非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の余裕と俺の過去との向き合い

百七話







【新転勇人】






――花咲への嫌がらせをしないと誓わせたあの日から三日がたち、いよいよ体育祭まで残すところ二日となったある日。

『この前のお礼もしたいし今日どこか行かない?出来れば新天さんには内緒で』

花咲からそんな連絡がきたのだ。
俺一人で、というのはよく分からないがそれより、この場合って円香に一報入れた方がいいのかな?
さすがに怯えすぎ?去勢に怯えすぎ?
「あ、こんな時は!」
先輩に聞いてみればいいんだ!
授業中だったが先輩にLimeを送り、返事を待つ。

数分後、携帯が震え先輩からのメッセージを報せた。
ちなみに俺は『花咲に誘われて一緒にどこか行くんですけど、円香に言っといたほうがいいですかね?』と送った。

『新天だってそこまで鬼じゃないでしょ、分かってくれるよ、まぁあたしの場合はあの子がそんなことするわけないと思ってるから言われなくてもなんとも思わないけどね』

あの子、というのは浅見くんのことだろう。
まぁそうだな、浅見くんが先輩以外に手を出したりはしないだろう。
でもそっか……。
円香に言って「一緒に行きます!」なんて言われたらダメだしな。
あくまで円香に内緒でって言われてるんだし…………あれ?俺今からイケないことしに行くの?なんか後ろめたくなってきたんだけど。

「はい勇人くーんこの問題解いてー先生分かんないから〜」
数学の先生が風邪で休んでしまったため由美ちゃん先生が数学を教えてくれるのだが、
「当たってるかどうか分からないけどフィーリングで頑張ろ!」
大丈夫かよこの教師……。
まぁ確かに数学って難しいから専門の先生じゃないと難し…………加法定理じゃん!スマホ見てて気づかなかったけど。
さすってこすって、こすってさすってだよね?
先生結構簡単よ?ここ。
覚えゲーだから。


俺は黒板に途中式、答えを書き、席に戻った。









結局円香に何も言わずに来てしまった。
急ぎの用事があるからとだけ伝えて校門で別れたのだ。

来てしまった。
というのは、今まさに、目の前に超オシャレで男子禁制と言わんばかりの雰囲気を醸し出しているカフェがあるからだ。
「中にいるのかな……」
俺は制服のネクタイを締め、恐る恐るドアを開ける。

「いらっしゃいませ」
気品溢れる女性が近寄ってきて、店員としての役目を果たそうとしているのになんだかドキッとしてしまった。
「ま、待ち合わせで……」
それだけ言って伝わったのか、「ご案内いたします」と告げられ、そそくさと歩き出した店員さんの後ろをついていく。
「お、新天きた」
「確かに、魔力の波動を感じる」
第一声そんなことを言いやがったラファさんに店員さんは苦笑いを浮かべ、何も聞いてませんよ?私何も知りませんから!と言わんばかりに、すぐに戻っていってしまった。
「ラファさん……」
外でもそれなんですね。
と言おうとしたがそもそも出会ったのが電車だったことを思い出しその言葉を飲み込む。
「あら?私の魅力にやられちゃったのかしら?でもダメ。私は天使であなたは人間なの。」
うっわ結構な大声で言っちゃったよこの人。
顔が良くなかったら通報案件だよこれ。
「まぁとりあえず座って」
花咲のその声で我に返ったのか、ラファさんが少し頬を赤らめて食べていたパフェに手をつけた。
「ここは私が出すからなんでも頼んでいいよ」
「えっ、でも花咲金が……」
「大丈夫、なぜかあたしをいじめてたヤツらがお金返してくれてるから」
そう言ってメニューを俺に渡してくる。
「ん、ま、まぁそういうなら。」
俺はメニューに目を通す。
「黄色の宝石〜煌めく雫と共に〜…………」
横には普通の卵焼きとお醤油の写真。

「花咲……これってただの卵焼きだよね?」
「そーね」
…………いくらオシャレを追求したいからと言ってこれは……オサレが過ぎませんかね。
「んむんむ……ん〜!」
カッコつけすぎたメニューを眺めている時、目の前に座るラファさんから幸せそうな声が聞こえた。

ふふふ……いいこと思いついたぜ。


「あれ?ラファさんったら天使なのに人間が作る甘いもので幸せ感じちゃうんですか?」

「んぐっ……ち、違うわよ!天使である私が人間が作ったものを食べて幸せなんて感じないわよ!」
あ、やっばい……。
「……あ、違う、違うんです。とっても美味しいし幸せなんです。本当に。うぅ……ごめんなさいぃ……」
多数いる店員さんから視線の槍を受け、天使ラファエルことラファさんは身を縮こまらせる。
「ふふっ、冗談ですよラファさん。ごめんなさい」
「この人間……ッ!許さないわ!!…………あ、私のもおごりなのよね?も一個頼んでいいかしら?」
まだ食うのかよ…………。











「で、話って?」
再び届いたパフェを頬張るラファさんは置いといて、俺は花咲へ尋ねた。
「うん、あのね……?」
花咲はなぜかおどおどと言葉を探すような挙動で、

「ありがとう。あの時は言えなかったから」

と言った。
頭を下げながら。


あの花咲が俺に感謝を……。
「と、とりあえず頭上げて!?」
「う、うん。」
頭を上げた花咲の目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見える。
「それでね……?あんなことした私が言えた口じゃないし、拒絶されても仕方が無いとは思ってるんだけど……」
花咲は大きく深呼吸をして、真っ直ぐな瞳を俺に向けると。
「私の友達になってくれますか?」


俺の過去。

トラウマを植え付けられ、今目の前で「友達になってくれ」という彼女には嫌悪、恐怖を覚えていた。
彼女だけではない、女性自体が苦手になってしまった。

あれから約三年が経つ。
俺はそんな長い時間が経っても、その過去を乗り越えられずにいた。


ついこの間までは。


「ぜひ、こちらこそよろしく。」


過去を乗り越えるためには原因と向き合わないといけない。
完全に払拭できている訳では無いが、彼女がその原因だと言うなら俺はまた花咲と友達という関係を築いてもいいのかもしれない。

「そっか……ありがとう。本当に。」
うっすらと浮かんでいた涙がついに頬を伝う。

緊張の糸が切れたからだろう。
号泣とまでは行かないが、涙は頬を伝っていく。

「はぁ……仕方ないわね、ほら、これ食べなさい」
ラファさんがスプーンにバニラアイスとイチゴをのせて花咲の口元へ持ってった。
「別に心配してるとかじゃないから、ただ……友達が泣いてるのは嫌なのよ!どんな理由だろうと!!」
スプーンを手渡し、ぷいっと花咲の逆、窓際に向かい顔を背ける。
ラファさん、こっちからは見えてますよ。
めっちゃ照れてるじゃないですか。

「…………あ」
「ん?」

ラファさんがいきなり素っ頓狂な声を上げて窓の外を指さす。
「あ……」
窓の外、つまりは路上にたっていたのは…………、
「円香……」
可愛らしく頬を膨らませ怒った様子の円香さん。
うん、こんな状況でも可愛いと思っちゃう自分の心を殴りたくなるよね!
「あっ」
ラファさんのそんな声と同時にドアが開く音が聞こえ、足音がどんどん近づいてくる。

そして。


「勇人くん!!」

おー……怒ってらっしゃいますねぇ……。
「なんで!?なんでなんですか!?」
きっと一報入れずに他の女性と会っていたことに怒っているんだろう。
円香と付き合っていく上での教訓がひとつわかった気が――
「なんで花咲さんを泣かせてるんですか!!」
「「そっち!!?」」
ラファさんと声が被る。
「はい!どうしました?勇人くんが何か言ったんですか?安心してください、私がきちんと言っておくので。」
あれやばい。このまま勘違いさせたままだと去勢される未来が見えるぞ?
「ち、違うよ、あたしが勝手に泣いてるだけだから。新転を攻めないで」
「そ、そういうことでしたか。」
円香は安心したように胸をなでおろす。


いつもの円香だったらヤンデレルート確定なのに今日はどうしたのだろうか。
逆に心配しちゃうな。

「ま、円香……?何かあったの?」
俺は好奇心に勝てず円香へ尋ねる。
すると円香はまってました!と言わんばかりの表情で、
「体育祭の借り物競争ですよ!!好きな人っていうお題を引き当てて勇人くんと一緒に走るんです!!だから今の円香には余裕があります!」

「な、なるほど……」
すごい自信に満ち溢れてるな。
そもそも好きな人なんてお代入ってるのか?
男子の場合ほとんどが円香に行くでしょ。

やだなぁ。
その場合知らない男が円香と手を繋いで走るんだもんな。
円香、フルマラソン並に走るんじゃないか?


ま、まぁいいや。
とりあえず今は……、
「私もパフェ食べます!ふたつ!!いや!みっつ!!」
円香の暴食を止めなければ。






さぁさぁさぁ。

皆さんはチョコ貰えましたか?チョコ貰えた勢ですか?

まぁこの小説を読んでる人にそんな人はいないと思います。
ですが安心してください!貰えなくてもいいんです!
なぜなら世のイケメンはホワイトデーを気にして生活をしないといけない分余裕がなくなります。財布的にも精神的にも。
それに比べて……ほら!余裕あるでしょ!?
余裕ある男はモテますから。
頑張って生きてください。


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コメント

  • Karavisu

    コメント欄 悲惨ww

    1
  • 猫ネギ

    コンビニで買ってきた

    4
  • ミリオン

    残念!受験だ!

    2
  • 影の住人

    もらえた訳ないでしょうが!

    4
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