迷宮壊しは、全ての始まり

篝火@カワウソ好き

第10話 街内迷宮に向かう

────ちゅんちゅんちゅん


鳥のさえずりで目を覚ます。


てか前もこんなくだりあったな。


でも前回とは違う。


今の俺には、俺の腕を枕にして眠る美少女がいるんだからなッ!! ハッハ(略)


て言っても、コアの声がなかったらこんな状況なかったな……


今思うと、昨日の俺、女々しすぎて気持ち悪ッ!!


俺は生まれたままの格好をしているコアの頭を撫でる。


「んんっ……」


コアがゆっくりと微睡みながらも瞼を上げた。


「……アディーくんっ、おはよー」


俺の存在を確認した、コアは頬を赤く染めながらも朝の挨拶をしてきた。


夜のコアは凄かった……はじめは俺が主導権を握っていたけど、途中から彼女が肉食獣と化した。
何とか優勢は保てたが、危うく俺が先に負けを認めそうになるくらいヤバかった。


「おはようコア。悪い起こしちゃったな」


「そんな事ないわ。アディー君の手は優しくて温かい」


撫で続けている俺の手にコアは頭を預け俺の方に顔を向けた。


それはもう幻想的な笑顔だった……


もうっ、うちの嫁マジ天使ですっ!!


──


外向きの服装に着替えて二人で階段を降りて宿の食堂に向かった。


食堂に入ると何人か攻略者らしい格好をした者がいて、コアを司会に入れた瞬間、近寄ってこようとしたが丁度入ってきたローランドの姿を見ると立ち止まり、もう一度、コアの方を見るとコアが俺にくっ付いてニコニコしていて、惚気オーラにあてられたのか静かに席へ戻って座り直した。


風貌っていうものは凄いなッ!!
コアの愛らしさに誰もがこぞって立ち上がり、ローランドの強面に誰もがこぞって立ち怯む。


空いている席にコアと並んで座ると、反対側にローランドが座って、俺らのテーブルに料理を置きに来たアイラさんも朝の仕事が終わったようで、真向かいに座ったローランドの隣に腰をかけた。


何ともまあニヤニヤ顔である……


「昨日はお楽しみでしたね」


「いや今日とも言えるだろ」


そのいじる気満々の目が腹立たしい……


予想通り、情事の件でいじってきやがった。
コアは終始、顔を真っ赤にして俺の胸に顔をうずめた。


そんなこともあってか俺はイジリ甲斐のない、唯々コアの頭を撫でるだけの人形と化していた。いや、俺の顔が緩んでいたから人形ではないな……コア、かわゆい……


そんなくだりもあって、朝食を摂り終えた俺達はクラッシュ夫妻に外に出ると声をかけると宿屋をあとにした。


◆◆


いやー嫉妬の目が身体中に突き刺さってくる。


女神コアが俺の腕を抱きしめて歩いているのだ。そんな視線をもらうのも致し方ない。


それらの視線の中には女子も確認できた。これはコアに嫉妬しているのかな? グヘヘ……後でベットで押したおォッ──痛ッ、腕折れる、マジ折れる、落ち着けェッコアァァァッ!!


俺が必死に訴えると、コアは関節を決めてた腕を緩めてくれた。
けれどジト目だ。俺はコアの頭を優しく撫でる。コアは嫉妬をしてくれたんだ。当然のの事だろう!


けど何で俺の考えてることわかったんだろう?


俺に頭を撫でられたコアは何だかんだで顔を蕩けさせていたので気にしないことにしよう。


一層甘くなった雰囲気に、嫉妬の視線が増したようで本当に痛く感じてきた。それはコアも同じようで俺達は攻略者ギルドに向かって足早で進むことにした。


◆◆


攻略者ギルドに着いたのは8ハワちょっと過ぎだった。
やはり攻略者の朝は早いのか、既にギルドは静けさとは言わないまでも、落ち着いた空間ができていた。


此処に来るまでに防具も揃えてきた。


俺の格好は、敏捷を活かしたいが為に軽装にした。上は青に近い空色の、下は白の戦闘服にした。
なんでも、素材として『ディファスパイダー』という防御力に長けたクモ型魔物が吐き出す糸を素材としているらしく、物理、魔法の両方に対応できるらしい。


一方コアは、ステータスから『ブランクワーカー』ながらも魔法に長けたモノだったので、白のドレスアーマーに藍色のローブを羽織った格好だった。何故、藍色のローブにしたかを聞いてみると、貴方の色だから、と言ってくれた。可愛過ぎる!!


まず、コアの攻略者登録をするために受付に行こうと歩き出そうとして足を止めた。突然足を止めた俺にコアは首を傾げる。


俺は問題点を見つけたのだ。ローランドとは、俺のソウルステージの話しかしてなくて、すっかりコアのソウルステージのことを忘れていた。


どうしようか悩んでいると、コアが俺が頭を抱えてしゃがみ込んでいる理由を聞いてきたので、その事を話す。


「それなら大丈夫だよ。私のスキル〈自治掌握マイゾーン〉の[管理]でちょちょいといじれるから」


コアはしゃがみ込んでいる俺の両肩に後ろから手を置いて、耳元でそう言ってきた。可愛い。それよりも、ステータス偽装出来るとか正直驚いた。


ただ都合がいいと感じた俺は、ギルドカード作成の時に使うようコアに促した。


頷いた彼女を見た俺は、前回此処、攻略者ギルドに訪れた時に担当してくれた猫人族のファラマさんのところに行く。


「あっ、アデージュ様じゃないですか!? もしかしてカードの更新ですか? それとも魔核の買取ですか?」


ファラマはこちらに気づいたようで声を掛けてきた。
カード更新のことを言われ俺は若干ビクリとしたが、今回の目的は違うのですぐに落ち着きを取り戻した。


「しばらく振りです、ファラマさん。覚えてらしたんですね。今回の目的は違いますよ。この女の子のカード作成です」


そう言って、コアの方を掴んで彼女の前に動かした。


「なる程、ちなみに彼女とアデージュ様はどういう関係で?」


「彼女は仲間で「彼の妻であるコア=クライストスです!!」……です」


「お、奥様ですか!?」


俺が誤魔化そうとしたが、コアが何かを察したのか横から口を挟んでしまい、その事実に驚いたファラマは顔を俺の目の前まで突き出してきた。


「まぁ、本当です」


「そ、そうですか……(カッコいいし、雰囲気優しそうだから狙ってたのに……ま、まだ諦めないけど)」


納得が言ってないようで、内容は聞こえないがブツブツ呟くファラマさんに声をかけるとなんとか戻ってきてくれた。


「──分かりました。では、こちらに血を垂らしてください」


なんか決意の篭った目で話すファラマさんに疑問を感じつつも、コアを促すと少し時間をおいてコアはカード日を垂らした。
表示されたソウルステージを確認すると1になっていたのでひとまず安心した。


コアのギルドカードの作成も終わったので、それぞれの連携確認のためにも街内迷宮の規制レベル1のダンジョンに行くことにした。


攻略者ギルドから出ようと受付から離れようとすると、ファラマさんから今後も受付は私のところに、と声をかけてきた。何故、と思いつつも頷く事にした。
多分、受付嬢内に争いでもあるのだろう。そう結論をつけた俺をコアはジト目で見ていた。分からん……


◆◆


この街の中心にある街内迷宮『成長の迷宮』に向かう道中、小物が色々と売られている雑貨屋が有ったので入ることにした。


中に入ると、様々な装飾品や小道具が売っていた。


その中で、小物が乱雑に置かれている所があり、店員に聞いてみると、流れてきた使う用途のない物をそこの一箇所に集めていると言っていた。


気になった俺は、そこに行き一つ一つを見ることにした。


するとなんだろう……なんの装飾も施されていないただの鉄で出来ているような指輪に目を引かれた。


気になった俺は〈完全解析アナさん〉の[鑑識]を使ってみることにした。


すると……


──────────


『鉄の指輪(魔道具)』


・装備効果[魔力の回復速度を2倍に上げる]


──────────


とんでもない代物だった……


それをもう一つ見つけた俺は、安価で購入すると他の荷物、まあハンカチだが、それに隠して、コアに渡した。コアの〈自治掌握マイゾーン〉の[管理]は空間に収納ができるみたいで、放置迷宮から帰ってきた時、大活躍だった。


マイゾーンさん、何者!?


さっきのソウルステージ偽装の件もそうだけど、〈自治掌握マイゾーン〉の[管理]には目を見張るものがあった。


とりあえず、指輪をハンカチに隠して渡した俺は、コアを呼び店を出るぞと声を掛ける。コアは空色の髪飾りを眺めていたので俺はそれを買ってやることにした。
放置迷宮のお陰で今懐が暖かい。攻略者ギルドに行く前に有った魔核と放置迷宮の魔結晶は換金してきたのだ。


買ってあげた時のコアの顔は凄く輝いていた。


この笑顔だけで何もかも報われるな……


そう思う俺だった。


そしてそんな笑顔を向けてくれるコアに、いつかあの指輪を加工してもらってプレゼントしよう!!


そう考える俺もいた。


そうしてを雑貨屋を出た俺達は、10ミニュ程歩いたのち、ようやく街の中心地『成長の迷宮』へと辿り着いたのだった。

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