非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

俺の迷子トラブルと私の小さな幸せ

四話



今日もいつもと変わらず一人で学校へと向かう。
勢いよく降る雨に俺の心は曇を見せていた。
それは、傘のせいで手が塞がってしまいゲームができないからである。
「くそ…イベント終わらせないといけないのに…」
そして、もう一つ、今日も新天さんから告白されたらという恐怖。
俺が通う学校のトップカーストに存在する新天さんは、下手したら毎日告白されてるんじゃねーかってくらいモテモテで俺が干渉どころか視線にすら入ってはいけないぐらいのお方だ。
そんな彼女にクラスのど真ん中で、つまり俺の席の前に立って告白されるなんて、プロ野球選手が満員のドームでサッカーからヘッドハンティングされるようなものだ。
つまり観客大激怒。
「あぁ……憂鬱だ。帰ってゲームしたい」
でもそんな中、学校に行く俺は相当優等生だと思う。普通だと野球を引退するレベルだもん。
「はぁ…ゲームしたい…」
こんな雨の日は口を開けば「ゲームしたい」しか出てこないのだった。




だがそんな欲求は昇降口にてガッツリと折られる。
「スクープ…あの新天円香がオタクで有名な新転勇人に情熱キス……ついに我らのアイドルが熱愛か!!」
そう。昇降口にある大掲示板に“写真付きで”昨日の屋上での出来事がガッツリと高画質で、しかもその写真だけじゃなく、涙を流す新天さんの写真や、告白の文言が一言一句載っていた。
そして最下部には、
【録音音声が聞きたい方は新聞部部長左道まで♡】
と書かれていた。
「新聞部ぅぅぅぅぅぅぅぅぅう!!!!」
俺は周りの目も気にせずに大声で吠えていた。
「とりあえず新天さんと―」
いやまて……ここで新天と一緒に新聞部に行ったら余計熱愛とか言われるな…。
それに振ってしまった手前誘いにくいな…。

だが、こうなったのも人気のないところ提案した俺が悪いかもな……。
それにあのハンカチの持ち主をすぐに特定してればこんなことには……。

仕方ない。

俺は覚悟を決め“新天さんがいる教室へ向かった”。



「あのぉ新天円香さんはいらっしゃいますか…?」
俺は勇気を振り絞り、彼女が根城とするクラスへと声をかけた。
すると、
「おい…あいつが新天の…」
「あぁ。あいつが我らの新天さんを…」
「どうする?殺す?焼く?煮る?」
「いや、沈めよう」
と物騒な会話がこそこそと繰り広げられた。
これだから嫌だったんだ。
学園のアイドル様に好意を持ってもらえるのは嬉しいけど違うじゃん。命と引換にするほどの事じゃないじゃん。
「新天さんなら新聞部の方に向かいましたが…」
と、心優しい女子が教えてくれた。
だが、ニヤニヤとして本心が丸見えだった。
どうせ「えへ…彼氏だから迎えに来たのね。ぐへへ新聞部に売ったらいくらになるかしら」とか思ってるに違いない。儲けようとしてるに違いない。
やはり人間は嫌いだ!
「あ、ありがとうございます」
俺は彼女たちへ抱いた嫌悪感やコミュ障感がバレないように爽やかに感謝を述べる。多分バレてない。
「あ、あはは」とか言ってたけどバレてない。
まぁ今更馬鹿にされるとか痛くも痒くもないからどうでも良いけど☆

それじゃあ新聞部に向かうか。



「まさかこんなことになるとは…」
俺は校舎内を歩き回っていた。
「普段教室を出ないのがここまで影響するなんて……」
そう。
俺は新聞部の部室まで行くのに、普通に迷っていた。簡単に言うと迷子というやつだ。
「新天さんに申し訳ないし早く探さないと」
俺は今来た道をもう一度探しに戻った。



私は例のスクープをみて、すぐに新聞部の部室へ行きました。
既に待ち構えていたかのごとく部長の左道真結さどうまゆさんはどっしりと椅子に座っていました。
会話は一切なくただ静かに彼を待っていました。
ですがそんな中彼女は口を開きました。
「彼…遅いですね」
と。
「いや彼氏じゃ―」
「おや?誰が彼氏と申しましたか?私は男性に向ける呼び名として“彼”と言っただけですよ?」
動き出していた口は止まりませんでした。
私は彼女の作戦にまんまと引っかかり、ボロが出たと思われてしまいました。
本当に彼女じゃないのに。
私のせいでまた勇人くんに迷惑かけてしまいます。
「本当に付き合ってないんです」
「あらその心は?」
「昨日ふられ―あっ」
「ほうほう。昨日ふられてしまったと。私はあなたの告白を聞いた後にすぐ退散したのでそれは知りませんでした」
また私は余計なことを…ッ!
なんで私の胸のうちでとどめて置けなかったのでしょう。
貧乳だから?やかましいです!!成長中なんです!!
「それにしても新転くん本当に遅いですね」
「そうですね。どうしたのでしょう」
勇人くんのことですからきっとおどおどして来るか来まいか迷っているのでしょう。
「私探してきますね」
「ちょ―新天さん!逃げちゃダメですからね!」
「分かってますよー」
逃げたら何書かれるか分かったもんじゃないので私に逃げる気なんてありません。
単純に勇人君が心配で心配でたまらないのです!
ではいざ行かん!勇人君を求めて!
私は部室のドアを勢いよく開けました。




「新聞部の部室どこだよぉ……そろそろ気が折れるよ…」
時刻は刻一刻と朝のホームルームへと近づいていて、俺は相当焦りながら校舎中を行ったり来たり探していた。

―だが思うように部室を見つけられず俺は諦めようと思っていた。

「まぁ新天さん一人でも大丈夫だよな…」
自分の教室へ帰ろうと振り返っ時だった。
「てか早くイベント―」
携帯を取り出そうとした時、いきなり目の前の部屋のドアが勢いよく俺に向かって開いたのだ。




ですが、ドアには何やら重く何かが当たる感覚がありました。
「え、なに―勇人くん!?」
「し、新天さん……?」
彼は目を丸くさせ、疑問符を浮かべます。
私も何が起こったか理解出来ずキョロキョロとあたりを見回してしまいます。

重く何かが当たる感覚。

尻餅をついて倒れる勇人くん。

飛ばされたスマートフォン。

ここから予想されること……まさか!

「ごめんなさい勇人くん。怪我はないですか?」
そう。
あまり教室から出ない勇人くんは新聞部の部室がわからず、私に頼ろうと電話しようと携帯を開いたけど私の携帯番号を知らないことに気づき、そのタイミングで私がドアを開けてしまい、偶然部室の前にいた勇人に当たってしまった。
ということ!
私は彼に手を差し伸べます。
「ありがとうございます」
そう言って彼はスマートフォンを先に拾って私の手を掴みました。
……なんだかゲームに負けた気分です。彼はそんなこと思ってるはずはないと思うのですが、少し疑ってしまいます。
でもまぁ彼の手を握れたので私としては大満足ですがね。小さな幸せをコツコツと、です。



「ちょっと尻痛いなぁ…それよりスマホ大丈夫かな…ゲームデータ飛んでたりしないよな…」
俺は尻より何よりスマホが心配でならなかった。

まぁ今から左道さんという方にとんでもない拷問を受けるんだろうから尻の痛みなんて忘れてしまいそうだな。

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コメント

  • あのこ

    正直、本編よりも作者の変態コメントが気になってウザいwww

    テンション高めの回と普通の回が交互に更新されてる気がするのは穿ち過ぎかな?
    まだ4話なのでこれからだとは思うけど頑張ってください。あと服脱ぎコメントは要りませんw

    0
  • スフィ

    たまにまどかちゃんの勇人「くん」呼びが抜けてますよ

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