幼女転生から始める異世界解読術
第18話 匂いは記憶を呼び覚ます
何かが頭の中に流れ込んでくる。これは俺の記憶ではない他の誰かの記憶。
そこに出てきたのは、
(ティナ……?)
この記憶はユウの記憶だろうか? ティナは何かを記憶の主に話しているように見えるが、何を言っているかは分からない。だけど一つ引っ掛かるのが、ティナと思わしき人物と、目線の高さが一緒だということだ。この記憶が仮にユウのものならば、その目線が決して同じ高さにはならないはずだ。
(じゃあこの記憶は誰のものなんだ)
だがその疑問の答えはすぐ近くにあった。
(え?)
「ユウさん、しっかりしてください」
「ユウ!」
その真相にたどり着いた時、あの頭痛は収まっていた。アーニスさんとラーヤの声で俺は我に返る。
「あ、あれ」
我に返った場所は何故かベッドの上。先程まで図書館にいた筈なのに、俺が寝ているのはティナの家にあるベッドの上。
「わ、私どうして寝かされているんですか?」
「あの後ユウさんはあまりの頭痛に一時的に意識を失っていたんです。もう一人のユウさんに休ませてあげてと頼まれたから運んできたんです」
「もう一人ユウが?」
この頭痛を引き起こしたのは明らかにもう一人のユウだった。それなのに何故彼女は冷静にそんなことを言ったのかは謎だ。
「それで、その大丈夫? ユウ」
「心配してくれてありがとう、ラーヤ。頭痛がちょっと激しかっただけだから」
ただそれと同時に見たあの記憶については語らない。というより語りたくなかった。もしかしたらあの記憶が俺が死んだ理由に繋がるかもしれないから……。
「あの、ユウさん。目を覚ましてすぐなのは申し訳ないですけど、話を聞かせていただけませんか?」
「話って……もう一人のユウが言っていたあの事ですか?」
「はい。中身が違うというのは、どういう事なのか気になりまして」
「やっぱりそうなりますよね……」
普通の人からしてみれば一体何言っているんだこいつ状態かもしれないが、あの預言書が示している通りもしこの世界に転生者という概念が存在するならば、もしかしたらアーニスもそれを知っている可能性が無いわけではない。現にこうして聞いてくるという事は思い当たる節があるのかもしれない。
「この話はあまり私としては話したくないのですが、聞く覚悟がありますか?」
「覚悟なら……できています。この国の王女として、どんな話でも受け入れます」
「分かりました。……話します」
俺はこの後サシャルも呼んで、今から起きた八日前に起きた摩訶不思議なこと、そして今のユウはユウであってユウじゃない事、今分かっていることを全て話した。アーニスさんはかなり驚いていたけど、ラーヤとサシャルは大きな反応を示さなかった。
まるで最初から知っていたみたいな反応だったけど、そんなはずがない。この話をしたのはティナとリルだけだ。
「じゃあ今のユウさんは、その、リュウノスケさんという方が転生した形という事なんですか?」
「はい。難しい話ではあるかもしれませんが、これは紛れもない事実です」
■□■□■□
全てを話してから数時間ほどが経過した。既にラーヤ達は図書館へと戻っており、今残っているのは俺一人……のはずだった。
「どうして家に来たの?」
「あなたと話がしたかったから」
「あの頭痛の原因あなたでしょ?」
「……」
皆が帰ってしばらくしてもう一人のユウが家にやって来たのだ。別に敵視しているというわけではないのだが、あの頭痛を起こしたのが彼女である以上警戒はする。
そして何より彼女は俺の正体を既に知っている。警戒しない方がおかしい。
「私はあまりあなたと話したくないんだけど」
「私の方が話がある。ユウじゃなくてリュウノスケに」
「!? どうしてその名前を」
「こうして会える日をずっと待っていたから」
全く意味が分からない。そもそも俺は元からこの世界の人間ではないというのに、これだとまるで俺はこの世界に昔からいたみたいになっている。
(そんな事はない。俺は……)
「私があなたに記憶を見せた理由がそれ。あなたは大事なことを忘れている」
「だ、大事なこと?」
「あなたは……」
ユウが何かを俺に告げようとする。だがその前に俺の頭がそれを拒絶する。
何か脳にプロテクトを掛けられたような感覚に陥り、俺はまともに会話ができなくなる。
(何がどうなっているんだ……)
「リュ、リュウノスケ!」
もう一人のユウの声が遠くに聞こえる。これは彼女の意思ではないという事なのだろうか。だとしたらこれは、
俺自身が起こしているのか?
■□■□■□
どこか懐かしい匂いがした。
ずっとずっと忘れていた匂い。
ずっと本の中に閉じ込めていた匂い。
俺が本が好きだったのは、その匂いが好きだったから。
本と一緒に生活すれば、その匂いを嗅げるから。
だから一度も忘れたくなかった。
なのに俺は忘れていた。
(それを思い出したら、嫌なことを思い出す。それだけは……)
どうしても嫌だった。
これは俺がずっと閉じ込めていた記憶。
本の中にずっと閉じ込めていた記憶。
「リュウノスケ!」
「っ!」
彼女の声で俺の意識が覚醒する。どうやら俺はまた、さっきと同じ現象に見舞われていたようだった。
「ごめん、私が無理に思い出させようとしたばかりに」
「いいよ。私は大丈夫だから……」
でも俺はもう大丈夫。
大切な何かを思い出せそうな気がするから。
そこに出てきたのは、
(ティナ……?)
この記憶はユウの記憶だろうか? ティナは何かを記憶の主に話しているように見えるが、何を言っているかは分からない。だけど一つ引っ掛かるのが、ティナと思わしき人物と、目線の高さが一緒だということだ。この記憶が仮にユウのものならば、その目線が決して同じ高さにはならないはずだ。
(じゃあこの記憶は誰のものなんだ)
だがその疑問の答えはすぐ近くにあった。
(え?)
「ユウさん、しっかりしてください」
「ユウ!」
その真相にたどり着いた時、あの頭痛は収まっていた。アーニスさんとラーヤの声で俺は我に返る。
「あ、あれ」
我に返った場所は何故かベッドの上。先程まで図書館にいた筈なのに、俺が寝ているのはティナの家にあるベッドの上。
「わ、私どうして寝かされているんですか?」
「あの後ユウさんはあまりの頭痛に一時的に意識を失っていたんです。もう一人のユウさんに休ませてあげてと頼まれたから運んできたんです」
「もう一人ユウが?」
この頭痛を引き起こしたのは明らかにもう一人のユウだった。それなのに何故彼女は冷静にそんなことを言ったのかは謎だ。
「それで、その大丈夫? ユウ」
「心配してくれてありがとう、ラーヤ。頭痛がちょっと激しかっただけだから」
ただそれと同時に見たあの記憶については語らない。というより語りたくなかった。もしかしたらあの記憶が俺が死んだ理由に繋がるかもしれないから……。
「あの、ユウさん。目を覚ましてすぐなのは申し訳ないですけど、話を聞かせていただけませんか?」
「話って……もう一人のユウが言っていたあの事ですか?」
「はい。中身が違うというのは、どういう事なのか気になりまして」
「やっぱりそうなりますよね……」
普通の人からしてみれば一体何言っているんだこいつ状態かもしれないが、あの預言書が示している通りもしこの世界に転生者という概念が存在するならば、もしかしたらアーニスもそれを知っている可能性が無いわけではない。現にこうして聞いてくるという事は思い当たる節があるのかもしれない。
「この話はあまり私としては話したくないのですが、聞く覚悟がありますか?」
「覚悟なら……できています。この国の王女として、どんな話でも受け入れます」
「分かりました。……話します」
俺はこの後サシャルも呼んで、今から起きた八日前に起きた摩訶不思議なこと、そして今のユウはユウであってユウじゃない事、今分かっていることを全て話した。アーニスさんはかなり驚いていたけど、ラーヤとサシャルは大きな反応を示さなかった。
まるで最初から知っていたみたいな反応だったけど、そんなはずがない。この話をしたのはティナとリルだけだ。
「じゃあ今のユウさんは、その、リュウノスケさんという方が転生した形という事なんですか?」
「はい。難しい話ではあるかもしれませんが、これは紛れもない事実です」
■□■□■□
全てを話してから数時間ほどが経過した。既にラーヤ達は図書館へと戻っており、今残っているのは俺一人……のはずだった。
「どうして家に来たの?」
「あなたと話がしたかったから」
「あの頭痛の原因あなたでしょ?」
「……」
皆が帰ってしばらくしてもう一人のユウが家にやって来たのだ。別に敵視しているというわけではないのだが、あの頭痛を起こしたのが彼女である以上警戒はする。
そして何より彼女は俺の正体を既に知っている。警戒しない方がおかしい。
「私はあまりあなたと話したくないんだけど」
「私の方が話がある。ユウじゃなくてリュウノスケに」
「!? どうしてその名前を」
「こうして会える日をずっと待っていたから」
全く意味が分からない。そもそも俺は元からこの世界の人間ではないというのに、これだとまるで俺はこの世界に昔からいたみたいになっている。
(そんな事はない。俺は……)
「私があなたに記憶を見せた理由がそれ。あなたは大事なことを忘れている」
「だ、大事なこと?」
「あなたは……」
ユウが何かを俺に告げようとする。だがその前に俺の頭がそれを拒絶する。
何か脳にプロテクトを掛けられたような感覚に陥り、俺はまともに会話ができなくなる。
(何がどうなっているんだ……)
「リュ、リュウノスケ!」
もう一人のユウの声が遠くに聞こえる。これは彼女の意思ではないという事なのだろうか。だとしたらこれは、
俺自身が起こしているのか?
■□■□■□
どこか懐かしい匂いがした。
ずっとずっと忘れていた匂い。
ずっと本の中に閉じ込めていた匂い。
俺が本が好きだったのは、その匂いが好きだったから。
本と一緒に生活すれば、その匂いを嗅げるから。
だから一度も忘れたくなかった。
なのに俺は忘れていた。
(それを思い出したら、嫌なことを思い出す。それだけは……)
どうしても嫌だった。
これは俺がずっと閉じ込めていた記憶。
本の中にずっと閉じ込めていた記憶。
「リュウノスケ!」
「っ!」
彼女の声で俺の意識が覚醒する。どうやら俺はまた、さっきと同じ現象に見舞われていたようだった。
「ごめん、私が無理に思い出させようとしたばかりに」
「いいよ。私は大丈夫だから……」
でも俺はもう大丈夫。
大切な何かを思い出せそうな気がするから。
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