非リアの俺と学園アイドルが付き合った結果

井戸千尋

私の告白アゲインと俺の不意打ちファーストキス

三話



「思い出しただけでもキュンキュンする…」
やっぱり私勇人君のこと……。







「昨日の今日で申し訳ないんですが、あなたの事が本心から愛しています。私とお付き合いしてください!」
彼女は今日も告白してきた。
しかも昨日と同じく大衆の面前で。
よって「おいおいまたかよ」「なんであんなオタクなんかに」「おいそこ変われ」など罵詈雑言が飛び交う。
そんな現状も嫌だし、何よりさっき中断させたソシャゲがやりたい。イベントの期限今週末なんだけどなぁ。
「あの、ありがたいお話ですが流石にこんな大勢の前で新天さんに告白されるのは少々恐縮しちゃいます」

ありがたい話なんだが、何で俺なんだ?
俺が眉をしかめて考えていると―
「じゃ、じゃあ屋上にでも行きませんか?」
と、間接的に“二人きりになろう宣言”をしてきた。
「お、屋上…?」
思わず声が上ずってしまった。
でも早くソシャゲしたいんだけどなあ。


―待てよ…?屋上ってことは結構な高さがあるよな……てことはレア飛行バケモン出るんじゃないか?


「行きます。行かせてください」
「はっ―はい!」
新天はとびきり可愛い笑顔を浮かべて言った。

あれ、俺もしかしてとんでもない事しでかした?






ついに…ついに……ッ!
勇人君がわかってくれた!
私はるんるんと屋上への階段を上がります。
時折勇人が着いてきているか気にしながら上がります。

そして、私たちは屋上へとたどり着きました。
私は再び勇気を振り絞って告白します。
「私とお付き合いしてください!」
これが今の私に出来る最大限の告白です!
「あのぉ、もう嘘だって言っても誰の信用も下がらないんで大丈夫ですよ?」
「ぇ」
なん…で……?
嘘じゃないのに…。
助けてくれたあの日から胸が苦しくなるほど好きなのに……。
「えっ…ごめんなさい。」
勇人くんはそう言ってハンカチを私にくれた。
私…泣いて…。
「ありがとうございます…」
どうしよう…私勇人君を困らせてばっかりだ。
好きなんて言って困らせて、伝わらなかったら涙を流して……私最低だ…。

「大丈夫ですか?」
あぁ。
この優しさだ。
私はこんな彼に惚れたんだ。
「うん。ありがと」
彼へハンカチを返す。
その時彼が見せた瞳は透き通るようで、私をその深みへと沈ませていった。

あぁ。やっぱり私勇人君のこと…。

そう思った時には遅かったです。
私の体は止まりませんでした。
屋上ということもあり、誰の目もないことを良いことにしてしまったのです。

一般的には愛するもの同士で行う行為。
つまりはキスというものをしてしまっていたのです。
怖くて目を開けることが出来ないのですがここから私はどうすれば良いのでしょう。
も、もちろんキスなんて初めてですし、しかも優しさに漬け込んでいるようでなんだか罪悪感が―
「新天さん!!」
ですがそんなものは勇人くんに無理やり唇を離され、怒鳴られることでどこかへ消えていきました。
「あ、ごめんなさい。大きな声出して…でも…」
彼は瞳を泳がせ、次第に覚悟が決まったのか私をじっと見つめて、曇りない眼差しで言いました。
「俺なんかより新天さんにはお似合いの男性がいます。過ぎてしまったことは仕方ないことです。が、今後自分の身を汚すようなことはしない方がいいと思います」
「汚すなんて…っ!」
「いいえ汚しています」
勇人くんは私から目を離さず言葉を紡ぎます。
「俺なんかみたいなオタクでゲーマーでぼっちな奴にキスや告白すること自体で新天の株は下がってしまうんですよ?それでもいいんですか?」
その言葉を聞いた瞬間、私の中で何かが弾けました。
「株…?そんなの要らない…私が汚れる?私の何を知ってるの。こっちは元から無いような勇気を振り絞って告白しているのに。私は心の底からあなたを愛しています!」
私は自分でも驚く程に怒っていました。気持ちが伝わらなかったからじゃない。
彼は自分で自分を卑下し、挙句私のどうでもいい評判まで、自分のせいで下がるなど言った。
そんな彼にひどく怒り、悲しみを得ました。
彼は少し考えるような表情を浮かべ、私を見ながら何かを考えています。
こんな状況なのに、彼に見つめられるとドキドキしてきてしまいます。
はぁ好き。
そして勇人くんは口を開きました。
「あの新天さんから愛してると言われるのはすごい嬉しかったです。」
「じゃあ!」
返事を待ちきれなくて私は食い気味に言葉の後を促します。
でも―
「でもごめんなさい。やっぱり新天とお付き合いすることはできません。」
「え……?」
彼はそのまま屋上を去っていきました。






俺はこれまでになく動揺していた。
新天さんは涙を流すし、その上あんな真剣に愛してるなんて言われるし…。
キスされるし……。
オタクで童貞な俺に難易度高すぎるよ……。
「―ん?なんだこれ」
悶々とした気持ちを抑えながら降りる階段の途中に、ピンク色をしたハンカチが落ちていた。

特にこれといった異常性癖は持ち合わせていないため、素直に職員室送りにしようと思う。

「ていうか俺はファーストキスだったんだよ!?それがあんな不意なキス…」
まぁ可愛いお方にされたのだから唇を拭く様なことはしないが。

「それにしてもあれで良かったんだよな。」
教室のある階へと階段を降りつつ思考する。
もちろん新天さんのような可愛い、美しいを兼ね備えた人とお付き合いできるのは素晴らしいことだと思う。
だが、新天さんとお付き合いしたら、闇討ちや靴の中に逆さ画鋲、机の上の花瓶。
これら全ては免れないだろう。
つまりは学園にいる男子生徒の総攻撃を受けるわけだ。
まぁ、それらならまだ耐えようと思えば耐えられる。
だがしかし!!
ゲームのイベントを最後までクリア出来ないのは耐えられない!
多くのフレンドさんたちに迷惑をかけてしまうし、それにイベントクリア報酬が貰えないのは痛すぎる。

よってこれらの理由で(後者が半分以上を占める)告白を断ったことは間違えじゃなかったよな。

そして自分の中で一つの答えを出し、ふと目に入った窓をよく見ると、真っ黒い雲が侵略でもするかのように押し寄せてきていた。
「ゲッ…傘持ってきてないのに…」
早く帰らねば!
携帯が濡れて故障なんてしたら大変だ!
俺は階段を飛ぶように降りすぐさま教室へと向かう。
そして流れるようにバッグをもち、学校を後にした。




だがその雨は翌日になっても雷を伴ったまま俺達の上へ居座り続けていた。

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コメント

  • 三日月の空

    初見ですがこの作品気に入りました!毎回楽しみに見ることにします!

    2
  • ノベルバユーザー316222

    毎日投稿だなんて素晴らしいですね!これからも頑張ってください!

    1
  • しょこた

    面白い!!

    3
  • RAJ

    くそ雑魚ハゲブス童貞
    (ごめんなさい)

    5
  • あのこ

    すげぇな、ホントに「くそ ザコ ハゲ ブスでもいいからコメントください」って書いてあったwww

    ヒロインの空気読まないクラスメイト前での再告白、主人公のマトモな返事とブレないゲーム脳に思わず納得できる超真面目回。

    気に入った、いいねあげちゃう♡

    7
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