非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私のゲーム機と俺の射撃能力

六十六話






【新転勇人】







いやあのゲーム機って……コルク銃如きじゃびくともしないんじゃないか?
「ここで取れたら勇人くんとオンラインでえふぴーえすができます!ばんばんばーん!」
うぅ……もう円香の中では取れてるのね。
でもこれ本当に取れる設定なのか?
「おっちゃん、あのゲーム機って取れるの?」
このご時世詐欺クジとか詐欺紐引きとかあるからね、一応よ一応。
おっちゃんは、俺の気持ちとは裏腹に、任せとけと言わんばかりの身振り手振りで、
「なぁに言ってんだ坊主!俺ァそんなこすい真似しねぇよ!」
と言ってのけた。
んー、まぁよく考えたらそうか。
本体入ってるやつを落とすなんて壊れる確率高いやり方しないか。きっと箱だけで、裏に本物があるんだな。
「円香、本当にあれでいいんですね?」
「えふぴーえす!!」
円香は指をピストルに見立てて俺に向かって発砲して言った。
すげぇかわいい。
ハートどころか魂撃ち抜かれそうになっちゃったよ。
「勇人くんふぁいとです!」
「・・・」
俺はそんな激励の声を沈黙で返し、コルク銃でゲーム機に狙いを定める。

棚から落とすわけだからど真ん中より端っこの方がいいよな……。
気持ち上の角よりで――

コルク銃の無機質な発砲音が響いた。

ゲーム機は、

「うぅ……ハズレです……」
そもそも当たってすらいなかった。

次ッ!

「ハズレです……」

次ッ!

「ハズレです」

次ッ!

「ハズレで(ry」

次ィッ!!

「ハズ(ry」




「だ、大丈夫か坊主……」
気づけば弾を五発も消費しており、残りは一発となっていた。
円香の分と合わせて七発。

格好はつかないけどせめて一発あてて円香に回したいところではある。
「勇人くん。次は当たります!頑張ってください!!」
円香の純真無垢な激励が心に刺さるぅ。
特に変な意味を込めてるわけじゃないと思うけどあんなに期待してた彼氏が一発も当たってないんですよ……?
「あいつ彼氏か?」
「いやまさか」
「そうだな、ひょろいし……あ!引きこもりって奴じゃね?」
「なにそれマジウケるんですけど」
いつの間にか俺たちの後ろには人集りができていた。
語尾に「w」がつきそうな会話をしてるカップルの会話がよく聞こえる。ウケねぇから。こちとら次当てないと期待を裏切りまくる結果になるんやぞ。
「勇人くん頑張って!!」
「…………よし……ッ!!」





「――ま、まぁそんな日もありますよね。」
「坊主……達者でな……」
俺は全弾外した。
紛うことなきイキリFPS民だった。
「引きこもってるからだな」
「やめっそれちょーうけるぅ」
「だろ?俺っちまじやばくね?ヤバすぎてやばくね?」
だからウケねぇしボキャ貧が過ぎるぞ彼氏さんや。
「勇人くんの仇は私が!」
「は、はい。お願いします……」

とは言ったものの、円香じゃ取れんだろうし俺は半ば諦めていた。







「――やりましたぁ!!」
「お、おめでとう」
円香さんがやってくれました。さすが才色兼備の学園アイドル!
最近壊れてきてたから忘れてたけど俺の彼女学園のアイドルなんだよな。
そりゃあ何か可愛いパワーとか空気中に浮いている粒子とかを操れるんでしょうねきっと。
「さすが円香ですね」
「こんなこと言ってはアレなのですが、勇人くんが外していたから撃ち落とせたんですよ?」
「…………へ?」
「当ててたから」ならまだ分かるけど「外してた」わけであってその場合なんの引き継ぎもできてないと思うのですが。
「いや、勇人くん撃つ時銃口が少し上がってるなぁ、わたしだったらもうすこしあがりますねとか、コルクの良い詰め方とか」
「す、すごいですね円香は」
いやもう写〇眼とか持ってるレベルですよそれ、ニンニンですか?サ〇ケェ!なんですか?
「はい!だからこれは二人で勝ち取ったんです!!」
「そっか……二人で……ありがとうございます!!」
きっと円香は俺を慰めてくれているんだな。
やっぱり良い彼女だな……。








【新天円香】







えふぴーえすです!!!
これで勇人くんと一緒にえふぴーえすができます!!

いやぁ良く勇人くんのこと観察してて良かったです!
「でも円香さ、」
「はい?」
勇人くんは苦笑いを浮かべながら、
「それどうするの?」
「あ」
今貰ったばっかりなのに、もう腕が疲れてしまうほど重いこのゲーム機。
これからずっとこれを持ってくんですよね……。
「俺が持って歩くので祭りの間は大丈夫ですけど、」
けど?
「帰りは大丈夫ですか?家族にバレたらまずいとか。」
「帰りは大丈夫ですよ!お祭りの間持ってくれるってだけで嬉しいんですから!」
「いや大丈夫ですよ。ただ円香の親御さんにバレちゃったり……」
「あ、それは大丈夫です」
私がそう言うとおずおずと聞いてきていた雰囲気が瞬時にどこかへ飛んでいき一気に安堵の表情へ移らせました。

いやでも……。

「勇人くん。」
「そんな真剣な顔してどうしたんですか?」
そりゃ真剣な顔ぐらいしますよ!
それほどまでに大事な質問をするんです!!

「貧乳と巨乳どっちが好きですか?」

「え……特好みは……その人に似合う…というかその人らしいモノだったらなんでもいいです」

むむむ…………それだと判断材料に欠けます……。


「じゃあ私と巨に――」

「円香」
「まだ全部――」
「円香」
勇人くんの視線が鋭く私の目線と交差します。
「円香」と真剣な表情で言う勇人くんも良いですね……。

そしてこれで、

「じゃあ帰りもお願いします」
お母さんの誘惑に屈することはなくなりました!!

「じゃあ引き続きお祭りを楽しみますか!」
「はい♪」

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