非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の思い出と俺の思い出

五十七話






【新天円香】






「ど、どどどうしました!?」
「あっ――いや何でもないです!」
さすがに見つめすぎてしまいました……。
勇人くんは今からキスされるなんて思ってないでしょうからそりゃあ動揺の一つもしますよねはい。










気まずいです……ッ!
会話がないから余計に繋いだ手に意識が向いてしまいます!
――あっ、握る強さが強く………じゃないですよ!!
話題です!
なにか話しかけるのです円香!!せっかく二人きりなんですよ!?有効活用しないとダメじゃないですか!!

「……………勇人くん……?」
「は、はいぃッ!」
やっぱり勇人くんもなんとも言えないこの空気に緊張して……。

「・・・」
「・・・」

やっぱり黙っちゃいますぅ!
なんか改めて浜辺で二人きりって考えるだけで震えてきます!
どうにかして話題を振らなければ!

でも何を……何を話せば……。


――あ…………。


「勇人くん……覚えてますか?」
「な、何を……?」
私の頭には勇人くんと過ごしたこの短くも濃厚だった時間の思い出が浮かんでいます。
「それは――」
私は、今までの人生の中で最も輝いている、かけがえのない思い出を語り始めました。






【新転勇人】






「それは、もちろん私が勇人くんへ告白した時のことです」
あぁ……ゲームやアニメ一色で日蔭者だった俺の生活をガラッと変えたあの屋上での告白。
「あの時は無我夢中で、でもなんて言ったらいいのか分からなくて……結局“好きだと思います”なんて曖昧な事言ってしまいましたよね」
「……そうでしたね。罰ゲームだ、と言って泣かせてしまいましたし……」
つい最近のことなのに懐かしく思える。
この数カ月が濃すぎて今までの高校生活がちっぽけに感じる。
それもこれも今俺の隣で笑ってる円香のおかげなんだよな……。
「私あの後に、何度フラれても諦めない!って決めたんですよ」
「だからってあんな大衆の面前での告白はゲーオタの俺には厳しかったですよ」
笑い混じりに思い出と共に言葉を投げる。
あの時は周りの罵詈雑言とかソシャゲが気になりすぎててそれどころじゃなかったんだよな……。
それにレアキャラのために屋上までついて行って……。
「あの時の俺最低なヤツでしたよね」
「ほんっとに最低でしたよ!」
あ〜ら思ったより直球ぅ〜。
けがれるとか株が下がるとか!」
あー……そんなことも言ってたような言ってなかったような……。
「つい怒ってしまったんですからね!」
そういや円香があそこまで怒りをあらわにするって今考えると相当怒ってたんだな……。

「それで……真結にからかわれて、私の片思いが“恋人ごっこ”ではありますけど実を結んで……」
あの銀杏さんが金霧先輩だったってのもびっくりしたなぁ…………さすがに円香と二人きりの時にこの話は無いな、うん。


「あ、あと忘れちゃいけない思い出がありましたね」
円香の声が波音に彩られ鮮やかな輝きを放って俺へ届く。
月明かりに照らされた顔を向け、
「場所はアレですけど、ナンパさんたちから助けてくれたあの出会いの日。」



んんんんんんんん〜??
ちょっと記憶が……。
「あの時ナンパさんたちを睨みつけた瞳が忘れられなくて……」

まずい事になってきた…………。
なにか手がかりを――
「三人組の――」
「あぁ!!あのホテル街の三人組!!」
ナンパから誰かを助けた記憶は少なかったからなんとか掘り出せた……。
「はい、あの時助けてくれて嬉しかったんです」
ホテル街で男三人何するんだって思ってた気がする。そっか、裏に円香がいたんだ。
俺の思わぬところで出会ってたんだ……。

なんか申し訳ないな。





【新天円香】






そろそろですかね……。

最初は私から半ば強引に。

次は勇人くんから私へ強引に。
あ、あれは助けていただいたので強引というかなんというか……って感じですけど。

で、今回は私から強引……に…………。




「勇人くん……」
「ん?」
「私たちって恋人同士ですよね?」
「はい」


私たちは恋人同士なのに、どちらかが強引に行ったキスしかない。
そして今回も私から同意のないキスを行おうとしている……。



――これじゃダメですよね。



「勇人くん」
「今度はなんです?」
「キスしましょう」
「キ……えぇっ!?それ言って――」
「いいんですよ!って………え?」
今の言い方だと私がキスすること知ってた……みたいな……。

「ま、まぁなんでもいいです!で、私とキスしてくれるんですか?」





【新転勇人】






ドッキリじゃなかったんですか!?
なに?気が変わった?え?
聞き間違い?
俺は明らかに混乱していた。
「――で、私とキスしてくれるんですか?」
間違いじゃなかったのねぇ!!
どういう事だろ……あぁ…分からない。
分からないけど……。
「…キス……しましょうか」
こんないいムードでいい場所なのに断る理由がない。
それに月の光で照らされてる円香はいつもの五倍増しで魅力的だからな。
「……あ、改めてするとなると恥ずかしいですね…」
円香は頬を赤く染め、そんな頬を包むように手のひらを頬へ持っていく。
「円香。目瞑ってて」
「は、はいっ!」
円香は素直に目を閉じ、俺へと顔を向けてくれた。
俺は大きく深呼吸をして――――



円香を抱くようにしてキスをした。





どのくらいたっただろうか。
時間が止まったような。
過ぎ去っていく時間を忘れている感覚。
波の音だけが響くこの浜辺で、俺たちは“恋人”として。“ごっこ”ではないキスを交わした。


そっと唇を離し、熱くなっている顔を隠すために海の方へと向きを変え――

「やーぁもっとする!」
「まど―んッ」

グイッと、首折れるんじゃねーかってくらいの勢いで再び円香の方へと顔を向けられキスを受ける。
見開かれた俺の目には、とろりと蕩けた瞳を浮かべる円香がうつっていた。
「ちょ―」
「まだ」
「んんんんんん!!!」
吸われる!魂吸われるぅ!!
円香やばいって……その気にさせちゃダメだった……。
「まだしよ」
スイッチ入ってますね、はい。
ま、まぁ嫌な気分になるわけでもないし、むしろ嬉しいんですが……円香はそれでいいの?大丈夫なの?
だって結構唇吸われてるよ?

 俺唇
     円唇
    俺唇
     円香

の図だからね?
スイッチ切れた時に恥ずか死にそうにならない?なるよね?
それに吸引し終わったら次になにかが入ってくる可能性とかない?
ねぇ海。
ここ海ですよ?
いくら夜と言っても――

「んん!!」
「ぷはぁっ……」(ぼーっ)

あ、離れた。
離れたと思ったらぼーっと海見て何してるんでしょう。
「(ぼーーっ)」



さぁここでクイズのお時間がやって参りました!!

円香がこの次に発する言葉とはなんでしょう!!

チクタク
チクタク
チクタク
チクタク



さぁ!時間切れでございます。
正解は!!!!






「円香……大丈夫ですか……?」
円香はゆっくりと俺と目線を通わせると。

「美味しかった」

と言ってゆっくりと宿へと戻っていった。


円香は本当にその路線でいいの…………?

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