非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のくすぐり地獄と俺のくすぐり地獄

百十一話





【新転勇人】





小学生の格好をしてセクシー女教師(男)に追いかけられるという公開処刑並みの羞恥プレイを終え、無事に着替えも済ませた俺は円香のところへ向かう。
もちろん最終レースの個人的目玉である浅見くんのコスプレを楽しむためだ。
できれば真結や先輩も交えて観たいものだ。
「円香ー」
「あっ勇人くん!」
「に――兄貴遅い。こっちの身にもなってよ」
俺に駆け寄ってきた結花は見上げるように顔を上げてそんな失礼なことを口走った。
「結花、さすがにその言い方はないんじゃないか?」
俺は父に変わって説教する。
あんまりこういう場では言いたくないがここで放っておくと悪化してしまうかもしれないのだ。
結花はぷくぅっと頬を膨らませあからさまに怒りを顔に出して口を開く。
「だってにぃがいない間ずっとほっぺ触られたり頭撫でてきたりするんだもん!」
「えっ?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
……円香が?
円香の方へ視線を向けると「えへへ」と後頭部に手を当てながら照れる素振りを見せてきた。
円香が結花にそんな激しいスキンシップを…………あ、いいこと思いついちゃったなぁ。
俺は結花の耳へ口を近づけ円香に聞こえないように気をつけながらとあることを耳打ちする。
「……うん…………あっ……うんうん!……うん!」
結花もこの作戦の良さに気づいたようで、いかにも小悪魔的な笑みを浮かべる。
一方円香は耳打ちするところを見ていたはずなのに先程までと同じように「結花ちゃ〜んおいで〜」と普段からは考えられないようなテンションで結花をこまねいている。
それにしても体育祭マジックはすごいなぁ。
円香のテンションをここまで上げてしまうなんて……。
「円香さん……」
「ん?どうしたんですか〜?」
よし、今だ結花!!
「えっ――やっそこだめっ、いやいやあぁぁああははははははっ、結花ちゃごめっ、はははははっ」

うむ。眼福なり。

ん?結花が円香に何をしたかって?
そんなの決まっているじゃないか。
まず、結花は円香の後ろに回り込む。
そして――――くすぐる。
制止の声には耳を傾けずにただただくすぐる。
脇腹から登っていって脇へかけてを。
「円香さんもこれで参ったでしょ!にぃが考えたすんごい作戦なんだもんねー!!」
気を抜くとすーぐにぃって呼ぶじゃん。
前から思ってたけど隠す気なくなってるよね?
「う、うぅぅ勇人くんんんんんっあははははごめんね?結花ちゃんごめっははははっははははっ」

うむ。世は満足じゃ。

「結花ステイ」
「おっけぃ」

俺の声で脇腹から手を離し、とことこと俺へ駆け寄ってくる結花。
円香はそんな俺たちを見ながら、
「ふーっ、ふーっ、ふぅー…………は……」

「勇人くん?後でしっかりお話しましょうね?」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
目が笑ってないですよ円香さん!
目がマジです目が!!
「お、おふざけじゃないですか。ね?ちょっとふざけちゃっただけですよ?」
「そうですかぁー」
ゴゴゴゴゴッ!という効果音が似合うようなオーラを発し、すぐにでもスタンドが出てきそうな感覚すらある。
そんな、どんな言葉を投げかけても砕けないダイヤモンドのような表情が、優しく、それでいてどこか闇を感じるものに変わり、
「じゃあ私“たち”もおふざけしますねぇ〜」



拝啓お父さんとお母さん。


僕たち新転家の歴史は今日で終わりを迎えそうです☆
どうか許してください。
僕は円香と楽しくやっています☆


息子より。







【新天円香】






「あ!そろそろ最終レースですよ!」
私は隣で正座している勇人くんへ喋りかけます。
結花ちゃんはお母さんを迎えに行ったので二人っきりです。
「そ、そうですか。それでは場所を変えた方がいいのでは?僕はここにいるので」
「いえ!一緒に見ましょう!一日中一緒に居れることなんて土日以外でそうそうないんですから。」
そういえば、さっきおかえしとしてくすぐり返したのですが、その時からなぜか正座して前かがみになっているんです。
そんな彼氏に土下座させるような彼女ではないのでそんな格好しなくてもいいのに。
「ということで行きましょうか」
「あ、ちょ…………はい。」
しかも敬語で。
なにか隠しているのでしょうか。
お母さんから、男が急にプレゼントをくれた時と敬語で永遠に下手に出てくるようなら注意しなさい、と中学生の頃習ったのですが……まさか…………。
「勇人くん……なにか隠してませんか?」
「えっ……?」
「何か私に後ろめたいことでもあるんですか?それならこの間のようにならないようにはっきり言ってくださいね?」
「いや……後ろめたいというか後ろ向きたいというか……」
勇人くんは前かがみ正座から顔だけを上げるようにしてそう言いました。
う〜ん……お母さんは、愛する人を信じる気持ちも大事だと言ってました……。
この場合はどっちでしょうか……。
黒か、白か。
「立ってください」




【新転勇人】




「いや、そのぉ……円香には分からないけど既に立ってるというかなんというか……」





【新天円香】





「正座してるじゃないですか!さては何か隠してますね!?」





【新転勇人】




「いや、隠さないといけないものというか、円香が逆に困るんじゃないかと……」






【新天円香】





「ぐぬぬ…………はぁ。勇人くん。それはどうしても私に教えられないことなのですか?」
「ま、まぁ……そうっちゃそうです。」
正座をしている彼へ、膝に手を付き前かがみになり、顔が一番近くなるような体制になります。
「どうしてもダメですか?」
「あ、いや……あの……」
顔が近すぎて動揺してしまったのか、勇人くんらしからぬ目の泳がせっぷりでしたのでそのままの体制からしゃがみこむように体制を変え、顔の距離が先ほどよりは遠くなったところでもう一度尋ねます。
「ダメですか?」
「そ、その…………すぐ追いつくから先行っててっ!!」
それだけ言うと勇人くんは校舎の方へ勢いよく走っていきました。

まさか…………おトイレでしたか!!?

な、なんという失態を……。
私の勝手な先入観と疑いであんな走っていかなければならないほどに我慢させてしまっていたなんて……。
「私もまだまだですね……」
ポツリと呟いたそんな言葉は誰の耳にも届かずに消えていきました。








ふざけちゃった☆

いや、体育祭がずっと続いてくからあからさまなふざけ回も当分できなくなりそうだから思う存分ふざけちゃった☆


ガイドライン的には大丈夫かしら……。


そういえば飼ってる猫が私が座っているとその膝の上に座り、毎回のようにそこでトイレをしていきます。
どうしましょう。膝から匂いが取れなくなったら

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コメント

  • クロエル

    圧倒的ふざけ回

    1
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