非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の荒ぶる鼻息と俺のお母さん

百四話






【新転勇人】






「お母さん体育祭見に来るってよ」
「え゛」
俺の朝は結花のそんな一言で幕を開けた。
「一日だけオフの日ができたみたいだから来れるんだって」
「そ、そうなんだ……」
お母さんが帰ってくるのか…………。
「今回はどうなるんだろうね」
結花が不安そうな表情でつぶやく。
まぁそんな表情になるのも無理はない。
前回帰ってきた時は日本語忘れかけてたし。
その前は結花を実験台にしてあれやこれやしてたし。
それに一番は…………。
「まぁなんとかなるでしょ。」
「……だといいんだけどね。」
俺は呑気なことを言いながらパンを一口かじる。
一応、円香に話しておこうかなあ。









「勇人くんのお母様が帰ってくる!?」
「うん。」
円香は目をキラキラさせながら食いついてきた。
円香さんすごい、腕つぶれちゃう。興味津々なのはいいけど腕が痛いから!
「で!どんな方なんですか!?」
「んー、どんな人かー」
円香の目は依然輝いている。

本当のことを言うべきかなぁ……。
円香はふんすふんす!と鼻息を荒くして、どうやら気になりすぎるようだった。
「うーん……実はね、」
まぁ隠してもいずれはバレることだし、彼女に隠し事ってのも良くないしね。
「お母さん、世界を飛び回ってるデザイナーなんだ。」
「デザイナー!?しかも世界を飛び回ってるんですか!?」
「うん、まぁ……そんな大層なものじゃないけどね」
実際、人生楽しければいいみたいな人だし。
「いいえ!勇人くんのお母さんすごいですよ!!世界ですよ!?ぐろーばる!!」
円香ったらすんごい興奮してますね。
「ふぁ〜お会うのが楽しみです!」
そう言って、なぜか頬を両手で押さえて身悶えしている。
そんなに楽しみなの!?
ろくな人じゃないよ?
それに円香――
「でも勇人くん!体育祭の前にやることありますからね!?」
「うん分かってる。」
こっちのセリフだけどね?
「楽しみです!勇人くんのお母様にお会いするの!!」







【新天円香】





「真結真結!!」
私は教室に到着するや否や真結に声をかけます。
もちろんこの喜びを共有するために!!
「ん、どしたのそんな馬みたいに鼻息荒くして」
「勇人くんのお母様が帰ってくるみたいなのです!」
どうですか!嬉しいでしょう!?驚いたでしょう!?
「そっかぁ、よかったじゃん」
「塩!!」
なんでそんな、私関係ないし〜なんて対応するんですか!!
確かに関係ないかも知れませんが!!
「それより体育祭もあることだし、今日仕掛けようと思うんだけど」
「はいはい、それより勇人くんのおかあさ…………えぇっ!?昨日の今日ですよ!?さすがに早くないですか!?」
だってだって、まだ作戦もないわけですし、そもそも準備が――
「準備は出来てるから、作戦もある」
「心を読まれました!!」
「円香の考えそうなことなんてわかるよ、何せ新聞部部長だからね!!」
カッコイイ……。


じゃないです!!
「なんで今日なんですか!?せめて明後日でも……」
「体育祭に勇人くんのお母さんが来るんでしょ?少しくらい競技の練習しないと恥かいちゃうよ?」
「よし今日決着をつけましょう!!」
お母様に恥ずかしいところはお見せできないのです!!
ぱーふぇくとできゅーとな円香をお届けするのです!!
「じゃあ放課後に来てって勇人くんに伝えといてね」
「お任せあれ!!」






【新転勇人】






「ん、メールだ。」
画面には『円香』の文字が表示されていて、俺はそれをタップし円香からのメールを開く。
実は昨日のあのとんでもメール事件からメールを開くのがちょっと怖かったりする。


『本日終業後部室に集まり候。
貴殿の旧友、花咲殿を救い仕る。
情報は揃っている。
ミッションインポッシブルだ。
(なんか一流部隊感を出したかったのでそれっぽくしてみました。)
どうでした?』



どうでした?じゃなくない!?
語尾が色々おかしいし、俺の旧友でもないし。
きっと円香は「ふふっ♪完璧です!」って思ってるんだろうなぁ。
頭はいいのになんでこんなに残念なんだろ。
まぁ全然気にしないけどさ。

……それにしても、花咲を救う、か。
数ヶ月前の俺が聞いたらどう思うだろうな。
花咲って単語だけで鳥肌立ってたのに、そんな花咲を救うなんて知ったら鳥になっちゃうんじゃないか?
こんなことするなんて考えられなかったもんなぁ。

俺は浅見くんへ『今日花咲のところ行くってさ』とだけ送りスマホをポケットへ閉まった。






【新天円香】





「ふふっ♪完璧ですっ!!」








最近友だちがとある人に一目惚れをしました。
面白いので相談に乗ってあげたりアドバイスをしてますが気づいてしまったのです。
あれ?
井戸ってば、=年齢のくせに何偉そうに言ってんだと。
恋するだけ羨ましい。
冬空を見上げながらそう思いました。
雪で靴の中がぐしょぐしょになりました。

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