幼女転生から始める異世界解読術
プロローグ
俺の人生は本でできていた。
小さい頃から本が大好きだった俺は、年を取るにつれてもその気持ちは変わらなかった。毎日のように図書館に通って、沢山本を読んで、沢山の物語に出会った。
勿論小説だけではない。
図鑑や辞典、ビジネス文書、ありとあらゆるジャンルに手を出して、沢山の知識を得てきた。
だから俺にとって本は人生だった。
何故過去形なのか? というと、
「どこだ……ここ」
「よくぞ来てくれました、夏目龍之介様」
別に本を読むのが飽きたわけではない。むしろその思いはずっと変わっていない。
答えはただ一つ、とてもシンプルだ。
「来てくれたって、俺さっきまで普通に寝ていたし、動いた記憶もないんだけど」
「動いてなどいません。あなたは先程お亡くなりになったんです」
「は?」
俺は知らない間に死んでしまっていたからだ。
「亡くなりったって、俺がか?」
「はい。今あなたの視界が真っ暗で、私の声しか聞こえないのが何よりの証拠です」
「さっきまで普通に生きていて、それでさっき普通に布団に入って寝ただけなんだぞ」
「その間に亡くなられました」
「いや、ちょっと待て、本当に意味が分からないんだけど」
頭が混乱する。
さっきまで確かに俺はいつも通り昼寝をしていたはずだ。それなのにどうして今俺は死んでいる。正直この声に信憑性はどこにもないが、嘘だと言う根拠もない。夢だと言うには少々無理があるし、もしかして本当に俺は……。
「それで質問をしたいのですが、たった今亡くなったあなたは後悔などがございませんか?」
「後悔? もし本当に死んだならあるに決まっているだろ。俺はまだ全ての本を読み終わってないんだ。死んでも死にきれない」
「なるほど。本が人生と宣言しているだけはありますね」
「何でそれを知っているんだよ。というか誰だよお前は」
「私ですか? 私は俗にいう神様です」
当然すぎる疑問に当然のような答えが返ってくる。確かに神様なら人の死とか名前とか知っていても不思議な話ではないが、その神様がまずどうして俺にこうしtr声をかけているのだろうか。
「実はたった今亡くなったあなたに頼みたいことがありまして、こうして声をかけさせてもらったんです」
「死人に頼み事なんて、随分と変わっているな。てか死んでたら何も出来ないだろ」
「普通ならそうなりますが、貴方には異世界へ転生という形で向かっていただきます」
「異世界? 転生? 何をいっているんだお前は」
そんな言葉はあくまで本の世界での出来事で、現実じゃあり得ない。それに受け入れるのは嫌だが、死んだならゆっくりと天国で好きなだけ本を読んでいたい。
「そもそも俺が仮にその異世界に転生したとして、一体なんのメリットがあるんだよ。その頼み事とやらもさっぱりだし、大人しく成仏させてくれないか?」
「メリットならあります。これから行っていただく世界は通称本の世界と呼ばれている世界です。そこに転生して、役目さえ果たしていただければ、毎日好きなだけ本が読みたい放題です」
「本が読みたい放題、だと」
事情が変わった。本の世界ってのも気になるし、読みたい放題だというなら、人生をまた一からやり直すのも悪くない。
あくまでそれを信じた場合のみだが。
「その言葉に偽りはないんだろうな」
「はい。神に誓います」
だから俺は念を押して聞いたのだが、そんな答えがかえってきて、オイオイとおもってしまう。でも嘘ではないようだった。
「その代わりにあなたにはしてもらわなければならないことがあります」
「さっきも役目とか何だとか言っていたな。その役目ってのはなんだ」
「夏目龍之介様、あなたには前世で培ったその本を読む力と、私が与えます力を使って、世界の危機を救う勇者になっていただきます」
「俺が世界を救う勇者?」
そんなこと出来るのか? こんな本を読むことしか取り柄がなかった俺が。
「あんたはそれを本気で言っているのか?」
「至って大真面目です」
「与える力っていうのは?」
「異世界の元言語に適応できる能力と、あらゆる本に対する解読スキルです」
「たったそれだけで救えるのか? 世界を」
「行っていただければ分かると思います」
本の解読スキルだけで救える世界、にわかには信じがたいが、死んでしまったというなら仕方がない。ここは彼女を信じる他ないようだ。
「どうやら答えは決まったようですね」
「ああ」
「では一度目を閉じてください、と言っても暗闇だから分からないとは思いますが……そこは感覚で。次に開いたときにはあなたは生まれ変わっていますから」
「分かった」
俺は感覚で目を閉じる。次に開いたときにどんな世界が俺を待っているか楽しみだ。一体俺はどんな風に生まれ変わって……。
ん?
俺は次に何に生まれ変わるんだ? 聞かないと。
「では異世界ライフをお楽しみにください。あ、一つ言い忘れていましたが、あなたが生まれ変わるのは……」
だがその答えを聞く前に俺の意識は自然な形で覚醒していく。一抹の不安を抱えながら俺は……。
(見たことがない天井……だな)
「え? う、嘘、ユウがめ、目を……開けた?」
見知らぬエルフ耳の少女と知らない天井を視界に入れながら目を覚ました。
「誰だ?」
なんん警戒もせずに一言喋ると、自分から発したとは到底思えない可愛らしい声が、部屋に響いた。
「え」
「え」
あえてもう一度言う。
俺が発したのは、男とは到底思えない程の可愛らしい声(以下略。
小さい頃から本が大好きだった俺は、年を取るにつれてもその気持ちは変わらなかった。毎日のように図書館に通って、沢山本を読んで、沢山の物語に出会った。
勿論小説だけではない。
図鑑や辞典、ビジネス文書、ありとあらゆるジャンルに手を出して、沢山の知識を得てきた。
だから俺にとって本は人生だった。
何故過去形なのか? というと、
「どこだ……ここ」
「よくぞ来てくれました、夏目龍之介様」
別に本を読むのが飽きたわけではない。むしろその思いはずっと変わっていない。
答えはただ一つ、とてもシンプルだ。
「来てくれたって、俺さっきまで普通に寝ていたし、動いた記憶もないんだけど」
「動いてなどいません。あなたは先程お亡くなりになったんです」
「は?」
俺は知らない間に死んでしまっていたからだ。
「亡くなりったって、俺がか?」
「はい。今あなたの視界が真っ暗で、私の声しか聞こえないのが何よりの証拠です」
「さっきまで普通に生きていて、それでさっき普通に布団に入って寝ただけなんだぞ」
「その間に亡くなられました」
「いや、ちょっと待て、本当に意味が分からないんだけど」
頭が混乱する。
さっきまで確かに俺はいつも通り昼寝をしていたはずだ。それなのにどうして今俺は死んでいる。正直この声に信憑性はどこにもないが、嘘だと言う根拠もない。夢だと言うには少々無理があるし、もしかして本当に俺は……。
「それで質問をしたいのですが、たった今亡くなったあなたは後悔などがございませんか?」
「後悔? もし本当に死んだならあるに決まっているだろ。俺はまだ全ての本を読み終わってないんだ。死んでも死にきれない」
「なるほど。本が人生と宣言しているだけはありますね」
「何でそれを知っているんだよ。というか誰だよお前は」
「私ですか? 私は俗にいう神様です」
当然すぎる疑問に当然のような答えが返ってくる。確かに神様なら人の死とか名前とか知っていても不思議な話ではないが、その神様がまずどうして俺にこうしtr声をかけているのだろうか。
「実はたった今亡くなったあなたに頼みたいことがありまして、こうして声をかけさせてもらったんです」
「死人に頼み事なんて、随分と変わっているな。てか死んでたら何も出来ないだろ」
「普通ならそうなりますが、貴方には異世界へ転生という形で向かっていただきます」
「異世界? 転生? 何をいっているんだお前は」
そんな言葉はあくまで本の世界での出来事で、現実じゃあり得ない。それに受け入れるのは嫌だが、死んだならゆっくりと天国で好きなだけ本を読んでいたい。
「そもそも俺が仮にその異世界に転生したとして、一体なんのメリットがあるんだよ。その頼み事とやらもさっぱりだし、大人しく成仏させてくれないか?」
「メリットならあります。これから行っていただく世界は通称本の世界と呼ばれている世界です。そこに転生して、役目さえ果たしていただければ、毎日好きなだけ本が読みたい放題です」
「本が読みたい放題、だと」
事情が変わった。本の世界ってのも気になるし、読みたい放題だというなら、人生をまた一からやり直すのも悪くない。
あくまでそれを信じた場合のみだが。
「その言葉に偽りはないんだろうな」
「はい。神に誓います」
だから俺は念を押して聞いたのだが、そんな答えがかえってきて、オイオイとおもってしまう。でも嘘ではないようだった。
「その代わりにあなたにはしてもらわなければならないことがあります」
「さっきも役目とか何だとか言っていたな。その役目ってのはなんだ」
「夏目龍之介様、あなたには前世で培ったその本を読む力と、私が与えます力を使って、世界の危機を救う勇者になっていただきます」
「俺が世界を救う勇者?」
そんなこと出来るのか? こんな本を読むことしか取り柄がなかった俺が。
「あんたはそれを本気で言っているのか?」
「至って大真面目です」
「与える力っていうのは?」
「異世界の元言語に適応できる能力と、あらゆる本に対する解読スキルです」
「たったそれだけで救えるのか? 世界を」
「行っていただければ分かると思います」
本の解読スキルだけで救える世界、にわかには信じがたいが、死んでしまったというなら仕方がない。ここは彼女を信じる他ないようだ。
「どうやら答えは決まったようですね」
「ああ」
「では一度目を閉じてください、と言っても暗闇だから分からないとは思いますが……そこは感覚で。次に開いたときにはあなたは生まれ変わっていますから」
「分かった」
俺は感覚で目を閉じる。次に開いたときにどんな世界が俺を待っているか楽しみだ。一体俺はどんな風に生まれ変わって……。
ん?
俺は次に何に生まれ変わるんだ? 聞かないと。
「では異世界ライフをお楽しみにください。あ、一つ言い忘れていましたが、あなたが生まれ変わるのは……」
だがその答えを聞く前に俺の意識は自然な形で覚醒していく。一抹の不安を抱えながら俺は……。
(見たことがない天井……だな)
「え? う、嘘、ユウがめ、目を……開けた?」
見知らぬエルフ耳の少女と知らない天井を視界に入れながら目を覚ました。
「誰だ?」
なんん警戒もせずに一言喋ると、自分から発したとは到底思えない可愛らしい声が、部屋に響いた。
「え」
「え」
あえてもう一度言う。
俺が発したのは、男とは到底思えない程の可愛らしい声(以下略。
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