迷宮壊しは、全ての始まり

篝火@カワウソ好き

第12話 成長の迷宮2

宿に戻って、しっかりと休養をとった翌朝、再び俺らは『成長の迷宮』へと向かった。


◆◆


本来であれば、到達階層まではなるべく敵との戦闘を最小限に行くことが基本とされているが、俺達は圧倒的に戦闘経験が乏しく安定した討伐が出来ていないので出会った魔物は全て倒していくことにした。


はっきり言って、コアがダンジョンコアをしていた『継承の迷宮』における戦闘は不意打ちもいいところだった。武器の力に頼りすぎて、武器を最大限に活かすことなど出来てはいなかったのだ。


今も付与魔法は手に入れたものの、属性をただチャクラムに付与して投げるだけ。


要は、戦闘というものをまだ理解出来ていないのだ。
第4層のゴブリンの群れと第5層の連携して襲いかかってくるゴブリン達との打ち合いでそれが顕著となった。


今は第3層、此処で俺は挑戦することにした。


「次に出てきたゴブリンパーティ、一人でやっていいか?」


「えっ、危険じゃない!?」


「今後はこんな状況にゴブリンよりも強い魔物で陥るかもしれないだろ。その為にも今はしっかりと経験しておきたいんだ」


俺がそう言うと、コアは溜息をつきながらも分かったわ、けど危険になったら助けるからねっ、と了承してくれた。


5ミニュの程歩くと、ゴブリンパーティが特殊な暗い光と共に現れた。


「さぁ、始めるとするか」


俺は、ひと呼吸おくと、鋭い目線でゴブリンパーティを見据えた。


「ギャギャッ!」


奴らは奇妙な声を放つとともに纏めて襲いかかってきた。


そこに俺はあえて突っ込む。


「ちょっとアディー君!? 何してるのっ!!」


俺の行動に驚いたようでコアは声を荒らげた。


俺は今にも加勢しそうなコアに、来るなと意思を込めた視線を送ることで足を止めさせた。


再びゴブリン等を見据えると前後左右に展開して来て棍棒を同時に振り下ろしてきた。


今回のゴブリンパーティは5体。


近距離にいるのは、棍棒を振り下ろす4体。


もう一体はどこにいる?


俺は警戒の目を向けると、近距離の4体から少し離れた所にある岩場のようなところに登って今にも飛んできそうな1体を見つけた。


──上かッ!!


俺は前方のゴブリンに集中すると、ソイツの棍棒をチャクラムの外周部の刃で迎え切断すると、動揺したソイツの腹部を蹴り上げ、上部に迫ったゴブリンにぶつけ、前方の空いたスペースに飛び込むと、左右と後方にいたゴブリンは棍棒を下に振り終えているようで、対象がいなくなった事に驚いていた。


その隙に俺は詠唱をする。


「『風属性付与ブロウエンハ』!」


そして速攻で、直立した3体に弧を描くよう空絶輪を投げると、腹部を横薙ぎにした。


戻ってきた空絶輪を指で迎えると、倒れていた二体のゴブリンが立とうとしていたので、前傾姿勢で走り出して1体のゴブリンの首を落とすと最後の1体が棍棒を振り下ろしてきたので、横に回避し体を回転させながら薄いチャクラムの刃に入れられた持ち手を持つと、そのまま横一線に胴を掻っ切った。


「はふぅ〜、精神にくるわコレ……」


「何がはふぅ〜、よっ!! あんな事するなら先に言いなさいよっ!! 私、アディー君が危ないって思って気が気じゃなかったのよ……」


コアに怒られたと思ったら、その本人が涙を流しそうだったので、俺は慌ててなだめる事にした。


なだめてる流れで、いつの間にか俺は正座にさせられていたが……うん、何でだろ??


「────ったのよ! いい? もう二度と勝手にあんなことしないでね。分かったら返事!!」


「すみませんでしたッ!! もう二度と心配はかけないことを誓いますッ!!」


コアさん、中々怖いっす……
でもそんな君も可愛いです!!


「アディー君? 今何か考えてなかったかしら?」


「怒るコアも可愛いって考えてました!!」


俺が正直に言うと、ジト目だったコアは、一瞬で顔を赤くした。


うん、可愛い。


その後出てきたゴブリンパーティには、コアが一人で火属演舞フレアダンスを使い、何か八つ当たりをしているように無双していた。アディー君の馬鹿ぁー、阿呆ぉーと聞こえたのは気のせいだと思いたい……


◆◆


3層で一人での戦闘を何度かこなした後、第4層へと階段を降りた。


一度目と相も変わらず、ゴブリンでダンジョンが埋め尽くされていた。


前方には、二つの集団、各10体以上のゴブリンがいたので俺とコアの二手に分かれて相手取ることにした。


今度は始めから突撃なんてことはしない。
流石にあの数相手にそれやったら重傷、最悪の場合は死ぬからね。


「『火属性付与フレアエンハ』!」


空絶輪に付与すると同時にそれを人差し指で軽く回転させ、集団に向かって投げる。


これで残り5体。


戻ってきた空絶輪を迎えた後、すぐに第二投。


これで残り2体。


俺の元にたどり着いたのは2体か……


俺は再度戻ってきた空絶輪を今度は、握りしめると前方で棍棒を振り下ろす2体の間を抜け、同時に両方の後ろの首を刈り取った。


よし、だいぶ動けるようになってきたな。


満足のいく結果に笑みを浮かべ、コアの方を見てみるとゴブリン10体を炎のムチで燃やし尽くしている。


何というか、うちの嫁の戦闘って豪快だよね……


俺は、顔を青くしてなんかいないんだからねッ!!


◆◆


案外すんなりと第4層を抜けると、遂に巧妙な連携を取るゴブリンの住まう第5層に足を踏み入れた。


「恐らく昨日のように先行部隊のゴブリン共が来るだろうな」


「今回は早めに終わらせたいわね。後が、あのリーダーらしきゴブリンのいるパーティだもの」


「間違いなくあいつが要だろうな。大きさも見た感じの丈夫さも他の奴らと比べて一回りは違うよ、あれは……文献を辿る限り、所謂、最初の難関とも呼ばれるステージ2の魔物、それがあのゴブリンリーダーなのだろうな」


奥に見えるは、通常人間の平均女性の肩ほどの背丈であるゴブリンの1・5倍はあろう図体、約2メルと測れる姿に俺らは身震いする。


以前の放置迷宮の際はそれ以上のものを見た気がするが、あの時の俺はどうかしてた。いくら豪胆のスキルがあるからって……うん、軽い精神異常者だったな。


──い、今は違うからなッ!! はい、コア。変な目で見ないでおくれ……違うよねッ!?


「ぅうんっ──つまりは、それを乗り越えなければソウルステージ2の道を通れないってことよね。改めて私達の異端さが分かるわね。けどこれってパーティ推奨の層よ」


そう此処は、あくまでパーティで成長するための迷宮である。規制レベルの基準はそれに合わせ反映されている。つまりは、だ! 二人で来ること自体おかしい……


「……うむ、コンビでやるには中々、大変だな」


「大変だなっ、て……いやいや、そもそも二人で挑もうとする馬鹿、本来ならいないからね」


「じゃあ、俺達はその馬鹿だな、本来ならそういう認識な訳だ」


「……はぁ、もういいわ。あなたの性格が読めてきた。一度決めたらそれを曲げない頑固者で時に無茶をする愚か者ってね」


ジト目のコアに俺は震えた。


少々毒が効き過ぎですぞ、コアさんや……(汗)


そんな風に、俺達が話していると5体くらいの足音がこちらに向かって来ているのが感覚でわかった。


「全く嫌な足音だ」


「同意ね、でもこっちだって駆け引きはある程度できるようになった」


「その通りだ。じゃ行くぞッ!!」


「了解っ! 奴らの思い通りにはさせないわっ!!」


そうして俺達は、向かってくる先行部隊に対して、引かずの迎撃体制、つまりは真っ向勝負をとる事にしたのだった。

「迷宮壊しは、全ての始まり」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く