俺が転生した世界はどうやら男女比がおかしいらしい
莉央ちゃん宅へGO 中編
「おぉ...」
思わず声が出てしまった。扉を抜けるとそこは開放感あふれる広々とした空間が広がっており、木を基調として作られている。どこか落ち着く感じがする。
それに外から見ただけでは分からなかったのだが、奥行きもあり中々広い家のようだ。
もしかしたら莉央ちゃんの家庭はお金持ちなのかもしれない。
「今日ご家族は?」
「お母さんは仕事でいません」
なるほど、ということはこの家には俺達2人しかいないということか。うら若きこの少女だけと。
ふむ。....煩悩が出てきそうだ。
若さ故の猛り狂いそうなこのリビドーをとう処理しようか。...うーん、まあいっか。
たとえ暴走したとしてしまってもそれは思春期真っ盛りである高校生という時期が悪い。だから仕方ないのだ。仕方ないったら仕方ない。
「そういえば、着くのに結構時間かかったみたいですけど何かあったんです?」
俺用のスリッパを準備してくれている莉央ちゃんがそう言う。
「ああ、実はファンの子達に捕まっちゃってさ。そのおかげで来るの遅れちゃった」
「...へぇ〜そうですか。仁くんは相変わらずモテますね」
...とりあえず実際にあった事を話してみたのだが、どうやら莉央ちゃんはお気に召さなかったようだ。ムスッとした顔の彼女の姿からはそれが顕著に伝わってくる。
「ま、まあその話はいいじゃん。早く遊ぼう?」
秘技、話題逸らし!別名臭い物には蓋をするともいう。
「あ、そうですね。仁くんのためにチーズケーキ作ったんです!一緒に食べましょう」
「本当に?それは嬉しいな。チーズケーキ好きなんだよ僕」
よしよし成功だ。今日はせっかく久しぶりの2人っきりで居られる日なのだ。わざわざ莉央ちゃんが嫌がる話題を出す必要もないだろう。
「じゃあリビングに行きましょう!こっちです!」
「...ふふっ」
ルンルンと音が聞こえてきそうな程の笑顔でそう言う莉央ちゃんに俺は笑みを漏らす。彼女も今日を楽しみにしていてくれたのだろうか。だとしたらとても嬉しい事だ。
こんな可愛い子とお家デートなんて素敵シチュエーションそうそう訪れないぞ。
今日は楽しみ尽くそう。
「早く早く!」とこちらを急かす女の子を初々しく思いつつ、俺は彼女に着いて行った。
その後、お手製の美味しいチーズケーキを頂いた俺たちは片っ端から遊んだ。
1番印象に残っているのは、2人で本気で対戦した格ゲーだ。莉央ちゃんの家にある格闘ゲームは残念ながら前世で見た事がなく初見プレイとなってしまったのだが、其処はオタクのプレイスキルで抜かりなくすぐにコツを掴んだ。さらにどうやら莉央ちゃん本人もこの世界ではオタクにカテゴライズされているらしくかなりの腕前ではあったが、なんとか競り勝つことができた。本人はかなり悔しがっていたようだが。『仁くんなんでそんな強いんです!?』と最後は泣きそうな顔で詰め寄られたな。
他には、一緒に恋愛映画を見たり(出てくる男性の顔は微妙だった)、莉央ちゃんの中学校の卒業アルバムを見たりした。そうそう、イケメン君いるかなあとぼんやり思いながら卒業アルバムを見ていたのだが、1人だけかなり顔が整った男子生徒がいたっけな。俺や桐生先輩以外にもまだこの辺りにイケメンがいたとは意外だった。機会があれば会ってみたいものだ。
そんなこんなで一通り遊び尽くした俺たちは現在莉央ちゃんの部屋で寛ぎながらお喋りをしているところである。
この家に遊びに来た当初は、思春期特有の欲望を抑えきれるか不安ではあったのだがどうやら大丈夫のようだ。もしかしたらこの体はこの世界のモノなので、性欲はそこまでたまらないのかもな。残念なような、そうでないような。....この意気地なしっ!
「仁くんは今かなりの有名人ですよね?」
ベッドにうつ伏せに寝転ぶ莉央ちゃんが少しジト目で俺を見つつそう言う。
「そうだねー。ファンクラブの会員も3万人超えたみたいだしね」
昨日ファンクラブの公式サイトを見てみたらかなり増えてたんだよね。そろそろ会長さんがどんな人か知りたくなってきた。
そういえば前世の某超有名アイドルグループのファンクラブ会員数は確か200万人を超えてるんだっけな。それに比べたら俺はまだまだだな、うん。
「今日もそうだったみたいですけど、ファンの女の子達に囲まれる事があるんですよね?それについては実際どう思ってるんです?」
「どうって、何が?」
「だから...その、嬉しいとか、困ってるとかそう言う事です」
なるほど。俺が出かける度に女の子達に行く手を阻まれるが実の所どう思っているのか、か。
うーん....。そうだな。
「そりゃ毎回毎回囲まれるわけだから困ってないとは言わないけど、まあ嬉しいかな?可愛い女の子達が僕の顔を見た瞬間笑顔を見せてくれるのが、心地良くて、楽しい」
「...仁くんは変わった男の子です。普通の男の子なら女の子に囲まれたら泣いちゃってますよ?」
えぇ...泣いてしまうのか。美少女達に囲まれたら世の男性達は漏れなくとても良い笑顔になると思うんだけど。
いや、だがここは男女比が偏った世界。男女を逆転して考えてみると...女性が圧倒的に少ない世界で女に飢えた男達に周りを取り囲まれる。....うん、泣くわ。怖すぎる。
「あはは...」
「...まあいいですけど、襲われないように気を付けて下さいね?」
「任せて!」
「...心配です」
こうして2人でのんびりと過ごすのも悪くないな。可愛い子の部屋で2人きりなんて失われた青春を取り戻しているようだ。
「はふぅ...」
こうしてゆったりとした時間を過ごしていると色々と考え事をしてしまう。
そういえばそろそろ男性特別侍衛官、SBMの人が来る頃だ。四六時中侍衛してもらうわけではなく、主に学校への行き来を担当してもらう予定だ。堅苦しいのは嫌だからな。
可愛い子だといいけど....。
まあ、噂では美形揃いだと聞いているのでかなり期待はしている。楽しみだ。
俺はそんな事を考えながらなんとなしに莉央ちゃんの部屋を見渡す。
「....ん?」
すると、少し開いている押入れの扉と、その少しの間からはみ出ている一冊の本が目に入った。
部屋は全体的にかなり丁寧に整理整頓されており、莉央ちゃんの性格からしても珍しい事だ。
「よっと」
俺は床に腰を下ろした状態から四つん這いで押入れへと向かう。
「....っ。じ、仁くん?どうしたんです?」
すると何故か少し早口になった莉央ちゃんがそう言ってきた。
「なんか押入れから本が出てるからさ。僕が中に戻しておこうと思って」
はみ出している本に手を伸ばしながら言う。
...そういえば、莉央ちゃんが本を読む姿はあまり見た事ないな。どんな本を読むのだろう?
気になった俺は本を手に取り、その表紙をーーーーー
「あっ!!ダメです!ちょっと待って下さい!!」
「えっ?」
俺が表紙を見ると同時に莉央ちゃんが叫んだ。
俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまうのだが、それは彼女の叫び声に対してではなく本の表紙に対してだ。
その本の表紙には、
『男だらけの楽園へようこそ!ヌプヌプ大運動会!!〜弾ける男のマグナム〜』
という題名と、数人のイケメン男性キャラに絡みつかれるように囲まれている1人の女の子が描かれていた。何故か男性陣はヌルヌルした液体を身体中に纏っており、これは一体何の運動会だとツッコミを入れたい。あと意味わからん副題やめろ。
....まあ、早い話エロ本だな。それに結構業が深そうなジャンルだ。
「....」
「....」
先程までの平和な空気は見事に一掃され、気まずい沈黙が流れる。
だがよくよく考えてみれば莉央ちゃんは前世の世界でいう男子高校生。しかも異性の数が極端に少ない。エロ本なんてあって然るべきだろう。むしろない方が正気を疑うね。
「こ、これ戻しとくね」
よし、これがいいだろう。見て見ぬ振りというのは偉大な言葉だ。エロ本があったからといって特に何も言う事はあるまい。あるまいよ。
俺はそう思い、押入れの扉を開けエロ本を戻そうとしたのだが。
「ガラ...」
「「あ....」」
押入れを開けた瞬間俺の視界を埋め尽くしたのは、山のように積み上げられたエロ本、エロ雑誌、AV。その数は数えるのも億劫になる程だ。
思わず目が丸くなってしまった。
OH...何ということだ。俺とした事がこの事態を想定していなかった...!ますます被害を拡大させてしまうとは。
今の今まで忘れていたのだが、そもそも莉央ちゃんと俺の出会いは彼女が俺に痴姦してきた事なのだ。そう、莉央ちゃんは変態なのだ。普段あまり表に出さないからその事実を忘れていた....。
「ガラ...」
俺は静かに無言で押入れの扉を閉める。
「あ、あはは」
自分でも分かるくらいに引きつった愛想笑いを浮かべながら振り返り、莉央ちゃんの顔を確認する。
「.......」
彼女は、顔を真っ赤にさせてプルプルと震えながら俯いていた。
目には涙が溜まっており今にも泣き出しそうである。
...やってしまった。俺は別に莉央ちゃんの性癖を暴き辱しめを受けさせる気はなかったのだ...。俺の不手際で...なんかとても申し訳ない。
「ご、ごめんね莉央ちゃん?年頃だもんね、仕方ないよ」
なんでこんな下手くそなフォローしかできないんだ!自分が嫌になる!いつもならもっと落ち着いて対処できるのに。
「なんで...なんで見ちゃうんですかぁ...うぇええ...」
あああ...ついに泣き出してしまった。
でもこれは俺が全面的に悪い。可愛い子の涙は見たくない。
「...ごめんね」
よしよしと頭を撫でながら謝る事しかできない。誰か良い対処法があるなら教えてくれ!
「ほ、本当にごめんね?何でもするから許して...!」
こういう時は誠心誠意を心掛けて接するのが良いはずだ。今彼女のために俺に何が出来るかを考えなければ!莉央ちゃんの傷付いた心を癒すためにはそれこそ俺が何でもしてあげなければ....うん?
さっきまで聞こえていた莉央ちゃんの泣き声が急に止んだ。
「...莉央ちゃん?」
不審に思った俺は頭を撫でる手を止めそう問う。
すると莉央ちゃんは俯いてた顔を上げ、真っ直ぐにこちらをその端正な顔で見つめながらボソリと呟いた。
「....なんでも?」
「えっ?」
「今仁くんは何でもすると言ったんですか?」
ついほんのさっきまでの涙は何処へ行ったのか、まるで獲物を見つけた肉食獣のような眼光に変わった莉央ちゃん。
...おっと?これは言葉選びを誤ったか?
「う、うん。僕に出来る事なら」
しかし1度発してしまった言葉を飲み込む事は出来ない。莉央ちゃんの迫力に少したじろぎながらも俺はなんとかそう返す。
「...ゴクッ。そ、それはヌプヌプ大運動会で主人公が色々な男の子達にヤったような事もです!?」
一度喉を鳴らした莉央ちゃんはそう言いながらガシッと俺の肩を掴む。
...何ですと?ヌプヌプ大運動会と言えばさっきのエロ本のタイトル。あの作品で女主人公が様々な登場人物の男の子にヤった内容、か。...それはつまりエッチな事だと思っていいんですね?
....ふむ、なるほど。
今目の前にいるこの可愛い女の子からエッチな事をされるという事か。
.....。
「....莉央ちゃん」
「....はい」
俺は、肩を掴む莉央ちゃんの手に自分の手を添えながら言う。
「...謹んで、お受けいたします。莉央ちゃんの好きにしていいよ」
ーーーー次の瞬間俺はベッドに押し倒された。
拝啓、お父さん、お母さん俺は今日男になります。
思わず声が出てしまった。扉を抜けるとそこは開放感あふれる広々とした空間が広がっており、木を基調として作られている。どこか落ち着く感じがする。
それに外から見ただけでは分からなかったのだが、奥行きもあり中々広い家のようだ。
もしかしたら莉央ちゃんの家庭はお金持ちなのかもしれない。
「今日ご家族は?」
「お母さんは仕事でいません」
なるほど、ということはこの家には俺達2人しかいないということか。うら若きこの少女だけと。
ふむ。....煩悩が出てきそうだ。
若さ故の猛り狂いそうなこのリビドーをとう処理しようか。...うーん、まあいっか。
たとえ暴走したとしてしまってもそれは思春期真っ盛りである高校生という時期が悪い。だから仕方ないのだ。仕方ないったら仕方ない。
「そういえば、着くのに結構時間かかったみたいですけど何かあったんです?」
俺用のスリッパを準備してくれている莉央ちゃんがそう言う。
「ああ、実はファンの子達に捕まっちゃってさ。そのおかげで来るの遅れちゃった」
「...へぇ〜そうですか。仁くんは相変わらずモテますね」
...とりあえず実際にあった事を話してみたのだが、どうやら莉央ちゃんはお気に召さなかったようだ。ムスッとした顔の彼女の姿からはそれが顕著に伝わってくる。
「ま、まあその話はいいじゃん。早く遊ぼう?」
秘技、話題逸らし!別名臭い物には蓋をするともいう。
「あ、そうですね。仁くんのためにチーズケーキ作ったんです!一緒に食べましょう」
「本当に?それは嬉しいな。チーズケーキ好きなんだよ僕」
よしよし成功だ。今日はせっかく久しぶりの2人っきりで居られる日なのだ。わざわざ莉央ちゃんが嫌がる話題を出す必要もないだろう。
「じゃあリビングに行きましょう!こっちです!」
「...ふふっ」
ルンルンと音が聞こえてきそうな程の笑顔でそう言う莉央ちゃんに俺は笑みを漏らす。彼女も今日を楽しみにしていてくれたのだろうか。だとしたらとても嬉しい事だ。
こんな可愛い子とお家デートなんて素敵シチュエーションそうそう訪れないぞ。
今日は楽しみ尽くそう。
「早く早く!」とこちらを急かす女の子を初々しく思いつつ、俺は彼女に着いて行った。
その後、お手製の美味しいチーズケーキを頂いた俺たちは片っ端から遊んだ。
1番印象に残っているのは、2人で本気で対戦した格ゲーだ。莉央ちゃんの家にある格闘ゲームは残念ながら前世で見た事がなく初見プレイとなってしまったのだが、其処はオタクのプレイスキルで抜かりなくすぐにコツを掴んだ。さらにどうやら莉央ちゃん本人もこの世界ではオタクにカテゴライズされているらしくかなりの腕前ではあったが、なんとか競り勝つことができた。本人はかなり悔しがっていたようだが。『仁くんなんでそんな強いんです!?』と最後は泣きそうな顔で詰め寄られたな。
他には、一緒に恋愛映画を見たり(出てくる男性の顔は微妙だった)、莉央ちゃんの中学校の卒業アルバムを見たりした。そうそう、イケメン君いるかなあとぼんやり思いながら卒業アルバムを見ていたのだが、1人だけかなり顔が整った男子生徒がいたっけな。俺や桐生先輩以外にもまだこの辺りにイケメンがいたとは意外だった。機会があれば会ってみたいものだ。
そんなこんなで一通り遊び尽くした俺たちは現在莉央ちゃんの部屋で寛ぎながらお喋りをしているところである。
この家に遊びに来た当初は、思春期特有の欲望を抑えきれるか不安ではあったのだがどうやら大丈夫のようだ。もしかしたらこの体はこの世界のモノなので、性欲はそこまでたまらないのかもな。残念なような、そうでないような。....この意気地なしっ!
「仁くんは今かなりの有名人ですよね?」
ベッドにうつ伏せに寝転ぶ莉央ちゃんが少しジト目で俺を見つつそう言う。
「そうだねー。ファンクラブの会員も3万人超えたみたいだしね」
昨日ファンクラブの公式サイトを見てみたらかなり増えてたんだよね。そろそろ会長さんがどんな人か知りたくなってきた。
そういえば前世の某超有名アイドルグループのファンクラブ会員数は確か200万人を超えてるんだっけな。それに比べたら俺はまだまだだな、うん。
「今日もそうだったみたいですけど、ファンの女の子達に囲まれる事があるんですよね?それについては実際どう思ってるんです?」
「どうって、何が?」
「だから...その、嬉しいとか、困ってるとかそう言う事です」
なるほど。俺が出かける度に女の子達に行く手を阻まれるが実の所どう思っているのか、か。
うーん....。そうだな。
「そりゃ毎回毎回囲まれるわけだから困ってないとは言わないけど、まあ嬉しいかな?可愛い女の子達が僕の顔を見た瞬間笑顔を見せてくれるのが、心地良くて、楽しい」
「...仁くんは変わった男の子です。普通の男の子なら女の子に囲まれたら泣いちゃってますよ?」
えぇ...泣いてしまうのか。美少女達に囲まれたら世の男性達は漏れなくとても良い笑顔になると思うんだけど。
いや、だがここは男女比が偏った世界。男女を逆転して考えてみると...女性が圧倒的に少ない世界で女に飢えた男達に周りを取り囲まれる。....うん、泣くわ。怖すぎる。
「あはは...」
「...まあいいですけど、襲われないように気を付けて下さいね?」
「任せて!」
「...心配です」
こうして2人でのんびりと過ごすのも悪くないな。可愛い子の部屋で2人きりなんて失われた青春を取り戻しているようだ。
「はふぅ...」
こうしてゆったりとした時間を過ごしていると色々と考え事をしてしまう。
そういえばそろそろ男性特別侍衛官、SBMの人が来る頃だ。四六時中侍衛してもらうわけではなく、主に学校への行き来を担当してもらう予定だ。堅苦しいのは嫌だからな。
可愛い子だといいけど....。
まあ、噂では美形揃いだと聞いているのでかなり期待はしている。楽しみだ。
俺はそんな事を考えながらなんとなしに莉央ちゃんの部屋を見渡す。
「....ん?」
すると、少し開いている押入れの扉と、その少しの間からはみ出ている一冊の本が目に入った。
部屋は全体的にかなり丁寧に整理整頓されており、莉央ちゃんの性格からしても珍しい事だ。
「よっと」
俺は床に腰を下ろした状態から四つん這いで押入れへと向かう。
「....っ。じ、仁くん?どうしたんです?」
すると何故か少し早口になった莉央ちゃんがそう言ってきた。
「なんか押入れから本が出てるからさ。僕が中に戻しておこうと思って」
はみ出している本に手を伸ばしながら言う。
...そういえば、莉央ちゃんが本を読む姿はあまり見た事ないな。どんな本を読むのだろう?
気になった俺は本を手に取り、その表紙をーーーーー
「あっ!!ダメです!ちょっと待って下さい!!」
「えっ?」
俺が表紙を見ると同時に莉央ちゃんが叫んだ。
俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまうのだが、それは彼女の叫び声に対してではなく本の表紙に対してだ。
その本の表紙には、
『男だらけの楽園へようこそ!ヌプヌプ大運動会!!〜弾ける男のマグナム〜』
という題名と、数人のイケメン男性キャラに絡みつかれるように囲まれている1人の女の子が描かれていた。何故か男性陣はヌルヌルした液体を身体中に纏っており、これは一体何の運動会だとツッコミを入れたい。あと意味わからん副題やめろ。
....まあ、早い話エロ本だな。それに結構業が深そうなジャンルだ。
「....」
「....」
先程までの平和な空気は見事に一掃され、気まずい沈黙が流れる。
だがよくよく考えてみれば莉央ちゃんは前世の世界でいう男子高校生。しかも異性の数が極端に少ない。エロ本なんてあって然るべきだろう。むしろない方が正気を疑うね。
「こ、これ戻しとくね」
よし、これがいいだろう。見て見ぬ振りというのは偉大な言葉だ。エロ本があったからといって特に何も言う事はあるまい。あるまいよ。
俺はそう思い、押入れの扉を開けエロ本を戻そうとしたのだが。
「ガラ...」
「「あ....」」
押入れを開けた瞬間俺の視界を埋め尽くしたのは、山のように積み上げられたエロ本、エロ雑誌、AV。その数は数えるのも億劫になる程だ。
思わず目が丸くなってしまった。
OH...何ということだ。俺とした事がこの事態を想定していなかった...!ますます被害を拡大させてしまうとは。
今の今まで忘れていたのだが、そもそも莉央ちゃんと俺の出会いは彼女が俺に痴姦してきた事なのだ。そう、莉央ちゃんは変態なのだ。普段あまり表に出さないからその事実を忘れていた....。
「ガラ...」
俺は静かに無言で押入れの扉を閉める。
「あ、あはは」
自分でも分かるくらいに引きつった愛想笑いを浮かべながら振り返り、莉央ちゃんの顔を確認する。
「.......」
彼女は、顔を真っ赤にさせてプルプルと震えながら俯いていた。
目には涙が溜まっており今にも泣き出しそうである。
...やってしまった。俺は別に莉央ちゃんの性癖を暴き辱しめを受けさせる気はなかったのだ...。俺の不手際で...なんかとても申し訳ない。
「ご、ごめんね莉央ちゃん?年頃だもんね、仕方ないよ」
なんでこんな下手くそなフォローしかできないんだ!自分が嫌になる!いつもならもっと落ち着いて対処できるのに。
「なんで...なんで見ちゃうんですかぁ...うぇええ...」
あああ...ついに泣き出してしまった。
でもこれは俺が全面的に悪い。可愛い子の涙は見たくない。
「...ごめんね」
よしよしと頭を撫でながら謝る事しかできない。誰か良い対処法があるなら教えてくれ!
「ほ、本当にごめんね?何でもするから許して...!」
こういう時は誠心誠意を心掛けて接するのが良いはずだ。今彼女のために俺に何が出来るかを考えなければ!莉央ちゃんの傷付いた心を癒すためにはそれこそ俺が何でもしてあげなければ....うん?
さっきまで聞こえていた莉央ちゃんの泣き声が急に止んだ。
「...莉央ちゃん?」
不審に思った俺は頭を撫でる手を止めそう問う。
すると莉央ちゃんは俯いてた顔を上げ、真っ直ぐにこちらをその端正な顔で見つめながらボソリと呟いた。
「....なんでも?」
「えっ?」
「今仁くんは何でもすると言ったんですか?」
ついほんのさっきまでの涙は何処へ行ったのか、まるで獲物を見つけた肉食獣のような眼光に変わった莉央ちゃん。
...おっと?これは言葉選びを誤ったか?
「う、うん。僕に出来る事なら」
しかし1度発してしまった言葉を飲み込む事は出来ない。莉央ちゃんの迫力に少したじろぎながらも俺はなんとかそう返す。
「...ゴクッ。そ、それはヌプヌプ大運動会で主人公が色々な男の子達にヤったような事もです!?」
一度喉を鳴らした莉央ちゃんはそう言いながらガシッと俺の肩を掴む。
...何ですと?ヌプヌプ大運動会と言えばさっきのエロ本のタイトル。あの作品で女主人公が様々な登場人物の男の子にヤった内容、か。...それはつまりエッチな事だと思っていいんですね?
....ふむ、なるほど。
今目の前にいるこの可愛い女の子からエッチな事をされるという事か。
.....。
「....莉央ちゃん」
「....はい」
俺は、肩を掴む莉央ちゃんの手に自分の手を添えながら言う。
「...謹んで、お受けいたします。莉央ちゃんの好きにしていいよ」
ーーーー次の瞬間俺はベッドに押し倒された。
拝啓、お父さん、お母さん俺は今日男になります。
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コメント
ノベルバユーザー294662
お父さんいない
ア〇シズ教の元締めの女神
ん?いまなんでもry…
清水 裕斗
♪───きO(≧∇≦)Oた────♪
いいですいいですぅ!
十八禁展開どんとこーい!!
βoxyy
こういう時躊躇する主人公居るけど、そうではない事を期待してる