幼女転生から始める異世界解読術
第23話 好きな人は誰?
こういう異世界にやって来たらかならずやって来ると思っていたこう言ったイベント。よくラノベとかによくある展開であり、こういう時の主人公はかなり鈍感なところがあったりする。
だが俺は違う。
そういう展開は散々本で勉強してきた。一瞬動揺はしたけど、冷静になってみれば答えは近くにある。
「確かに中身は男だからそういう話は興味あるけど、外見が女子だと告白されても嬉しくないかな」
「しかも顔見知りだし」
「興味ないかも」
あれ? 皆さんそれは本気で言っていますか?
「え、えっともしかしてこの世界は恋愛とか概念がないの?」
「そうは言ってないわよ。ただユウに告白されても面白くない」
「別に告白するとは言っていないけど……」
あと何故お前が告白されると思っているんだよラーヤ。ライバルの関係以上をまさか求めているのか?
「あ、もしかしてユウ、気になる人がいるの?」
「いや、そうじゃなくて私は」
「いるんですかユウさん。いるなら教えてくださいよ」
「アーニスさんまで。別に私は」
気になる人がいないというのは嘘ではあるのだけれど、それを今この場で問い詰められて答えたら、最悪なパターンだ。下手すればフラグが折れる。
(って、フラグとか何言っているんだ俺は)
ラノベの読みすぎのせいで、逆に余計なことばかり考えるようになってしまった。誰が好きとか嫌いとか、誰に好まれているか、嫌われているかとか。こんな事は今まで難しく考えたことがなかった。
(だけど俺はあの時……)
味わったことがない何かを感じた。あれこそは本当の奇跡だったのかもしれない。
「好きな人はいないですよ、今は」
「今はという事はもしかしてこれから好きになるんですか?」
「でもそれはつまり」
「百合になるよね」
「どうしてそうなるの?!」
というか何で百合って言葉も知っているんだよ。どうなっているんだよこの世界は。
「そもそもどうして私ばっかり答えているんですか? 他の皆にも聞いてくださいよ」
「他の皆と言われましても、聞く必要がないと思うんですけど」
「必要がない?」
「そうね。私達は答えをもっているけど、それを答える理由はないし」
「だったら私だってないよ!」
心の底から湧き上がってくる何かの感情。嫌いとかそういう感情ではなく、今俺の中にある感情は……。
(また余計なことを思い出しているな俺)
それをこの場にぶつけたって意味すら持たないのに、どうしても俺は自分の中で渦巻く何かに耐え切れなくなっていた。
「好きとか嫌いとか、それって人それぞれだって思うの。そこに踏み込むことはあまり良くないよ」
「ユウ、どうしたの?」
「ごめん、変なこと思い出しちゃった。少し外に出てくる」
■□■□■□
最近どうも感情的になることが増えてきてしまった。それが時に傷つける事があるから、それだけは抑えておきたかったんだけど、コントロールが利かなくなっている。
(取り戻せないものはもう取り戻せないのに、何をやっているんだよ俺は)
「ユウ、大丈夫?」
図書館の外で一人、黄昏がれていると、ユウニが後ろに立って声をかけてくる。
「一応大丈夫……。ありがとう」
「ユウは皆と一緒にいるのが嫌?」
「そうじゃないよ。ただ最近おかしくなっているだけ」
「何もおかしいとこないよ?」
「見た目だけじゃ分からないものがあるの」
外見はそう見えなくても、内面はそうじゃない。周りからは深く考えすぎだと言われることがあるが、それが俺だから仕方がない。
「リュウノスケはこの世界に来たくなかったの?」
(望んできたわけじゃないけど、別に嫌いじゃないしラーヤ達に出会えたこともよかったと思っているよ)
「だったらどうして、あんなに感情的になるの?」
「私にも分からない。分からないから飛び出してきたんだと思う」
「そう……」
そこからユウニは何も言ってこない。かといって俺から離れるわけでもなくただその場に立っていた。
「やっぱりあなたと私は似ている」
「……え?」
「最初に会った時に言った。あなたは私だって」
「でも私はあなたじゃないって言った」
「そう。私達は似ているけど、決定的に違うものがある」
「決定的に違うもの?」
「私はあなたと違くて罪を背負っていない」
「っ!? どうしてそれを」
「私はあなたの事を知っているから」
「だからって」
それを知っている理由にならない。彼女は本当に俺の何を見てきたのだろうか。
「罪を償うのは怖い?」
「怖くはないよ。それを背負うって決めて私は今日まで生きていたから」
それは嘘だ。俺はいつも自分の罪と向き合うたびに震えている。今この瞬間だって。
「怖いなら皆に言ってみればいいのに」
「そんな事できないよ。だって」
この世界では関係ないことだ。何事も本のように上手くいかない。だからこれに向き合えるのは俺自身しかいない。
「そうやって抱え込んでいたって、駄目だよ」
「あなたに何が分かるの? ユウニ!」
「分かるよ。ユウは分かりやすいから」
「分かりやすいって」
「そうやって涙を流したりするところ」
「あ」
いつの間に……。
「皆のところに戻ろう。 私もいるから」
俺の正面に立ち、手を差し伸べるユウニ。俺は小さな手でそれを握る。
(暖かい。何でだろう)
この懐かしい感覚、どこかで味わったことがあるような……。
その後俺は皆の前で先程感情的になってしまったことを謝罪した。皆は許してくれたがもやもやは消えない。
「ユウさん、どうかしましたか?」
「あ、何でもないです」
その原因はユウニにあった。彼女はどこまで俺の事を知っているのか。それが怖くて仕方がなかった。だってあの罪は、当事者しか分からないはず。ましてや世界が違うのにどうして……。
(今その答えを出すのは難しいか)
その疑問の答えが出るのも当分先になるのだが、今になって思えばそれは当たり前の事だった。だって彼女は、
本当の意味でユウだったのだから。
だが俺は違う。
そういう展開は散々本で勉強してきた。一瞬動揺はしたけど、冷静になってみれば答えは近くにある。
「確かに中身は男だからそういう話は興味あるけど、外見が女子だと告白されても嬉しくないかな」
「しかも顔見知りだし」
「興味ないかも」
あれ? 皆さんそれは本気で言っていますか?
「え、えっともしかしてこの世界は恋愛とか概念がないの?」
「そうは言ってないわよ。ただユウに告白されても面白くない」
「別に告白するとは言っていないけど……」
あと何故お前が告白されると思っているんだよラーヤ。ライバルの関係以上をまさか求めているのか?
「あ、もしかしてユウ、気になる人がいるの?」
「いや、そうじゃなくて私は」
「いるんですかユウさん。いるなら教えてくださいよ」
「アーニスさんまで。別に私は」
気になる人がいないというのは嘘ではあるのだけれど、それを今この場で問い詰められて答えたら、最悪なパターンだ。下手すればフラグが折れる。
(って、フラグとか何言っているんだ俺は)
ラノベの読みすぎのせいで、逆に余計なことばかり考えるようになってしまった。誰が好きとか嫌いとか、誰に好まれているか、嫌われているかとか。こんな事は今まで難しく考えたことがなかった。
(だけど俺はあの時……)
味わったことがない何かを感じた。あれこそは本当の奇跡だったのかもしれない。
「好きな人はいないですよ、今は」
「今はという事はもしかしてこれから好きになるんですか?」
「でもそれはつまり」
「百合になるよね」
「どうしてそうなるの?!」
というか何で百合って言葉も知っているんだよ。どうなっているんだよこの世界は。
「そもそもどうして私ばっかり答えているんですか? 他の皆にも聞いてくださいよ」
「他の皆と言われましても、聞く必要がないと思うんですけど」
「必要がない?」
「そうね。私達は答えをもっているけど、それを答える理由はないし」
「だったら私だってないよ!」
心の底から湧き上がってくる何かの感情。嫌いとかそういう感情ではなく、今俺の中にある感情は……。
(また余計なことを思い出しているな俺)
それをこの場にぶつけたって意味すら持たないのに、どうしても俺は自分の中で渦巻く何かに耐え切れなくなっていた。
「好きとか嫌いとか、それって人それぞれだって思うの。そこに踏み込むことはあまり良くないよ」
「ユウ、どうしたの?」
「ごめん、変なこと思い出しちゃった。少し外に出てくる」
■□■□■□
最近どうも感情的になることが増えてきてしまった。それが時に傷つける事があるから、それだけは抑えておきたかったんだけど、コントロールが利かなくなっている。
(取り戻せないものはもう取り戻せないのに、何をやっているんだよ俺は)
「ユウ、大丈夫?」
図書館の外で一人、黄昏がれていると、ユウニが後ろに立って声をかけてくる。
「一応大丈夫……。ありがとう」
「ユウは皆と一緒にいるのが嫌?」
「そうじゃないよ。ただ最近おかしくなっているだけ」
「何もおかしいとこないよ?」
「見た目だけじゃ分からないものがあるの」
外見はそう見えなくても、内面はそうじゃない。周りからは深く考えすぎだと言われることがあるが、それが俺だから仕方がない。
「リュウノスケはこの世界に来たくなかったの?」
(望んできたわけじゃないけど、別に嫌いじゃないしラーヤ達に出会えたこともよかったと思っているよ)
「だったらどうして、あんなに感情的になるの?」
「私にも分からない。分からないから飛び出してきたんだと思う」
「そう……」
そこからユウニは何も言ってこない。かといって俺から離れるわけでもなくただその場に立っていた。
「やっぱりあなたと私は似ている」
「……え?」
「最初に会った時に言った。あなたは私だって」
「でも私はあなたじゃないって言った」
「そう。私達は似ているけど、決定的に違うものがある」
「決定的に違うもの?」
「私はあなたと違くて罪を背負っていない」
「っ!? どうしてそれを」
「私はあなたの事を知っているから」
「だからって」
それを知っている理由にならない。彼女は本当に俺の何を見てきたのだろうか。
「罪を償うのは怖い?」
「怖くはないよ。それを背負うって決めて私は今日まで生きていたから」
それは嘘だ。俺はいつも自分の罪と向き合うたびに震えている。今この瞬間だって。
「怖いなら皆に言ってみればいいのに」
「そんな事できないよ。だって」
この世界では関係ないことだ。何事も本のように上手くいかない。だからこれに向き合えるのは俺自身しかいない。
「そうやって抱え込んでいたって、駄目だよ」
「あなたに何が分かるの? ユウニ!」
「分かるよ。ユウは分かりやすいから」
「分かりやすいって」
「そうやって涙を流したりするところ」
「あ」
いつの間に……。
「皆のところに戻ろう。 私もいるから」
俺の正面に立ち、手を差し伸べるユウニ。俺は小さな手でそれを握る。
(暖かい。何でだろう)
この懐かしい感覚、どこかで味わったことがあるような……。
その後俺は皆の前で先程感情的になってしまったことを謝罪した。皆は許してくれたがもやもやは消えない。
「ユウさん、どうかしましたか?」
「あ、何でもないです」
その原因はユウニにあった。彼女はどこまで俺の事を知っているのか。それが怖くて仕方がなかった。だってあの罪は、当事者しか分からないはず。ましてや世界が違うのにどうして……。
(今その答えを出すのは難しいか)
その疑問の答えが出るのも当分先になるのだが、今になって思えばそれは当たり前の事だった。だって彼女は、
本当の意味でユウだったのだから。
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