幼女転生から始める異世界解読術
第50話 妖精と預言少女 前編
たった一度の痛み、それはどれだけ彼女が俺の事を心配してくれたのかヒシヒシと伝わってくる痛みだった。
「ごめん、ラーヤ」
「私だけじゃない。皆があんたの事を心配したのよ」
「それは分かっている。でも私は」
「確かに急にあんな話をされたら混乱する気持ちもわかるし、逃げ出したくなる気持ちだって分かる。でもそういう時こそ私達を頼ってくれてもいいんじゃないの?」
俺が無事に戻ってきたことが嬉しかったのか、それとも本気で心配してくれていたのかラーヤは泣いていた。その声に引き付けられたのか、ユウニとサシャルがやって来る。
「あ、ユウ……無事に帰って来たんだ」
「サシャル、心配させてごめん」
「大丈夫、私は戻って来るって信じていたから」
「信じてくれていたの?」
「馬鹿、信じていないわけないでしょ。旅だって途中なんだから」
ラーヤはサシャルの言葉に付け加える。
必ずこの場所に戻ってくる。
それはとても当たり前の事だったのかもしれない。だけど俺は色々思い出す前まで、もう何もかも忘れたままでいいと思っていた自分もいた。この場所に戻ってこなければ何も思い出さなくて済むし、あの森で暮らしている方が一番平和だった。
そんな俺を信じて三人は待ってくれていた。再び旅へ出るために半月もずっと。
「ユウ。遅い」
「ユウニもごめんね。私少しだけ受け入れられたから」
「そう……」
素っ気ない返事を見せるユウニ。だけど彼女はいつも通りな気がするので、そこは気にしない。
(心配かけすぎたかな、やっぱり)
自分から飛び出しておいて、少しだけ俺は後悔した。
■□■□■□
「それにしてもお久しぶりです、スズさん」
とりあえず皆が一旦落ち着いたので、俺達はその足であの屋敷へと移動。ラーヤが俺達にお茶を出してくれながら、そんな風に話を切り出した。
「ラーヤさん達こそ元気そうで何よりです。何やらスービニアは大変だったように見えますが」
「実はユウが国を出て行った後に、色々あったんです」
ラーヤは俺が去った後のスービニアについてかいつまんで説明してくれた。どうやらあの直後に謎の火災があったらしく、俺を一度追ったラーヤが結局戻ってきてしまう形になってしまったらしい。その炎は誰かが唱えた魔法によって消火されたらしいが、被害はそこそこ大きく、先程まで復興していたらしい。
「私がいない間にそんな事が」
「ユウこそあの森に行って、何かあったの?」
「えっと、私は」
今度は俺が三人に説明する。その中で少しだけだが記憶を取り戻したこと、奏の事、そして新しく仲間になったフリスの事を話した。当のフリスは、三人とはやはり少しだけ距離を置いている感じがする。
「一応これが半月間の間に起きた事なんだけど、まだ一つ重要なことを話してないの。特にユウニに関わる事なんだけど」
「私?」
「二冊目の預言書についての事が見つかったの」
俺はそこからもう一人のカナデという名の預言書の少女について三人に話した。一番反応すると思っていたユウニは、ただ黙って聞いていて、他の二人はそれなりに驚いていた。
「二冊目の預言書がそんな近くにあったなんて」
「私も最初は驚いたよ。スズさんの家の本棚に普通においてあるから」
「でもそれより驚いたのは」
「ユウニと同じように人間の少女になったことだよね」
もう一人のカナデは言っていた。ユウニとカナデに出会ったのなら、預言書の本当の意味が分かってくると。あれから俺はその言葉の意味をたびたび考えていたのだが、いまだに応えは出てこなかった。
(二冊の預言書と二人の少女。しかもどちらも俺が知っている名前……。これは偶然じゃないんだよな多分)
でもそこに深い意味を俺はまだ見いだせていない。この小さな体で果たしてそこまで考えることはできるのだろうか。この小さな……。
(あれ?)
今一瞬だけだけどユウの手が俺の手に戻っていなかったか?
「とりあえずそのもう一人の預言書については気になるし、探さないといけないんだけど、私はしばらくここを離れられないんだよね」
「国の復興をするの?」
「うん。あんなことを言ったくせにって思われるかもしれないけど、私少しだけ考え直してみることにしたから」
ラーヤは半月前、半分暴走していた。色々あって説得する事には成功したが、その変化の証拠が今なのかもしれない。そもそも国を守るためだったとはいえ、一人で何とかしようとするのは間違っていたのだが、ラーヤはその真意まで気づいてくれただろうか。
「となると、ラーヤとサシャルはスービニアに残る?」
「私もラーヤとここが心配だから残る。また一人で暴走されるのも嫌だし」
「監視役みたいなこと言わないでよ」
「だって監視役だし」
とりあえずラーヤとサシャルはスービニアに残ることに。それにプラスしてスズも二人の見守り役として残ってもらう事になった。
「スズさんも追わなくていいんですか? カナデを」
「とりあえずはユウさんに任せますよ。私は戻ってくるまで準備をしておきますから」
「準備? 何をですか」
「それも機密事項ですよ、ユウさん」
という事で残った組が二冊目の預言書の行方を追う事になるのだが……。
「フリス、とりあえず付いてくるの?」
「勿論。ただ、そこの人とは話したくない」
「私もそこの妖精は苦手」
「どうして出発前から一触即発なの?!」
不安しかない。
「ごめん、ラーヤ」
「私だけじゃない。皆があんたの事を心配したのよ」
「それは分かっている。でも私は」
「確かに急にあんな話をされたら混乱する気持ちもわかるし、逃げ出したくなる気持ちだって分かる。でもそういう時こそ私達を頼ってくれてもいいんじゃないの?」
俺が無事に戻ってきたことが嬉しかったのか、それとも本気で心配してくれていたのかラーヤは泣いていた。その声に引き付けられたのか、ユウニとサシャルがやって来る。
「あ、ユウ……無事に帰って来たんだ」
「サシャル、心配させてごめん」
「大丈夫、私は戻って来るって信じていたから」
「信じてくれていたの?」
「馬鹿、信じていないわけないでしょ。旅だって途中なんだから」
ラーヤはサシャルの言葉に付け加える。
必ずこの場所に戻ってくる。
それはとても当たり前の事だったのかもしれない。だけど俺は色々思い出す前まで、もう何もかも忘れたままでいいと思っていた自分もいた。この場所に戻ってこなければ何も思い出さなくて済むし、あの森で暮らしている方が一番平和だった。
そんな俺を信じて三人は待ってくれていた。再び旅へ出るために半月もずっと。
「ユウ。遅い」
「ユウニもごめんね。私少しだけ受け入れられたから」
「そう……」
素っ気ない返事を見せるユウニ。だけど彼女はいつも通りな気がするので、そこは気にしない。
(心配かけすぎたかな、やっぱり)
自分から飛び出しておいて、少しだけ俺は後悔した。
■□■□■□
「それにしてもお久しぶりです、スズさん」
とりあえず皆が一旦落ち着いたので、俺達はその足であの屋敷へと移動。ラーヤが俺達にお茶を出してくれながら、そんな風に話を切り出した。
「ラーヤさん達こそ元気そうで何よりです。何やらスービニアは大変だったように見えますが」
「実はユウが国を出て行った後に、色々あったんです」
ラーヤは俺が去った後のスービニアについてかいつまんで説明してくれた。どうやらあの直後に謎の火災があったらしく、俺を一度追ったラーヤが結局戻ってきてしまう形になってしまったらしい。その炎は誰かが唱えた魔法によって消火されたらしいが、被害はそこそこ大きく、先程まで復興していたらしい。
「私がいない間にそんな事が」
「ユウこそあの森に行って、何かあったの?」
「えっと、私は」
今度は俺が三人に説明する。その中で少しだけだが記憶を取り戻したこと、奏の事、そして新しく仲間になったフリスの事を話した。当のフリスは、三人とはやはり少しだけ距離を置いている感じがする。
「一応これが半月間の間に起きた事なんだけど、まだ一つ重要なことを話してないの。特にユウニに関わる事なんだけど」
「私?」
「二冊目の預言書についての事が見つかったの」
俺はそこからもう一人のカナデという名の預言書の少女について三人に話した。一番反応すると思っていたユウニは、ただ黙って聞いていて、他の二人はそれなりに驚いていた。
「二冊目の預言書がそんな近くにあったなんて」
「私も最初は驚いたよ。スズさんの家の本棚に普通においてあるから」
「でもそれより驚いたのは」
「ユウニと同じように人間の少女になったことだよね」
もう一人のカナデは言っていた。ユウニとカナデに出会ったのなら、預言書の本当の意味が分かってくると。あれから俺はその言葉の意味をたびたび考えていたのだが、いまだに応えは出てこなかった。
(二冊の預言書と二人の少女。しかもどちらも俺が知っている名前……。これは偶然じゃないんだよな多分)
でもそこに深い意味を俺はまだ見いだせていない。この小さな体で果たしてそこまで考えることはできるのだろうか。この小さな……。
(あれ?)
今一瞬だけだけどユウの手が俺の手に戻っていなかったか?
「とりあえずそのもう一人の預言書については気になるし、探さないといけないんだけど、私はしばらくここを離れられないんだよね」
「国の復興をするの?」
「うん。あんなことを言ったくせにって思われるかもしれないけど、私少しだけ考え直してみることにしたから」
ラーヤは半月前、半分暴走していた。色々あって説得する事には成功したが、その変化の証拠が今なのかもしれない。そもそも国を守るためだったとはいえ、一人で何とかしようとするのは間違っていたのだが、ラーヤはその真意まで気づいてくれただろうか。
「となると、ラーヤとサシャルはスービニアに残る?」
「私もラーヤとここが心配だから残る。また一人で暴走されるのも嫌だし」
「監視役みたいなこと言わないでよ」
「だって監視役だし」
とりあえずラーヤとサシャルはスービニアに残ることに。それにプラスしてスズも二人の見守り役として残ってもらう事になった。
「スズさんも追わなくていいんですか? カナデを」
「とりあえずはユウさんに任せますよ。私は戻ってくるまで準備をしておきますから」
「準備? 何をですか」
「それも機密事項ですよ、ユウさん」
という事で残った組が二冊目の預言書の行方を追う事になるのだが……。
「フリス、とりあえず付いてくるの?」
「勿論。ただ、そこの人とは話したくない」
「私もそこの妖精は苦手」
「どうして出発前から一触即発なの?!」
不安しかない。
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