迷宮壊しは、全ての始まり

篝火@カワウソ好き

第6話 迷宮デビューする☆

一見して見ると、外観はただの洞窟のように見える岩壁。


しかし[探知]がいうに、この洞窟は下へと5層から為る空間が存在する。


そして何より、洞窟の穴から自然界のものとは違う奇妙な雰囲気が際限なく出ている事が肌で感じられる。


────間違いなく迷宮だ。


おれは、ソ・イ・ツ・を目の前にして唾を飲む。


これに入らなきゃならんのか俺は……


若干の苦笑いが顔に張り付く。


けど、今更あとには引けないッ!!


そんな想いが、そして信念がある俺は、もう一度大きな深呼吸をすると、左右の頬を強く叩いて迷宮へと入った。


迷宮の内部に足を踏み入れると不思議なもので違和感を感じた。


もう背後には迷宮の入り口が見えない。
内部にも松明のようなものもない。
にも関わらず、視界には明るく照らされている迷宮内部がはっきりと見える。


まるで外界とは異次元だ……


そういう感想が自然と浮かぶ。そして俺はさらに深くへと前に進む。


◆◆


アデージュが迷宮入りすると同時に、目を覚ます者がいた。


腰くらいまである長い金髪に透き通るような白い肌を持つ美少女が美女になりつつある程の年齢である少女である。


──


さて、今回のパーティはこの迷宮を制覇出来るかな……ってパーティじゃないわ!!


私は、ソロで迷宮に入ったアデージュに吃驚して、唖然とした。


「今すぐに帰りなさいっ!! ソロのしかも迷宮初心者っぽい君が入る場所じゃないわっ!!」


彼には伝わらないのに、つい声を荒らげてしまう。


そう、この迷宮には、今まで何人もの攻略者がパーティで入ってくることがあった。


ここの場所は見つかりづらい所にあり、そんな者達が入ってくることは稀だったが……


しかし、そんな稀の中にも熟練パーティが此処に来たこともあった。


だが、しかしそんなパーティまでも此処で命を散らしたのだ。


そんな所に一人で入る、いかにも初心者感を醸し出している者が来た。


私は、迷宮を制覇した者にしか会うことが出来ない。


つまりは、彼に撤退を促すことが出来ないのだ。


此処は、推奨ソウルステージ3。あくまで推奨だ。
しかも五人以上のパーティ推奨の迷宮である。


私は悔しさに歯噛みをしていた顔を、彼を映し出す私の[記録魔法]に向ける。


するとなんということかっ!!


彼は既に第1層を踏破していたのだっ!!


「えっ! どういう事なの??」


私は混乱した。


私はスキル[鑑定]も持っている。


つまりは彼がソウルステージ1だということも知っているのだ。


第1層には、ゴーレムがいる。ソウルステージ3なら、単独でも倒せる魔物だ。


だが、彼はソウルステージ1。


普通は多くのゴーレムを相手に一人で第2層まで行くことは出来ない。


私は第1層の状況を確認する。


するとそこには、ゴーレムは1体もいなかったのだ。


えぇぇぇッ!!彼が一人で倒したというのっ!?


私は急いで彼を映す第2層の映像に目を向ける。


そこに映る彼の姿に、私は目をこれでもか、というくらい見開いた。


ソウルステージ3が二人でなんとか倒せる魔物、バシリコック。視線の先を砂漠化させる厄介な大きなニワトリ型の魔物だ。


普通バジリコックはひとりが視線を誘導して、その他の人がバジリコックの隙を突く。
これが勝利の定石だ。


だが、彼は一人だ。


どうするのかしら……


そう眺めていると、彼は離れたバジリコックに向かって輪っかのようなものを投げた。
するとどうだろう。その輪っかは、5匹のバジリコックの横腹を掻っ切っていったではないか……!!


「何今の……? あの武器はなんなの? あんな物見たことがないわっ!しかも、そこに投げられる彼もまた何者なの?」


そう、アデージュは並んだバジリコックを投擲武器で一掃したあと、戻ってきたソレをしっかりと指で受け止めたのだ。


彼のその動作に、彼女はソウルステージ1とは思えない異質さを覚えた。


そういえば彼は一層を掃討していた。ならばソウルステージが上がっていてもおかしくない。


そう思った私は[鑑定]を発動した。


──────────


[アデージュ=クライストス]15


〈ブランクジョブ〉アナリスト


〈ソウルステージ〉2


〈習得スキル〉
・万物解析アナリシス(U)
[鑑識][最適解][探知][分解]
・投擲
[必中]
・豪胆



〈習得魔法〉


〈ステータス〉


力・・・298─E
魔力・・266─E
物防・・273─E
魔防・・254─E
敏捷・・337─D
知力・・401─C


──────────


ソウルステージは、ステータスの平均がD三つ以上を超えると2に上がる。


そしてここからは自身の格という名のステータスは上がりづらくなる。


ステータスは本来Dまでは、魔物討伐の数をこなせば誰でも上がるものなのだ。


だが、Dから上は違う。


自分を追求し究めていかなければいけないのだ。


だからこそ私は今驚いている。


ソウルステージは上がっているだろうと思ってみてみれば、Dが三つだろうと誰もが思う。


だが、彼は違ったのだ。Dが一つ、そして恐ろしいことにC1つあるのだ。


少なくともこんな例は無かっただろう。
幾ら平均がD三つ以上と言っても、ソウルステージ2に上がる時点でCのステータスを持つ者は例外無くいない筈だ。


それが今目の前にいるのだ。


私は今、興奮しているのがわかる。


こんなの見たことないっ!!
会って話してみたいわっ!!


私はいつの間にかそんな望みが心を占めるようになっていた。


どこかでそれは無理だと分かってはいても、彼なら何とかするのではないかと思ってしまう。期待してしまうのだ。


彼は[ブランクワーカー]、今現在鳴りを潜めたワーカージョブの持ち主なのだ。


彼は光を見せてくれるのか。
ワクワクさせてくれるのか。


彼の人生を隣で見てみたい。
私に生まれて初めて、恋慕の感情が芽生えたのだ。


だが、それは叶わないだろう。何故なら私は


────迷宮核ラビリンスコアなのだから……


私はラビリンスコアとしては異端な存在で人間の姿が取れる。


生まれた時に、迷宮制覇者にある魔法を与える権利があった。だが、私は面と向かって人と話をしたことがない。
未だに迷宮制覇者がいないのだ。


だから初めての人は彼が良い。
彼が此処を出れば二度と会うことはないだろう。


だからこそ私は思う。


今、この時間は彼の生き様を1セカ足りとも見逃さない。


これから羽ばたいていくだろう英雄の序章を胸に刻もう。


その思いを胸に、私は彼を映す映像に視線を置いた。


◆◆


俺は今、4層に居る訳だか、なんか凄いことになっている。


とかいうレベルじゃねぇーよッ!!


なんだよこれはッ


──────────


[アデージュ=クライストス]15


〈ブランクジョブ〉アナリスト


〈ソウルステージ〉3


〈習得スキル〉
・万物解析アナリシス(U)
[鑑識][最適解][探知][分解][干渉]
・投擲
[必中]
・豪胆


〈習得魔法〉


〈ステータス〉


力・・・415─C
魔力・・310─D
物防・・313─D
魔防・・286─E
敏捷・・432─C
知力・・501─B


──────────


確かに第2層、第3層と魔物は一掃して、その後に体がふわっとなにか温かいものに包まれた感じがしたけれどもッ!!


まさかアレがソウルステージ上昇の儀とは思わんかったんよッ……


ソウルステージが上がると、見える世界が変わる、判断力が上がると言うが、確かにあの後、戦闘時めっちゃ魔物の動作がスローモーションに見えたわ、コンニャロー!!


てか、何で迷宮一日目でソウルステージ二つも上がっちゃってんの俺……


これどう考えても異常だろッ!!


まぁ落ち着け俺。ここは迷宮に〈完全解析アナさん〉に任せてみよう。


ソーレ!!


──────────


『継承の迷宮』


・ソウルステージ3五人以上推奨
・ 制覇者報酬あり


耐久値:5000


〈スキル〉


・自動修復[毎セカ1000、耐久値を修復する]


──────────


ちょっとまて……


ソウルステージ3五人以上推奨だと!?


なぜ俺は生きてられたんだよ、おいッ!!


何故だッ、落ち着け、落ち着けよ俺……


意味での記憶で思い当たるところは……
目線が自然とそちらに向く。


──お前かッ!!空絶輪!!


手元のチャクラムが光ることで返事をしているように見えた。


お主、メチャクチャやの〜


でも、お前のお陰で助かったぜッ!!


幽霊様ッ、ありがとうございます!!


迷宮ってスキルあったんだな。
道理で衝撃を受けても元通りになるはずだ。


第3層はファントムワームというヤツだった。
透明になれる大きなミミズみたいなヤツ。


しかし俺のユニークスキル〈完全解析アナさん〉の[探知]は優秀だった。


その結果、普通に空絶輪で一掃できた。


それにしてもこの迷宮は俺に都合が良いのか、戦闘前に考える時間がある。
もし、これが噂によく聞く、次々と魔物が出てくる迷宮であればこんなにうまくは行かなかっただろう。
後、絶対まぐれで奴らの弱点部位に攻撃してあると思う。


──アディーの考えは真実だ。本人は知らぬが……


ホッと、安堵の溜め息をつきながら、俺は下に降りる階段へと向かった。


◆◆


そして今、俺は第4層へと降りてきた。


第4層は、どうやら上半身が人間で、下半身が馬であるミノタウロスが相手のようだ。


1体のミノタウロスが俺の存在に気がついたのか、猛々しい雄叫び上げた。


些ちっとも人間ぽくない……


そんな感想を抱きつつ、雄叫びによって一斉に向かってきたミノムシ共溜息をつきながら、もう相棒と言っていい程である空絶輪をみのの集団右方向に向かって投げたら前方のミノ共は次々と倒れていく。


──(注)奇跡的に弱点に当たってます


因みに言うと迷宮の魔物って死んだら、収束して魔石になるから後方のミノ共が死体に躓くってことは無いんだよな、残念……


戻ってきたチャクラムを指を輪に通して受け止めると、そのまま一回転して第二投目を放った。すると一投目で起動が読めたのかジャンプをして避けたミノが何体かいた。なんか、故郷の脱走馬を彷彿とさせるな、ププッ!


て事で、俺から距離10メルまで近づいてきたミノは結局三体だけである。


ここで俺はようやく走り出すことに決めた。


所詮真っ直ぐにしか走れない駄馬共だから、俺は横一列になっているその駄馬共にすれ違うように駆け抜け、真横に着いた時、チャクラムを上下のブーメラン軌道で放った。


それだけで、残りの3体も呆気なく死んでいった。


──これも弱点に当たっただけである


俺は徐々に走ってた足を遅くしていくと、ようやく止まることが出来た。


ソウルステージ3強すぎない!?
いやいやよく考えろ……そもそもここはソウルステージ3が最低五人は必要なんだ。それを俺は一人でここまで来ている。ということは、だ。ここまで簡単に来れる要因は、やはりコイツなんだろうな。


俺は手に持つこいつを上に掲げる。


本来は、こんなに簡単には倒せないのである。
簡単に倒せる原因は、この空絶輪にある。


この空絶輪という名のチャクラムは特殊構造になっていて、といってもあまり表に出てこない武器な以上、知る由もないのだが、微かに空気抵抗を受けずに利用する形をしていて、抵抗を利用することで回っている刃に微弱な振動をつけているのである。


その振動を伴ってあらゆるものを掻っ切る事を可能としているのである。


それを知る由もないアデージュは、ただただチャクラムスゲーと思うだけなのである。


そういえば、此処は全5層だったよな……?


てことは次って…………ボスじゃねッ!?


無理だろ。五人以上、しかもソウルステージ3が必要なダンジョンのボスだぞ!! 戦闘経験がたった二日の俺がどうにかなる訳なくね!?


いや、一度ボスの姿を確認してから、戦うかどうか判断しよう。無理そうだったら帰ッ…………
──れないよ!! どうしようッ??


攻略者心得第三条


『未知なる迷宮は地図をとるべし』


取っとらんしッ!! やらかしたしッ!!


俺は最悪の場合、迷宮内で過ごすことになる。


そうして俺は、第5層のボスを確認する前に途方に暮れるのであった。

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