非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の想いと俺の人生終了のお知らせ

百一話




【新転勇人】




予鈴が鳴ったのになんでここに?
あの円香が遅刻?
「はや――いや、真結、早く行きましょ」
俺を数秒見つめて唖然としていたが、すぐに左道さんの手を取って俺の横をすり抜ける。
「え?円香いいの?」
「いきますよ、授業に遅れます。」
いいのか?
今日の昼に円香が部室に来るって保証はないんだぞ?
次がいつくるかも分からないし、もしかしたら次はないかもしれない。

「ぁ――」

……え?

なんで声が出ないんだよ……。
怖いのか?
また今朝みたいに…………。


――何びびってんだよ……ッ!

別れたくないんだろ!?

また一緒に笑いたいんだろ!?

出てくれよッ!
終わっちまうかもしれないんだよ……ッ!

もう一度、もう一度名前を――

 

「円香ッ!」
あ、まって、すっごい大きい声出しちゃったよ。

ほら円香も左道さんも驚いてる……というかちょっと引いてない?
「え、いや……」
二人はなんとも言いがたい表情で目を合わせている。
いや……なんかホントごめんなさい!
でもこうなったら……ええいままよ!!
「円香がいないとダメなんだ!」
「えっ……」
授業なんてどうでもいい。
言いたいことをすべて伝えるんだ。
「情けない話だけど、俺一人じゃ花咲のことも学校生活も上手くいかないんだよ。」
「勇人くん……」
「自分勝手な話だけど、俺は円香が必要なんだ。今も、これからも。」
すべてを言い終え、胸が軽くなった感覚を受ける。
「……勇人くん…………」
これで円香もきっと少しは考え直してくれるだろう。
これでダメなら、俺はもう円香とは……。
「勇人くん……?」
「円香……」
円香は俺を真っ直ぐに見つめ……。
……ん?
俺というより俺の肩のあたり?

いや、俺の後ろ…………?
「はぁやぁとぉくゥん?」
「ヒェッ……」
「さっきからずっと後ろで……」
早く言って!?
そういうのは早く言って!?
命に関わるから!
主に俺と俺の子孫の!!
この下の方から聞こえる声……そしてめちゃめちゃ怒ってるであろう声質…………。
「あなたでいいわァ……あなたを……」
あ、やばい。
これ――

「先生の夫にしてあげるゥ!!」

円香云々より俺の命が危ないやつだ☆


人生が終了したようです♪





【新天円香】





「なんかあの二人じゃれあってるし、時間も時間だし早く戻ろっか」
真結に促され、私は勇人くんに向けていた瞳を前へと向けます。
「あ、ほら!先生探しに来てる」
真結の指差す先に心配の表情を浮かべた先生が立っていました。
「す、すいません、二人で長々と話し込んじゃって」
「よ、よかったわ。てっきり体を壊したのかと思ってたの」
「ありがとうございます、でも大丈夫です。」
私たちはそう告げて先生のあとを歩くようにして教室へと戻りました。
そんな中、後方からは「先生のものよォ……」「いやっ!やめて!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」と勇人くんの裏声とともに先生の闇が聞こえていました。











お昼休み、勇人くんにあんな熱烈なことを言われてしまったら部室に行かないわけにもいきません。
「勇人くんすっごいこと言ってたね。」
「はい……」
私は覚悟を決めたはずなのに。
今朝も彼を忘れるって決めたはずなのに。

「で、どうするの?」
「どうするって……」
「勇人くんはあなたがいないと何も上手くいかないんだってさ、勇人くんの幸せのために別れたつもりだろうけど、もしそれが勇人くんの幸せに繋がらないものだとしたら?」
真結は私を諭すように言葉を紡ぎます。
でもその場合……、
「じゃあ私は、私の覚悟は無駄だったんですか?勇人くんを思ってとった行動は無駄だったんですか?」
勝手に勇人くんの気持ちをわかったふりをして、別れて。
その時の覚悟と涙はすべて無駄に……。
「違うよ。」
「えっ?」
「だってこれで勇人くんの本当の気持ちを知れたじゃん」
真結はまるで当然のことを言うように、私の目を見てはっきりとそう言いました。
「なんか見てて危なっかしかったのよねぇずっと。なんて言うか、互いが互いのこと好きすぎて些細なことで壊れてしまいそうで。ほら、石とか大きかったりするものほど単純な傷に弱かったりするでしょ?」
真結はウンウンと頷きながらそう言って、私の手を取りました。
「さ、多分、もう勇人くん中に居るからあとはどうするか、自分で考えな!あ、最後にひとつ。」
そう言うと真結は部室のドアを開けながら、
「円香は周りを気にしすぎ、自分の気持ちに正直にね。」
と。
私の背中を押すような、もはや「勇人くんと復縁しろ」と同義であるようなことを言ってきます。



勇人くん。

私は……。




私は……ッ!!






シリアスやると首とか腕が痒くなるんです。
真面目なことをしようとすると腰とか肩が痛くなるんです。

夢で黒髪ボブの貧乳っ子に膝枕してもらえる夢を見ました。
妹(未成年)で再現してみたんですが全然うまくいきませんでした。
枕となる部分がダメだったのか、もしくは心の中に残っていた人間性が邪魔したのか。
いささか疑問ではあります。

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