幼女転生から始める異世界解読術
第53話預言を越えた未来へ
預言書が全てとされてきたこの世界
それによって俺達の知らないところでも、争いが起きている
でもその預言書が示している未来が、様々なイレギュラーが起きたせいで、そのレールから外れ、大きく変化し始めている。
「その変化が、世界の滅亡を生んでいるって事なの?」
「そう。変わってしまった未来は、元に戻す事はできない」
「でもまたイレギュラーを起こせば」
「そのイレギュラーも、今の預言書には予想されている」
「じゃあもうどうにかする手立ては……」
「その予想すらも越えればいい」
「預言書を越える?」
そんな事がこの俺にできるのか? この小さな体で。
「それが唯一残された、破滅の未来を避ける方法。その鍵はユウとあの妖精、そして私達が握っている」
「私やフリスが世界の鍵を……」
元を正せば、俺がこの世界に転生したのは、この世界を救ってほしいと頼まれた事から始まっている。でもよく考えてみれば、未来が変わってしまう前の預言書には、果たしてこの世界に平和の未来があったのだろうか。
「ユウは考えた事ある? この世界の本当の平和ってなんなのか」
「それは、預言書を巡る争いが無くなれば平和になるんじゃないのかなって考えた事はある」
「じゃあどうすれば争いがなくなると思う?」
「それは……」
争っているもの同士の和解か、もしくは……。
「もしかして」
「そう。この世界から預言書そのものを消す事。そしてそれが可能なのは、ユウ、あなたしかいない」
「私が……」
「あなたには私達を解読する力がある。だから全てを読み解いて、最後には私達をこの世界から消してほしい」
ユウニはいつもの口調で端的に言ったが、それはとても単純なように見えて、一番難しい事だった。預言書と共にあった世界から、預言書が無くなった時、果たしてこの世界はどうなるか、考えなくても見えてくる。
でも逆に言えば、それすらも越えた未来を作り上げれば、この世界は……。
「そういう……ことなんだ」
「その為には、イレギュラーな存在であるあなたが、私達を越えた未来を作る。それ以外の方法はない」
「ユウニはそれでいいの?」
「いつかは来ることだと思っていたから。だから今、二冊の預言書はあなたの目の前にある」
「まさか、そこまで分かっていたの?」
「分かっていたから、私は今日まで貴女と一緒に行動した。私達の望みを叶える力がある貴女と」
つまり預言書がこうして一人の少女になって、俺達と共に行動して、こうして今俺にこの言葉を告げたのも、全て分かっていたという事になる。
(だから最初から全部知っていたんだな)
初めて出会った時に、この姿でも俺の本当の名前を呼んでいた。それもこれも、ユウニは全て分かっていたんだ。
「分かったよユウニ。私……出来るか分からないけど、やってみる。この世界の未来の為に」
「ありがとう、ユウ。私も力はいくらでも貸すから」
「改めてよろしくね、ユウニ」
こうして俺とユウニ、そしてまだ回答はしていないフリスを含めた三人の、本格的な預言書なき未来への歩みが始まった。
■□■□■□
翌日。
「それじゃあユウは協力するの? あの預言者の少女に」
「うん。そうする事にした」
俺は改めてフリスと二人きりで話す事にした。もう間も無く俺達は三人で、スービニアを出発し、三冊目の預言書を探しに行く。
その為にはまず俺達三人が一致団結しないと、この先が不安だ。特に昨日の話があってからは、フリスはユウニに対して不信感を抱いていた。
「あんな話をされて信じられると思う? 何考えているかも分からないような人に、協力しろって言われてもそんなの簡単に了承できないよ……」
「それはユウニの心が読めないからなのか?」
「読めていたとしても、多分私は協力できない。この前はああ言ったけど、私もスービニアに残る」
「フリス……」
「ごめんね、ユウ」
そのせいで彼女は、俺達と一緒に探しに行く事をやめると言い出してしまった。フリスがこうなるのは何となく予想できていた。
俺は多少受け入れる容量があったものの、フリスにはそんな余裕はきっとないのだろう。だから混乱して、今俺の目の前から居なくなってしまった。
(こればかりは仕方がないか)
取り残された俺はその足でユウニの元に。
「やっぱり駄目だった?」
「うん。かなり混乱しているから、時間が経てばもう少し理解してくれると思うけど、すぐには難しそう」
「なら二人で行く?」
「今のところそれが濃厚かな」
とは言ったものの、俺は少しだけ寂しさを感じていた。フリスはユウニの心が読めない問題以前に、彼女の話を信じられないと言っていた。
正直なところ俺もまだ半信半疑な部分がある。それだけユウニやカナダと言った預言書の少女達は、特殊すぎるのだ。
「ユウニはフリスが協力してくれると思っている? 預言とかそういうのを抜きにして」
「それはつまり、私自身がどう思っているかという事?」
「そう。今までのユウニの言葉が、預言書から成り立っていたものなら、今度はユウニの本当の言葉を聞いてみたい」
「私の言葉で……」
だから俺は一度聞いてみたかった。ユウニ自身の気持ちがどうなのかと。預言書としてではなく、一人の少女としての言葉を。
「私は……」
「大変二人とも! フリスが」
ユウニが何かを言おうとした時、ラーヤが慌てた様子で俺達の元にやってきた。
「どうしたの? フリスに何かあったの?」
「あったじゃ済まない話なの! フリスが……フリスが……」
そこまで言ってラーヤは一度深呼吸して、そしてもう一度俺達に告げた。
「フリスが……何者かに襲われて、今すごく危険な状態なの!」
それによって俺達の知らないところでも、争いが起きている
でもその預言書が示している未来が、様々なイレギュラーが起きたせいで、そのレールから外れ、大きく変化し始めている。
「その変化が、世界の滅亡を生んでいるって事なの?」
「そう。変わってしまった未来は、元に戻す事はできない」
「でもまたイレギュラーを起こせば」
「そのイレギュラーも、今の預言書には予想されている」
「じゃあもうどうにかする手立ては……」
「その予想すらも越えればいい」
「預言書を越える?」
そんな事がこの俺にできるのか? この小さな体で。
「それが唯一残された、破滅の未来を避ける方法。その鍵はユウとあの妖精、そして私達が握っている」
「私やフリスが世界の鍵を……」
元を正せば、俺がこの世界に転生したのは、この世界を救ってほしいと頼まれた事から始まっている。でもよく考えてみれば、未来が変わってしまう前の預言書には、果たしてこの世界に平和の未来があったのだろうか。
「ユウは考えた事ある? この世界の本当の平和ってなんなのか」
「それは、預言書を巡る争いが無くなれば平和になるんじゃないのかなって考えた事はある」
「じゃあどうすれば争いがなくなると思う?」
「それは……」
争っているもの同士の和解か、もしくは……。
「もしかして」
「そう。この世界から預言書そのものを消す事。そしてそれが可能なのは、ユウ、あなたしかいない」
「私が……」
「あなたには私達を解読する力がある。だから全てを読み解いて、最後には私達をこの世界から消してほしい」
ユウニはいつもの口調で端的に言ったが、それはとても単純なように見えて、一番難しい事だった。預言書と共にあった世界から、預言書が無くなった時、果たしてこの世界はどうなるか、考えなくても見えてくる。
でも逆に言えば、それすらも越えた未来を作り上げれば、この世界は……。
「そういう……ことなんだ」
「その為には、イレギュラーな存在であるあなたが、私達を越えた未来を作る。それ以外の方法はない」
「ユウニはそれでいいの?」
「いつかは来ることだと思っていたから。だから今、二冊の預言書はあなたの目の前にある」
「まさか、そこまで分かっていたの?」
「分かっていたから、私は今日まで貴女と一緒に行動した。私達の望みを叶える力がある貴女と」
つまり預言書がこうして一人の少女になって、俺達と共に行動して、こうして今俺にこの言葉を告げたのも、全て分かっていたという事になる。
(だから最初から全部知っていたんだな)
初めて出会った時に、この姿でも俺の本当の名前を呼んでいた。それもこれも、ユウニは全て分かっていたんだ。
「分かったよユウニ。私……出来るか分からないけど、やってみる。この世界の未来の為に」
「ありがとう、ユウ。私も力はいくらでも貸すから」
「改めてよろしくね、ユウニ」
こうして俺とユウニ、そしてまだ回答はしていないフリスを含めた三人の、本格的な預言書なき未来への歩みが始まった。
■□■□■□
翌日。
「それじゃあユウは協力するの? あの預言者の少女に」
「うん。そうする事にした」
俺は改めてフリスと二人きりで話す事にした。もう間も無く俺達は三人で、スービニアを出発し、三冊目の預言書を探しに行く。
その為にはまず俺達三人が一致団結しないと、この先が不安だ。特に昨日の話があってからは、フリスはユウニに対して不信感を抱いていた。
「あんな話をされて信じられると思う? 何考えているかも分からないような人に、協力しろって言われてもそんなの簡単に了承できないよ……」
「それはユウニの心が読めないからなのか?」
「読めていたとしても、多分私は協力できない。この前はああ言ったけど、私もスービニアに残る」
「フリス……」
「ごめんね、ユウ」
そのせいで彼女は、俺達と一緒に探しに行く事をやめると言い出してしまった。フリスがこうなるのは何となく予想できていた。
俺は多少受け入れる容量があったものの、フリスにはそんな余裕はきっとないのだろう。だから混乱して、今俺の目の前から居なくなってしまった。
(こればかりは仕方がないか)
取り残された俺はその足でユウニの元に。
「やっぱり駄目だった?」
「うん。かなり混乱しているから、時間が経てばもう少し理解してくれると思うけど、すぐには難しそう」
「なら二人で行く?」
「今のところそれが濃厚かな」
とは言ったものの、俺は少しだけ寂しさを感じていた。フリスはユウニの心が読めない問題以前に、彼女の話を信じられないと言っていた。
正直なところ俺もまだ半信半疑な部分がある。それだけユウニやカナダと言った預言書の少女達は、特殊すぎるのだ。
「ユウニはフリスが協力してくれると思っている? 預言とかそういうのを抜きにして」
「それはつまり、私自身がどう思っているかという事?」
「そう。今までのユウニの言葉が、預言書から成り立っていたものなら、今度はユウニの本当の言葉を聞いてみたい」
「私の言葉で……」
だから俺は一度聞いてみたかった。ユウニ自身の気持ちがどうなのかと。預言書としてではなく、一人の少女としての言葉を。
「私は……」
「大変二人とも! フリスが」
ユウニが何かを言おうとした時、ラーヤが慌てた様子で俺達の元にやってきた。
「どうしたの? フリスに何かあったの?」
「あったじゃ済まない話なの! フリスが……フリスが……」
そこまで言ってラーヤは一度深呼吸して、そしてもう一度俺達に告げた。
「フリスが……何者かに襲われて、今すごく危険な状態なの!」
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