幼女転生から始める異世界解読術
第51話 妖精と預言少女 中編
不安しかない旅の出発は一週間後に決まり、俺はいつものと言わんばかりにスービニアの読書にふけることにした。
したのだが、
「……」
「……」
「あのさ二人とも、そんなに見られると集中できないんだけど」
何故かその場にユウニとフリスがやって来て、俺を間に挟んで無言で座っている。その間に座っている俺は、ただならぬプレッシャーを感じているせいで、読書に集中できない。
「別に集中くらいできるでしょ?」
「サラッと人の心読まないでよ。というか、どうしてそんなに二人とも対立しているの」
「別に対立なんかしていない。そこの妖精が余計な事をしないか見張っているだけ」
「いや、どうして見張っている必要があるの?」
別にフリスが何かをするわけではない。むしろフリスからしたら、ユウニが何を考えているか分かってしまうため、変に接触はしてこないはずだ。それなのにこの一触即発状態なのは、どうしてくれよう。
「聞こえないの」
その疑問に答えるかのように、フリスは俺の耳元でそんな事を囁いた。
「聞こえないって、何が?」
「その子の心の声が聞こえないの。だからちょっと怖い」
「心の声が聞こえないって、何も考えていないとかじゃなくて?」
「分からない」
当たり前に起きていたことが起きなくなってしまうと誰だって不安にはなるが、フリスの場合はそれが逆にいいことだとは思うんだけど、まさか怖いなんて言い出すとは思っていなかった。
【それにしても……】
ユウニの場合特殊からなのか、それとも別の何かがあるからなのかまさか心が読めないとは思わなかった。それがたまたまなのかも分からないけど、やっぱり預言書は特別なのかもしれない。
「何?」
「ユウニも変わっているんだなって思って」
「それは悪口?」
「別にそうじゃないけど。よく考えたら変な話だなと思って。ユウニがそうだから当たり前だと思っていたけど、本が人間になるって」
「そんな変な話?」
「普通じゃあり得ない話かな」
ユウニだけ特別なものだと思っていたけど、カナデがそうなったようにもしかしたら預言書は三冊とも人間になったりするのかもしれない。
でも不思議な話は、それだけでは収まらない。
ユウニはともかくとしてもう一人の少女は、カナデと名乗った。スズの様子や過去の記憶から、それはただの偶然ではないのは分かったが、ここまで二人とも俺に関わる名前ばかりだった。
つまり、預言書と俺はもしかしたら何かしらの関わりがある可能性がある。ただの思い違いかもしれないけど、もしその可能性があれば……。
「ユウ、それは考えすぎ」
「え?」
そう言い出したのはユウニだった。
「私達はユウがこの世界に来る前から存在していた。だからユウが関わっていること自体はない」
「だったらどうして」
「忘れた? 私達は預言書。ここまでの未来は全部知っている。この先の事も」
「この先の未来?」
確かユウニ自体に書かれていたのは、過去の出来事から現在に至るまでの大体の未来だった。今思い返せば、この日までの事も書いてあったのかもしれない。
「それは教えてくれるの?」
「それはできない。それだけはある意味では禁忌だから」
禁忌? 預言書なのに禁忌とはどうなんだ。しかもその禁忌を巡って争いが起きているはずなのに、理解が追い付かない。
「そういえば妖精の国にも預言書の存在は知らされていたの?」
「一応大体の人は知っていたよ。とはいっても、私達の国がある場所が場所だから、ヒノプスのようにほとんど火種が飛んでいることはなかったけど」
「やっぱりそうなるんだ。ヒノプスの時も思ったけど、そもそもどうしてこんなに預言書について知れ渡っているんだろう」
「争いが始まってから噂が広まったし、それが原因なんじゃないのかな」
「だったらそもそもどうして預言書という存在を私達が知ることになったんだろう」
「どういう意味?」
「だって預言書は最初から誰かが知っていたわけじゃないでしょ? 何だって見つけることから始まるわけだし」
「つまり誰かがわざわざ探し出したって事?」
「それか意図的に誰かが作ったか、になるけど」
この預言書の歴史はそこまで深くない。昔からあるもので、誰かがそれを見つけたならともかくとして、この預言書に書かれていた未来はそもそも現状と全く異なっている。以前これを読んだアーニスさんいわく、望まれた未来がそこには記されていた。つまり誰かがこの預言書を作り上げた可能性が高くなる。
何故なら予知能力がない限り、未来の事なんて確実に当てる事なんて不可能なのだから。
「じゃあ誰かが預言書を意図的に作って、争いの種としている可能性があるって事なの?」
「それはまだ分からない。でもユウニやカナデが存在しているのも、もしかしたら誰かが……」
作った可能性があると言おうとしたが、俺はそれ以上は口に出さなかった。ユウニ自身が今の話をどう思っているのかは分からないけど、未来が違っている以上その可能性もゼロではない。
「ユウと妖精、今から少しだけ時間が欲しい」
「時間? 別に全然あるから大丈夫だけどどうして?」
「その疑問の答え、二人に教えてあげる」
したのだが、
「……」
「……」
「あのさ二人とも、そんなに見られると集中できないんだけど」
何故かその場にユウニとフリスがやって来て、俺を間に挟んで無言で座っている。その間に座っている俺は、ただならぬプレッシャーを感じているせいで、読書に集中できない。
「別に集中くらいできるでしょ?」
「サラッと人の心読まないでよ。というか、どうしてそんなに二人とも対立しているの」
「別に対立なんかしていない。そこの妖精が余計な事をしないか見張っているだけ」
「いや、どうして見張っている必要があるの?」
別にフリスが何かをするわけではない。むしろフリスからしたら、ユウニが何を考えているか分かってしまうため、変に接触はしてこないはずだ。それなのにこの一触即発状態なのは、どうしてくれよう。
「聞こえないの」
その疑問に答えるかのように、フリスは俺の耳元でそんな事を囁いた。
「聞こえないって、何が?」
「その子の心の声が聞こえないの。だからちょっと怖い」
「心の声が聞こえないって、何も考えていないとかじゃなくて?」
「分からない」
当たり前に起きていたことが起きなくなってしまうと誰だって不安にはなるが、フリスの場合はそれが逆にいいことだとは思うんだけど、まさか怖いなんて言い出すとは思っていなかった。
【それにしても……】
ユウニの場合特殊からなのか、それとも別の何かがあるからなのかまさか心が読めないとは思わなかった。それがたまたまなのかも分からないけど、やっぱり預言書は特別なのかもしれない。
「何?」
「ユウニも変わっているんだなって思って」
「それは悪口?」
「別にそうじゃないけど。よく考えたら変な話だなと思って。ユウニがそうだから当たり前だと思っていたけど、本が人間になるって」
「そんな変な話?」
「普通じゃあり得ない話かな」
ユウニだけ特別なものだと思っていたけど、カナデがそうなったようにもしかしたら預言書は三冊とも人間になったりするのかもしれない。
でも不思議な話は、それだけでは収まらない。
ユウニはともかくとしてもう一人の少女は、カナデと名乗った。スズの様子や過去の記憶から、それはただの偶然ではないのは分かったが、ここまで二人とも俺に関わる名前ばかりだった。
つまり、預言書と俺はもしかしたら何かしらの関わりがある可能性がある。ただの思い違いかもしれないけど、もしその可能性があれば……。
「ユウ、それは考えすぎ」
「え?」
そう言い出したのはユウニだった。
「私達はユウがこの世界に来る前から存在していた。だからユウが関わっていること自体はない」
「だったらどうして」
「忘れた? 私達は預言書。ここまでの未来は全部知っている。この先の事も」
「この先の未来?」
確かユウニ自体に書かれていたのは、過去の出来事から現在に至るまでの大体の未来だった。今思い返せば、この日までの事も書いてあったのかもしれない。
「それは教えてくれるの?」
「それはできない。それだけはある意味では禁忌だから」
禁忌? 預言書なのに禁忌とはどうなんだ。しかもその禁忌を巡って争いが起きているはずなのに、理解が追い付かない。
「そういえば妖精の国にも預言書の存在は知らされていたの?」
「一応大体の人は知っていたよ。とはいっても、私達の国がある場所が場所だから、ヒノプスのようにほとんど火種が飛んでいることはなかったけど」
「やっぱりそうなるんだ。ヒノプスの時も思ったけど、そもそもどうしてこんなに預言書について知れ渡っているんだろう」
「争いが始まってから噂が広まったし、それが原因なんじゃないのかな」
「だったらそもそもどうして預言書という存在を私達が知ることになったんだろう」
「どういう意味?」
「だって預言書は最初から誰かが知っていたわけじゃないでしょ? 何だって見つけることから始まるわけだし」
「つまり誰かがわざわざ探し出したって事?」
「それか意図的に誰かが作ったか、になるけど」
この預言書の歴史はそこまで深くない。昔からあるもので、誰かがそれを見つけたならともかくとして、この預言書に書かれていた未来はそもそも現状と全く異なっている。以前これを読んだアーニスさんいわく、望まれた未来がそこには記されていた。つまり誰かがこの預言書を作り上げた可能性が高くなる。
何故なら予知能力がない限り、未来の事なんて確実に当てる事なんて不可能なのだから。
「じゃあ誰かが預言書を意図的に作って、争いの種としている可能性があるって事なの?」
「それはまだ分からない。でもユウニやカナデが存在しているのも、もしかしたら誰かが……」
作った可能性があると言おうとしたが、俺はそれ以上は口に出さなかった。ユウニ自身が今の話をどう思っているのかは分からないけど、未来が違っている以上その可能性もゼロではない。
「ユウと妖精、今から少しだけ時間が欲しい」
「時間? 別に全然あるから大丈夫だけどどうして?」
「その疑問の答え、二人に教えてあげる」
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