解]表示っていう勝負に水を差してきました。


かかってきな、とか言った手前、内心ガチで恥ずかしんだけどッ!


これが正々堂々の対人戦でなくてよかった……


そう思いながらも、「『火属性付与フレアエンハ』」と、唱えてから〈完全解析アナさん〉いうことに従ってみることにした。


するとどうだろう、左方を片手剣の要領で横薙ぎにし、動作の回転を活かして投擲。
ものすごい勢いででかい棍棒を振り下ろしてくるリーダーの攻撃を避け、脇の下を抜ける。
リーダーの背後に駆け抜けズボンの横に差した剥ぎ取り用ナイフを残りのゴブリンに投擲。
ジャストタイミングで戻ってきた空絶輪をジャンプして空中でキャッチ。
棍棒を振り落としていたリーダーの首元をを身体一回転で掻っ切る。


ここまで完璧な動作で行えた。だが〈完全解析アナさん〉の予測を超えたのか奴は、まだ息絶えてはいなかった。


予想以上に、首元に筋肉という頑丈な壁があったのだ。


「グギィィィァァッ」


そう吼えて、強靭な肉体を滾らせて俺に向かって突っ込んで来る。


咄嗟に気を引き締め直して俺は再び、空絶輪を片手に構える。


その時だった。


「フンッぬっ!!」


「えっ……」


何と、一人の男が割り込んできたのだッ!!


ゴブリンリーダーはあえなく倒れる。


最後の一撃を入れた巨漢の男が口を開く。


「大丈夫だったか、青年!?」


俺は唖然。後ろから駆け寄ってきていたコアも呆然。


俺は唇を震わせながら、敵の横取りをした目の前の男に向かって、心に徐々に募った感情をぶちまけた。


「ふ、ふ、ふざんけんじゃねぇぇぇぇぇッ」


あと一発で倒せると言った確実に勝てる見込みがあった時にその敵をぽっと出に盗まれる。


そんな行為を目の前でやられた俺は、生まれて初めて怒りという感情が爆発したのだった……

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