非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の肉詰めピーマンと俺の妹の恋?

百三十四話





【新転勇人】





「じゃあまた明日ー」
『はい!おやすみなさい!』
プツリという音とともに無機質な電子音が流れる。
今の今までおしゃべりしていたのに急に静かに寂しくなるなと、電話をすると毎回のように思う。
「にぃ電話終わった?」
「……うん、終わってるよ?」
なにか相談でもあるのだろうか。
いつもより声のトーンが低めな結花が部屋に入ってきた。
「円香さんと最近どうなの……?」
「円香と?ん〜、まぁ良い感じというか、変わらず好いてもらえてるかな」
「そっか……」
え?
なにこれなんてヤンデレ?
ヤンデレゲーなら次の瞬間にはスタンガンとかで気絶させられるシチュエーションだけども。
「……あのね……?ゆいね?相談があるの。」
「相談?」
なんだか嫌な予感がする。
心ここに在らずという感じだ。
俺を呼ぶときに「にぃ」と言っていたから相談事の方に注意が向いてるのは確かなのだが……。
「ゆい……好きな人、出来たかもなの……」
………………へ?
好きな人って、あの恋愛における好きな人?
修学旅行の何日目かの夜に女の子がキャッキャウフフしながら一晩中騒ぎ倒す話題であるあの好きな人?
「と、とりあえず落ち着け……?」
なんで?
なんでこのタイミングなの?
自分でいうのもなんだけど、俺のこと好きなんじゃないの?
昔のいい話はどこいっちゃったの?
え!?
「そ、そいつはどんな人なんだ……?」
さすがに人によるぞ!?
常に七三分けで黒縁のメガネかけてるようなインテリ清楚男子ならにぃは喜んで送り出すぞ?
なんか複雑な気持ちだけど、ここにきて兄離れができるなら応援する気しか起きないからな!
「ちょ、ちょっとヤンチャなんだけど、優しくて、ゆいをかわいいって……」
中学生のやんちゃってなんだ?
体操服盗んだりか?
縦笛舐めたりか?
お兄ちゃん許さないからなァ!
「こ、今度家に来るんだけど……」
「今度家に来る!?縦笛舐めたやつが!?」
「縦笛?何言ってるの?」
「ごめんこっちの話」
いやいや待て待て。
縦笛舐めたりしてないにしても、やんちゃしてるんだろ?
なに?アリの巣に水流し込んだり、ダンゴムシを水たまりに浮かべたりとかなの?
お兄ちゃんの中での「やんちゃ」って、先生のことをセンコーって呼んで、カバンには鉄板入れてて、目と目が合ったらポケモ〇バトルみたいな人なんだけど?

いや、まて、その前に――
「そ、それで、それの相談って?」
「うん、それでね?その人に告白されて……」
「……返事はまだしてないと。」
「うん。」
「ど、どうして好きだと思うんだ?」
そう言うと、結花は顔を真っ赤にして指をつんつんしながら、誰がどう見ても照れてる以外の感想が出ない表情で、
「にぃ以外に可愛いって言われたことなかったし……にぃのことは好きだけど、そろそろ離れないとかなぁって……」
優秀!!
円香と違って早めにちゃんとしたレールの元に戻ったね!
「でね、その人と離れるって考えたら、少し寂しくなっちゃって……」
顔を俯かせて、照れながら、それでいてどこか寂しそうに。
「なるほどねぇ……」
ついに結花にも好きな人ができたんだ……。
「俺は、自分の気持ちに正直になるのが一番だと思うよ。」
「うん。」
「たとえどんな人でも、結花自信が心に決めた人なら俺は応援する」
正直な話、やんちゃの度が過ぎてるやつだったら応援できるかは……その時になってみないと分からない……。

「ありがと……うん、ゆい少し大人になるね。」
俯かせていた顔を上げ、いつもよりも綺麗な笑みを浮かべる。
本当に何があったの?
お兄ちゃんより早く階段登ったの?
その先の景色を見たの?
「じゃあ寝る!よし!ありがとう!」
俺が少し背中を押したら、好きな男へ傾いた結花。
そんな結花は嵐のように去っていった。

昔から俺にべったりで、つい最近までは円香と接触するだけで嫉妬に狂ってたのに。
こうして結花が恋愛するとなると、そんなことが遠い昔に感じるな。

「ゲームして寝よ」
結花のいなくなった部屋で一人、俺はMMOに勤しむのであった。





【新天円香】





「えぇっ!?結花さんが恋を!!?」
勇人くんから衝撃的すぎる話を聞いて、変な声が漏れてしまいました。
でも仕方ないですよね!?
だって結花さんが恋愛ですよ!?
私が出会った頃は、恋敵だったんですよ!?
「そうなんだよ、なんかやんちゃとは聞いてるんだけど……」
「やんちゃって?浅見さんみたいな?」
「円香実はかなり根に持ってるでしょ?」
「いや?ソンナコトナイデスヨー?」
ホントデスヨー?
「まぁ、そんなことは置いといて」
勇人くんは私の作ったお弁当をつつきながら言葉を続けます。
ちなみに本日のお弁当は、唐揚げと昨晩の残りの筑前煮、そしてピーマンの肉詰め(お肉多め)です。
ピーマンの肉詰めからお肉がたくさんはみ出てるのは、勇人くんへのメッセージです。
「結花の好きな人が家に来るんだけどさ、その時円香も来てくれない?」
「全然大丈夫ですよ。やんちゃすぎて勇人くんになにかあったら大変ですので!」
私が守るので!
勇人くんを傷つける人は誰であろうと許しません!
許しません。
「何かあるかもしれないのに呼んじゃってごめんね。ありがとう」
「勇人くんと一緒にいれるのであれば、たとえ落雷に打たれようとも、炎に焼かれようとも止まりませんから!」
「うん、それは止まろ?」
勇人くんは筑前煮に手をつけて「んまっ」と、目を見開いてリアクションしてくれました。
それにしても結花さんが勇人くん離れですか……。
感慨深いですねぇ。





【新転勇人】






「勇人くん、それ結花さん口説き落とされてませんか?」
「へ?」
なんかサラッと俺の食いかけのピーマンの肉詰めを口に運んで、サラッと怖いことを言ってのけた。
口説き落とされる?
結花が?
「いや、だって、結花さんかわいいかわいいって言われて嬉しくなっちゃったんですよね?むむっ!なんか不穏な雰囲気になってきましたね!」
いや………………え?
「そうです!こんな時のために浅見さんがいるんじゃないですか!」
「えぇ……」
円香ってたまに本当に怖い事言ってくるよね?
自然に、浅見くんをモノのように扱ってるもん。
ご愁傷様です。
「本当に口説き落とされてるんだとしたら時間の問題ですよ!」
「……そっかぁ……」
説得力が違うなぁ。

でも本当に口説き落とされたのだとしたらマジでヤバイよな……。

いくらやんちゃとはいえまだ中学生だもんな。
大丈夫だと信じたい……。









用意するもの

・紙(A4)

・ボールペン(黒)

(手順)

1.紙を二つに折ります。

2.折れた紙の中央(だいたい)にボールペンで丸を書きます。

3.そしたら紙を広げ、その円が内側に来るように既に出来ている折れ線に沿って折ります。

4.そしてそれをもう一度広げます。

5.手のひらの上に乗せて、一気に手を握ります。

(完成)

おめでとうございます。
時間と紙が無駄になりました。

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コメント

  • Karavisu









    1
  • 影の住人

    いや、考え方によっては『無駄』が創造できたと考えられるのでは…?

    0
  • ミラル ムカデ

    おいコラ!

    0
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